「商談に関わる意思決定者が複数いて、誰がどの段階にいるのか把握しきれない」
「ABMを実践しているが、アカウント内のステークホルダー管理が属人化してしまっている」
——BtoB営業では、購買意思決定に複数の関係者が関与することが一般的です。特に大型案件では、意思決定者・影響者・利用者・予算承認者など、さまざまな役割の担当者を把握し、適切にアプローチする必要があります。
HubSpotの購入グループ(Buying Groups)は、1つの取引に関わる複数のステークホルダーをグループとして管理し、ABM(アカウントベースドマーケティング)戦略を体系的に実行するための機能です。
本記事では、購入グループの基本概念から設定方法、ABM戦略における活用法まで解説します。
この記事でわかること:
- HubSpotの購入グループ(Buying Groups)とは何か
- 購入グループの設定方法と役割定義
- ABM戦略での具体的な活用シナリオ
- 購入グループを活用したパイプライン設計のポイント
購入グループ(Buying Groups)とは?
購入グループとは、BtoBの購買プロセスにおいて意思決定に関与する複数のステークホルダーを、役割ごとにグループ化して管理する仕組みです。HubSpotではSales HubのABM機能の一部として、購入グループの管理が可能になっています。
従来のCRM管理では、「会社」に紐づく「コンタクト」を個別に管理していました。しかし、BtoBの大型案件では、同一企業内の複数部門・複数役職者が購買プロセスに関与します。購入グループを活用することで、この複雑なステークホルダー構造を可視化し、アプローチの抜け漏れを防ぐことができます。
主要な特徴・メリット
メリット1: ステークホルダーの可視化
1つの取引に関わる意思決定者、影響者、チャンピオン(社内推進者)、エンドユーザーなどを役割付きで一覧管理できます。「この案件で、まだアプローチできていない役割は誰か」が一目でわかるようになります。
これが結構ミソになってくるポイントで、営業担当者が個人の頭の中だけで管理していた「誰に、何を、いつアプローチしたか」をCRM上で共有できるようになります。担当者が異動や退職しても、ステークホルダー情報が引き継がれる仕組みです。
メリット2: ABM戦略の体系化
ABMでは、ターゲットアカウントに対して組織的にアプローチすることが重要です。購入グループを設定することで、アカウントごとに「どの役割のステークホルダーにアプローチ済みか」「どの役割が未カバーか」を可視化でき、チーム全体で戦略的なアプローチが可能になります。
メリット3: パイプライン精度の向上
購入グループの充足度(必要な役割のステークホルダーがどれだけ特定されているか)をパイプライン管理と連動させることで、受注確度の精度が上がります。
例えば、チャンピオンは特定できているが予算承認者にまだアプローチできていない案件は、ステージが進んでいても受注確度を保守的に見積もるべきです。加重金額によるフォーキャストの精度向上に直結します。
設定方法・使い方
ステップ1: 購入グループの役割を定義する
まず、自社のBtoB営業プロセスにおいて、購買意思決定に関与する典型的な役割を定義します。
一般的なBtoB購買プロセスの役割例:
- 意思決定者(Decision Maker): 最終的な購買決裁権を持つ人物(CxO、部門長等)
- チャンピオン(Champion): 社内で導入を推進してくれるキーパーソン
- 影響者(Influencer): 意思決定に影響力を持つ人物(技術評価者等)
- エンドユーザー(End User): 導入後に実際に利用する担当者
- 予算承認者(Budget Holder): 予算の承認権限を持つ人物
- ゲートキーパー(Gatekeeper): アクセスを管理する人物(秘書等)
企業様によって最適な役割定義は異なります。自社の過去の受注案件を振り返り、「受注に至った案件では、どの役割のステークホルダーと接点があったか」を分析するのがおすすめです。
ステップ2: HubSpotでの設定
HubSpotのABM機能で購入グループを設定する手順:
1. HubSpotの設定画面から「ABM」セクションにアクセスします
2. 「購入の役割」プロパティを活用して、各コンタクトに役割を割り当てます
3. 取引に関連付けられたコンタクトに対して、購入グループ内の役割を設定します
4. ダッシュボードで購入グループの充足度を可視化します
ステップ3: 取引との紐づけ
取引を作成する際に、関連するコンタクトを紐づけ、それぞれに購入グループ内の役割を割り当てます。
HubSpotのリレーションデータベースの仕組みにより、コンタクト・会社・取引の紐づけは自動的に行われますが、購入グループの役割については営業担当者が手動で設定する必要があります。ここを必須入力プロパティとして設計するか、ワークフローで入力を促す仕組みにするかは、企業のオペレーションに合わせて検討してください。
活用事例・ベストプラクティス
事例1: 大型案件のステークホルダーマッピング
年間契約額1,000万円以上の大型案件では、購入グループの活用が特に効果的です。営業マネージャーが各案件のステークホルダー充足度をレビューし、「この案件は意思決定者にまだ会えていない」「チャンピオンが特定できていない」といった課題を早期に発見できます。
事例2: シーケンスとの組み合わせ
購入グループの役割ごとに、異なるシーケンス(営業メールの自動フォロー)を設定するアプローチも有効です。
- 意思決定者向け: ROI・経営インパクトを訴求するメール
- 技術評価者向け: 機能詳細・技術仕様のメール
- エンドユーザー向け: 操作性・導入事例のメール
ただし、大型案件(数百万〜数千万円規模)では、シーケンスだけに頼るのではなく、しっかりリサーチして自分で文章を書くことも重要です。AIやテンプレートで回してよいのは初期アプローチまでで、確度が高まった段階では人間の判断が不可欠です。
事例3: レポートでの購入グループ分析
ダッシュボードで以下のレポートを作成すると、ABM戦略の改善に役立ちます。
- 購入グループの充足度別の受注率比較
- 役割ごとの平均アプローチ回数
- チャンピオン特定の有無による受注率の差
注意点・よくある間違い
注意点1: 役割の定義が曖昧
「影響者」と「意思決定者」の境界が曖昧だと、営業チーム内で認識がズレます。各役割の定義を明文化し、全員が同じ基準で役割を割り当てられるようにしましょう。
注意点2: すべての案件に適用しようとする
購入グループの管理は、一定の規模以上の案件に適用するのが現実的です。小型案件(数十万円)にまで購入グループを設定すると、入力の手間が増えて営業チームの負担になります。案件規模の閾値を決めて運用しましょう。
注意点3: 購入グループの情報を最新に保つ
組織変更や人事異動で、購入グループ内の役割が変わることがあります。定期的な見直しの仕組み(四半期ごとのレビュー等)を設けるのがおすすめです。
まとめ
HubSpotの購入グループ(Buying Groups)は、BtoB営業の受注率を高めるための強力な機能です。
まずは自社の購買プロセスにおける典型的な役割を3〜5つ定義し、大型案件から適用を始めてみてください。購入グループの充足度と受注率の相関が見えてくると、「どの役割へのアプローチが足りていないか」が明確になり、営業戦略の精度が格段に上がります。
ABMの基盤として購入グループを活用し、段階的にレポート・シーケンスとの連携を拡張していきましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. 購入グループ機能はどのプランで利用できますか?
購入グループの基本的な役割管理はSales Hub Professional以上で利用可能です。ABM機能を含む高度な設定にはSales Hub Enterpriseが推奨されます。
Q. 購入グループの役割は何個まで設定できますか?
HubSpotの標準プロパティでは一般的な購入の役割が用意されていますが、カスタムプロパティを作成して自社独自の役割を追加することも可能です。実務的には3〜6つ程度の役割に絞るのがおすすめです。
Q. Salesforceの購入グループ機能と比較してどうですか?
Salesforceでも購入グループの管理は可能ですが、設定にはより多くのカスタマイズが必要です。HubSpotはABM機能として購入グループの管理がより直感的に行えるよう設計されています。
Q. 購入グループの情報をレポートに反映できますか?
はい、可能です。購入グループの役割や充足度をレポートの条件として使用でき、ダッシュボードで可視化できます。例えば「意思決定者が特定されている案件の受注率」と「特定されていない案件の受注率」を比較するレポートが作成できます。