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「経営会議のたびにExcelでデータを集計しているが、リアルタイムの数字が見えない」「感覚や経験に頼った意思決定から脱却して、データに基づいた経営判断をしたい」——こうした課題を抱えている経営者や管理者の方は多いのではないでしょうか。
データドリブン経営とは、CRMやBIツールに蓄積されたデータをリアルタイムに可視化・分析し、感覚や勘ではなくデータに基づいて経営判断を行うマネジメント手法です。HubSpotのCRM・レポート・ダッシュボード機能を活用することで、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの全データを一元管理し、経営指標をリアルタイムに把握できる体制を構築できます。
この記事では、以下の内容を解説します。
- データドリブン経営の基本概念とCRMの役割
- HubSpotで可視化すべき経営指標
- 経営ダッシュボードの構築方法
- 部門間連携によるデータ活用の実践
- データドリブン経営への移行ステップ
データドリブン経営とは?
データドリブン経営とは、企業活動の中で蓄積されるさまざまなデータ(顧客データ、営業データ、マーケティングデータ、財務データなど)を体系的に収集・分析し、その結果に基づいて意思決定を行う経営手法です。
スプレッドシート経営からの脱却
多くの企業では、経営に必要なデータがスプレッドシートや各担当者の手元に分散しています。この状態では以下の問題が発生します。
- データの鮮度が低い: 手動更新のため、常に数日〜数週間前のデータで判断せざるを得ない
- データの信頼性が不安定: 入力ミスや計算式の間違いが見逃されやすい
- データの収集に時間がかかる: レポート作成自体が目的化し、本来の分析・判断に時間を使えない
- 部門横断の分析が困難: 営業データとマーケデータが別々のシートで管理されていて突合が大変
HubSpotのようなCRMにデータを一元管理することで、これらの問題を根本的に解決できます。しっかりデータが入力されていれば、レポートやダッシュボードが自動更新され、常に最新の経営指標を確認できる状態を作れます。
CRMがデータドリブン経営の基盤になる理由
CRMをデータドリブン経営の基盤として活用するメリットは以下の通りです。
| メリット | 説明 |
|---|---|
| 一元管理 | コンタクト・会社・取引・チケットがリレーションデータベースで紐づく |
| リアルタイム | データ入力と同時にレポートが更新される |
| 自動化 | ワークフローでデータ入力やステータス変更を自動化し、人的ミスを削減 |
| 可視化 | ダッシュボードで経営指標をグラフ・表で直感的に把握 |
| 履歴管理 | すべてのアクティビティが時系列で記録され、振り返り分析が可能 |
HubSpotで可視化すべき経営指標
営業指標
| 指標 | HubSpotでの確認方法 | 経営判断への活用 |
|---|---|---|
| パイプライン金額 | 取引の加重金額レポート | 今後の売上見込みの把握 |
| 受注率 | ステージ別コンバージョンレポート | 営業プロセスのボトルネック特定 |
| 平均商談期間 | 取引のクローズまでの日数 | 売上サイクルの予測精度向上 |
| 営業担当者別成績 | 個人別の受注金額・件数 | リソース配分の最適化 |
| 失注原因 | 失注理由プロパティの円グラフ | 製品改善・営業戦略の修正 |
パイプラインの加重金額の考え方が結構ミソになってきます。1,000万円の案件でもアポ取得段階なら受注確度10%で加重金額は100万円。この加重金額ベースでフォーキャストを見ることで、より正確な売上予測ができます。
マーケティング指標
| 指標 | HubSpotでの確認方法 | 経営判断への活用 |
|---|---|---|
| リード獲得数 | コンタクト作成数レポート | マーケ予算の投資判断 |
| MQL/SQL転換率 | ライフサイクルステージ推移 | マーケ・営業連携の最適化 |
| チャネル別ROI | ソース別コンタクト分析 | チャネル予算の最適配分 |
| コンテンツパフォーマンス | ブログ・LP別のCVR | コンテンツ戦略の改善 |
カスタマーサクセス指標
| 指標 | HubSpotでの確認方法 | 経営判断への活用 |
|---|---|---|
| チケット解決数・応答時間 | Service Hubのチケットレポート | サポート品質の管理 |
| NPS/CSAT | フィードバックアンケート | 顧客満足度のトレンド把握 |
| 解約率 | 取引ステージの「解約」推移 | 収益リスクの早期発見 |
経営サマリー
| 指標 | 説明 |
|---|---|
| MRR(月次定期収益) | SaaS企業の場合、月次の定期収益推移 |
| LTV(顧客生涯価値) | 1顧客あたりの平均収益 |
| CAC(顧客獲得コスト) | 1顧客を獲得するために必要なコスト |
| ROI | マーケティング・営業投資の収益効率 |
経営ダッシュボードの構築方法
会議シーン別ダッシュボード
ダッシュボードを意味合いごとに分けていただくと、シーンで使い分けていただくことができます。
| ダッシュボード | 対象 | 主要レポート |
|---|---|---|
| 経営会議用 | 経営陣 | 売上推移、パイプライン金額、受注率、MRR |
| 営業会議用 | 営業マネージャー | 個人別達成状況、パイプライン分析、失注分析 |
| マーケ会議用 | マーケ担当 | リード獲得数、チャネル分析、MQL/SQL推移 |
| CS会議用 | CS担当 | チケット推移、NPS、解約リスク一覧 |
構築のステップ
- まず既存の標準レポートを確認: HubSpotには多数の標準レポートが用意されており、実は新しく作らなくても足りるケースが多い
- 足りないものをカスタムレポートで補う: 標準レポートでは対応できない分析はカスタムレポートビルダーで作成
- ダッシュボードに配置: 会議の流れに沿った順序でレポートを配置
- 定期配信を設定: 毎週・毎月の決まったタイミングでダッシュボードをメールで自動配信
時点データの固定化
HubSpotのレポートはリアルタイムで値が更新されるため、「先月時点での数値」と「今月時点での数値」がずれてしまうことがあります。
この問題に対処するには、ダッシュボードの定期配信(PowerPointやPDF形式)でスナップショットを残しておくのが有効です。例えば毎週水曜朝8時に営業チームに配信する設定にしておけば、週ごとの推移が記録として残ります。
部門間連携によるデータ活用
マーケ×営業の連携
ライフサイクルステージを共通言語として、マーケティングから営業へのリード引き渡しを可視化します。
- マーケ側: リード獲得→MQL化の数と質を管理
- 営業側: MQL→SQL→商談→受注のコンバージョンを管理
- 共通指標: ファネル全体のコンバージョン率、リードからの受注率
失注分析も重要です。何の理由で失注したのかを分類し、「プロダクトの機能不足」であれば製品開発へのフィードバック、「価格」であれば料金戦略の見直しなど、部門横断での改善アクションにつなげられます。
営業×CS の連携
受注後の顧客対応データを営業にもフィードバックすることで、営業プロセスの改善に活用できます。例えば、「受注時にヒアリングが不足していた項目」がCS段階で頻繁に問題になるなら、パイプラインの必須入力項目を追加するという改善ができます。
データドリブン経営への移行ステップ
ステップ1: まず基本データを蓄積する
最初から高度な分析を求めるのではなく、まずは基本的な営業データ(コンタクト・取引・アクティビティ)を確実にCRMに蓄積する習慣を作ることが出発点です。
営業の方がなかなかちゃんとSFAに入力してくれないという課題がある場合は、必須入力項目を設定して「仕組み」で解決するアプローチが有効です。
ステップ2: 基本レポートで可視化する
蓄積されたデータを基本的なレポートで可視化します。まずは受注目標や受注件数といったやりやすいところから始めましょう。
ステップ3: ダッシュボードを会議で活用する
経営会議や営業会議でHubSpotのダッシュボードを実際に使い始めます。会議中にリアルタイムのデータを確認しながら議論する習慣を定着させましょう。
ステップ4: 定期配信で継続的にモニタリング
ダッシュボードの定期配信を設定し、データを見る習慣を組織全体に広げます。
ステップ5: 高度な分析で意思決定を加速
データが十分に蓄積されたら、カスタムレポートやピボット分析を使った高度な分析に進みます。HubSpotのAI予測分析機能も活用し、売上予測やリードスコアリングの精度を高めていきましょう。
まとめ
データドリブン経営は、CRMにデータを蓄積し、レポートとダッシュボードで可視化するところから始まります。
活用のポイントを整理すると以下の通りです。
- CRMをデータの一元管理基盤にする: Excel分散管理から脱却し、HubSpotにすべてのデータを集約する
- 会議シーン別のダッシュボードを構築する: 経営会議・営業会議・マーケ会議それぞれに最適なレポートを配置する
- 定期配信で時点データを固定する: スナップショットを残し、推移を追跡する
- 部門横断でデータを活用する: マーケ→営業→CSの一気通貫のデータフローを構築する
まずは営業データの蓄積と基本レポートの可視化から始めて、段階的にデータ活用の範囲を広げていきましょう。CRMにデータが蓄積されるほど分析の精度が上がり、より確実な経営判断ができるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q1. データドリブン経営を始めるのに必要なHubSpotのプランは?
基本的なレポートやダッシュボードは無料プランでも利用可能です。ただし、カスタムレポートやゴール機能、高度な分析にはProfessional以上のプランが必要です。
Q2. CRMへのデータ入力を徹底させるにはどうすればいいですか?
必須入力プロパティの設定やパイプラインルールで「仕組み」として入力を強制するのが効果的です。また、入力したデータがレポートやダッシュボードで活用されていることを可視化し、データ入力の意義を実感してもらうことも重要です。
Q3. SalesforceのTableauのようなBI機能はHubSpotにもありますか?
HubSpotのカスタムレポートビルダーで基本的なBI機能は実現できます。ピボットテーブル、グルーピング、2軸グラフなどを使った高度な分析が可能です。より高度な分析が必要な場合は、外部BIツール(Tableau、Looker等)とのデータ連携も可能です。
Q4. 経営ダッシュボードを経営陣に見せる際のコツは?
経営層向けのダッシュボードは、5〜7個のKPIに絞り、一目で全体像が把握できるシンプルな構成にしましょう。詳細データは別のダッシュボードにまとめ、必要に応じてドリルダウンできるようにします。経営層は表示のみシート(無料)で閲覧できます。
Q5. データドリブン経営の効果が出るまでどのくらいかかりますか?
CRMの基本的な運用が定着し、3〜6か月分のデータが蓄積されると、意味のあるトレンド分析ができるようになります。まずはデータを蓄積する「種まき」の期間と捉え、焦らず着実に進めていきましょう。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。