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人事労務DXの進め方|入退社・勤怠・給与をクラウド化して工数を削減する方法

作成者: |2026/03/11 7:37:32

人事労務DXとは、入退社手続き・勤怠管理・給与計算・社会保険手続きといった人事労務業務をクラウドサービスで電子化・自動化し、担当者の工数を大幅に削減する取り組みです。SmartHRやジョブカンなどの人事労務SaaSを活用することで、紙書類や手計算に依存していた業務をデジタル化し、ミスの削減と業務スピードの向上を同時に実現できます。

「入退社のたびに社会保険の書類を手書きで作成している」「勤怠データをExcelで集計して給与計算ソフトに手入力している」「年末調整の時期は残業が続く」。中小企業の人事労務担当者の多くが、こうした非効率な業務に追われています。

厚生労働省が推進する社会保険手続きの電子申請義務化や、2019年の労働基準法改正による有給休暇の取得義務化など、法令対応の負担も年々増加しています。従来の紙ベース・Excel管理では、法令対応の正確性を担保しながら業務効率を維持することが限界に達しつつあります。

本記事では、人事労務DXの進め方を「入退社手続き」「勤怠管理」「給与計算」の3領域に分けて解説し、SmartHRやジョブカンなど主要SaaSの活用方法と段階的な導入手順を紹介します。

この記事でわかること

入退社手続き・勤怠管理・給与計算を紙やExcelで運用し続けていると、法令対応の正確性を担保しながら業務効率を維持することが限界に達します。本記事では、SmartHRやジョブカンなどの人事労務SaaSを活用し、段階的にDXを進める方法を解説します。

こんな方におすすめ: 入退社のたびに紙の書類作成に追われている人事労務担当の方、勤怠管理や給与計算のExcel運用に限界を感じている中小企業の管理部門の方

  • 人事労務業務の3大領域(入退社・勤怠・給与)におけるデジタル化のポイントを整理します
  • SmartHR・ジョブカン・freee人事労務など主要SaaSの強みと選定基準を比較します
  • 勤怠管理のクラウド化から始める段階的な導入ロードマップを提示します
  • 社会保険手続きの電子申請に対応するための具体的なステップを解説します
  • 人事労務DXで陥りやすい失敗パターンと、その回避策を紹介します

人事労務DXの対象領域と現状の課題

入退社手続き:紙書類と手書きが残る最後の砦

入退社手続きは、人事労務業務の中でもデジタル化が最も遅れている領域です。社会保険・雇用保険の資格取得届、扶養控除申告書、マイナンバーの収集など、1人の入社に伴う書類は10種類以上に及ぶこともあります。

これらの書類を紙で管理していると、記入漏れ・記入ミスが頻発し、年金事務所やハローワークへの届出が差し戻されることも珍しくありません。SmartHRの公開データによると、入社手続きにかかる人事担当者の作業時間は、紙ベースの場合1人あたり平均3時間ですが、クラウド化することで約1時間に短縮できるとされています。

勤怠管理:Excelと紙の限界

勤怠管理をタイムカードやExcelで行っている企業では、月末の集計作業に膨大な時間がかかります。特にフレックスタイムや変形労働時間制を導入している企業では、残業時間の計算が複雑になり、手計算によるミスが発生しやすくなります。

2019年の労働基準法改正により、年次有給休暇の年5日取得が義務化されました。取得状況をExcelで管理している場合、対象者の抽出と取得促進の通知が手作業となり、管理漏れのリスクが高まります。

給与計算:正確性とスピードの両立が困難

給与計算は、勤怠データ・各種手当・社会保険料・所得税の控除など、多くの要素を正確に計算する必要があります。手計算やExcelベースの給与計算では、税率変更や社会保険料率の改定への対応が遅れるリスクがあります。

freee人事労務の公開事例によると、給与計算のクラウド化により、計算ミスの発生率が約90%削減されたと報告されています。クラウドサービスでは税率や保険料率が自動更新されるため、法改正への対応漏れを防ぐことができます。

主要SaaSの比較と選定基準

SmartHR:入退社手続きと年末調整に強み

SmartHRは「人事労務の手続き」に特化したSaaSです。最大の特徴は、入退社時の社会保険・雇用保険手続きをオンラインで完結できる点にあります。従業員がスマートフォンやPCから必要情報を入力すると、SmartHRが届出書類を自動生成し、電子申請まで行えます。

SmartHRの公開情報によると、導入企業の年末調整にかかる作業時間は平均86%削減されたとされています。従業員が自身のスマートフォンからアンケート形式で必要情報を入力するため、人事担当者が紙の申告書を配布・回収・確認する手間が大幅に省かれます。

また、従業員情報の一元管理機能も強みです。入社時に登録された情報が在籍中の手続き(住所変更・扶養異動など)にも引き継がれるため、同じ情報を何度も入力する必要がありません。

ジョブカン:勤怠管理から給与計算までの一気通貫

ジョブカンは勤怠管理を起点としたバックオフィスSaaSシリーズで、勤怠管理・給与計算・労務HR・ワークフロー・経費精算の5サービスを展開しています。シリーズ内のデータ連携がスムーズで、勤怠データから給与計算まで一気通貫で処理できる点が最大の強みです。

ジョブカン勤怠管理は、ICカード・指紋認証・GPS打刻・Slack打刻など多様な打刻方法に対応しており、オフィス勤務・リモートワーク・現場作業など、さまざまな勤務形態に柔軟に対応できます。ジョブカンの公開情報では、導入企業数は20万社以上とされており、中小企業からの支持が厚いサービスです。

freee人事労務:経理との連携に優れる

freee人事労務は、freeeの会計・経費精算サービスとのシームレスな連携が最大の特徴です。給与計算のデータがそのままfreee会計の仕訳として連携されるため、経理部門との間でデータの二重入力が発生しません。

特に、すでにfreee会計を導入している企業にとっては、freee人事労務を追加することで「経理×人事労務」のデータ統合が容易に実現できます。freeeの公開事例では、経理と人事労務の両方をfreeeで統一した企業は、月次の給与関連仕訳の作業時間をほぼゼロにできたと報告されています。

人事労務SaaS比較表

比較項目 SmartHR ジョブカン freee人事労務
最大の強み 入退社手続き・年末調整の電子化 勤怠管理→給与計算の一気通貫 freee会計とのシームレスな連携
勤怠管理 外部サービス連携が必要 ICカード・GPS・Slack等の多様な打刻 基本的な勤怠管理機能を内蔵
給与計算 外部サービス連携が必要 ジョブカン給与計算と自動連携 freee内で完結・会計仕訳も自動化
社会保険手続き e-Gov電子申請に対応・自動書類生成 ジョブカン労務HRで対応 基本的な手続きに対応
年末調整 アンケート形式で従業員が自己入力(工数86%削減) ジョブカン労務HRで対応 freee内で完結
適した企業 入退社が頻繁な成長企業 複雑な勤務形態の企業 freee会計を導入済みの企業

選定の判断基準

人事労務SaaSの選定では、以下の3つの観点から比較することが重要です。

業務の起点をどこに置くか:入退社手続きの効率化が最優先ならSmartHR、勤怠管理が最優先ならジョブカン、経理部門との連携が最優先ならfreee人事労務が適しています。

シリーズ内連携 vs. ベスト・オブ・ブリード:一つのシリーズで統一するか、各領域で最適なサービスを組み合わせるかは、企業の規模と業務の複雑さによって判断します。従業員50名以下の企業であれば、シリーズ統一の方が運用コストが低くなる傾向があります。

既存の会計ソフトとの連携:freee会計を使っているならfreee人事労務、マネーフォワードクラウド会計を使っているならマネーフォワードクラウド給与との連携がスムーズです。SaaS間の連携設計については「バックオフィスSaaS連携の統合設計」で詳しく解説しています。

段階的な導入ロードマップ

フェーズ1:勤怠管理のクラウド化(1〜2ヶ月目)

人事労務DXの第一歩は勤怠管理のクラウド化です。勤怠データは給与計算の基礎となるため、ここを正確にデジタル化することで、後続の給与計算・残業管理が連鎖的に効率化されます。

ジョブカン勤怠管理やKING OF TIMEなどのクラウド勤怠管理を導入し、打刻方法を紙のタイムカードからICカードやスマートフォン打刻に切り替えます。同時に、就業規則に基づく残業計算ルール・有給休暇の付与ルールをシステムに設定します。

初月は紙のタイムカードとクラウド勤怠管理を並行運用し、データの整合性を確認したうえで、翌月からクラウドに完全移行するのが安全な進め方です。

フェーズ2:給与計算のクラウド化(3〜4ヶ月目)

勤怠データが正確にクラウド上に蓄積されたら、給与計算のクラウド化に進みます。ジョブカン給与計算、freee人事労務、マネーフォワードクラウド給与のいずれかを導入し、勤怠データとの自動連携を設定します。

給与計算のクラウド化で最も注意すべきは、初月の並行稼働です。従来の給与計算方法とクラウドの計算結果を突合し、差異がないことを確認してから切り替えます。社会保険料や所得税の計算ロジックが正しく設定されているかを1円単位で検証することが重要です。

フェーズ3:入退社手続きの電子化(5〜6ヶ月目)

勤怠と給与が安定運用できたら、SmartHRやジョブカン労務HRを導入して入退社手続きの電子化に取り組みます。まず新規入社者の手続きから電子化を開始し、既存従業員の情報は段階的にクラウドに移行します。

マイナンバーの収集もSmartHRの機能を使ってオンラインで完結させられます。従業員が自分のスマートフォンからマイナンバーカードを撮影して登録できるため、紙でのマイナンバー収集に伴うセキュリティリスクも軽減されます。

フェーズ4:年末調整と社会保険手続きの電子申請(7〜12ヶ月目)

最終フェーズでは、年末調整の電子化と社会保険手続きの電子申請に対応します。SmartHRの年末調整機能を使えば、従業員への申告書配布・回収・確認がすべてオンラインで完結し、還付金の計算も自動で行われます。

社会保険手続きの電子申請(e-Gov)にも対応することで、年金事務所やハローワークへの書類提出が不要になります。SmartHRやジョブカン労務HRはe-Govとの連携に対応しており、システムから直接電子申請を行えます。

人事労務DXの成功事例

SmartHR導入で入社手続きを75%効率化

SmartHRの公開事例では、株式会社ユーザベースがSmartHRの導入により入退社手続きの工数を約75%削減したと報告されています。特に、従業員数の増加に伴い急増していた入社手続きをオンラインで完結させたことで、人事担当者が戦略的な採用業務に時間を割けるようになりました。

ジョブカン導入で勤怠集計の作業時間を90%削減

ジョブカンの公開事例では、複数の勤務形態を持つ企業がジョブカン勤怠管理を導入し、月末の勤怠集計にかかっていた3営業日分の作業がほぼ自動化されたと報告されています。有給休暇の取得状況もリアルタイムで可視化されるようになり、法定の年5日取得義務への対応も容易になりました。

よくある失敗と回避策

就業規則の設定を軽視する

クラウド勤怠管理や給与計算ソフトは、就業規則に基づいて残業計算・有給付与・割増賃金を計算します。就業規則の内容を正確にシステムに反映しないと、給与計算が狂います。導入時に社労士と連携して就業規則の設定を行うことを推奨します。

従業員への説明と教育を省略する

人事労務DXは全従業員に影響が及ぶため、導入前の説明と操作研修が重要です。特にスマートフォンの操作に不慣れな従業員がいる場合は、打刻方法の説明会を実施し、困ったときの問い合わせ先を明確にしておくことが定着のポイントです。

導入と同時に全機能を使おうとする

SmartHRもジョブカンも多機能なサービスですが、一度にすべての機能を使い始めると、管理者・従業員双方の負担が大きくなります。まず勤怠管理だけを導入し、運用が安定してから給与計算、入退社手続きの順に機能を追加していくのが現実的な進め方です。中小企業の業務改善をスモールスタートで進める考え方も参考になります。

まとめ

人事労務DXは「勤怠管理 → 給与計算 → 入退社手続き → 年末調整・電子申請」の順に段階的に進めることが成功の鍵です。SmartHRは入退社手続きと年末調整、ジョブカンは勤怠管理から給与計算までの一気通貫、freee人事労務は経理との連携に、それぞれ強みを持っています。自社の優先課題と既存システムとの連携性を軸にSaaSを選定し、必ず並行運用期間を設けてからクラウドに完全移行することで、ミスなく確実に人事労務のデジタル化を実現できます。勤怠申請のペーパーレス化については申請業務のペーパーレス化を、DX推進を現場に定着させるチェンジマネジメントの手法はチェンジマネジメントの実践もあわせてご覧ください。