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総務DXとは、契約管理・社内申請・備品管理・施設管理といった総務部門の幅広い業務をデジタルツールで効率化し、ペーパーレス化と業務の可視化を実現する取り組みです。電子契約サービスやワークフローシステムを導入することで、紙書類への依存を解消し、承認プロセスの迅速化とコスト削減を同時に達成できます。
総務部門は企業の中で最も業務範囲が広い部門です。契約書管理、備品の発注・管理、会議室の予約、社内規程の管理、来客対応、郵便物の管理。これらの業務が紙とExcelで運用されていると、総務担当者は日々の雑務に追われ、本来注力すべき「働きやすい職場環境の整備」に時間を割けなくなります。
ペーパーロジック社の調査によると、日本企業の総務部門が1日に処理する紙の書類は平均40枚以上であり、その印刷・保管・検索にかかるコストは年間で1人あたり約50万円に達するとされています。総務DXは、この紙依存からの脱却を起点として、業務プロセス全体を再設計する取り組みです。
本記事では、総務DXの進め方を「ペーパーレス化」「ワークフローの電子化」「ファシリティ管理のデジタル化」の3軸で解説し、クラウドサインやkintoneなどの実践事例とともに具体的な導入手順を紹介します。
この記事でわかること
総務部門は企業の中で最も業務範囲が広く、紙書類への依存度が高い部門です。本記事では、ペーパーレス化・ワークフロー電子化・ファシリティ管理のデジタル化の3軸で、総務DXの具体的な進め方を解説します。
こんな方におすすめ: 契約管理・備品管理・社内申請など、総務業務の紙依存から脱却したい総務部門責任者の方、電子契約やワークフロー電子化の導入を検討中の方
- 総務DXの3つの柱(ペーパーレス・ワークフロー・ファシリティ管理)の全体像を把握できます
- 電子契約サービス(クラウドサイン・GMOサイン等)の選定基準と導入効果を理解できます
- 社内申請ワークフローの電子化で承認リードタイムを短縮する具体的な方法がわかります
- 備品管理・施設管理をkintone等で効率化する実践事例を紹介します
- 総務DXの段階的な導入ロードマップと投資対効果の考え方を解説します
総務DXの3つの柱
ペーパーレス化:紙依存からの脱却
総務DXの第一歩はペーパーレス化です。具体的には、契約書の電子化、社内文書のクラウド管理、紙の申請書の電子フォーム化の3領域が対象になります。
2022年の電子帳簿保存法改正により、電子取引データの電子保存が義務化されました。メールやクラウドサービスで受領した請求書や契約書は、紙に印刷して保存することが原則として認められなくなっています。法令対応の観点からも、ペーパーレス化は避けて通れないテーマです。
ワークフローの電子化:承認プロセスの迅速化
稟議書・出張申請・購買申請・休暇申請など、社内のあらゆる申請には承認プロセスが伴います。これらが紙ベースの場合、承認者が不在のときに申請が滞留し、業務の進行が止まってしまいます。
ワークフローシステムを導入すれば、承認者はPCやスマートフォンからいつでも承認でき、申請の進捗状況もリアルタイムで確認できます。承認フローの電子化については別記事で詳しく解説しています。
ファシリティ管理:備品・施設のデジタル管理
備品の在庫管理、社用車の予約管理、会議室の予約管理、オフィスのレイアウト管理など、ファシリティ管理は総務部門の重要な業務領域です。これらをExcelや紙で管理していると、情報の更新が遅れ、「在庫があると思ったらなかった」「会議室がダブルブッキングされた」といったトラブルが発生します。
ペーパーレス化の進め方
電子契約サービスの導入
ペーパーレス化で最も効果が大きいのは契約書の電子化です。クラウドサインやGMOサインなどの電子契約サービスを導入すれば、契約書の作成・送付・締結・保管のすべてがオンラインで完結します。
クラウドサインは、弁護士ドットコム社が運営する国内最大級の電子契約サービスです。導入社数は250万社以上で、日本の法律に準拠した電子署名を提供しています。クラウドサインの公開データでは、契約締結にかかる日数が郵送の場合の平均8.5日から、電子契約の場合は平均1.4日に短縮されています。
GMOサインは、GMOグローバルサイン・ホールディングス社が提供する電子契約サービスで、実印相当の「当事者署名型」と認印相当の「立会人型」の両方に対応しています。セキュリティ要件が厳しい企業や、公的機関との契約が多い企業に適しています。
電子契約サービス比較表
| 比較項目 | クラウドサイン | GMOサイン |
|---|---|---|
| 提供元 | 弁護士ドットコム | GMOグローバルサイン・HD |
| 導入社数 | 250万社以上 | 非公開(大手導入実績多数) |
| 署名方式 | 立会人型(メール認証) | 立会人型+当事者署名型(電子証明書) |
| 受信側のアカウント | 不要(導入ハードルが低い) | 不要(立会人型の場合) |
| CRM連携 | HubSpot・Salesforce対応 | Salesforce対応 |
| 契約締結日数 | 平均1.4日(郵送8.5日から短縮) | 同等の短縮効果 |
| 適した企業 | 取引先の導入ハードルを下げたい企業 | セキュリティ要件が厳しい企業・公的機関との契約が多い企業 |
電子契約サービスの選定基準
電子契約サービスの選定では、以下の3点を確認しましょう。
署名方式:簡易な契約であれば「立会人型」(メール認証による署名)で十分ですが、重要な契約には「当事者署名型」(電子証明書による署名)が必要になる場合があります。自社の契約類型を棚卸しし、必要な署名方式を明確にしてから選定します。
取引先の受容性:電子契約は双方の同意が必要です。取引先が電子契約に対応していない場合は、紙の契約書との並行運用が必要になります。クラウドサインは受信側にアカウント登録が不要なため、取引先の導入ハードルが低い点が強みです。
既存システムとの連携:CRMやSFAと連携できる電子契約サービスであれば、商談の進行に合わせて契約書の作成・送付を自動化できます。クラウドサインはHubSpotやSalesforceとの連携に対応しています。
社内文書のクラウド管理
社内規程、マニュアル、会議議事録などの文書は、Google WorkspaceやMicrosoft 365のクラウドストレージで一元管理します。フォルダ構造とアクセス権限を適切に設計すれば、「あの書類はどこにあるか」という問い合わせが大幅に減ります。
重要なのはフォルダの命名規則と階層設計です。「日付_文書種別_件名」のような統一された命名規則を設け、全社員に周知することがペーパーレス化定着のポイントです。
ワークフロー電子化の進め方
ワークフローシステムの選定
社内申請のワークフローを電子化するツールとして、kintone、ジョブカンワークフロー、rakumoワークフローなどが代表的です。
kintone(サイボウズ)は、ノーコードで業務アプリを構築できるプラットフォームです。稟議・申請のワークフローだけでなく、顧客管理・案件管理・備品管理など、総務部門のあらゆる業務をアプリ化できる汎用性が強みです。サイボウズの公開情報では、kintoneの導入社数は30,000社以上とされています。
ジョブカンワークフローは、勤怠管理や給与計算と同じジョブカンシリーズのため、人事労務系のSaaSをジョブカンで統一している企業にとって連携がスムーズです。
ワークフロー電子化の実践ステップ
ワークフロー電子化は以下の手順で進めます。
ステップ1:現行の申請書を棚卸しする
社内で使われている申請書(稟議書、出張申請、購買申請、休暇申請など)をすべてリストアップします。各申請書の年間処理件数、平均承認日数、承認ルートを整理します。
ステップ2:承認ルートを簡素化する
紙の時代に設計された承認ルートには、「形式的な確認だけ」の承認者が含まれていることが少なくありません。ツール導入の前に、承認ルートそのものを見直し、必要最小限の承認者に絞ることが重要です。
ステップ3:処理件数が多い申請から電子化する
全申請を一度に電子化するのではなく、年間処理件数が最も多い申請から着手します。処理件数が多い申請ほどROIが高く、成功体験を作りやすいためです。
ステップ4:並行運用期間を設けて移行する
電子化した申請について、1ヶ月間は紙と電子の並行運用を行い、問題がないことを確認してから紙の運用を廃止します。
ファシリティ管理のデジタル化
備品管理のクラウド化
備品の在庫管理、貸出管理、発注管理をExcelで行っている企業は多いですが、リアルタイムの在庫状況が把握できず、「在庫切れに気づかなかった」「同じ備品を二重発注した」といった問題が発生しがちです。
kintoneを使えば、備品管理アプリをノーコードで構築でき、在庫数の自動カウント、発注点の設定、発注依頼の自動通知などを実装できます。サイボウズの公開事例では、GMOインターネットグループがkintoneで社内の備品管理を効率化し、備品関連の問い合わせを年間で約40%削減したと報告されています。
会議室・社用車の予約管理
Google カレンダーやMicrosoft Outlookのリソース管理機能を活用すれば、会議室の予約管理をカレンダーベースで一元化できます。会議室ごとにリソースを設定し、予約時にカレンダーに招待する運用にすることで、ダブルブッキングを防止できます。
社用車の予約管理についても、同様のカレンダーベースの管理が有効です。より高度な管理が必要な場合は、kintoneでカスタムアプリを構築し、予約・走行距離・給油記録を一元管理する方法もあります。
総務DXの導入ロードマップ
フェーズ1(1〜3ヶ月目):電子契約の導入
まずクラウドサインやGMOサインを導入し、新規の契約書から電子化を開始します。既存の紙の契約書については、優先度の高いものからスキャンしてクラウドに保管します。取引先への案内文を用意し、電子契約への移行を依頼します。
フェーズ2(4〜6ヶ月目):社内申請のワークフロー電子化
kintoneやジョブカンワークフローを導入し、処理件数の多い申請から順に電子化します。稟議書・出張申請・購買申請の3つを電子化するだけで、承認プロセスに関わる紙の書類の大半が削減されます。
フェーズ3(7〜12ヶ月目):ファシリティ管理のデジタル化
備品管理、会議室予約、社内文書管理のクラウド化に取り組みます。この段階では、フェーズ1・2で蓄積したデジタル化のノウハウと社内の成功体験が活きるため、比較的スムーズに進めることができます。
よくある失敗と回避策
全業務を一度にデジタル化しようとする
総務部門は業務範囲が広いため、すべてを同時にデジタル化しようとすると現場が混乱します。「契約書の電子化だけ」「稟議のワークフロー化だけ」と、対象を絞って1つずつ着実に進めることが重要です。申請業務のペーパーレス化から着手するのも有効なアプローチです。
取引先への事前説明を省略する
電子契約の導入時に取引先への説明を省略すると、「電子契約は受け付けていません」と拒否され、紙と電子の並行運用が長期化します。導入前に主要取引先にヒアリングし、電子契約に対応可能な取引先から順に移行するのが現実的です。
ツール導入を目的にしてしまう
kintoneを導入したが、アプリを作っただけで誰も使っていない。このような失敗は、ツールの導入そのものが目的化してしまった場合に起こります。「何の業務課題を解決するのか」を明確にし、その課題解決に必要な最小限の機能から導入を始めることが大切です。業務効率化の全体戦略と優先順位の決め方を先に整理してから着手しましょう。
まとめ
総務DXは「ペーパーレス化」「ワークフローの電子化」「ファシリティ管理のデジタル化」の3本柱で構成されます。電子契約サービスの導入から始め、社内申請のワークフロー電子化、備品・施設管理のクラウド化へと段階的に進めるのが効果的です。クラウドサインで契約管理を効率化し、kintoneで社内のあらゆる申請・管理業務をアプリ化する。このアプローチにより、紙とExcelに依存していた総務業務を根本から変革し、総務担当者が本来注力すべき「働きやすい職場環境の整備」に時間を割ける体制を構築できます。DX推進の全体像についてはDXとは?定義・目的・IT化との違いを、中小企業のDX成功事例は中小企業のDX成功事例8選もあわせてご覧ください。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。