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Zapier(ザピアー)とMake(メイク、旧Integromat)は、プログラミング不要でSaaS間のデータ連携を自動化できるiPaaS(Integration Platform as a Service)です。「HubSpotに登録された問い合わせをSlackに自動通知する」「フォーム回答をGoogleスプレッドシートに自動転記する」といった業務を、ノーコードで数分で構築できます。Zapierは「手軽さと対応アプリ数」、Makeは「複雑なフローと柔軟性」に強みがあり、用途に応じた使い分けが重要です。
「CRMと会計ソフトの間でデータを手作業でコピーしている」「フォームの回答をメールで確認してCRMに手入力している」「月次レポートのデータ集計に毎回2時間かかる」――こうしたSaaS間の手作業は、ZapierやMakeを使えばノーコードで自動化できます。
iPaaS市場は急速に拡大しており、Zapierは連携可能アプリ7,000以上、Makeは2,000以上と、主要なSaaSのほぼすべてに対応しています。しかし「どちらを選ぶべきか」「どう使い分ければいいか」で迷う企業は少なくありません。
本記事では、ZapierとMakeの機能・料金・操作性を徹底比較し、HubSpotをはじめとするSaaS連携の具体的な活用方法を解説します。
この記事でわかること
- ZapierとMakeの基本的な仕組みと用語の違い
- 機能・料金・対応アプリ数の比較
- HubSpotとの連携で実現できる自動化シナリオ
- 用途別のツール選定ガイド(Zapier向き vs Make向き)
- 導入の具体的なステップと注意点
iPaaSとは何か?基本の仕組み
iPaaS(Integration Platform as a Service)は、異なるクラウドサービス間のデータ連携をノーコードで自動化するプラットフォームです。基本的な仕組みは以下の通りです。
- トリガー(起動条件): 特定のイベントが発生したときに自動化フローが起動する(例:HubSpotに新規コンタクトが登録されたとき)
- アクション(実行内容): トリガーに応じて実行される処理(例:Slackにメッセージを送信する)
- フロー(自動化の全体像): トリガーとアクションを組み合わせた一連の自動化プロセス
Zapierではフローを「Zap」、Makeでは「Scenario」と呼びますが、基本概念は同じです。
Zapier vs Make:機能・料金の徹底比較
基本機能の比較
| 比較項目 | Zapier | Make(旧Integromat) |
|---|---|---|
| フローの呼称 | Zap | Scenario |
| 対応アプリ数 | 7,000以上 | 2,000以上 |
| UI/操作性 | リスト形式(直線的) | ビジュアルフロー(ドラッグ&ドロップ) |
| 分岐処理 | Paths(有料プラン以上) | Router(無料プランから利用可能) |
| ループ処理 | Looping(β版) | Iterator/Aggregator(標準機能) |
| エラーハンドリング | 基本的な通知のみ | 詳細なエラーハンドリング(Break/Resume/Rollback) |
| データ変換 | Formatter(基本的な変換) | 豊富な関数(JSON/CSV/日付/数学関数等) |
| 実行間隔(無料) | 15分 | 15分 |
| 実行間隔(有料) | 1〜2分 | 即時(Webhook対応) |
料金プランの比較(2025年時点)
| プラン | Zapier(月額・年払い) | Make(月額・年払い) |
|---|---|---|
| 無料 | 100タスク/月、5 Zap | 1,000オペレーション/月、2 Scenario |
| スターター | $19.99(750タスク/月) | $10.59(10,000オペレーション/月) |
| プロ | $49(2,000タスク/月) | $18.82(10,000オペレーション/月、追加機能) |
| 上位プラン | $69〜(タスク数増加) | $34.12〜(オペレーション数増加) |
注意: ZapierとMakeでは「タスク」と「オペレーション」のカウント方法が異なります。Zapierの1タスク=1アクションの実行、Makeの1オペレーション=1モジュールの実行です。Makeのほうが単価あたりの実行回数が多い傾向があります。
コスト比較の結論
同じ自動化を実行した場合、Makeのほうが月額コストが低くなるケースが多いです。ただし、Zapierは対応アプリ数が圧倒的に多く、マイナーなSaaSとの連携ではZapier一択になる場合もあります。
Zapierが向いているケース
1. シンプルな1対1の連携
「トリガー→アクション」の直線的な自動化(1対1のSaaS連携)では、Zapierのリスト形式UIが直感的で設定しやすいです。
具体例:
- HubSpotのフォーム送信 → Slackに通知
- Googleフォームの回答 → HubSpotにコンタクト作成
- HubSpotの商談成立 → Googleスプレッドシートに行追加
2. 対応アプリ数が重要な場合
Zapierは7,000以上のアプリに対応しており、日本のSaaS(freee、kintone、Chatwork等)との連携も充実しています。使いたいSaaSがMakeに対応していない場合は、Zapierを選択します。
3. 非エンジニアが設定する場合
Zapierはステップバイステップのウィザード形式で設定が進むため、プログラミングやデータ処理の知識がない担当者でも迷わず自動化フローを構築できます。
Makeが向いているケース
1. 複雑な分岐・ループを含むフロー
Makeはビジュアルフロービルダーを採用しており、条件分岐(Router)、ループ処理(Iterator)、データ集約(Aggregator)を直感的に設計できます。
具体例:
- HubSpotの新規コンタクトの業種によって、通知先のSlackチャンネルを分岐する
- CSVファイルの各行を1件ずつCRMに登録する(ループ処理)
- 複数のAPIから取得したデータを統合して1つのレポートを作成する
2. コストを抑えたい場合
同等の自動化をZapierとMakeで実行した場合、Makeのほうが月額コストが30〜50%低くなるケースが多いです。実行回数が多い自動化(毎日数百〜数千のデータ処理)では、コスト差が顕著になります。
3. エラーハンドリングが重要な場合
Makeは詳細なエラーハンドリング機能を備えており、「エラー発生時にデータをキューに保存し、後から再実行する」「特定のエラーのみスキップし、他はアラートを出す」といった高度な制御が可能です。
HubSpotとの連携で実現できる自動化シナリオ
HubSpotはZapier・Makeの両方と豊富な連携機能を持っています。以下に、実務で特に効果の高い自動化シナリオを紹介します。
シナリオ1:問い合わせ→CRM登録→Slack通知→フォローメール
- Webフォームに問い合わせが送信される(トリガー)
- HubSpot CRMにコンタクトとして自動登録
- 担当営業にSlackで即時通知
- 1時間後にサンキューメールを自動送信
このフローにより、問い合わせから初回対応までの時間を「翌日」から「数時間以内」に短縮できます。
シナリオ2:商談成立→請求書作成→会計ソフト連携
- HubSpotの取引ステージが「受注」に変更される(トリガー)
- 取引金額・顧客情報を取得
- freeeに請求書データを自動作成
- 営業担当と経理担当にメールで通知
HubSpotとfreeeの連携については別記事で詳しく解説しています。
シナリオ3:リードスコアリング→担当者自動アサイン
- HubSpotのコンタクトスコアが一定値を超える(トリガー)
- コンタクトの業種・地域に基づいて担当営業を自動アサイン
- 担当営業にSlackで「ホットリード」通知
- フォローアップタスクをHubSpotに自動作成
シナリオ4:ウェビナー参加→セグメント分け→ナーチャリング
- Zoom/Google Meetのウェビナー参加者リストを取得(トリガー)
- HubSpotのコンタクトに参加履歴を自動記録
- 参加内容に応じてリストに自動セグメント
- セグメントに応じたフォローアップメールシーケンスを起動
HubSpotのZapier・Make連携では、さらに多くの連携パターンを紹介しています。
導入の5ステップ
ステップ1:自動化したい業務の特定(1〜2日)
「どのSaaS間で、どんなデータを、どんなタイミングで連携したいか」を明確にします。最初は1つのシンプルな連携から始めます。
ステップ2:ツールの選定(1〜2日)
前述の比較表を参考に、ZapierまたはMakeを選定します。判断に迷う場合は、両方の無料プランでPoCを実施します。
ステップ3:無料プランでの構築・テスト(3〜5日)
無料プランで自動化フローを構築し、テストデータで動作確認を行います。本番データを使う前に、必ずテスト環境で十分な検証を行います。
ステップ4:本番稼働と監視(1〜2週間)
テストが完了したら本番稼働に切り替えます。最初の1〜2週間は毎日実行ログを確認し、エラーや想定外の挙動がないかを監視します。
ステップ5:フローの拡張・最適化(継続的)
1つの自動化が安定稼働したら、次の業務の自動化に着手します。フローの実行回数やエラー率を定期的に確認し、必要に応じて最適化します。
導入時の注意点
1. APIの利用制限(レートリミット)に注意
SaaSのAPIには1分間・1時間あたりのリクエスト回数制限があります。大量のデータを一括処理する場合は、レートリミットを考慮した設計が必要です。HubSpotのAPIは1アカウントあたり100リクエスト/10秒の制限があります。
2. 個人情報の取り扱い
ZapierやMakeを経由してデータが転送されるため、個人情報保護の観点からデータの流れを把握しておく必要があります。ZapierはSOC 2 Type II認証、MakeはISO 27001認証を取得しており、セキュリティ基準は高い水準を満たしています。
3. 「野良フロー」を作らない
複数の担当者が個別にフローを構築すると、「誰が何を自動化しているかわからない」状態になります。自動化フローの一覧表を作成し、管理者を明確にすることで「野良フロー」問題を防止します。
4. 手動実行のバックアッププランを用意する
自動化ツールにも障害は起こり得ます。ZapierやMakeがダウンした場合に備え、手動でも同じ業務を実行できる手順書を用意しておきます。
まとめ
ZapierとMakeは、SaaS間のデータ連携をノーコードで自動化できる強力なツールです。Zapierは「手軽さ・対応アプリ数」、Makeは「複雑なフロー・コスト効率」に強みがあります。
選定に迷ったら、以下のシンプルな判断基準で決めてください。
- シンプルな1対1連携が中心 → Zapier
- 複雑な分岐・ループ・大量データ処理が必要 → Make
- 使いたいSaaSがMake未対応 → Zapier
- コストを最小化したい → Make
どちらを選んでも、まずは「1つの業務の自動化」から始めることが重要です。HubSpot CRMを起点に、問い合わせの自動通知や商談データの自動転記など、小さな自動化から確実に効果を積み上げてください。
よくある質問(FAQ)
Q1: ZapierとMakeのどちらを先に試すべきですか?
プログラミング知識がない場合はZapierから試すのがおすすめです。ウィザード形式で設定が進むため、初めてのiPaaS体験として直感的です。データ処理やフロー設計の経験がある場合は、Makeのビジュアルフロービルダーのほうが効率的に自動化を構築できます。
Q2: 無料プランでどの程度のことができますか?
Zapierの無料プランは100タスク/月・5 Zapまで、Makeの無料プランは1,000オペレーション/月・2 Scenarioまで利用可能です。1日数回程度の自動化(問い合わせ通知、データ転記など)であれば、無料プランで十分に運用できます。
Q3: HubSpotとの連携はZapierとMakeのどちらが良いですか?
HubSpotは両方に公式連携を提供していますが、Zapierのほうが連携テンプレート(プリビルドZap)が豊富で、設定が簡単です。複雑な条件分岐やデータ変換が必要な場合は、Makeのほうが柔軟に対応できます。
Q4: ZapierとMakeを同時に使うことはできますか?
はい、同時利用は可能です。シンプルな連携はZapier、複雑なフローはMakeと使い分けている企業もあります。ただし、管理が分散するデメリットがあるため、可能であればどちらかに統一するほうが運用効率は高くなります。
Q5: iPaaSを導入するのに社内にエンジニアは必要ですか?
基本的な自動化フローの構築にエンジニアは不要です。ZapierもMakeもノーコードで設定できるため、営業・マーケティング・経理の担当者が自分で構築できます。ただし、APIの仕様を理解したカスタム連携や大規模なデータ処理が必要な場合は、エンジニアの支援があると効率的です。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。