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title: 中小企業にERPは本当に必要か?CRM × SaaS連携で実現するERP不要の経営基盤
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metaDescription: 中小企業にERPは本当に必要か?ERPが中小企業にオーバースペックになる理由を整理し、CRM(HubSpot)×SaaS連携で初期投資を抑えながら必要十分な経営基盤を構築する方法を、コスト比較・構成例(HubSpot+freee+board)・段階的導入ロードマップとともに解説します。
keywords: ERP 不要, CRM, SaaS連携, 中小企業, 経営基盤
blogAuthorId: 166212808307
「業務が回らなくなってきたから、そろそろERPを入れるべきだろうか」「でも、ERPの見積もりを取ったら初期費用だけで数千万円。うちの規模でこの投資は本当に正しいのか」——成長フェーズにある中小企業の経営者から、こうした相談を受けることがあります。
結論から言うと、従業員50〜300名規模の中小企業の多くは、ERPを導入しなくても、CRM(顧客関係管理)を中核にSaaSツールを連携させることで、経営に必要なデータ基盤を構築できます。いわゆる「ベストオブブリード」と呼ばれる考え方で、各業務領域で最適なツールを選び、それらを連携させて一つの経営基盤を形成するアプローチです。
この記事では、ERPが中小企業にとってオーバースペックになりやすい理由を整理したうえで、CRM × SaaS連携で実現する「ERP不要の経営基盤」を、コスト比較・構成例・導入ロードマップとともに具体的に解説します。
この記事でわかること
- ERPを検討する中小企業が陥りやすい3つの誤解
- ERPが中小企業にオーバースペックになる具体的な理由(コスト・期間・運用負荷)
- CRM × SaaS連携で実現する「ベストオブブリード」型経営基盤の設計思想
- ERP vs CRM × SaaS連携の徹底比較(コスト・導入期間・カスタマイズ性・スケーラビリティ)
- HubSpot + freee + board の具体的な構成例とデータフロー
- 段階的に導入するためのロードマップ(3つのPhase)
- CRM × SaaS連携の正直な限界と、ERPを選ぶべきケース
中小企業がERPを検討する背景と、よくある誤解
なぜ中小企業がERPを検討し始めるのか
ERPの検討が始まるタイミングには、いくつかのパターンがあります。
- 部門間のデータ連携が手作業で限界を迎えている(営業・経理・経営企画で数値が合わない)
- Excelやスプレッドシートの管理が属人化し、業務が回らなくなってきた
- 「経営の見える化」を実現したいが、データが分散していてリアルタイムに状況を把握できない
- 取引先や金融機関から「基幹システムはどうされていますか」と聞かれた
こうした課題は切実なものですし、解決すべき問題であることは間違いありません。ただし、「これらの課題を解決する手段=ERP」と短絡的に結びつけてしまうと、必要以上のコストと時間を投じるリスクがあります。
ERPに関するよくある3つの誤解
| 誤解 | 実態 |
|---|---|
| 「ERPを入れればすべてのデータが自動で統合される」 | ERPは導入しただけでは機能しない。業務フローの再設計・データ移行・社員教育に膨大な工数がかかる |
| 「ERPは大企業だけでなく中小企業にも必須のシステムだ」 | 中小企業の業務プロセスは大企業ほど複雑ではないケースが多く、ERPのフル機能を活用しきれないまま高額な保守費用だけが残る場合がある |
| 「ERPを入れないと経営データの一元管理はできない」 | CRMを中核にSaaSツールをAPI連携させることで、ERPなしでもリアルタイムな経営データの統合は実現できる |
ここで大事なのは、ERPそのものを否定しているわけではないということです。ERPは大量の取引データを処理し、複雑な業務プロセスを統合管理するためには優れたシステムです。問題は、「自社の規模と業務の複雑さに対して、ERPが適切な解なのか」という判断が曖昧なまま導入を進めてしまうことにあります。
ERPが中小企業にオーバースペックになる3つの理由
理由1:初期コストと総所有コスト(TCO)の負担が重い
ERPの導入コストは、ライセンス費用だけでは終わりません。導入コンサルティング、カスタマイズ開発、データ移行、社員教育、そして稼働後の保守運用まで含めた「総所有コスト(TCO)」で考える必要があります。
| コスト項目 | クラウドERP | オンプレミスERP | CRM × SaaS連携 |
|---|---|---|---|
| 初期導入費用 | 500万〜3,000万円 | 1,000万〜1億円以上 | 0〜100万円 |
| 月額ライセンス | 30万〜150万円 | 保守費(年間15〜20%) | 5〜30万円 |
| カスタマイズ費用 | 100万〜1,000万円 | 数百万〜数千万円 | 自社設定で対応可能 |
| 導入コンサル費用 | 200万〜1,000万円 | 500万〜2,000万円 | 0〜200万円 |
| 年間TCO目安 | 800万〜3,000万円 | 1,500万〜5,000万円 | 60万〜500万円 |
中小企業にとって、年間数百万〜数千万円のTCOは経営に対するインパクトが大きく、その投資に見合うリターンが得られるかどうかは慎重に見極める必要があります。
理由2:導入期間が長く、ビジネスの変化に追いつけない
ERPの導入には一般的に6ヶ月〜2年の期間がかかります。要件定義、設計、開発、テスト、データ移行、並行稼働、本番切替というプロセスをすべて完了するまでに、相当な時間と社内リソースが必要です。
中小企業は大企業に比べてビジネス環境の変化に迅速に対応する必要があることが多く、「導入を決めてから稼働するまで1年以上かかる」というスピード感では、プロジェクト開始時と稼働時で事業環境が変わっているケースも珍しくありません。
| 項目 | ERP導入 | CRM × SaaS連携 |
|---|---|---|
| 要件定義〜設計 | 2〜6ヶ月 | 1〜4週間 |
| 開発・カスタマイズ | 3〜12ヶ月 | 2〜8週間 |
| テスト・移行 | 2〜6ヶ月 | 1〜4週間 |
| 本番稼働まで | 6ヶ月〜2年 | 1〜3ヶ月(段階的) |
| 社内専任担当の要否 | 必須(プロジェクト専任1〜3名) | 兼任で対応可能 |
理由3:運用・保守の負荷が大きい
ERPは稼働後も、バージョンアップ対応、マスタデータの管理、ユーザーの追加・権限変更、法制度改正への対応など、継続的な運用保守が必要です。大企業であれば情報システム部門が対応しますが、中小企業ではIT専任の部門や担当者がいないケースも多く、運用保守が経営層や管理部門の「追加業務」になりがちです。
一方、SaaSツールはベンダー側がインフラの管理・バージョンアップ・セキュリティ対策を行うため、利用企業側の運用保守の負荷は大幅に軽減されます。法改正への対応(たとえばインボイス制度・電帳法への対応など)も、SaaSベンダーがアップデートで対応するため、利用企業が個別に開発を行う必要がありません。
CRM × SaaS連携で実現する「ベストオブブリード」型の経営基盤
ベストオブブリードとは
ベストオブブリード(Best of Breed)とは、業務領域ごとに最適なツールを選定し、それらを連携させて統合的な業務基盤を構築するアプローチです。ERPの「1つのシステムですべてをカバーする」思想とは対照的に、「各領域の専門ツールを組み合わせる」という設計思想に基づいています。
| アプローチ | 設計思想 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| ERP型(スイート型) | 1つのシステムで全業務をカバー | データの一貫性が高い、統合が容易 | 各機能が汎用的になりがち、高コスト |
| ベストオブブリード型 | 領域ごとに最適なツールを選定・連携 | 各領域の専門性が高い、柔軟に組み替え可能 | ツール間連携の設計が必要 |
CRMを中核に据える理由
ベストオブブリード型の経営基盤を構築する際に重要なのは、「どのツールを中核に据えるか」という設計判断です。StartLinkでは、CRM(顧客関係管理)を中核に据えることを推奨しています。
その理由はシンプルで、企業のほぼすべてのデータは最終的に「顧客」に紐づくからです。売上は顧客からの受注、原価は顧客案件への外注費、利益は顧客単位の収益性——顧客データを中心にデータを構造化することで、営業・マーケティング・経理・経営企画のすべてが「同じ顧客」という軸でデータを横断的に見られるようになります。
CRMを中核に据えた経営基盤では、以下の3つの価値を実現できます。
- 一元管理: 顧客に紐づくすべてのデータ(商談・契約・請求・対応履歴)をCRMに集約
- 自動化: 受注→請求→入金消込といった定型業務をワークフローとAPI連携で自動化
- 可視化: ダッシュボードでリアルタイムに売上・粗利・パイプラインを経営層が把握
ベストオブブリード型のツール間連携
ツール間のデータ連携には、iPaaS(Integration Platform as a Service)やAPIを活用します。代表的なiPaaSとしてはZapier、Make(旧Integromat)、Yoomなどがあり、ノーコードでツール同士を接続できます。
freee(会計・請求)
↕ API/iPaaS
board(案件管理)↔ HubSpot CRM(顧客データのハブ)↔ Slack(通知)
↕ API/iPaaS
クラウドサイン(契約管理)
この構成のポイントは、すべてのデータが「HubSpot CRM」を経由して流れる設計にしていることです。各ツールがバラバラに存在するのではなく、CRMがデータのハブとなることで、ERPが提供する「データの一元管理」と同等の価値を実現できます。
ERP vs CRM × SaaS連携の徹底比較
ここからは、ERP導入とCRM × SaaS連携のアプローチを、具体的な比較軸で整理します。
総合比較表
| 比較項目 | ERP導入 | CRM × SaaS連携 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 500万〜1億円以上 | 0〜100万円 |
| 月額コスト | 30万〜150万円 | 5〜30万円 |
| 導入期間 | 6ヶ月〜2年 | 1〜3ヶ月(段階的) |
| カスタマイズ性 | ベンダー依存、追加費用が発生 | 自社で設定変更可能、API連携で柔軟に拡張 |
| スケーラビリティ | モジュール追加で対応(追加費用あり) | 必要なSaaSを追加するだけ |
| 段階的導入 | 困難(一括導入が基本) | 容易(Phase分けで段階的に構築) |
| 運用保守 | 専任担当が必要、ベンダー依存 | SaaS側で保守、自社の負荷は小さい |
| ツール入替の柔軟性 | 全体に影響するため困難 | 該当ツールだけを入れ替え可能 |
| データのリアルタイム性 | バッチ処理が中心 | API連携でリアルタイム同期が可能 |
| 向いている企業規模 | 従業員300名以上、複雑な業務プロセス | 従業員50〜300名、シンプルな業務プロセス |
コスト比較のシミュレーション(従業員50名・BtoB企業の場合)
より具体的にイメージしていただくために、従業員50名のBtoB企業を想定したコストシミュレーションを示します。
| 項目 | クラウドERP | CRM × SaaS連携 |
|---|---|---|
| 初期導入費用 | 800万円 | 50万円 |
| 月額ライセンス費 | 40万円 | 12万円(HubSpot + freee + board) |
| 年間運用保守費 | 150万円 | 0円(SaaS側で対応) |
| 導入コンサル | 300万円 | 100万円 |
| 初年度TCO | 1,730万円 | 294万円 |
| 2年目以降の年間コスト | 630万円 | 144万円 |
初年度のTCOだけで約1,400万円、2年目以降も年間約500万円の差が出る計算です。この差額は、中小企業にとっては人材採用や事業投資に回せる原資になります。
もちろん、この数字はあくまで目安であり、企業の業務内容や規模によって変動します。重要なのは、「ERPの予算を取る前に、CRM × SaaS連携で実現できる範囲を検証する」というステップを踏むことです。
どちらを選ぶべきかの判断基準
ERPが適しているケースとCRM × SaaS連携が適しているケースを整理します。
| 判断基準 | ERPが適している | CRM × SaaS連携が適している |
|---|---|---|
| 従業員数 | 300名以上 | 50〜300名 |
| 月間取引件数 | 数千件以上 | 数百件以下 |
| 業務プロセスの複雑さ | 製造・在庫・ロット管理が必要 | サービス業・コンサル・BtoB商社 |
| IT部門の有無 | 専任のIT部門がある | IT専任者がいない/兼任 |
| 投資可能な予算 | 年間1,000万円以上 | 年間100万〜500万円 |
| 求めるスピード | 中長期で腰を据えて導入したい | 短期間で効果を出したい |
CRM × SaaS連携の具体的な構成例(HubSpot + freee + board)
ここからは、CRM × SaaS連携の具体的な構成例として、HubSpot + freee + board の組み合わせを解説します。この3つのSaaSを連携させることで、ERPが提供する主要な機能をカバーできます。
各ツールの役割分担
| ツール | 担う役割 | カバーする業務領域 | 月額目安 |
|---|---|---|---|
| HubSpot(CRM) | 顧客管理・営業管理・マーケの中核 | 顧客情報一元管理、パイプライン管理、メールマーケ、レポート・ダッシュボード | 無料〜月額数万円 |
| freee(会計SaaS) | 会計・請求・入金管理 | 請求書発行、入金消込、仕訳処理、確定申告・決算、経費精算 | 月額約3,000〜4万円 |
| board(案件管理) | 見積・受発注・案件管理 | 見積作成、受注管理、発注管理、原価管理、粗利管理、売上予測 | 月額約2〜4万円 |
ERPの主要機能とのカバレッジ対比
ERPが提供する主要な機能領域を、CRM × SaaS連携でどこまでカバーできるかを整理します。
| ERPの機能領域 | CRM × SaaS連携での対応 | 対応ツール | カバー率 |
|---|---|---|---|
| 顧客管理(CRM) | HubSpotで完全にカバー | HubSpot | 100% |
| 営業管理(SFA) | パイプライン・フォーキャストで対応 | HubSpot | 100% |
| マーケティング | メールマーケ・LP・フォーム・分析 | HubSpot | 100% |
| 見積・受発注管理 | boardで見積〜発注〜納品まで対応 | board | 90% |
| 会計・経理 | freeeで仕訳〜決算まで対応 | freee | 95% |
| 請求・入金管理 | freee + boardで対応 | freee / board | 95% |
| 在庫管理 | 基本的な在庫管理はboardで対応可能 | board | 50% |
| 製造管理(MRP) | 非対応 | ー | 0% |
| 人事・給与 | 別途SaaSで対応(freee人事労務等) | freee人事労務 | 80% |
製造管理(MRP)や高度な在庫管理のように、CRM × SaaS連携ではカバーしきれない領域があるのも事実です。ここは正直に申し上げておく必要があります。製造業で生産計画やロット管理が業務の中核にある企業は、ERPやMES(製造実行システム)の導入を検討すべきです。
一方で、BtoBのサービス業やコンサルティング業、商社のように、顧客管理・営業管理・見積/受発注・会計処理が主要業務である企業にとっては、CRM × SaaS連携で十分にカバーできる範囲が広いことがわかります。
データフローの全体像
[HubSpot(CRM)] [board(案件管理)] [freee(会計)]
リード獲得
↓
商談管理(パイプライン)
↓
見積依頼 ─────────────→ 見積作成・管理
↓ ↓
受注確定 ─────────────→ 受注登録・発注管理
↓
納品・検収管理
↓
入金状況管理 ←────────── 請求データ ─────→ 請求書発行・送付
↓ ↓
売上レポート ←───────────────────────── 入金消込・仕訳
(ダッシュボード) ↓
月次決算・確定申告
このデータフローのポイントは、3つのツールがそれぞれの得意領域を担いながら、データが途切れることなく流れる設計になっていることです。営業がHubSpotで管理する商談情報が、boardでの見積・受発注に連携し、最終的にfreeeでの会計処理まで一気通貫で流れます。
連携にはiPaaS(Zapier、Make、Yoomなど)やAPIを活用します。たとえば、HubSpotで取引ステージが「受注」に変わったらboardに受注データを自動作成し、boardで請求書を発行したらfreeeに仕訳データを連携する、という流れを自動化できます。
CRM × SaaS連携の詳しい連携設計パターンについては、「CRMとERPの連携設計|顧客データと経営データを統合する方法」でも解説しています。
導入ロードマップ(段階的移行の設計)
CRM × SaaS連携の最大のメリットは、スモールスタートで始めて段階的に拡張できることです。ERPのように「すべてを一度に」導入する必要はありません。以下の3つのPhaseで、優先度の高い領域から順に構築していきます。
全体ロードマップ
| Phase | 期間 | 対象領域 | 導入ツール | 投資規模 |
|---|---|---|---|---|
| Phase 1 | 1〜2ヶ月 | 顧客管理・営業管理 | HubSpot CRM | 月額0〜5万円 |
| Phase 2 | 2〜3ヶ月 | 見積・受発注・案件管理 | board + HubSpot連携 | 月額5〜10万円追加 |
| Phase 3 | 3〜6ヶ月 | 会計連携・経営レポート | freee + 全体連携 | 月額3〜10万円追加 |
Phase 1:CRM導入で顧客・営業データを一元化(1〜2ヶ月)
まずはHubSpot CRMを導入し、顧客情報と営業データの一元管理を実現します。Excelで管理している顧客リストや商談情報をCRMに移行するのが最初のステップです。
- 既存の顧客データ(Excelやスプレッドシート)をCRMにインポート
- 営業パイプラインのステージを定義し、商談管理を開始
- メール・カレンダーとの連携で、顧客対応の履歴を自動記録
- 基本的なダッシュボードで売上見込みを可視化
Phase 1だけでも、「顧客情報がバラバラで最新版がわからない」「営業の進捗が見えない」という課題は解消されます。Excel脱却の出発点としてはこのPhase 1が最も効果を実感しやすいステップです。
Excelからの具体的な移行手順については、「Excel業務からの脱却ロードマップ|CRM × SaaS連携で実現する業務デジタル化の手順」で詳しく解説しています。
Phase 2:案件管理ツール連携で見積・受発注を仕組み化(2〜3ヶ月)
Phase 1でCRMの運用が定着したら、案件管理ツール(board)を導入し、見積→受注→発注→納品のフローをデジタル化します。
- boardで見積書の作成・管理を開始
- HubSpotの取引データとboardの受注データを連携
- 発注管理と原価管理で案件別の粗利をリアルタイムに把握
- 受注〜納品のステータスをHubSpotのダッシュボードで可視化
このPhaseで「いくら売り上げて、いくら外注費がかかっているのか」を案件単位で把握できるようになります。Excelで属人的に管理していた見積・発注業務が仕組み化されることで、業務の再現性が生まれます。
Phase 3:会計連携で経営データの統合基盤を完成(3〜6ヶ月)
最後に、freee(会計SaaS)との連携を追加し、受注→請求→入金→会計処理までのデータフローを完成させます。
- boardの請求データをfreeeに連携し、請求書発行と入金消込を効率化
- freeeの確定売上データをHubSpotにフィードバックし、予実管理を実現
- CRMのパイプラインデータ(予測)+ freeeの確定データ(実績)で、リアルタイム予実対比ダッシュボードを構築
- 経営会議で必要なレポートをダッシュボードで自動生成
Phase 3まで完了すると、ERPが提供する主要な価値——データの一元管理、業務プロセスの自動化、リアルタイムな経営の可視化——をCRM × SaaS連携で実現した状態になります。
予実管理の具体的な統合設計については、「CRM × 予実管理の統合設計|売上パイプラインから予算管理のExcel脱却まで」をあわせてご覧ください。
段階的導入のポイント
段階的に導入する際に押さえておくべきポイントを3つ挙げます。
- 各Phaseで効果を検証してから次に進む: Phase 1のCRM導入だけでも効果を実感できるはずです。焦って一気にPhase 3まで進めるよりも、各段階で成果を確認しながら進めるほうが、社内の理解も得やすくなります
- ツールの入替を前提に設計する: SaaSは入替が容易なのがメリットです。「今はboardを使っているけれど、将来的に別のツールのほうが合うかもしれない」という前提で、ツール間の連携設計をしておくことが重要です
- 自社に最適な構成を設計する: HubSpot + freee + board はあくまで一つの構成例です。自社の業務フロー、既存ツール、予算に合わせて最適な組み合わせを選定してください。たとえば、案件管理にboardではなくkintoneを使う構成も十分に考えられます
まとめ
改めて、この記事の内容を整理します。
中小企業(従業員50〜300名規模)が業務のデジタル化や経営データの一元管理を検討する際、ERPの導入は「手段の一つ」であり「唯一の正解」ではありません。CRMを中核に据えたベストオブブリード型のSaaS連携で、ERPの主要な価値——一元管理・自動化・可視化——を実現できるケースは多くあります。
導入の流れを整理すると、以下のとおりです。
- Phase 1(1〜2ヶ月): CRM(HubSpot)を導入し、顧客管理と営業管理を一元化する。Excelからの脱却はここが出発点
- Phase 2(2〜3ヶ月): 案件管理ツール(board)と連携し、見積・受発注・原価管理を仕組み化する
- Phase 3(3〜6ヶ月): 会計SaaS(freee)と連携し、請求・入金・予実管理まで含めた経営データの統合基盤を完成させる
大切なのは、スモールスタートで始めることです。Phase 1のCRM導入だけでも、顧客データの一元管理と営業の可視化という大きな効果が得られます。まずは小さく始めて、効果を実感しながら段階的に拡張していく——このアプローチが、中小企業にとって最もリスクが低く、投資対効果の高い選択肢だと考えています。
ただし、繰り返しになりますが、CRM × SaaS連携にも限界はあります。製造管理や高度な在庫管理、数千件を超える月間取引の処理が必要な場合は、ERPの検討が合理的です。自社の業務内容と規模を冷静に見極めたうえで、「自社に最適な設計」を選んでいただければと思います。
よくある質問(FAQ)
Q1. CRM × SaaS連携で、ERPと同等のセキュリティレベルは担保できますか?
主要なクラウドSaaS(HubSpot、freee、boardなど)は、SOC2やISO27001などのセキュリティ認証を取得しており、データの暗号化、アクセス制御、監査ログといった基本的なセキュリティ要件を満たしています。むしろ、セキュリティのアップデートがSaaSベンダー側で自動的に行われるため、自社でオンプレミスのERPを運用するよりもセキュリティレベルが高くなるケースもあります。ただし、複数のSaaSにデータが分散するため、各ツールのアクセス権限設計は慎重に行う必要があります。
Q2. すでにERPを導入済みの場合でも、CRM × SaaS連携への移行は可能ですか?
可能です。ただし、一気に切り替えるのではなく、段階的に移行するアプローチを推奨します。たとえば、まずCRM(HubSpot)を導入して営業管理の領域から移行を始め、ERPの契約更新タイミングに合わせて他の領域も順次移行していく方法が現実的です。ERPの機能のうち、CRM × SaaS連携で十分にカバーできる領域と、ERPでないと対応できない領域を切り分けて判断することが重要です。
Q3. CRM × SaaS連携のアプローチで、社員数が増えても対応できますか?
SaaSは利用者数に応じてライセンスを追加するだけでスケールできるため、社員数の増加には柔軟に対応できます。HubSpotの場合、無料CRMのユーザー数に上限はなく、有料プランも必要なシート数だけを追加する仕組みです。従業員300名程度までは、CRM × SaaS連携で十分に対応できるケースがほとんどです。ただし、500名を超える規模になると、業務の複雑さに応じてERPの検討も視野に入ってきます。
Q4. HubSpot以外のCRM(Salesforceなど)でもベストオブブリード型の経営基盤は構築できますか?
はい、構築可能です。Salesforceはよりエンタープライズ向けの機能が充実しており、大規模な組織にはSalesforceベースの構成が適しているケースもあります。ただし、中小企業にとってはSalesforceのライセンスコストとカスタマイズの複雑さが課題になることがあります。HubSpotは無料CRMから始められ、UIも直感的でIT専任者がいなくても運用しやすい点が、中小企業にとってのメリットです。自社の規模・予算・IT体制に合わせて選定することをおすすめします。
Q5. iPaaSの連携が途切れた場合、データが消えるリスクはありませんか?
iPaaS(Zapier、Make、Yoomなど)の連携が一時的に停止した場合でも、各SaaSに保存されたデータが消失することはありません。iPaaSはデータの「橋渡し」をしているだけであり、データの実体は各SaaS側に保持されています。連携が復旧すれば、未処理のデータを再送・再同期することが可能です。ただし、連携の停止に気づかないまま放置すると、データの不整合が蓄積するリスクがあるため、iPaaSのエラー通知を設定し、異常時にアラートが飛ぶ仕組みを構築しておくことを推奨します。
株式会社StartLinkは、事業推進に関わる「販売促進」「DXによる業務効率化(ERP/CRM/SFA/MAの導入)」などのご相談を受け付けております。 サービスのプランについてのご相談/お見積もり依頼や、ノウハウのお問い合わせについては、無料のお問い合わせページより、お気軽にご連絡くださいませ。
著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。