CRM運用ルール設計ガイド|入力規則・命名規則・データガバナンスで組織のCRM活用を最大化

  • 2026年2月24日

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「CRMを導入したのに、営業が入力してくれない」「同じ会社が"株式会社ABC""(株)ABC""abc"と3通りで登録されていて、名寄せが不可能」「誰がどのデータを編集したのかわからず、重要な商談情報が上書きされてしまった」

CRM導入後に最もよく聞かれる悩みは、ツールの機能不足ではなく運用ルールの不在です。どれほど高機能なCRMを導入しても、データの入力規則・命名規則・権限設計が曖昧であれば、CRMは「信頼できないデータの倉庫」になり、現場の活用は進みません。

CRM 運用ルールの設計は、CRM導入プロジェクトの中で最も軽視されやすい領域です。多くの企業が「ツール選定」と「初期設定」に注力するあまり、運用フェーズの設計を後回しにしてしまいます。その結果、導入から半年後には「結局Excelに戻っている」という事態に陥ります。

本記事では、CRM 運用ルールを「入力規則」「命名規則」「権限設計」「データガバナンス」の4領域に分けて体系的に解説します。CRM 入力ルールの具体例、CRM 命名規則のテンプレート、データ品質を維持するための監査チェックリスト、そしてルールが守られないときの対策まで、CRM管理者がすぐに使える実践ガイドをお届けします。

この記事でわかること

  • CRM 運用ルールが必要な理由と、ルール不在がもたらす具体的な損失
  • 入力規則の設計方法(必須項目、入力形式、自動入力の活用)
  • CRM 命名規則のテンプレート(会社名、取引名、タグ・ラベル体系)
  • 権限設計の3段階フレームワーク(閲覧/編集/削除)
  • CRM データガバナンスの仕組み(月次・四半期の監査チェックリスト)
  • ルールが守られない場合の実効性のある対策

なぜCRM 運用ルールが必要なのか

プロパティ設定(コンタクト)(CRM運用ルール設定画面の例:プロパティとデータ品質管理)

CRM運用ルール設定画面の例:プロパティとデータ品質管理(出典:HubSpot)

ルール不在の代償

CRM 運用ルールが整備されていない場合、以下のような問題が発生します。

問題 具体的な影響 発生頻度
データの重複 同一企業が複数レコードで登録。メール配信が重複、レポートが不正確に 非常に高い
表記揺れ 検索で目的の企業が見つからない。セグメント分けが機能しない 非常に高い
必須項目の欠損 商談の優先度判断ができない。パイプラインレポートが不正確に 高い
不正確なステージ管理 売上予測が当てにならない。営業会議で「数字の信頼性」が議論になる 高い
権限管理の不備 他部門の商談情報を誤って上書き・削除。機密情報の漏洩リスク 中程度
古いデータの放置 退職者や倒産企業へのアプローチ。CRMの検索パフォーマンス低下 中程度

CRM 運用ルール不在のコスト試算

ルール不在のコストは見えにくいですが、以下のように概算できます。

年間損失コスト =
  (営業1人あたりのデータ探索・修正時間 × 時給 × 営業人数)
+ (重複データによるマーケ施策の無駄打ちコスト)
+ (不正確な売上予測による意思決定ミスのコスト)
+ (データクレンジングの年間工数 × 時給)

例えば、営業20名の組織でデータ品質問題に一人あたり週1時間を費やしている場合、年間で約500万円のコストが発生しています。これはCRM 運用ルールを適切に設計するだけで大幅に削減可能な無駄なコストです。

「ルール」は制約ではなく、自由を生む仕組み

現場の営業担当者は「ルールが増える=手間が増える」と感じがちです。しかし、適切に設計されたCRM 運用ルールは、むしろ現場の負担を減らします。

  • 入力項目が明確になるため、「何を入力すべきか」で迷う時間がなくなる
  • 命名規則が統一されるため、検索でデータがすぐに見つかる
  • 自動入力を活用することで、手入力の量が減る
  • データの信頼性が高まるため、レポートの突合作業が不要になる

CRM 入力ルールの設計|3つの柱

柱1:必須項目の設計

CRM 入力ルールの土台は、「何を必須入力にするか」の設計です。ポイントは、必須項目は最小限に絞ることです。必須項目が多すぎると入力負荷が上がり、現場が入力を避けるようになります。

コンタクト(人物)の推奨必須項目

項目 入力形式 必須/任意 理由
テキスト 必須 基本識別情報
テキスト 必須 基本識別情報
メールアドレス メール形式 必須 一意識別子・連絡手段
会社名 ルックアップ(会社レコードから) 必須 企業との紐付け
役職 テキスト 必須 意思決定者の判別
電話番号 電話番号形式 任意(推奨) 営業連絡手段
部署 ドロップダウン 任意(推奨) セグメント分け
リードソース ドロップダウン 必須 マーケROI分析

企業(会社)の推奨必須項目

項目 入力形式 必須/任意 理由
会社名(正式名称) テキスト(命名規則に従う) 必須 基本識別情報
業種 ドロップダウン 必須 セグメント分け
従業員規模 ドロップダウン(レンジ) 必須 ターゲット判別
本社所在地(都道府県) ドロップダウン 必須 エリア分析
URL URL形式 任意(推奨) 企業調査用
年間売上規模 ドロップダウン(レンジ) 任意 ポテンシャル判定

取引(商談)の推奨必須項目

項目 入力形式 必須/任意 理由
取引名 テキスト(命名規則に従う) 必須 基本識別情報
取引ステージ ドロップダウン 必須 パイプライン管理
金額 数値(円) 必須 売上予測
成約予定日 日付 必須 売上予測
取引担当者 ユーザー選択 必須 責任の明確化
商談ソース ドロップダウン 必須 チャネル分析
次のアクション テキスト 必須 進捗管理
次のアクション期日 日付 必須 フォロー漏れ防止

柱2:入力形式の統一

CRM 入力ルールで見落とされがちなのが、入力形式の統一です。自由記述を許容すると、表記揺れの温床になります。

形式統一のルール例:

項目 NGパターン OKパターン ルール
電話番号 03-1234-5678 / 0312345678 / 03(1234)5678 03-1234-5678 ハイフンあり統一
郵便番号 100-0001 / 1000001 / 〒100-0001 100-0001 ハイフンあり、〒なし
金額 100万円 / 1,000,000 / ¥1000000 1000000(数値型) 数値のみ入力。表示形式はCRM側で制御
日付 2026/3/1 / 3月1日 / 2026-03-01 日付ピッカーで選択 日付型フィールドを使用
URL abc.co.jp / http://abc.co.jp / https://www.abc.co.jp https://www.abc.co.jp https://付きフルURL

テキスト入力を減らす工夫:

  • 可能な限りドロップダウン/チェックボックス/ラジオボタンを使う
  • 「その他」のドロップダウン選択肢には自由記述の補足フィールドを用意する
  • 住所入力は郵便番号から自動補完する仕組みを活用する
  • 会社名は既存レコードからのルックアップ(検索選択)で入力する

柱3:自動入力の活用

CRM 入力ルールの負荷を下げる最も効果的な方法は、自動入力の仕組みを活用することです。

自動入力の手法 対象項目 仕組み
フォーム送信からの自動取得 リードソース、初回接触日、流入ページ Webフォームの送信データをCRMに自動連携
企業情報の自動付与 業種、従業員数、売上規模 メールドメインから企業データベース(帝国データバンク等)と照合
ステージ変更の自動記録 ステージ変更日、滞留日数 ワークフローで自動記録
活動ログの自動取得 メール送受信、ミーティング CRMのメール・カレンダー連携で自動記録
スコアリングの自動算出 リードスコア、ヘルススコア 行動データに基づく自動スコアリング
担当者の自動アサイン 取引担当者 エリア・業種・企業規模に基づく自動割り当て

自動入力を積極的に活用することで、営業担当者が手動で入力する項目を最小限に抑えつつ、データの網羅性と正確性を確保できます。

CRM 命名規則の設計|統一ルールのテンプレート

なぜ命名規則が重要なのか

CRM 命名規則は「検索性」と「一覧性」を確保するために不可欠です。命名が統一されていないと、以下の問題が発生します。

  • 同じ企業が検索結果に複数表示される(または表示されない)
  • 取引一覧を見ても、どの案件がどの顧客のものかわからない
  • レポートのセグメント分けが正確にできない
  • データの重複を検出・排除できない

会社名の命名規則

ルール 具体例 解説
正式名称で登録 ○ 株式会社スタートリンク / × (株)スタートリンク 「株式会社」は省略しない
法人格の位置 登記上の位置に従う(前株・後株を正しく) 例:株式会社ABC、DEF株式会社
半角英数字 ○ ABC Corporation / × ABC Corporation 全角英数字は使わない
スペース ○ 半角スペース / × 全角スペース スペースは半角に統一
略称の扱い 別フィールドに「通称・略称」を用意 正式名称フィールドには略称を入れない
グループ会社 親会社名を「親会社」フィールドで管理 会社名自体にグループ名を含めない

会社名の表記揺れ防止チェックリスト:

  • [ ] 「株式会社」「有限会社」等の法人格は正式表記で統一しているか
  • [ ] 英字の社名は半角で統一しているか
  • [ ] 前株・後株を正しく登録しているか
  • [ ] 新規登録前に既存レコードとの重複チェックをしているか
  • [ ] 社名変更があった場合の更新ルールが決まっているか

取引名(商談名)の命名規則

取引名は、一覧画面で「どの顧客の・何の案件か」が一目でわかるように設計します。

推奨フォーマット:

[会社名略称]_[製品/サービス名]_[年月]

具体例:

取引名 解説
スタートリンク_CRM導入_202603 2026年3月のCRM導入案件
ABCホールディングス_MA移行_202604 2026年4月のMA移行案件
DEF工業_年間契約更新_202612 2026年12月の契約更新案件

命名規則の注意点:

ルール 理由
区切り文字はアンダースコア「_」に統一 ハイフンは社名に含まれる場合があるため
年月は「YYYYMM」形式 ソート時に時系列で並ぶ
会社名略称は「略称マスタ」に登録 担当者による略称のブレを防止
製品/サービス名は定義済みリストから選択 自由記述による表記揺れを防止

タグ・ラベル体系の設計

タグやラベルは、CRMのセグメント分けやフィルタリングに使う重要な分類情報です。

タグ体系の設計フレームワーク:

タグカテゴリ 付与対象 タグ例 管理方法
業種タグ 企業 製造業、IT、金融、小売、医療 ドロップダウン(管理者のみ追加可)
規模タグ 企業 エンタープライズ、ミドル、SMB ドロップダウン(従業員数に連動)
商材タグ 取引 CRM導入、MA導入、コンサル、研修 ドロップダウン(管理者のみ追加可)
ステータスタグ コンタクト アクティブ、休眠、DNC(連絡不可) ドロップダウン(自動更新あり)
キャンペーンタグ コンタクト 展示会2026春、Webinar0301 自動付与(参加時に自動)

タグ運用のルール:

  • タグの新規追加はCRM管理者のみ可能とする
  • 類似タグの統合を四半期ごとにレビューする
  • タグの命名規則も統一する(例:半角英数字+日本語、スペースなし)

権限設計|閲覧・編集・削除の3段階フレームワーク

権限設計の基本原則

CRM 運用設計において、権限設計は「データの安全性」と「業務の効率性」のバランスを取る設計です。基本原則は「最小権限の原則」(必要最低限の権限のみを付与する)です。

ロールベースアクセス制御(RBAC)の設計

ロール 閲覧範囲 編集権限 削除権限 対象者
一般ユーザー 自分の担当レコード+チーム共有レコード 自分の担当レコードのみ なし 営業担当者
チームリーダー チーム全体のレコード チーム全体のレコード なし 営業マネージャー
部門管理者 部門全体のレコード 部門全体のレコード アーカイブのみ 営業部長、マーケ部長
CRM管理者 全レコード 全レコード 完全削除可能 情シス、CRM運用担当
経営層(閲覧専用) 全レコード(レポート中心) なし なし 経営幹部

機密データの取り扱いルール

データ種別 閲覧制限 理由
商談金額(大型案件) 部門管理者以上 競合情報・社内政治への配慮
顧客の個人情報(連絡先) 担当者+チームリーダー 個人情報保護法対応
失注理由(詳細) チームリーダー以上 営業担当者のモチベーション配慮
解約理由(詳細) CS部門+部門管理者以上 顧客の機密情報を含む場合がある
CRM設定・ワークフロー CRM管理者のみ 誤設定による全体影響を防止

権限設計のチェックリスト

  • [ ] 各ロールの閲覧・編集・削除権限が文書化されているか
  • [ ] 退職者のアカウントを即時無効化するプロセスがあるか
  • [ ] 異動時のロール変更プロセスが定義されているか
  • [ ] 権限の定期レビュー(半年に1回)が実施されているか
  • [ ] 機密データへのアクセスログが取得されているか

CRM データガバナンス|データ品質を維持する仕組み

データ品質管理(CRM運用ルール設定画面の例:プロパティとデータ品質管理)

CRM運用ルール設定画面の例:プロパティとデータ品質管理(出典:HubSpot)

データ品質の4つの指標

CRM データガバナンスの効果を測定するには、以下の4指標を定期的にモニタリングします。

指標 定義 測定方法 目標値
完全性(Completeness) 必須項目の入力率 必須項目が埋まっているレコードの割合 95%以上
正確性(Accuracy) データの正しさ サンプル抽出で検証、バウンスメール率など 90%以上
一貫性(Consistency) 表記や形式の統一性 命名規則準拠率、形式エラー率 90%以上
鮮度(Timeliness) データの更新頻度 最終更新日から90日以上経過したレコードの割合 20%以下

月次監査チェックリスト

CRM管理者が月次で実施すべきデータ品質監査の項目です。

# 監査項目 チェック方法 対処アクション
1 重複レコードの検出 CRMの重複検出機能またはレポート 重複を統合、発生原因を特定して再発防止
2 必須項目の欠損率 必須項目が空白のレコードをフィルタ 担当者に通知、1週間以内の入力を依頼
3 表記揺れの検出 会社名のバリエーションをレポート 正式名称に統一
4 ステージ滞留の確認 同一ステージに30日以上滞留する商談 担当者に確認、ステージ更新または失注処理
5 バウンスメールの処理 メール配信後のバウンスリスト バウンスしたメールアドレスの更新または無効化
6 未割り当てレコード 担当者が空白のレコード 担当者をアサイン

四半期監査チェックリスト

四半期ごとに実施すべき、より広範なデータガバナンスレビューです。

# 監査項目 チェック方法 対処アクション
1 データ品質KPIのトレンド 完全性・正確性・一貫性・鮮度の推移 悪化傾向がある指標の原因を分析
2 休眠レコードの棚卸し 90日以上更新がないレコード アーカイブまたは再アプローチ判断
3 タグ・ラベルの見直し 使用頻度の低いタグ、類似タグ 統合または廃止
4 権限設定の見直し 異動者、退職者のアカウント ロール変更、無効化
5 運用ルールの遵守状況 命名規則・入力規則の準拠率 ルールの周知・研修、必要に応じてルール改訂
6 CRMカスタマイズの棚卸し 使われていないカスタム項目・ワークフロー 不要な設定の削除、整理

データクレンジングのスケジュール

作業 頻度 担当 工数目安
重複チェック・統合 月次 CRM管理者 2〜4時間
必須項目欠損の補完 月次 各担当者(管理者が通知) 1〜2時間/人
表記揺れの修正 月次 CRM管理者 1〜2時間
休眠データのアーカイブ 四半期 CRM管理者+営業マネージャー 4〜8時間
全体データクレンジング 年次 CRM管理者+外部支援 16〜40時間

CRM運用ルールブックのテンプレート構成

ルールブックに含めるべき項目

CRM 運用ルールは、文書化して「運用ルールブック」として社内に共有することが重要です。以下のテンプレート構成を参考にしてください。

内容 ページ目安
1. はじめに CRM運用の目的、対象者、更新履歴 1ページ
2. 基本操作ガイド ログイン、画面構成、よく使う操作 3〜5ページ
3. 入力規則 必須項目一覧、入力形式ルール、自動入力の仕組み 5〜8ページ
4. 命名規則 会社名、取引名、タグ・ラベルのルール 3〜5ページ
5. パイプライン管理 ステージ定義、進行条件、更新タイミング 3〜5ページ
6. 権限とセキュリティ ロール別権限、機密データの取り扱い 2〜3ページ
7. レポーティング 標準レポートの見方、ダッシュボードの使い方 3〜5ページ
8. データ品質管理 月次監査の手順、データクレンジングの方法 2〜3ページ
9. トラブルシューティング よくある質問、問い合わせ先 2〜3ページ
付録 用語集、ステージ定義一覧、タグ一覧 3〜5ページ

ルールブックの運用ポイント

ポイント 具体的な施策
アクセスしやすい場所に置く CRM内のナレッジベースまたは社内Wiki。「5秒で到達できる」場所に
定期的に更新する 四半期ごとにレビューし、現状と乖離がないか確認
短く・具体的に 100ページの理想論より、30ページの実践ガイドのほうが読まれる
オンボーディングに組み込む 新入社員の入社プロセスにCRMルールブックの学習を必須化
管理者が率先して遵守 管理者自身がルールを守っていないと、現場は従わない

ルールが守られない場合の対策

なぜルールは守られないのか

CRM 運用ルールが守られない根本原因は、大きく3つに分類できます。

原因カテゴリ 具体例 対策の方向性
知らない(認知不足) ルールの存在を知らない。新人に共有されていない 周知・教育の強化
できない(スキル不足) CRMの操作方法がわからない。入力に時間がかかる トレーニング、UI改善
やらない(動機不足) 入力するメリットを感じない。評価に反映されない インセンティブ設計、自動化

対策1:自動化で「入力しなくていい」状態をつくる

最も効果的な対策は、ルールを守らせるのではなく、ルールを守らなくても正しい状態になる仕組みをつくることです。

自動化の例 効果
必須項目が未入力のレコードは保存できない設定 必須項目の欠損を構造的に防止
会社名の入力時に既存レコードの候補を自動表示 重複レコードの作成を防止
ドロップダウンの選択肢を限定 表記揺れ、自由記述による品質低下を防止
ステージ変更時に必須アクションをポップアップ表示 ステージ進行条件の遵守を促進
一定期間更新のない商談を自動通知 ステージ滞留の放置を防止
メール送受信のCRM自動記録 活動ログの手動入力を不要化

対策2:入力ガイドの表示

CRMの画面上で、入力時にガイドやヒントを表示する仕組みを活用します。

  • フィールドの説明テキスト(ヘルプテキスト)に入力ルールを記載
  • 入力例をプレースホルダーとして表示(例:「株式会社○○」と表示)
  • 命名規則のフォーマットを入力欄の近くに表示
  • 入力完了率をダッシュボードで可視化し、チーム間で比較

対策3:評価制度への組み込み

CRM 運用ルールの遵守を人事評価に組み込むことも有効です。ただし、「入力件数」ではなく「データ品質」で評価することが重要です。

評価項目 測定方法 ウェイト目安
CRM入力完了率 担当レコードの必須項目入力率 評価全体の5〜10%
データ正確性 サンプルチェックでの正確性 評価全体の3〜5%
更新頻度 商談ステージの更新頻度、活動記録の頻度 評価全体の3〜5%

対策4:定期的なリマインドと表彰

施策 頻度 効果
データ品質ダッシュボードの共有 週次 可視化によるプレッシャーと意識向上
入力優秀者の表彰 月次 ポジティブなインセンティブ
CRM活用のTips共有 週次(Slack等) 便利な使い方を知ることで入力への抵抗感を軽減
CRM運用ルールの再研修 四半期 ルールの再確認と新入社員への教育

CRM 運用設計のロードマップ

CRM 運用ルールの整備は一度にすべてを完璧にする必要はありません。以下のロードマップに沿って段階的に進めましょう。

フェーズ 期間 主な施策 期待成果
Phase 1:基盤構築 1〜2ヶ月 必須項目の設計、基本命名規則の策定、権限設計 CRM 入力ルールの土台が完成
Phase 2:自動化 2〜3ヶ月 自動入力の設定、バリデーションルールの実装、入力ガイドの表示 手動入力の負荷が30〜50%削減
Phase 3:定着化 3〜6ヶ月 トレーニング実施、運用ルールブックの配布、月次監査の開始 入力完了率が90%以上に
Phase 4:高度化 6ヶ月〜 データ品質KPIの運用、四半期監査の定常化、評価制度への組み込み CRM データガバナンスが組織に定着

まとめ

CRM 運用ルールの設計は、CRM導入の成否を分ける最も重要な要素です。ツールの機能や価格よりも、「データがどう入力され、どう管理され、どう活用されるか」の設計が、CRM活用の最大化を左右します。

本記事の要点を振り返ります。

  • CRM 運用ルールは4領域で設計する:入力規則、命名規則、権限設計、データガバナンス
  • CRM 入力ルールは必須項目を最小限に絞り、自動入力を最大限活用する
  • CRM 命名規則は会社名・取引名・タグに統一フォーマットを定め、表記揺れを防止する
  • 権限設計はロールベースの「最小権限の原則」で設計する
  • CRM データガバナンスは月次・四半期の定期監査で品質を維持する
  • ルールが守られない場合は、自動化による強制と入力ガイドの表示が最も効果的
  • CRM 運用設計は段階的に進め、まず基盤構築から着手する

まずは自社のCRM 運用ルールの現状を棚卸しし、最も影響の大きい領域(多くの場合は「命名規則」と「必須項目の設計」)から着手することをお勧めします。

なお、HubSpotではデータ品質管理ツールやプロパティのバリデーション機能が標準で搭載されており、本記事で紹介したCRM 運用ルールの多くをシステム上で実装することが可能です。初期設定の段階からルールを組み込むことで、運用後の手間を大幅に削減できます。

よくある質問(FAQ)

Q. CRM 運用ルールはいつ策定すべきですか?CRM導入前?導入後?

A. CRM導入前、具体的にはツール選定と並行して策定を開始するのが理想です。ただし、すでにCRMを導入済みで運用ルールが未整備の場合でも、今から策定して遅すぎることはありません。まずは「命名規則」と「必須項目の定義」から着手し、既存データのクレンジングと合わせて段階的に整備していきましょう。

Q. 運用ルールを厳しくしすぎると、現場が入力を嫌がりませんか?

A. そのリスクは確かにあります。だからこそ、CRM 入力ルールの設計では「必須項目は最小限にする」「自動入力を最大限活用する」「入力のメリットを現場に伝える」の3点が重要です。「ルールを守らせる」のではなく、「ルールを守ると楽になる」設計を目指してください。具体的には、CRM入力によってExcelの二重管理が不要になる、レポートが自動生成されるといった「入力した人が得をする」仕組みを設けることが効果的です。

Q. CRM 命名規則を途中で変更する場合、既存データはどうすればいいですか?

A. 既存データの一括更新が必要になります。CRMのインポート/エクスポート機能やAPIを活用して、既存レコードの命名を新ルールに統一しましょう。レコード数が数百件以内であれば手動更新も可能ですが、数千件以上の場合はCSVエクスポート→Excel加工→再インポートのバッチ処理が現実的です。移行期間中は旧ルールと新ルールの対応表を用意し、混乱を防いでください。

Q. データガバナンスの監査は誰がやるべきですか?

A. CRM管理者(多くの場合、情シスまたは営業企画の担当者)が主担当として月次監査を実施するのが基本です。ただし、データの正確性検証は各部門のマネージャーの協力が必要です。理想的には、CRM管理者がデータ品質レポートを作成し、各部門マネージャーが自部門のデータを確認・修正するフローを確立してください。

Q. 小規模な組織(10名以下)でも運用ルールは必要ですか?

A. 小規模でもCRM 運用ルールは必要です。むしろ、小規模なうちにルールを整備するほうが、組織が拡大したときのスケールが容易になります。ただし、小規模組織では簡潔なルールで十分です。最低限「会社名の命名規則」「取引名の命名規則」「必須項目の定義」の3つを決めておけば、データ品質の8割の問題は防げます。

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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。