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営業組織のリモート化とは、従来の訪問型フィールドセールスからオンライン商談・CRMベースの営業管理に移行し、場所に依存しない営業活動を実現する取り組みです。成功の鍵は「CRMによる顧客情報の一元管理」「オンライン商談ツールの標準化」「プロセス型KPIの導入」の3つであり、一部の商談から段階的に移行するアプローチが最も確実です。
「営業は訪問してナンボ」――この価値観は長らく日本の営業組織を支配してきました。しかし、2020年以降のリモートワーク普及を経て、多くの企業がオンライン商談の有効性を実感しています。実際、HubSpot Japanの「日本の営業に関する意識・実態調査2024」によれば、BtoB営業の商談のうちリモートで実施される割合は年々増加し、営業担当者の62%がオンライン商談に対して「効率的だ」と回答しています。
しかし、フィールドセールス中心の組織がリモート営業に移行するには、ツール導入だけでは不十分です。営業プロセスの再設計、KPIの変更、そして何よりマネジメントの意識改革が必要です。
本記事では、フィールドセールスからリモート営業への移行を段階的に進めるための実践ガイドを提供します。
この記事でわかること
- フィールドセールスとリモート営業の構造的な違い
- リモート営業への移行で必要な3つの基盤整備
- 段階的な移行の4ステップ
- リモート営業で成果を出す企業の共通点
フィールドセールスとリモート営業の構造的な違い
移動時間がゼロになる意味
フィールドセールスの最大のコストは「移動時間」です。1日4件の訪問商談をこなす営業担当は、移動だけで3〜4時間を費やしています。年間に換算すると約800時間、つまり100営業日分の時間が移動に消えている計算です。
リモート営業に移行すれば、この時間がすべて「顧客とのコミュニケーション」や「提案資料の作成」に充てられます。単純に商談件数だけで見ても、1日4件から1日6〜8件への増加が見込めます。
商談の質の変化
リモート営業では、対面のような「空気を読む」コミュニケーションが難しくなります。一方で、画面共有による資料ベースのプレゼンテーションが主体になるため、提案の論理性と資料の品質が商談の成否を左右します。
つまり、リモート営業は「関係性に依存する営業」から「提案力で勝負する営業」への転換を促します。これは中小企業にとってプラスの変化です。属人的な人間関係ではなく、再現可能な提案プロセスで勝負できるからです。
データの可視化が容易になる
フィールドセールスでは、商談の内容が営業担当の頭の中にしか存在しないケースが多い。上司が同行しない限り、商談の質や進捗を把握する術がありません。
リモート営業では、商談の録画が可能です。HubSpotのミーティングリンク機能やZoomのクラウド録画を使えば、すべての商談が記録として残ります。これにより、マネージャーが商談内容をレビューし、フィードバックを行う「商談コーチング」が実現します。
リモート営業への移行に必要な3つの基盤整備
基盤1: CRMによる顧客情報の一元管理
リモート営業の大前提は、顧客情報がCRMに一元管理されていることです。訪問営業では「担当者の手帳や名刺ファイルに顧客情報がある」状態でも何とかなりますが、リモートではそれが通用しません。
チーム全員がどこからでもアクセスでき、最新の顧客情報・商談履歴・コミュニケーション記録を確認できる環境が必要です。HubSpotのCRMであれば、メールの送受信履歴、ミーティングの記録、案件のステージ管理がすべて一つのプラットフォームに集約されます。
CRMの導入方法は「CRM導入完全ガイド」で詳しく解説しています。
基盤2: オンライン商談ツールの標準化
ZoomやGoogle Meetなどのビデオ会議ツールに加え、商談の予約・管理を効率化するツールの導入が重要です。
HubSpotのミーティングリンク機能を使えば、見込み客が営業担当のカレンダーを確認し、空いている時間帯に直接商談を予約できます。これにより、「日程調整のメールを3往復する」という非効率が解消されます。
また、提案資料の共有にはHubSpotのドキュメントトラッキング機能が有効です。送付した資料を見込み客がいつ・何ページ閲覧したかが追跡できるため、フォローアップの最適なタイミングを把握できます。
基盤3: プロセス型KPIの導入
フィールドセールスでは「訪問件数」が主要なKPIであることが多いですが、リモート営業では「訪問」という概念がなくなります。代わりに、以下のようなプロセス型KPIを導入します。
| KPI | 定義 | 目的 |
|---|---|---|
| 商談創出数 | 新規に設定されたオンライン商談の件数 | パイプラインの入口を計測 |
| 商談→見積提出率 | 商談から見積提出に至った割合 | 提案の質を計測 |
| 平均商談時間 | 1商談あたりの平均時間 | 効率性を計測 |
| メール返信率 | フォローメールへの返信率 | エンゲージメントを計測 |
| パイプライン金額 | 進行中の案件の合計金額 | 売上見込みを計測 |
HubSpotのセールスダッシュボードでは、これらのKPIをリアルタイムに可視化できます。
段階的な移行の4ステップ
ステップ1: 既存顧客のフォロー商談からオンライン化(1ヶ月目)
いきなり新規商談をリモートに切り替えるのはリスクが高いです。まずは既存顧客との定期フォロー商談をオンラインに移行します。
既存顧客は関係性がすでに構築されているため、「次回のお打ち合わせはオンラインでいかがですか?」という提案に対する抵抗感が低い。ここでオンライン商談のオペレーションを確立し、営業チームが慣れてから新規商談に展開します。
ステップ2: インバウンドリードの初回商談をオンライン化(2〜3ヶ月目)
Webサイトからの問い合わせやセミナー参加者など、インバウンドリードの初回商談をオンライン化します。インバウンドリードはもともとデジタルチャネル経由で接触しているため、オンライン商談に対する抵抗感が比較的低い特徴があります。
HubSpotのフォーム送信後に自動でミーティングリンクを表示する設定にすれば、リードが自ら商談を予約し、営業担当は日程調整の手間なく商談を開始できます。
ステップ3: 新規アウトバウンド商談のオンライン化(4〜5ヶ月目)
アウトバウンド営業(テレアポ・紹介営業)で獲得した商談もオンラインに移行します。この段階が最もハードルが高いですが、ステップ1・2で蓄積したオンライン商談のノウハウとデータがあれば、対応可能です。
アウトバウンドの初回アプローチは電話、商談はオンラインという「ハイブリッド型」が効果的です。電話で信頼関係の入口を作り、オンライン商談で提案を行う。この組み合わせが中小企業には最も合理的です。
ステップ4: 営業プロセス全体のデジタル化と最適化(6ヶ月目以降)
ステップ1〜3で営業活動のデータがCRMに蓄積されたら、データに基づく営業プロセスの最適化に取り組みます。
- 成約率が高い商談パターンの分析
- リードソース別のROI計測
- 営業担当ごとのパフォーマンス比較と改善施策
- HubSpotのBreezeを活用した営業メールの自動生成
この段階で「データドリブン営業」が実現し、属人的な営業スタイルから脱却できます。データドリブン経営の詳細は「データドリブン経営ガイド」をご覧ください。
リモート営業で成果を出した企業の事例
ベルフェイスの事例
オンライン商談システムを提供するベルフェイスは、自社の営業組織を完全リモート型で運営しています。全商談をオンラインで実施し、商談データをCRMで分析。トップセールスの商談トーク構造を分析し、チーム全体のスキル底上げに活用しています。その結果、営業一人あたりの商談件数が訪問型の約2倍に達しています。
Sansan(サンサン)の事例
Sansanは名刺管理から始まった企業ですが、自社の営業組織をインサイドセールスとフィールドセールスのハイブリッド型に再構築しました。インサイドセールスチームがリモートでリードのナーチャリングを行い、商談化したものをフィールドセールスがクロージングする分業モデルです。この体制により、リード獲得から商談化までのリードタイムを大幅に短縮しています。
SmartHRの事例
SmartHRは、BtoB SaaSの営業組織として「The Model型」の分業体制を採用し、インサイドセールスを中核に据えています。リモート環境でも営業活動のデータが完全に可視化されており、パイプラインの各ステージにおける転換率を定量的に管理。これにより、急速な事業成長を支える営業基盤を構築しました。
リモート営業移行時の注意点
注意点1: 対面を完全になくす必要はない
リモート営業への移行は、「対面を禁止する」ことではありません。高単価案件のクロージングや、重要顧客との関係構築など、対面の方が効果的な場面は残ります。
重要なのは「すべての商談で訪問をデフォルトにしない」ことです。リモートで十分な商談はリモートで行い、対面が必要な場面だけ訪問する。この判断基準を組織として明確にしておきます。
注意点2: マネジメントの変革が最大の課題
リモート営業で最も難しいのは、マネージャーの意識改革です。「部下が目の前にいないと管理できない」「訪問件数でしか評価できない」というマネージャーがいると、リモート営業は機能しません。
CRMのダッシュボードを通じて「活動の質」を可視化し、結果(成約数・金額)と行動(商談件数・提案率)の両面で評価する仕組みを導入することが不可欠です。
注意点3: セキュリティ対策を忘れない
リモート営業では、社外のネットワーク環境で顧客の機密情報を扱います。VPNの導入、デバイス管理、クラウドサービスのアクセス権限設定など、情報セキュリティの基盤整備も移行と並行して進める必要があります。
まとめ
営業組織のリモート化は、単なるツール導入ではなく、営業プロセス・KPI・マネジメント手法の全面的な見直しを伴う変革です。成功のポイントは、既存顧客のフォロー商談から段階的に移行し、CRMにデータを蓄積しながら営業プロセスを最適化していくことです。
まずはHubSpotの無料CRMで顧客データを一元管理し、ミーティングリンク機能でオンライン商談の基盤を整えることから始めてみてください。HubSpot導入ガイドも参考になります。
よくある質問(FAQ)
Q1: リモート営業に切り替えると売上が下がりませんか?
段階的に移行すれば、売上が下がるリスクは最小限に抑えられます。実際には、移動時間の削減による商談件数の増加と、CRMデータを活用した提案の質の向上により、売上が増加するケースが多いです。
Q2: 顧客がオンライン商談を嫌がる場合はどうすればいいですか?
すべての顧客にオンライン商談を強制する必要はありません。まずは「オンラインでも構わない」と回答する顧客から移行し、対面を希望する顧客には引き続き訪問対応します。ただし経験上、提案してみると意外とオンラインを受け入れる顧客が多いです。
Q3: リモート営業に必要なツールの初期費用はどのくらいですか?
HubSpotの無料CRM + Zoomの無料プランであれば、初期費用はゼロで始められます。有料ツールを導入する場合でも、月額数万円程度で必要な環境は整います。移動費(交通費・出張費)の削減額と比較すれば、ROIは非常に高いです。
Q4: 営業担当者のモチベーション管理が難しくなりませんか?
リモート環境では「見えない管理」になるため、結果と行動の両面を定量的に評価する仕組みが重要です。CRMのダッシュボードで活動量と成果を可視化し、週次の1on1ミーティングでフィードバックを行う運用をお勧めします。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。