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「HubSpotの標準オブジェクト(コンタクト・会社・取引・チケット)だけでは、自社のビジネスデータを管理しきれない」
「不動産の物件情報やSaaSの契約情報を、CRMの中で一元管理したい」
——こうした課題に直面したとき、カスタムオブジェクトが解決策になります。
HubSpotのカスタムオブジェクトとは、標準のCRMオブジェクトに加えて、自社固有のデータ構造を定義・管理できるEnterprise限定の機能です。 コンタクト・会社・取引・チケットと同じように、レコードの作成・関連付け・パイプライン管理・レポート作成が可能です。
この記事では、カスタムオブジェクトの基本概念から、業種別の設計パターン、関連付けの設定方法、レポートでの活用まで実践的に解説します。
この記事でわかること
- カスタムオブジェクトの基本概念と標準オブジェクトとの違い
- 業種・業務別の設計パターン(不動産、SaaS、製造業など)
- カスタムオブジェクトの作成・関連付け手順
- パイプラインとレポートの活用方法
- 設計時の注意点とベストプラクティス
カスタムオブジェクトとは?
HubSpotのCRMには、標準で以下の4つのオブジェクトが用意されています。
| 標準オブジェクト | 用途 |
|---|---|
| コンタクト | 個人(担当者・リード)の情報管理 |
| 会社 | 企業・組織の情報管理 |
| 取引 | 商談・案件の管理 |
| チケット | 問い合わせ・サポート案件の管理 |
これら4つでカバーできないデータ構造が必要な場合、カスタムオブジェクトを使って独自のデータモデルを定義します。
Salesforceで言えば「カスタムオブジェクト」と同じ概念です。HubSpotの場合はEnterprise限定という制約がありますが、一度作成すれば標準オブジェクトと同等の機能(ビュー、フィルター、ワークフロー、レポート)が使えるので、データの一元管理が実現できるのがポイントになってくるかなと思います。
利用可能なプラン
| プラン | カスタムオブジェクト | オブジェクト数上限 |
|---|---|---|
| Free / Starter | × | — |
| Professional | × | — |
| Enterprise | ○ | 10個 |
注意: カスタムオブジェクトはEnterprise限定の機能です。Professionalプランでは利用できません。これは、Starter→Professionalへのアップグレード判断とは別軸で、Enterprise検討の重要な要素になります。
業種・業務別の設計パターン
パターン1: 不動産業界 — 物件管理
コンタクト(購入希望者)
↕ 関連付け
会社(不動産会社・オーナー)
↕ 関連付け
カスタムオブジェクト「物件」
- 物件名、所在地、価格、面積、間取り
- ステータス: 販売中 / 商談中 / 成約 / 非公開
↕ 関連付け
取引(商談)
物件情報をカスタムオブジェクトで管理することで、「この物件に興味を示したコンタクト一覧」「この会社が所有する物件一覧」といったリレーションを構築できます。
パターン2: SaaS企業 — サブスクリプション・契約管理
会社(顧客企業)
↕ 関連付け
カスタムオブジェクト「契約」
- 契約開始日、契約終了日、更新日
- プラン名、月額金額、ライセンス数
- ステータス: アクティブ / 更新予定 / 解約予告 / 終了
↕ 関連付け
カスタムオブジェクト「請求」
- 請求月、請求金額、入金ステータス
- ステータス: 請求予定 / 請求済み / 入金済み / 未入金
取引で初回受注を管理し、継続的な契約情報はカスタムオブジェクトで管理するパターンです。MRR(月次経常収益)の可視化にも活用でき、MRR管理と連動させた運用が可能です。
パターン3: 製造業 — 製品・品目管理
会社(取引先)
↕ 関連付け
取引(商談)
↕ 関連付け
カスタムオブジェクト「製品」
- 製品名、型番、カテゴリ、単価
- 在庫ステータス、リードタイム
パターン4: コンサル・SI業 — プロジェクト管理
会社(クライアント)
↕ 関連付け
取引(受注案件)
↕ 関連付け
カスタムオブジェクト「プロジェクト」
- プロジェクト名、PM、開始日、完了予定日
- ステータス: キックオフ / 設計中 / 開発中 / テスト / 検収 / 完了
↕ 関連付け
カスタムオブジェクト「マイルストーン」
- マイルストーン名、納品物、期限、進捗率
パターン5: 営業報告
コンタクト(担当者)
↕ 関連付け
カスタムオブジェクト「営業報告」
- 報告日、議題、訪問者、場所
- 提案書リンク、NextAction
- 関連する取引への紐付け
カスタムオブジェクトの作成手順
ステップ1: オブジェクトの定義
- 設定画面(歯車マーク)→「オブジェクト」→「カスタムオブジェクト」
- 「カスタムオブジェクトを作成」をクリック
- 以下を設定:
- オブジェクト名(単数形 / 複数形): 例「契約」「契約一覧」
- プライマリー表示プロパティ: レコード一覧で表示される識別名
- セカンダリー表示プロパティ: 2つ目の識別情報(オプション)
ステップ2: プロパティの作成
標準オブジェクトと同様に、カスタムプロパティを作成します。
- テキスト、数値、日付、ドロップダウン、チェックボックス等
- 計算プロパティや同期プロパティも利用可能
- プロパティグループで整理
ここで結構ミソになってくるのが、プロパティは最小限に留めることです。最初から大量のプロパティを作ると、入力負荷が高くなりデータ品質が低下します。まず必要最低限のプロパティで運用を始め、足りなければ後から追加する方針が良いかなと思います。
ステップ3: 関連付けの設定
カスタムオブジェクトと他のオブジェクトの関連付けを設定します。
- 設定画面→「オブジェクト」→対象のカスタムオブジェクト→「関連付け」
- 関連付け先のオブジェクト(コンタクト、会社、取引等)を選択
- 関連付けラベル(例: 「所有者」「利用者」)を定義
関連付けの種類
| 関連付けタイプ | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 1対多 | 1つの親レコードに複数の子レコード | 1つの会社に複数の契約 |
| 多対多 | 両方向から複数のレコードが紐づく | 物件と購入希望者 |
ステップ4: パイプラインの作成(オプション)
カスタムオブジェクトにもパイプライン(かんばんビュー)を設定できます。
- 設定画面→カスタムオブジェクト→「パイプライン」タブ
- ステージ名と順序を定義
- 各ステージの必須プロパティを設定
例えば「請求」カスタムオブジェクトなら、「請求予定 → 請求済み → 入金済み → 未入金」というパイプラインを設定し、かんばんビューで一覧管理できます。
レポートでの活用
カスタムオブジェクトのデータは、レポート・ダッシュボードで分析できます。
カスタムレポートビルダーでの分析例
- 契約更新レポート: 今月更新予定の契約一覧(ステータス×更新日でフィルタ)
- 物件ステータスレポート: 販売中/商談中/成約の物件数を棒グラフで可視化
- 請求ステータスレポート: 未入金の請求一覧と金額合計
- クロスオブジェクトレポート: 会社×契約×請求の複合レポートで顧客別のMRR推移を分析
カスタムレポートビルダーで「データソース」にカスタムオブジェクトを追加することで、標準オブジェクトと同じようにグラフやテーブルを作成できます。
注意点・ベストプラクティス
Enterpriseプラン限定であることを考慮する
カスタムオブジェクトはEnterprise限定です。Professionalプランで代替策を検討する場合、以下のアプローチがあります。
- 取引のパイプラインを活用: 「契約管理パイプライン」「請求管理パイプライン」を別途作成
- カスタムプロパティで拡張: 既存オブジェクトにカスタムプロパティを追加
- 外部ツール連携: Airtableやスプレッドシートと連携
ただし、これらは根本的な解決策ではないため、データモデルが複雑になってきたらEnterprise検討のタイミングです。
サンドボックスでテストしてから本番投入
既存のデータやワークフローに影響を与えないよう、サンドボックス環境でカスタムオブジェクトの設計をテストしてから本番環境に反映することを強く推奨します。
オブジェクト数の上限に注意
Enterpriseプランでは最大10個のカスタムオブジェクトが作成可能です。「何でもカスタムオブジェクトにする」のではなく、本当に標準オブジェクトでは管理できないデータに限定して使うことが重要です。
プロパティ設計は慎重に
カスタムオブジェクトのプライマリー表示プロパティは後から変更できません。最初の設計段階でしっかり検討してください。
まとめ
カスタムオブジェクトを活用すれば、HubSpotのCRMを自社のビジネスモデルに合わせて柔軟に拡張できます。不動産の物件管理、SaaSの契約管理、製造業の製品管理など、業種固有のデータをCRM内で一元管理することで、レポートやワークフローと連携した高度な業務自動化が実現します。
まずは自社のデータモデルを整理し、「標準オブジェクトでカバーできない情報は何か?」を明確にするところから始めてみてください。サンドボックスで設計をテストし、段階的に本番環境に展開していくアプローチがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q1. カスタムオブジェクトはどのプランから利用できますか?
Enterprise プラン限定の機能です。いずれかのHub(Sales Hub、Marketing Hub、Service Hub、Content Hub、Operations Hub)のEnterpriseプランを契約していれば利用できます。
Q2. カスタムオブジェクトは何個まで作れますか?
Enterpriseプランで最大10個のカスタムオブジェクトが作成可能です。各オブジェクトにはプロパティ、パイプライン、ビュー、ワークフロー、レポートを設定できます。
Q3. カスタムオブジェクトとカスタムプロパティの違いは?
カスタムプロパティは「既存のオブジェクトに新しい項目を追加する」もの、カスタムオブジェクトは「全く新しいデータ構造(テーブル)を作成する」ものです。例えば取引に「契約更新日」を追加するのはカスタムプロパティ、「契約」という独立したレコード群を管理するのがカスタムオブジェクトです。
Q4. APIでカスタムオブジェクトを操作できますか?
はい、HubSpotのCRM APIでカスタムオブジェクトのレコード作成・取得・更新・削除が可能です。ワークフローのカスタムコードアクション(Node.js/Python)からもAPIを呼び出して操作できるため、外部システムとのデータ連携にも活用できます。
Q5. Professionalプランで代替策はありますか?
完全な代替にはなりませんが、取引パイプラインを複数作成する(例: 営業パイプライン + 契約管理パイプライン)、カスタムプロパティで情報を拡張する、メモやアクティビティで補完する、といった方法が考えられます。データモデルの複雑さが増してきた場合はEnterprise検討のタイミングかなと思います。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。