HubSpotパイプラインの設計方法|取引ステージ・角度・必須プロパティの考え方を徹底解説
- 2026年2月22日
ブログ目次
HubSpotのSales Hubを導入したものの、「パイプラインのステージをどう設計すればいいかわからない」「とりあえずデフォルトのまま使っているけど自社に合っていない気がする」と感じている方は多いのではないでしょうか。パイプラインの設計は、HubSpotで営業管理を行ううえで最も重要なコア部分です。ここの設計が甘いと、いくらデータを入力してもレポートの精度が上がらず、経営判断に使えるデータが蓄積されません。
本記事では、HubSpotのパイプラインを設計する際の考え方と具体的な設定方法を解説します。取引ステージの分け方、受注確度(角度)の設定、各ステージで入力すべき必須プロパティの設計、そしてパイプラインルールによるガバナンス管理まで、実画面を交えながら体系的に説明します。
HubSpotのパイプラインとは、営業の商談プロセスを左から右へ進行するステージとして可視化する仕組みです。取引画面を開くと、カンバン形式のボードが表示され、各取引(案件)がどのステージにあるかを直感的に確認できます。
BtoB商談を想定した場合、たとえば「アポ取得→初回提案→見積もり提示→受注内示→受注」という流れで、左端の初期段階から右端のクローズに向かって商談が進んでいきます。失注した案件は「失注」ステージに移動します。この左から右への時系列の流れを社内で体系立てて設計することで、営業プロセスの標準化とデータに基づく経営管理が実現できます。
パイプラインをHubSpotに直接設定する前に、まずスプレッドシート等で全体像を整理することをおすすめします。設計時に押さえるべき要素は、大きく4つあります。
1つ目は取引ステージ(アポ取得、初回提案、見積もり提示など)、2つ目は各ステージの角度(受注確度)、3つ目は各ステージの定義(どういう状態がそのステージに該当するか)、4つ目は各ステージで入力すべき必須プロパティです。この4つを事前に設計しておけば、かなり精度の高いパイプラインが構築できます。
取引ステージを分ける際の基準は、「どのプロセスに何件の商談があるのか」「どのプロセスからどのプロセスに移る際に受注率・失注率が変化するのか」という2つの視点です。
たとえば「初回訪問が終わった案件が何件あり、見積もり提示中のものが何件あり、受注内示が出ているのが何件か」が把握できれば、経営管理として十分だという企業もあれば、「クローズまでの期間が長い商材なので、もう少しプロセスを細かく設定しないと管理しきれない」という企業もあります。ステージの数は企業の商材やセールスサイクルによって異なるため、自社のビジネスに合わせたカスタマイズが必要です。
パイプライン設計で見落としがちなのが、各ステージの受注確度(角度)の設定です。角度とは、そのステージにいる案件が最終的に受注に至る確率を示す数値です。
たとえば、100万円の案件が「初回訪問」ステージにあり、そのステージの角度が20%であれば、加重金額(フォーキャスト)は20万円として計算されます。営業担当者が「1,000万円の案件を3件持っています」と報告しても、それがすべて「アポ取得」段階であれば角度10%として3,000万円 × 10% = 300万円がフォーキャストの数字になります。この仕組みにより、経営目標の管理やフォーキャストの精度が格段に向上し、「蓋を開けてみたら見込みと全然違った」という事態を防げます。
角度の数値は、運用開始時点では営業の感覚値で仮設定し、実際にデータが蓄積されてきたら実績に基づいて見直していくのが現実的です。
ステージ名だけでは「この案件はどのステージに該当するのか」の判断が人によって異なってしまいます。そこで重要なのが、各ステージの定義を言語化しておくことです。
「アポ取得」であれば「ミーティングが設定されている状態」、「見積もり提示」であれば「提案内容を詳細化して導入判断をしてもらえるテーブルに乗る見積もりの提示・ご提案をしている状態」といった形で、具体的にどういう状態がそのステージに該当するのかを定義します。この定義があることで、営業チーム内での認識のずれが解消され、新入社員が入った際にも「このステージではこういう状態であるべき」というガイドラインとして機能します。
HubSpotのパイプラインには、各ステージに移行する際に特定のプロパティの入力を必須化する機能があります。これを活用することで、商談が次のステージに進む前に必要な情報が確実に入力される仕組みを作れます。
たとえば、「受注」ステージに移行する際に受注理由の入力を必須化すれば、営業担当者は必ず受注した理由を記録することになります。入力しないと次のステージに進めないため、「後で入力しよう」と後回しにされて結局入力されないという問題を防げます。
見積もり提示のステージでは、BANT情報(Budget:予算、Authority:決裁者、Need:ニーズ、Timeline:導入時期)を必須プロパティとして設定するのが効果的です。
予算感、意思決定基準、競合情報、ROI、ボトルネックなど、見積もり段階で握っておくべき情報をプロパティとして定義し、必須化しておくことで、営業のヒアリング品質が標準化されます。このデータが蓄積されれば、「BANT情報がしっかり握れている案件は受注率が高い」「競合情報が入力されている案件は失注率が低い」といった分析も可能になります。
受注理由や失注理由をテキストで自由記述にするか、ドロップダウンのカテゴリーで分類するかも設計時に決めておくべきポイントです。テキストデータだけでは円グラフなどでのカテゴリー集計ができないため、「失注理由カテゴリー」のようなドロップダウンプロパティを用意し、加えて「失注理由(詳細)」のテキストプロパティも併設するのが実用的です。カテゴリーで全体傾向を把握し、詳細テキストで個別事例を深掘りするという二段構えの分析が可能になります。
設計が固まったら、HubSpotの管理画面でパイプラインを設定します。取引画面の右上にある歯車アイコンから設定に入り、「取引」セクションの「パイプライン」タブで編集できます。
ここでステージ名の設定、角度の設定、そして条件付きステージのプロパティ(必須項目化)の設定が行えます。たとえば「見積もり提示」のステージに移行する際に「金額」や「BANT情報」のプロパティを必須化したい場合は、該当するプロパティを追加するだけで設定完了です。
各ステージの角度は、パイプライン編集画面で数値を入力するだけで設定できます。
初期段階では「アポ取得:5%」「初回訪問:20%」「見積もり提示:50%」「受注内示:80%」のように仮の数値を設定し、3〜6ヶ月の運用データが溜まった段階で実績に基づいて見直すのがベストプラクティスです。コンサルティングやデリバリーが発生する業態では、受注の後に「検収」プロセスを追加し、受注100%のステージを2つに分けるという設計も有効です。
パイプラインの運用が軌道に乗ってきたら、パイプラインルールを活用してデータの整合性を保つガバナンスを強化しましょう。
パイプラインルールでは、「取引の作成を特定のステージだけに制限する」「ステージを省略して先に進めないようにする」「逆方向への移動を制限する」「特定ステージへの移行に承認プロセスを設ける」「受注ステージに入ったら編集をロックする」といった制御が可能です。
特に重要なのが、受注後のデータロックです。営業担当者が受注後に受注日をずらしたり、金額を変更したりすると、先月締めたレポートの数値と齟齬が生じてしまいます。受注ステージに入った取引を営業担当者が勝手に変更できないようにロックをかけることで、レポートの信頼性を担保できます。なお、パイプラインルールの一部機能はプランによって利用可否が異なるため、自社のプランで利用できる機能を確認してから設計に組み込みましょう。
HubSpotのパイプライン設計は、単なるツールの設定ではなく、自社の営業プロセスを言語化・標準化する作業そのものです。設計にあたっては、取引ステージの分け方、各ステージの定義、受注確度(角度)、必須入力プロパティの4要素を事前にスプレッドシート等で整理してからHubSpotに反映するアプローチが効果的です。
パイプラインが適切に設計されていれば、経営層はフォーキャストの精度が上がり、マネージャーは営業プロセスのボトルネックを特定でき、営業担当者は「次に何をすべきか」が明確になります。さらに、新しいメンバーが入社した際にも、パイプラインの各ステージと必須プロパティがそのままオンボーディングのガイドラインとして機能するため、人材育成の面でも大きな効果を発揮します。
まずは現在の営業プロセスを棚卸しし、「どのステージで受注率が変化するのか」「各ステージでどんな情報を握っておく必要があるのか」を整理するところから始めてみてください。
株式会社StartLinkは、事業推進に関わる「販売促進」「DXによる業務効率化(ERP/CRM/SFA/MAの導入)」などのご相談を受け付けております。 サービスのプランについてのご相談/お見積もり依頼や、ノウハウのお問い合わせについては、無料のお問い合わせページより、お気軽にご連絡くださいませ。
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。