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「ポータルサイトからの反響が来ても、追客が属人化してフォローが漏れてしまう」「物件情報と顧客情報が別々のシステムにあり、マッチングに時間がかかる」「成約後のオーナー管理や管理物件の情報がExcelに散在している」——不動産業界ではこうした課題を抱えている企業が多いかなと思います。
不動産業界におけるHubSpot活用とは、反響対応、追客、物件紹介、契約管理、オーナー管理といった不動産ビジネスの一連のプロセスをCRMで一元管理し、追客の自動化と成約率の向上を実現することです。
この記事では、不動産会社がHubSpotを導入する際の設計思想と、具体的な活用パターンを解説します。
この記事でわかること
- 不動産業界に適したHubSpotのデータ設計
- 反響対応・追客の自動化
- 物件管理とカスタムオブジェクトの活用
- 内見〜契約のパイプライン設計
- オーナー管理・管理物件の運用
- よくある質問(FAQ)
不動産業界の業務とHubSpotの対応
| 業務領域 | 現状の課題 | HubSpotでの解決策 |
|---|---|---|
| 反響対応 | ポータルからの問い合わせに手動で返信、対応遅延 | ワークフローで即座に自動返信+担当者アサイン |
| 追客 | フォローのタイミングが担当者任せ | シーケンスで段階的なフォローメールを自動化 |
| 物件管理 | 物件情報がExcelや紙で管理 | カスタムオブジェクトで物件データベースを構築 |
| 内見管理 | 内見予約の調整がメール・電話で煩雑 | ミーティングリンクで予約自動化 |
| 契約管理 | 契約書類の進捗が見えない | パイプラインで可視化 |
| オーナー管理 | オーナーとの関係が個人の手帳レベル | コンタクト+関連付けで一元管理 |
データ設計: 不動産向けオブジェクト構成
不動産業界でHubSpotを使う際、最も重要な設計ポイントはカスタムオブジェクトを使った物件管理です。
オブジェクト設計
顧客(コンタクト)←→ 取引(商談)←→ 物件(カスタムオブジェクト)
↕
オーナー(コンタクト or 会社)
| オブジェクト | 活用 | 主要プロパティ |
|---|---|---|
| コンタクト | 顧客(買主/借主) | 希望エリア、希望間取り、予算、入居希望時期 |
| コンタクト | オーナー(売主/貸主) | 所有物件、管理契約種別 |
| 会社 | 法人顧客/法人オーナー | 会社規模、業種、物件保有数 |
| 取引 | 商談(成約プロセス) | 対象物件、成約価格、仲介手数料 |
| カスタムオブジェクト | 物件 | 物件名、所在地、間取り、賃料/価格、空室状況 |
カスタムオブジェクトで物件管理ができるのは、不動産業界にとって非常に有用なポイントです。物件と顧客をリレーションで紐付けることで、「この顧客にはどの物件を紹介したか」「この物件には誰が興味を示しているか」が一目で把握できるようになります。
物件カスタムオブジェクトのプロパティ例
| プロパティ | 種類 | 用途 |
|---|---|---|
| 物件名 | テキスト | 物件の名称 |
| 所在地 | テキスト | 住所 |
| 最寄り駅 | テキスト | アクセス情報 |
| 間取り | ドロップダウン | 1K/1LDK/2LDK/3LDK等 |
| 賃料/販売価格 | 数値 | 金額 |
| 築年数 | 数値 | 建築経過年数 |
| 空室/販売状況 | ドロップダウン | 空室/入居中/商談中/成約済み |
| 物件タイプ | ドロップダウン | 賃貸マンション/戸建て/土地/商業 |
| 管理会社 | 会社選択 | 管理委託先 |
| オーナー | コンタクト選択 | 物件所有者 |
反響対応・追客の自動化
反響対応ワークフロー
不動産業界では、ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)からの反響にいかに早く対応するかが成約率に直結します。
自動化フロー:
- ポータルサイトから問い合わせ→メール受信→HubSpotにコンタクト自動作成(メールパーサーまたはAPI連携)
- 即座に自動返信メール送信(物件情報 + 内見予約リンク)
- 担当営業への自動アサイン(エリア別 or ラウンドロビン)
- 担当者にSlack/メール通知
- 15分以内に電話フォローのタスク自動作成
追客シーケンスの設計
初回反響から成約まで、段階的にフォローするシーケンスを構築します。
| タイミング | アクション | 内容 |
|---|---|---|
| 反響直後 | 自動メール | お問い合わせお礼 + 物件詳細 + 内見予約リンク |
| 1日後 | 電話タスク | 初回電話フォロー |
| 3日後 | メール | 類似物件の紹介 + 新着物件情報 |
| 7日後 | メール | エリアの相場情報 + 住まい選びのコツ |
| 14日後 | 電話タスク | 状況確認の電話 |
| 30日後 | メール | 新着物件まとめ + 再提案 |
メルマガではなく、ちゃんと営業担当から個別にフォローしているように見えるメールを送ることがポイントです。シーケンス機能を使えば、担当者の名前で自動配信できるので、パーソナライズされた対応を実現できます。
内見〜契約のパイプライン設計
売買仲介パイプライン
| ステージ | 定義 | 確度 | 必須プロパティ |
|---|---|---|---|
| 反響 | ポータル・Web経由で問い合わせ受領 | 5% | 問い合わせ元、希望条件 |
| ヒアリング | 希望条件の詳細ヒアリング完了 | 15% | 予算、エリア、間取り |
| 物件提案 | 条件に合う物件を提案 | 25% | 提案物件リスト |
| 内見 | 物件の内見を実施 | 40% | 内見日、内見物件 |
| 購入申込 | 買付証明書の提出 | 70% | 申込金額 |
| 契約 | 売買契約の締結 | 90% | 契約日、手数料 |
| 決済・引渡し | 代金決済と物件引渡し | 100% | 決済日 |
| 見送り | 検討を中止 | 0% | 見送り理由(必須) |
賃貸仲介パイプライン
| ステージ | 定義 | 確度 |
|---|---|---|
| 反響 | 問い合わせ受領 | 10% |
| 物件提案 | 条件に合う物件を提案 | 25% |
| 内見 | 物件の内見を実施 | 45% |
| 申込 | 入居申込書の提出 | 75% |
| 審査 | 入居審査中 | 85% |
| 契約 | 賃貸借契約の締結 | 100% |
オーナー管理・管理物件の運用
不動産管理会社の場合、オーナーとの関係管理も重要な業務です。
オーナー管理のポイント
- コンタクトにオーナー情報を登録: 所有物件数、管理契約種別(一般/専任)、連絡頻度の希望
- 物件カスタムオブジェクトとの関連付け: オーナーと物件を紐付け
- 定期レポートの自動配信: ワークフローで月次の入居率・家賃収入レポートをオーナーに自動送信
- 契約更新のリマインド: 管理委託契約の更新日前にアラートを自動生成
空室管理ダッシュボード
| レポート | 内容 |
|---|---|
| 空室率推移 | 月次の空室率の推移グラフ |
| エリア別空室状況 | エリアごとの空室物件数 |
| 空室期間 | 空室が30日/60日/90日を超えた物件のリスト |
| 反響→成約の転換率 | 物件タイプ別の成約率 |
まとめ
不動産業界のHubSpot活用は、反響対応の自動化、物件管理のカスタムオブジェクト化、内見〜契約のパイプライン管理を柱として設計するのが効果的です。
まずは反響対応の自動返信ワークフローと、追客シーケンスの構築から始めてください。これだけでも対応漏れの防止と追客の効率化に大きな効果があります。
段階的に物件のカスタムオブジェクト化やオーナー管理の仕組みを構築していくことで、営業活動の全体像がCRM上で可視化され、データに基づいた営業戦略が立てられるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 不動産向けのCRM(いえらぶ、ノマドクラウド等)とHubSpotの違いは何ですか?
不動産専用CRMはポータルサイトとの連携や物件管理に特化しており、不動産業務との親和性が高いです。一方HubSpotは、マーケティング自動化、コンテンツ管理、カスタマイズ性に優れており、不動産以外の事業も展開している企業や、マーケティングに力を入れたい企業に向いています。併用してiPaaS(Yoom/Zapier)で連携するパターンもあります。
Q2. 物件情報をカスタムオブジェクトで管理するにはEnterpriseプランが必要ですか?
はい、カスタムオブジェクトはEnterpriseプランの機能です。Starter/Professionalプランの場合は、取引のカスタムプロパティに物件情報を追加する方法で代替できますが、物件を独立したデータベースとして管理したい場合はEnterpriseプランをご検討ください。
Q3. ポータルサイト(SUUMO等)からの反響をHubSpotに自動取り込みできますか?
ポータルサイトからの問い合わせメールをHubSpotのメールパーサーで解析する方法や、Zapier/Yoomを使ってメール受信→コンタクト自動作成のフローを構築する方法があります。直接のAPI連携は各ポータルの仕様によりますが、メール経由の連携であれば比較的簡単に実装可能です。
Q4. 追客の自動化は顧客に嫌がられませんか?
シーケンス機能で送るメールは、担当者個人の名前から送信されるため、一斉配信のメルマガとは異なり「営業担当からの個別連絡」として受け取られます。内容をパーソナライズし、送信間隔を適切に設定すれば(1日おきだとしつこいので、最低3〜4営業日は空ける)、むしろ丁寧なフォローとして好印象になるケースが多いです。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。