ブログ目次
「HubSpotのCRMデータをAIで分析したいけど、毎回エクスポートしてからChatGPTに貼り付けるのが面倒」「Claude DesktopからHubSpotのコンタクトや取引情報に直接アクセスできたら便利なのに」——こうしたニーズに応えるのが、HubSpot MCP Serverです。
HubSpot MCP Serverとは、Model Context Protocol(MCP)に対応したAIクライアント(Claude Desktop、Cursor、ChatGPTなど)からHubSpot CRMデータにセキュアにアクセスするためのリモートゲートウェイです。 2025年にパブリックベータとして公開され、AIクライアントとCRMデータをリアルタイムで接続できます。
この記事では、HubSpot MCP Serverの仕組みからセットアップ手順、実務での活用方法までを解説します。
この記事でわかること:
- MCP(Model Context Protocol)の基本概念
- HubSpot MCP Serverの機能と対応範囲
- セットアップの具体的な手順
- Claude Desktop / ChatGPT / Cursorとの連携方法
- 実務での活用シナリオと注意点
MCPの定義
MCP(Model Context Protocol)とは、AIモデルが外部アプリケーションのデータやツールにアクセスするための標準化されたプロトコルです。Anthropic(Claudeの開発元)が開発したオープンソースのフレームワークであり、LLM(大規模言語モデル)と外部ツールの接続方法を標準化することを目指しています。
わかりやすく言えば、AIアシスタントが「HubSpotのデータを見て」「Slackにメッセージを送って」といった外部ツール操作を行うための共通のインターフェースです。
MCPの仕組み
AIクライアント(Claude/ChatGPT) ←→ MCPプロトコル ←→ MCPサーバー ←→ 外部アプリケーション(HubSpot等)
従来は、AIツールごとに個別のAPI連携やプラグインが必要でしたが、MCPにより一つの標準プロトコルで複数のアプリケーションと接続できるようになります。これはSalesforceでいうAPIレイヤーのような位置づけですが、AIネイティブな設計という点が大きく異なります。
HubSpot MCP Serverの機能と対応範囲
出典: HubSpot Developers (developers.hubspot.com/mcp)
基本機能
HubSpot MCP Serverは、MCP対応のAIクライアントからHubSpot CRMデータにセキュアにアクセスするためのリモートゲートウェイです。
現在のアクセス可能なデータ(パブリックベータ時点):
| CRMオブジェクト | 読み取り | 備考 |
|---|---|---|
| コンタクト | ○ | 個人情報保護プロパティは除外 |
| 会社 | ○ | |
| 取引 | ○ | |
| チケット | ○ | |
| 見積もり | ○ | |
| 請求書 | ○ | |
| 製品 | ○ | |
| 明細項目 | ○ | |
| サブスクリプション | ○ | |
| 注文 | ○ | |
| カート | ○ | |
| ユーザー | ○ | |
| オブジェクト間の関連付け | ○ |
現時点での制限事項:
- 読み取り専用(書き込み・更新は不可)
- カスタムのセンシティブデータプロパティにはアクセス不可
- 個人健康情報(PHI)にはアクセス不可
- カスタムオブジェクトへの対応は今後拡大予定
ここが結構ミソになってくるのですが、現時点では読み取り専用です。AIクライアントからCRMデータを参照・分析することはできますが、データの作成・更新・削除はできません。将来的に書き込み機能が追加される可能性はありますが、セキュリティの観点からも、まずは読み取り専用で利用を開始するのがよいかなと思います。
認証方式
- OAuth 2.0 による認証(2025年後半にOAuth 2.1への移行予定)
- PKCE(Proof Key for Code Exchange)対応
- リフレッシュトークンのローテーション対応
- 管理者権限での承認が必要
セットアップ手順
出典: HubSpot Developers (developers.hubspot.com)
前提条件
- HubSpotのProfessional以上のアカウント(推奨)
- 管理者権限
- MCP対応のAIクライアント(Claude Desktop、Cursor、VS Code等)
ステップ1: HubSpot開発者プラットフォームでアプリを作成
- HubSpotの設定 → 連携 → 非公開アプリに移動
- 「非公開アプリを作成」をクリック
- アプリ名を入力(例: 「MCP Server連携」)
- スコープ(権限)の設定で、アクセスしたいCRMオブジェクトの読み取り権限を付与
推奨スコープ:
crm.objects.contacts.readcrm.objects.companies.readcrm.objects.deals.readcrm.objects.tickets.read
- アプリを作成し、アクセストークンを取得
ステップ2: AIクライアントにMCPサーバーを設定
Claude Desktopの場合
Claude Desktopの設定ファイル(claudedesktopconfig.json)にMCPサーバーの設定を追加します。
{
"mcpServers": {
"hubspot": {
"url": "https://mcp.hubspot.com/sse",
"headers": {
"Authorization": "Bearer YOUR_ACCESS_TOKEN"
}
}
}
}
設定ファイルの場所:
- macOS:
~/Library/Application Support/Claude/claudedesktopconfig.json - Windows:
%APPDATA%\Claude\claudedesktopconfig.json
HubSpotは公式のリモートMCPサーバー(mcp.hubspot.com)を提供しているため、ローカルにサーバーを立てる必要はありません。
Cursorの場合
Cursorの設定画面(Settings → MCP)でMCPサーバーを追加します。
- Settings → MCP → 「Add MCP Server」
- Server URL:
https://mcp.hubspot.com/sse - 認証設定でBearerトークンを入力
ChatGPTの場合
ChatGPTは2025年後半にMCPの対応を進めていますが、公式のネイティブサポート状況は変動しています。現時点では、MCPブリッジツールやサードパーティ連携を通じた接続が可能です。
ステップ3: 接続テスト
AIクライアントから以下のようなプロンプトで接続をテストします。
HubSpotのコンタクト一覧を10件表示してください。
正常に接続されていれば、CRMのコンタクトデータが返されます。
実務での活用シナリオ
シナリオ1: 商談前の企業分析
従来の方法: HubSpotにログイン → 会社レコードを検索 → 過去の取引・メール・ミーティングを手動で確認 → メモにまとめる
MCP活用:
「株式会社〇〇の会社情報、関連する取引の状況、過去のコンタクト履歴をまとめてください。次回の商談で押さえるべきポイントも提案してください。」
AIが自動でCRMデータを参照し、企業情報・取引状況・過去の接触履歴を横断的に分析してレポートを生成します。
シナリオ2: パイプラインの健全性チェック
「現在の取引パイプラインで、30日以上ステージが変わっていない取引を一覧で出してください。金額の大きい順に並べて、それぞれの懸念点を分析してください。」
営業マネージャーがダッシュボードを見るだけでは気づきにくい「停滞案件」をAIが自動で検出し、対応の優先順位を提案してくれます。
シナリオ3: CRMデータ品質の分析
「コンタクトの中で、メールアドレスが空欄のレコード、会社が関連付けられていないレコードの数を教えてください。データ品質の改善提案もお願いします。」
CRMの値がなかなか入っていなくてデータ資産化していない——こうした課題をAIで可視化し、データクレンジングの優先順位を特定できます。
シナリオ4: 営業レポートの自動生成
「今月クローズした取引の一覧と、合計金額、平均取引サイクルを計算してください。先月との比較も含めてレポート形式でまとめてください。」
毎週のレポート作成を自動化できます。ダッシュボードの定期配信と組み合わせれば、データの時点固定化にも対応できます。
シナリオ5: 開発者向け — Claude Codeとの連携
Claude Code(ターミナルベースのAI開発ツール)でMCPを設定すると、コーディング中にHubSpotのデータスキーマやプロパティ一覧を参照しながら、HubSpot APIの連携コードを生成できます。
「HubSpotの取引オブジェクトのプロパティ一覧を確認して、取引ステージごとの集計APIコール(Python)を書いてください。」
サードパーティMCPサーバーとの違い
HubSpot公式のMCP Server以外にも、コミュニティやサードパーティが開発したMCPサーバーが存在します。
| 項目 | HubSpot公式MCP Server | サードパーティ(例: peakmojo/mcp-hubspot) |
|---|---|---|
| 提供元 | HubSpot | コミュニティ開発者 |
| 認証 | OAuth 2.0(公式) | Private Appトークン |
| ホスティング | HubSpotがリモートで提供 | ローカルで実行 |
| 対応範囲 | CRMオブジェクト(読み取り) | CRM + 一部書き込み対応の場合あり |
| サポート | HubSpot公式サポート | コミュニティサポート |
| セキュリティ | HubSpotのセキュリティ基盤 | 自己責任 |
公式MCPサーバーは安全性とサポートの面で推奨されますが、書き込み機能が必要な場合はサードパーティ製の選択肢もあります。ただし、セキュリティリスクの評価は自己責任で行う必要があります。
注意点・セキュリティ上の考慮事項
データアクセスの範囲を最小限にする
非公開アプリのスコープ設定では、実際に必要なオブジェクトのみに読み取り権限を付与しましょう。不要なスコープを付与すると、セキュリティリスクが増大します。
アクセストークンの管理
- トークンは環境変数や秘密管理ツールで管理し、コードにハードコードしない
- 定期的なトークンのローテーションを実施
- 不要になった非公開アプリは削除する
AIへのデータ送信に関するポリシー
MCP経由でAIクライアントにCRMデータが送信されるため、社内のデータガバナンスポリシーとの整合性を確認してください。特に個人情報や機密データの取り扱いについて、情報セキュリティ部門との事前協議をおすすめします。
上場・上場準備企業では、SSO、2FA、IP制限に加えて、MCP経由のデータアクセスについてもセキュリティレビューを実施することを推奨します。
まとめ
HubSpot MCP Serverは、AIクライアントとCRMデータをリアルタイムで接続する新しいインターフェースです。従来のAPI連携と異なり、自然言語でCRMデータに対する質問・分析・レポート生成が可能になります。
まずはClaude DesktopまたはCursorで接続を設定し、コンタクトや取引データの参照からスタートしてみましょう。AIがCRMデータを直接参照できるようになることで、商談準備・レポート作成・データ分析の効率が大きく向上します。
現時点では読み取り専用のパブリックベータですが、今後の機能拡張(書き込み対応、カスタムオブジェクト対応など)にも期待かなと思います。段階的に活用範囲を広げていき、AIとCRMが連携した業務プロセスを構築していきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. HubSpot MCP Serverは無料で利用できますか?
MCP Server自体の利用料は現時点では発生しません。ただし、HubSpotの有償プラン(CRMオブジェクトへのAPIアクセス権限)が必要です。また、AIクライアント側(Claude Pro、ChatGPT Plus等)のサブスクリプション費用は別途必要です。
Q2. MCP経由でHubSpotのデータを書き換えることはできますか?
現時点のパブリックベータでは読み取り専用です。CRMレコードの作成・更新・削除はできません。書き込み機能が必要な場合は、HubSpotの通常のAPI(v3 API)を使用するか、サードパーティ製のMCPサーバーを検討してください。
Q3. Claude Desktop以外のAIクライアントでも使えますか?
はい、MCPプロトコルに対応したAIクライアントであれば利用可能です。現在確認されているのは、Claude Desktop、Cursor、VS Code(GitHub Copilot)、Windsurf、Claude Codeなどです。ChatGPTについてはMCPのネイティブ対応が進行中です。
Q4. セキュリティは大丈夫ですか?社内の顧客データがAIに送信されることに懸念があります。
HubSpot公式MCP ServerはOAuth 2.0認証を使用し、HubSpotのセキュリティ基盤上で動作します。ただし、CRMデータがAIクライアント(Claude、ChatGPTなど)に送信されることは事実ですので、各AIサービスのデータ取り扱いポリシーを確認し、社内の情報セキュリティポリシーとの整合性を事前にチェックしてください。センシティブデータプロパティは自動的に除外されます。
Q5. 従来のHubSpot APIとMCP Serverはどう使い分ければよいですか?
MCP Serverは「AIクライアントからの対話的なデータアクセス」に適しています。一方、従来のAPI(v3 REST API)は、アプリケーション間のデータ連携、バッチ処理、書き込み操作に適しています。分析・レポート・質問応答にはMCP、システム連携・自動化にはREST APIという使い分けがおすすめです。
株式会社StartLinkは、事業推進に関わる「販売促進」「DXによる業務効率化(ERP/CRM/SFA/MAの導入)」などのご相談を受け付けております。 サービスのプランについてのご相談/お見積もり依頼や、ノウハウのお問い合わせについては、無料のお問い合わせページより、お気軽にご連絡くださいませ。
関連キーワード:
サービス資料を無料DL
著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。