「グループ会社ごとにHubSpotアカウントがバラバラで、全社のデータを横断的に見られない」
「1つのHubSpotアカウントで複数ブランドを運用しているが、データが混在して管理しきれない」
——複数事業・複数ブランドを展開する企業にとって、CRMのマルチアカウント管理は避けて通れない課題です。
HubSpotのビジネスユニット機能は、1つのHubSpotアカウント内で複数の事業・ブランドのデータとマーケティング活動を分離管理できる仕組みです。Enterprise以上のプランで利用可能なこの機能を使えば、複数アカウントを別々に運用するコストと手間を削減しながら、全社横断のデータ活用が可能になります。
この記事では、ビジネスユニットの概念から、設計パターン、実装方法、運用の注意点までを解説します。
この記事でわかること
- ビジネスユニット機能の概念と利用シーン
- マルチアカウント vs シングルアカウント+ビジネスユニットの判断基準
- ビジネスユニットの設計と実装手順
- ブランド別のマーケティング運用方法
- グループ会社問題への対処法
ビジネスユニットとは
基本概念
ビジネスユニットは、1つのHubSpotアカウント内に仮想的な「仕切り」を作る機能です。各ビジネスユニットに対して、以下を個別に設定できます。
- ブランドロゴ・カラー
- メール送信ドメイン
- 購読設定(メルマガのオプトイン/オプトアウト)
- マーケティングコンタクトの管理
- ダッシュボード・レポート
一方で、コンタクト・会社・取引といったCRMデータは全ビジネスユニット共通で管理されます。つまり、同一顧客が複数のブランドとやり取りしている場合、その情報を統合的に把握できるわけです。
利用条件
- Enterprise以上のプランが必要
- 追加のビジネスユニットはアドオンとして購入(1ユニットあたり月額一定額)
- 最大のビジネスユニット数はアカウントの契約内容による
マルチアカウント vs ビジネスユニットの判断
ビジネスユニットが適するケース
| シーン |
理由 |
| 同一企業の複数ブランド |
CRMデータを共有しつつ、ブランド別のマーケティングを実施 |
| 複数の製品ライン |
製品別のメール配信・購読管理を分離 |
| 国内+海外事業 |
言語別のコンテンツ配信・ドメイン分離 |
| 複数の事業部門 |
部門別のマーケティング活動を独立管理 |
別アカウントにすべきケース
| シーン |
理由 |
| 完全に独立したグループ会社 |
CRMデータを共有する必要がない |
| 異なる業種の子会社 |
営業プロセスが根本的に異なる |
| データの完全分離が法的に必要 |
個人情報保護の観点でデータ分離が必須 |
| アカウント管理者が別組織 |
権限とガバナンスが独立 |
ここが結構ミソになるのですが、ビジネスユニットはCRMデータが共通である点です。特定のブランドのデータを他のブランドの担当者に見せたくない場合は、権限設計で対応するか、別アカウントを検討する必要があります。
ビジネスユニットの設計
設計ステップ
ステップ1: ユニットの定義
どの単位でビジネスユニットを分けるかを決めます。
例: IT企業のケース
├── ユニットA: SaaS製品A(月額課金モデル)
├── ユニットB: SaaS製品B(年額課金モデル)
└── ユニットC: コンサルティングサービス
ステップ2: 共通要素と個別要素の整理
| 要素 |
共通/個別 |
理由 |
| コンタクト・会社データ |
共通 |
同一顧客が複数製品を利用する可能性 |
| パイプライン |
個別 |
製品ごとに営業プロセスが異なる |
| メール配信ドメイン |
個別 |
ブランド別にFrom表示を変える |
| 購読設定 |
個別 |
製品Aのメルマガ解除が製品Bに影響しない |
| レポート |
個別+横断 |
ユニット別KPI + 全社横断KPI |
ステップ3: 権限設計との連携
ビジネスユニットと権限設計を組み合わせて、「ユニットAの営業はユニットAの取引のみ閲覧・編集可能」といった制御を行います。
ブランド別のメール配信設計
ビジネスユニットごとに、独立したメール配信環境を構築できます。
- 送信元ドメイン:
info@product-a.co.jp / info@product-b.co.jp
- メールテンプレート: ブランドカラー・ロゴを個別設定
- 購読管理: ユニットAの配信解除がユニットBに影響しない
- マーケティングコンタクト: ユニット別に課金管理
グループ会社問題への対処
メールドメインの自動関連付けの落とし穴
HubSpotはメールドメインに基づいて、コンタクトを会社に自動関連付けします。しかし、グループ会社の場合、全社員が同じメールドメインを使っているケースがあります。
例: yamada@groupcompany.co.jp(事業会社A所属)と suzuki@groupcompany.co.jp(事業会社B所属)が同じ会社レコードに紐づいてしまう。
対処法:
- ドメインの自動関連付けを特定ドメインで無効化
- カスタムプロパティ「所属事業会社」を追加し、手動または申請フォーム経由で設定
- ワークフローで事業会社名に基づく会社レコードへの振り分けを自動化
全社横断レポートの設計
ビジネスユニット別のKPIに加えて、全社横断のレポートも設計しましょう。
- 全ユニット合計のパイプライン金額
- ユニット間のクロスセル機会(同一顧客が複数ユニットの取引を持つ)
- 全社のリード獲得トレンド
運用の注意点
コンタクトの所属ユニット管理
1人のコンタクトが複数のビジネスユニットに関連する場合(例: 製品Aと製品Bの両方を検討中)、そのコンタクトにどのユニットのメールを配信するかの管理が必要です。購読設定をユニット別に管理し、コンタクトの意思に基づいて配信を制御しましょう。
ユニット間のデータ整合性
パイプラインをユニット別に作成した場合、ユニット間で取引が移動するケース(例: コンサルティングの商談からSaaS製品の商談に発展)の運用ルールを事前に決めておく必要があります。
段階的な導入
いきなり全事業をビジネスユニットに分ける必要はありません。まずは最も独立性の高い2つのブランドから始めて、運用が安定してから残りを追加する段階的なアプローチが安全です。
まとめ
HubSpotのビジネスユニット機能は、1つのCRM基盤の上で複数ブランド・事業のマーケティングを独立運用しつつ、データの横断活用を実現する仕組みです。
まずはビジネスユニットの定義(どの単位で分けるか)と、共通要素・個別要素の整理から始めましょう。CRMデータが共通であるメリットを活かし、ユニット間のクロスセル機会の発見や全社横断レポートの構築が可能になります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. ビジネスユニットの追加費用はどれくらいですか?
ビジネスユニットはEnterpriseプランの標準機能として1ユニットが含まれ、追加ユニットはアドオンとして月額費用が発生します。正確な費用はHubSpotの公式サイトまたは営業担当に確認してください。
Q2. 既存のアカウントにビジネスユニットを後から追加できますか?
はい、Enterpriseプランであれば既存のアカウントにビジネスユニットを追加できます。ただし、既存のコンタクト・取引データのユニット振り分けや、メール購読設定の再設計が必要になるため、事前の計画が重要です。
Q3. ビジネスユニット間でワークフローは共有されますか?
ワークフローは全ユニット共通で作成・管理されます。特定のユニットに関連するワークフローは、トリガー条件でユニット情報(カスタムプロパティやブランド情報)を使ってフィルタリングします。
Q4. Salesforceのマルチテナントとの違いは何ですか?
Salesforceのマルチテナント(マルチオーガニゼーション)は完全にデータが分離される構造ですが、HubSpotのビジネスユニットはCRMデータが共通で、マーケティング活動を分離する構造です。データの完全分離が必要な場合はHubSpotの別アカウントを検討してください。
この記事は2025年3月時点の情報に基づいています。HubSpotの機能は定期的にアップデートされるため、最新情報はHubSpot公式サイトでご確認ください。
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