Webマーケティングの基盤技術であったサードパーティCookieが、プライバシー規制の強化とブラウザベンダーの方針転換により、急速に利用できなくなりつつあります。Safari、Firefoxでは既にサードパーティCookieがブロックされ、世界最大シェアのChromeでも廃止の方針が示されています。
BtoBマーケティングにおいても、リターゲティング広告、アトリビューション計測、オーディエンスターゲティングなど、サードパーティCookieに依存してきた施策の見直しが不可欠です。しかし、多くの企業がまだ具体的な対策に着手できていないのが現状です。
本記事では、Cookie規制の現状整理から、BtoBマーケティングへの具体的な影響、そして5つの対策と代替手法を実践的に解説します。
この記事でわかること
- Cookie規制の最新動向と今後のスケジュール
- BtoBマーケティングへの影響と影響を受ける施策の一覧
- 5つの対策と代替手法の具体的な実行方法
- 対策の優先順位と導入ロードマップ
- 先進企業の対応事例
- HubSpotを活用したCookie規制対策
Cookie規制の現状
ブラウザ別の対応状況
| ブラウザ |
シェア(日本) |
サードパーティCookie |
ファーストパーティCookie |
| Chrome |
約50% |
廃止方針 |
利用可能(ITP影響なし) |
| Safari |
約25% |
完全ブロック済 |
ITPにより7日間制限 |
| Edge |
約10% |
段階的制限中 |
利用可能 |
| Firefox |
約5% |
完全ブロック済(ETP) |
利用可能 |
| その他 |
約10% |
各社で対応中 |
利用可能 |
主要な法規制
| 規制 |
地域 |
Cookie関連の要件 |
| GDPR |
EU |
明示的な同意なきCookie使用は違法 |
| ePrivacy Directive |
EU |
Cookieバナーでの事前同意が必須 |
| CCPA/CPRA |
米国カリフォルニア |
オプトアウト権の保障 |
| 改正個人情報保護法 |
日本 |
Cookie情報を個人関連情報に位置づけ |
| 電気通信事業法改正 |
日本 |
外部送信規律(通知・公表義務) |
BtoBマーケティングへの具体的影響
影響を受ける主な施策
| 施策 |
影響度 |
影響の内容 |
| リターゲティング広告 |
大 |
サードパーティCookieに依存しており、配信対象が大幅縮小 |
| ルックアライク配信 |
大 |
類似オーディエンス構築の精度が低下 |
| マルチタッチアトリビューション |
大 |
クロスサイトのタッチポイント追跡が困難 |
| DMP経由のオーディエンスデータ |
大 |
サードパーティデータの品質・量が低下 |
| コンバージョントラッキング |
中 |
ビュースルーCVの計測精度が低下 |
| ABM広告配信 |
中 |
IPアドレスベースは影響少、Cookie依存部分は影響あり |
| MAのWebトラッキング |
小〜中 |
ファーストパーティCookieベースだが、Safari ITPの影響あり |
影響を受けにくい施策
一方で、以下の施策はCookie規制の影響を受けにくいため、今後の比重を高めるべきです。
- メールマーケティング(配信先リスト=ファーストパーティデータ)
- コンテンツSEO(オーガニック流入はCookie不要)
- ウェビナー・イベント(登録データ=ゼロパーティデータ)
- 営業活動(CRM内データに基づくアプローチ)
5つの対策と代替手法
対策1:ファーストパーティデータの強化
自社で直接取得するデータの収集・活用基盤を強化します。
強化のポイント:
- CRMへのデータ入力率を向上(目標:90%以上)
- Webサイトのトラッキングコードを自社ドメインで管理
- ログインベースの識別(会員エリア、マイページの提供)
- フォームからのデータ収集を最適化
チェックリスト:
- CRMのデータ入力率を計測しているか
- 自社Webサイトにファーストパーティトラッキングを導入しているか
- 会員登録・ログイン機能を提供しているか
- プログレッシブプロファイリングを実装しているか
対策2:ゼロパーティデータの収集
顧客が自発的に提供するデータを戦略的に収集します。詳細は「ゼロパーティデータとは?」の関連記事をご参照ください。
BtoBでの主な収集手段:
| 収集手段 |
取得できるデータ |
活用方法 |
| 課題診断ツール |
課題の優先度 |
セグメント別コンテンツ配信 |
| メール受信設定 |
関心テーマ、配信頻度 |
パーソナライズメール |
| ウェビナー登録 |
業種、役職、検討段階 |
フォローアップの個別最適化 |
| NPS・フィードバック |
満足度、改善要望 |
カスタマーサクセス施策 |
対策3:コンテクスチュアルターゲティング
ユーザーの行動履歴(Cookie)ではなく、閲覧中のコンテンツの文脈に基づいて広告を表示する手法です。
メリット:
- Cookie不要でプライバシーに配慮
- コンテンツとの関連性が高く、自然な広告体験
- ブランドセーフティの向上
BtoBでの活用例:
- IT系メディアの「CRM」関連記事にCRMソリューション広告を表示
- 経営系メディアの「DX」特集ページにDXコンサルティング広告を表示
対策4:サーバーサイドトラッキング
従来のクライアントサイド(ブラウザ上)でのトラッキングに代わり、サーバー側でデータを収集・処理する方式です。
| 項目 |
クライアントサイド |
サーバーサイド |
| データ収集 |
ブラウザ上のCookie |
サーバー経由 |
| ブラウザ規制の影響 |
大きい |
小さい |
| データ精度 |
低下傾向 |
安定 |
| 導入難度 |
低 |
中〜高 |
| プライバシー管理 |
困難 |
一元管理可能 |
導入のポイント:
- Google Tag Manager Server-Sideの活用
- 自社ドメインでのデータ中継サーバー設置
- プライバシーポリシーの更新
対策5:CRM活用による脱Cookie
最も本質的な対策は、CRMに蓄積されたファーストパーティ・ゼロパーティデータを中心にマーケティングを再構築することです。
CRM中心のマーケティングで実現できること:
- メールアドレスベースのカスタマーマッチ広告
- CRMデータに基づくABMリストの作成
- 購買段階に応じたナーチャリングの自動化
- 商談データに基づく広告最適化
対策の優先順位と導入ロードマップ
| フェーズ |
期間 |
対策 |
優先度 |
| Phase 1 |
即時 |
CRMデータ入力率の向上 |
最高 |
| Phase 1 |
即時 |
コンテンツSEO・メールの比重を拡大 |
最高 |
| Phase 2 |
1〜3ヶ月 |
ゼロパーティデータ収集の仕組み構築 |
高 |
| Phase 2 |
1〜3ヶ月 |
コンテクスチュアル広告のテスト |
高 |
| Phase 3 |
3〜6ヶ月 |
サーバーサイドトラッキングの導入 |
中 |
| Phase 3 |
3〜6ヶ月 |
CRMデータ連携のABM広告へ移行 |
中 |
まとめ
Cookie規制はBtoBマーケティングにとって脅威であると同時に、データ戦略を見直し、より本質的なマーケティングへと進化するチャンスでもあります。サードパーティデータに依存した「借り物のデータ」から、ファーストパーティ・ゼロパーティデータによる「自社のデータ資産」への転換が求められています。
最優先で取り組むべきはCRMのデータ基盤の強化です。HubSpotのCRM+MAプラットフォームは、ファーストパーティデータの管理からメールマーケティング、コンテンツ管理、広告連携まで、Cookie規制後のマーケティングに必要な機能を統合的に提供しています。
Cookie規制への対応やデータ戦略の見直しについて、StartLinkが貴社の状況に合わせた最適なプランをご提案します。お気軽にご相談ください。