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「見積書をExcelで作成して、メールに添付して送って、承認は上長にチャットで依頼して...」「見積もりの最新版がどれかわからなくなった」——営業現場でこうした非効率な見積もり管理が続いていませんか。
HubSpotのCPQ(Configure, Price, Quote)ツールとは、CRMに登録された取引データをもとに、見積書の作成・承認・送付・電子署名までを一気通貫で管理できる機能です。 製品カタログの設定から見積もりテンプレートのカスタマイズ、承認ワークフロー、電子署名まで、見積もりプロセス全体をHubSpot上で完結させることができます。
この記事では、HubSpot CPQの初期設定から実務での運用方法までを、ステップバイステップで解説します。
この記事でわかること:
- HubSpot CPQツールの全体像と対応プラン
- 製品カタログ・価格表の設定方法
- 見積書の作成・カスタマイズ手順
- 承認プロセスの設定方法
- 電子署名の有効化と利用方法
- 実務での運用ベストプラクティス
HubSpot CPQツールの全体像
CPQとは
CPQ(Configure, Price, Quote)とは、製品の構成(Configure)→ 価格設定(Price)→ 見積書作成(Quote)の一連のプロセスを自動化・標準化するツールです。営業担当者が手作業で見積書を作成する手間を削減し、ミスを防ぎ、承認プロセスを効率化します。
HubSpot CPQの位置づけ
HubSpotのCPQツールは、Commerce Hub(コマースハブ)の一部として提供されています。CRMの取引(Deal)データと紐づいた見積書を作成でき、パイプライン上の取引管理と見積もり管理がシームレスに連携します。
Salesforce経験者の方であれば、Salesforce CPQ(旧SteelBrick)に相当する機能とお考えいただければよいかなと思います。ただし、HubSpotの場合は追加ライセンスなしで基本機能が使える点が大きな違いです。
対応プランと機能
| 機能 | 無料 | Starter | Professional | Enterprise |
|---|---|---|---|---|
| 見積書の作成・送付 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 製品カタログ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 見積もりテンプレート | 1件 | 複数 | 複数 | 複数 |
| 電子署名 | - | - | ○(月10件) | ○(月30件) |
| 見積もり承認 | - | - | ○ | ○ |
| カスタムフィールド | - | - | ○ | ○ |
| 決済連携(Stripe) | - | ○ | ○ | ○ |
ステップ1: 製品カタログの設定
見積書を作成する前に、まず製品カタログ(製品ライブラリ)を設定します。
製品の登録方法
- HubSpotの設定(歯車マーク)→ オブジェクト → 製品に移動
- 「製品を作成」をクリック
- 以下の情報を入力:
- 製品名: サービス名・商品名
- 単価: 基本価格
- 請求頻度: 1回限り / 月次 / 年次 / カスタム
- 説明: 製品の概要
- SKU(任意): 管理番号
製品設定のベストプラクティス
- 製品のバリエーションは別レコードで管理 — 「ベーシックプラン」「プロフェッショナルプラン」「エンタープライズプラン」はそれぞれ別の製品として登録
- 請求頻度を正確に設定 — MRR/ARR管理に直結するため、月次・年次を正確に区別
- 説明文を入れる — 見積書に製品説明を含めるオプションがあるため、顧客向けの説明を記載
ここが結構ミソになってくるのですが、製品カタログの設計は見積書の品質に直結します。最初から丁寧に設計しておくと、営業チーム全体の見積もり品質が標準化されます。
ステップ2: 見積書の作成
取引レコードからの見積書作成
- 対象の取引レコードを開く
- 右サイドバーの「見積もり」セクションで「見積もりを作成」をクリック
- 見積もりエディターが開く
見積もりエディターでの設定項目
| 設定項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 見積もり名 | 見積書のタイトル | 顧客名+サービス名が望ましい |
| 有効期限 | 見積もりの有効日数 | 一般的には30日 |
| 明細(ラインアイテム) | 製品カタログから選択 | 数量・割引の調整可能 |
| 購入者情報 | コンタクト・会社から自動取得 | CRMデータと自動連携 |
| 送信者情報 | 営業担当者の情報 | 署名ブロックのカスタマイズ |
| コメント | 備考・特記事項 | 支払い条件などを記載 |
| 承認方法 | 電子署名/署名なし承認/印刷署名 | プランにより選択肢が異なる |
明細の割引設定
見積もりの明細では、個別割引と全体割引の2種類を設定できます。
- 個別割引: 特定のラインアイテムに対してパーセンテージまたは固定金額で割引
- 全体割引: 見積もり全体の小計に対して割引を適用
見積もりテンプレートのカスタマイズ
Professional以上のプランでは、会社のロゴ・配色・フォントを反映したカスタムテンプレートを作成できます。
設定場所: 設定 → オブジェクト → 見積もり → 見積もりテンプレート
テンプレートには以下をカスタマイズ可能です:
- 会社ロゴ
- ヘッダー/フッターの色
- デフォルトの有効期限
- 支払い条件のテンプレート文
- カスタムフィールドの表示/非表示
通常こういうところを結構業者さんに頼むと高かったりすると思いますが、HubSpotであればノーコードで見積もりテンプレートをカスタマイズできるのが良い点です。
ステップ3: 承認プロセスの設定
なぜ見積もり承認が必要か
営業担当者が自由に割引を設定できると、利益率が想定外に低下するリスクがあります。承認プロセスを設定することで、一定の割引率や金額を超える見積もりは上長の承認を必須にできます。
承認ルールの設定方法
設定場所: 設定 → オブジェクト → 見積もり → 承認
シンプルな承認ルール
特定の条件に該当するすべての見積もりに対して承認を要求します。
設定できる条件の例:
- 割引額が一定額を超える見積もり
- 割引率が一定パーセンテージを超える見積もり
- 電子署名が有効になっている見積もり
- 見積もり金額が一定額を超える見積もり
詳細な承認ルール(ワークフローベース)
ワークフローから承認をトリガーする高度なルール設定が可能です。例えば「割引率が20%以上かつ金額が100万円以上の場合は部長承認、それ以外はマネージャー承認」といった複数条件の分岐が設定できます。
承認者の設定
- 特定のユーザーを承認者に指定
- チーム単位で承認者を設定(誰か一人が承認すればOK)
- 段階的承認(マネージャー→部長の2段階)
パイプライン設計と同様に、承認プロセスも自社の営業プロセスに最適な形で設計するのがポイントになってきます。よくあるのが、全件承認にしてしまってボトルネックになるケースです。閾値を決めて、低額・標準割引率の見積もりは自動承認にするのがおすすめです。
ステップ4: 電子署名の設定
電子署名とは
HubSpotの電子署名機能を使うと、見積書を受け取った顧客がオンライン上で署名して承認できます。印刷・署名・スキャン・返送の手間がなくなり、見積もりから契約締結までのリードタイムを大幅に短縮できます。
電子署名は、米国、カナダ、EU、英国、日本を含む多くの国で法的に有効であり、手書きの署名と同じ法的効力を持ちます。
電子署名の有効化
- 設定 → オブジェクト → 見積もりに移動
- 「電子署名」セクションで有効化
- 見積もり作成時に「承認方法」で「電子署名」を選択
月間の電子署名数上限
| プラン | 月間上限 |
|---|---|
| Professional | 月10件 |
| Enterprise | 月30件 |
上限を超える場合は追加購入も可能ですが、すべての見積もりに電子署名が必要なわけではありません。金額が大きい案件や正式契約が必要な案件に絞って使用するのが現実的です。
署名フロー
- 営業担当が見積書を作成し、電子署名を有効にして公開
- 顧客にメールまたはリンクで見積書を送付
- 顧客が見積書を閲覧し、内容を確認
- PO番号、税ID、会社名・住所を入力(2025年アップデートで追加)
- 電子署名を入力して承認
- HubSpot上で署名完了のステータスが自動更新
- 取引のステージ自動移行も設定可能(ワークフロー連携)
実務での運用ベストプラクティス
1. パイプラインとの連携設計
見積もりの作成・承認・署名のタイミングを、パイプラインのステージと連動させましょう。
推奨パイプライン連携例:
| パイプラインステージ | 見積もりアクション |
|---|---|
| 提案中 | 見積書を作成・社内承認を取得 |
| 見積もり提示 | 見積書を顧客に送付 |
| 内示 | 電子署名を依頼 |
| 契約締結 | 署名完了→ステージ自動移行 |
2. 見積書作成のルールを標準化する
営業チームで見積書の品質にバラつきが出ないよう、以下のルールを定めましょう。
- テンプレートを統一 — 全営業が同じテンプレートを使用
- 割引の上限を設定 — 承認不要の割引率上限を明確に(例: 10%まで)
- 有効期限の統一 — 全見積もりで30日に統一
- 必須入力項目の設定 — 支払い条件、納品スケジュールなどを必須化
これは仕組みで解決するという考え方が重要です。営業担当ごとに見積もりのフォーマットが違うという状態を防ぐために、テンプレートと承認ルールでガバナンスを効かせましょう。
3. Stripe連携でオンライン決済も可能
HubSpotのCommerce HubはStripeとの連携に対応しており、見積書からそのままオンライン決済を受け付けることも可能です。SaaS企業やサブスクリプションビジネスでは、見積もり→契約→決済の流れを完全にデジタル化できます。
注意点・制限事項
セキュリティリスクの認識
見積書はURLリンクで共有されるため、リンクが外部に漏洩した場合、第三者が見積もり内容を閲覧できるリスクがあります。機密性の高い見積もりでは、パスワード保護やアクセス制限の設定を検討してください。
承認機能の制約
HubSpotの見積もり承認機能は基本的なワークフローには対応していますが、大企業の複雑な承認フロー(5段階承認、部門横断承認など)には対応しきれない場合があります。正直なところ、承認機能があまり強くない部分はあります。複雑な承認が必要な場合は、外部ツールとの連携も検討してください。
日本の商習慣への対応
日本のビジネスでは押印文化が根強く、電子署名だけでは対応できないケースもあります。電子契約サービス(クラウドサインなど)との併用を検討するのも一つの方法です。
まとめ
HubSpotのCPQツールを活用すれば、見積書の作成から承認、電子署名、契約締結までを一つのプラットフォーム上で完結できます。
まずは製品カタログを整備して見積書テンプレートを作成するところから始めましょう。その上で、承認ルールを設定して見積もりプロセスを標準化し、段階的に電子署名やStripe決済連携を導入していくのがよいかなと思います。
営業プロセスの中で見積もり作成は意外と工数がかかる部分です。ここを仕組み化することで、営業担当者が本来注力すべき顧客とのコミュニケーションに時間を使えるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. HubSpotの見積書は無料プランでも作成できますか?
はい、基本的な見積書の作成と送付は無料プランでも可能です。ただし、テンプレートのカスタマイズ、電子署名、承認プロセスはProfessional以上のプランが必要です。無料プランではデフォルトテンプレート1件のみ利用可能です。
Q2. 電子署名の法的効力は日本でも有効ですか?
はい、HubSpotの電子署名は日本を含む多くの国で法的に有効です。ただし、日本の法律では一部の契約類型(不動産取引など)で書面が要求されるケースがあります。自社の契約内容に合わせて法務部門に確認することをおすすめします。
Q3. 見積もりの承認者が不在の場合はどうなりますか?
見積もりは承認者が対応するまで「承認待ち」のステータスのまま保留されます。承認者が複数設定されている場合は、いずれか一名が承認すれば通過します。長期不在が想定される場合は、代理承認者を事前に設定しておくとよいでしょう。
Q4. 既存のExcel見積書テンプレートをHubSpotに移行できますか?
Excel形式の直接インポートはできませんが、HubSpotの見積もりテンプレートエディターで同等のレイアウトを再現できます。製品情報はCSVで一括インポート可能です。移行時は、まず主要な製品と頻出パターンの見積もりから順に設定していくスモールスタートがおすすめです。
Q5. SalesforceのCPQとHubSpotのCPQ、どちらが高機能ですか?
Salesforce CPQ(Revenue Cloud)の方が機能の網羅性は高く、複雑な価格設定ルール、バンドル構成、契約管理などに対応しています。一方、HubSpotのCPQは設定がシンプルで追加ライセンスなしで使える点がメリットです。企業様によって最適な選択は異なりますが、中小企業や見積もりプロセスがシンプルな企業にはHubSpot、複雑な価格体系を持つ大企業にはSalesforce CPQが向いている傾向です。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。