HubSpotの営業AI「案件創出エージェント」は使える?日本語での徹底検証とBreezeの機能・ユースケースを解説!

  • 2025年6月20日
  • AI
HubSpot 案件創出エージェント

ブログ目次

 

様々なAIを活用した営業支援ツールの登場が、営業活動の現場を大きく変えるケースも増えてきました。本記事では、HubSpotが発表したAIプラットフォーム「Breeze」とその中核機能である「案件創出エージェント(Prospecting Agent)」について発表されている機能のご説明と、「本当に自社で使えるのか?」「特に日本語環境での実用性は?」といった観点で検証してみた結果をご紹介させていただきます!

営業の未来を創るHubSpotのAI「Breeze」による案件創出エージェントとは?


Breeze案件創出エージェントで営業アプローチを拡大|HubSpot(ハブスポット)


案件創出エージェントを正しく理解するためには、まずその上位概念であるHubSpotのAI「Breeze(ブリーズ)」の全体像を把握しておく必要があります。

単なるアシスタントではない、HubSpot Breezeとは?

Breezeは、単なるチャットボットや文章生成ツールではありません。HubSpotが提供するマーケティング、セールス、サービスといった全てのHubSpotプラットフォームに組み込まれたAIレイヤーです。その目的は、中小企業(SMBs)が「大規模な専門チームや莫大な予算なしに、AIの価値をすぐに享受できるようにすること」にあります。

Breezeの3つの構成要素:Breeze Copilot/Breeze エージェント/Breeze Intelligence

Breezeは、大きく3つの要素で構成されており、それぞれが連携して機能します。

Breeze Copilot(コパイロット)

プラットフォームのあらゆる場所で利用できる対話型のAIアシスタント。タスクの実行やデータ要約、アイデア出しなどをサポートします。

▪️参考記事HubSpot Breeze Copilot徹底活用ガイド|公式プロンプト58式の紹介と、商談リサーチや問い合わせ傾向分析などの実務プロンプト例を紹介

Breeze エージェント

特定の業務を自律的に実行するAIスペシャリスト。複雑で複数ステップにわたる作業を自動化します。

▪️関連記事
HubSpotのAIチャットボット(Breeze 顧客対応エージェント)機能解説|社内向けRAG/ナレッジベースも合わせて解説

Breeze Intelligence(インテリジェンス)

Breezeの頭脳となるデータ基盤。CRMデータの会社・コンタクト情報の自動リッチ化(情報付加)を行います。
※日本語での企業情報付与はできないケースが多いため、実用にはまだ時間がかかりそうな印象です。

 

「案件創出エージェント(Prospecting Agent)」の位置づけ

今回フォーカスする案件創出エージェントは、この3つの要素のうち「Breezeエージェント」の一つであり、Sales Hubに属する機能です。

重要なのは、このエージェントが単体で動いているわけではないという点です。Breeze IntelligenceがCRMデータを常に最新かつリッチな状態に保ち、Breeze Copilotが営業担当者の日々の疑問に答える。そして、案件創出エージェントが、その質の高いデータを基に、具体的なアクション(リサーチとアウトリーチ)を自律的に実行するのです。

つまり、案件創出エージェントの真価は、HubSpotのSmart CRMという強力なデータ基盤と、Breezeの他のコンポーネントとのシームレスな連携によって最大限に引き出されます。これは、単なる「メール自動送信ツール」とは一線を画す、統合されたインテリジェンスシステムの一部なのです。

 

営業の「時間がない」問題。あなたのチームは本来の業務に集中できていますか?

案件創出エージェントの価値を理解するために、まずは多くの営業組織が直面している根深い課題から見ていきましょう。それは、営業担当者が「営業活動そのもの」に十分な時間を割けていないという現実です。

調査で判明した「営業が営業できない」実態:リスト作成とリサーチに消える時間

ある調査によると、日本の営業担当者は、資料作成といった非営業活動に年間で推定619時間を費やしており、これは人件費に換算すると1人あたり約167万円もの機会損失に相当するという衝撃的なデータがあります。

この「失われた時間」の多くを占めているのが、見込み客のリスト作成やアプローチ前の企業リサーチといった地道な作業です。Webサイトやニュース記事、SNSを手作業で巡回し、情報を集めて整理する。このプロセスは、営業活動の成果を左右する重要な準備段階でありながら、最も時間と労力を要する部分でもあります。


HubSpotの案件創出エージェントは、このような事前リサーチや、アプローチメールの作成などの”(現時点では)簡易的な”代行を行ってくれる機能を持っています。

HubSpot案件創出エージェントの全機能【徹底解剖】

では、具体的に案件創出エージェントにはどのような機能があるのでしょうか?営業担当者の目線でその機能を一つひとつ解剖していきます。

機能1:AIによるターゲット顧客のWebリサーチ

営業担当者が数時間を費やすリサーチ業務を、AIが数分で完了させます。このリサーチは、以下の2つの情報源から行われます。

  • 内部データ:HubSpotのCRM内に蓄積された情報。直近7日間のフォーム送信やページ閲覧履歴、直近60日間のメールのやり取りや通話内容などが対象となります。

  • 外部データ:ターゲット企業のWebサイト、ブログ記事、最新のニュースリリースなど、Web上から公開情報を自動で収集・分析します。

 

↓実際に株式会社StartLinkの今枝について調査を案件創出エージェントにやらせてみました。(検証)

 

まだ表示テキストは基本的に「英語」表記になってしまうため、日本語の翻訳機能を使わなくてはいけないのですが、

ある程度Webのリサーチができていたり、私が執筆しているブログなども確認し、代表者の情報についてもWebから取得できていたので、基本的には簡易的なHubSpot内でできるDeepResearch機能のようなイメージで思っていただけると良いかもしれません。(情報も一定の精度がありました!HubSpotのCRMのアクティビティ情報と関連して出してくれるのは、比較的嬉しい機能です・・・)

今後日本語表記がしっかりなされる際には、情報量としてはかなり使える分量になるのかなと思っております!
(参考までに かなり画面サイズを縮小してどのくらいの文章量が生成されているかを下記に示します↓)

 

 

機能2: HubSpotデータとWeb情報を活用した「パーソナライズ」のメール自動作成

案件創出エージェントのメリットは、このリサーチ結果を基にしたパーソナライゼーションにあります。単にのようなトークンで名前を差し込むレベルではありません。

HubSpotの使命をパーソナライズで差し込むだけではなく、Webサイトを参照し具体的にどのような事業をやっているかを調査した内容をもとにメールを作ってくれます。

(検証)メールのシーケンス作成までやってもらいましたが、提案内容としてHubSpot支援の事業をしていることや、HubSpotとAIを連携をした開発支援をやっていることを記載して文書を作成してくれました!(簡易的ですが、3式のメールを作ってくれて、ステップメールを自動で設定してくれる形です。)

ただ内容は少し海外チックなのとシステムチックなので、あまり魅力的ではない状況です・・・・

ですので、HubSpotの案件創出エージェントは、その機能だけで初回から代行業務が完結するのではなく、あくまで代案となるメールを文章で作成し、そこから人が修正したり、他のAIに食わせて内容をリッチ化したりというような使い方が良いのかと思っております。

 

参考までに、BreezeのCopilotを使って、日本の担当者に向けて丁寧語を使ったメールにしてもらう変更をしたのですが、ある程度うまくいきましたので、この文章を下地にポイントとなる要素を営業担当が加えれば、一定使える機能(AIアシスタント)にはなるかと思います!

※メールは日本語で作成されるため、翻訳の必要はありません。


 

機能3:チームごとの販売製品によって、別々のAIエージェントを作成可能

 HubSpotの案件創出AIエージェントは複数のプロファイルで設定することができ、

  • インサイドセールスエージェント
  • 営業AIのエージェント
  • コンサルチームの営業エージェント


など、メールの提案口調や販売する商品をそれぞれ分けることが可能ですので、チームごとに別々のAIエージェントを作ることが可能です。(以下のように分類可能)

またエージェントは、チームの習熟度や信頼度に応じて、2つのモードを使い分けることができます。

半自動(Semi-autonomous)モード ※推奨

AIがリサーチを行い、3通のメール文面をドラフトとして作成します。ただし、送信はせず、人間の担当者が内容を確認・承認した上で手動で送信を開始します。

全自動(Fully autonomous)モード ※リスクあり

リサーチから文面作成、メール送信までの一連のプロセスを、人間のレビューなしでAIが完全に自律して実行します。



基本的には「半自律モード」を選び、メール送信前に営業担当が問題ないと判断したメールのみステップで送信するという形が現時点では良いかと思っています。
※メールの文章精度が上がれば、全自動も可能性として出てくるのではないかと思っています。

 

機能4: 複数のトリガーによる案件創出エージェントへのエスカレーション

 案件創出エージェントについては、複数のトリガーの設定が可能でして、

  • ページが表示されたときに登録する
  • フォームが送信されたときにコンタクトを登録する
  • 前回のエンゲージメント日が何日以上前のときにコンタクトを登録する
  • いずれかのリストに追加されたときにコンタクトを登録する。

検証)以下の例では、「フォーム送信時」と「リスト追加時」に案件送出エージェントに登録されるように設定してみました。

 

【レビュー】案件創出エージェントの日本語対応を検証してみた結果とセットアップ

それではHubSpot案件創出エージェントの振り返りです。

実際に検証してみても、上記でご覧いただけたかと思うのですが、日本語対応はまだ完全ではないものの一定の機能としては現場利用可能な状況かと思いました。以下は具体的にどのようなステップで 案件創出エージェント設定すればいいかを、以下でご紹介していければと思います。

設定は10分で完了?実際のセットアップ手順を全公開

まず、設定自体は驚くほど簡単です。HubSpotの権限設定でAIへのアクセスを有効にし、案件創出エージェントを起動します。その後、ここでは、自社の提供価値、解決できる顧客の課題(ペインポイント)、ターゲット顧客層(ICP)といった情報をAIに教え込みます。さらに、CTA(行動喚起)として、担当者のミーティング予約リンクや関連資料(ドキュメント)を添付する設定も可能です。

画面上のクリック操作だけであれば10分もかからないでしょう。しかし、AIが質の高いアウトプットを生成するためには、インプットとなるセリングプロフィールの内容を戦略的に練り上げる必要があります。

この準備には、相応の時間をかける価値があるかと思います!

「まだ使えない」は早計。 日常業務にAIを組み込み、営業生産性を上げましょう!

「なんだ、結局日本語のリサーチ機能は使えないのか。それじゃあ使えないな」

そう判断するのは、早計かもしれません。営業アプローチで最も時間がかかるのは、リサージ自体にかかる時間や、 アプローチの提案内容のたたきを作る下地の準備が多いかと思います。

案件創出エージェントは、 まだ完璧にはないにせよ、この大変な6割程度の仕事を肩代わりしてくれそうです。AIがターゲット企業を徹底的にリサーチし、それをステップメールの「下書き」にたたきの状態で提供してくれるのです。

日本の営業担当者は、その「下書き」を受け取り、最後の「2割」の仕事、つまりリサーチ内容を日本語への翻訳(ブラウザ操作で可能)と、日本特有の商習慣や文化に合わせたメールの微調整を行うだけで済みます。ゼロからリサーチして文章を考えるのに比べ、どちらが圧倒的に効率的かは言うまでもありません。

つまり、現時点での案件創出エージェントは、「ボタン一つで全てお任せ」の全自動ツールではありません。しかし、営業担当者の生産性を向上させる「優秀な営業アシスタント」として、今日からでも一定は活用できそうです。


【現実的な活用法】営業現場での案件創出エージェントのユースケース2選

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案件創出エージェントは日本語対応が不完全な現状でも、日本企業が今すぐ取り組める具体的なユースケースを2つ提案します。重要なのは、「誰にでも使う」のではなく、「誰に使うか」を戦略的に見極めることです。

ユースケース1:インサイドセールスやアウトバウンドアプローチを行うリストでの活用

まず考えられるのが、大量にアプローチする必要があるものの、一社あたりの優先度がそこまで高くないリストに対して、リサーチ業務を代行させる使い方です。

  • 対象:インサイドセールスがアプローチする大量のリスト、アウトバウンドコール用のリストなど。

  • 目的:リサーチ業務の大幅な時短。


なぜ、優先度の低い顧客なのでしょうか?

それは、本当に重要な顧客に対しては、AIの暫定的なリサーチだけでは不十分だからです。重要顧客のアプローチには、担当者が自ら企業のウェブサイトを隅々まで読み込み、事業内容を深く分析し、場合によってはChatGPTでディープリサーチを行うといった、人間による丁寧な準備が不可欠です。

▪️関連記事
HubSpot-ChatGPTディープリサーチ連携を徹底検証!HubSpotデータを活用した実践ガイド

 

案件創出エージェントは、この「重要顧客に時間をかける」ための時間を捻出する目的で活用します。つまり、優先度の低い多数の顧客へのリサーチをAIに任せることで、営業担当者は最も価値を生む「考える」仕事に集中できるようになるのです。

 

ユースケース2:「休眠顧客の掘り起こし」を半自動化し、機会損失を防ぐ

次に、過去に接点があったものの、現在はアプローチできていない「休眠顧客」の掘り起こしに活用するケースです。

  • 対象:過去に失注した顧客・最近連絡が取れていないがWebサイトへの再訪問など何らかのアクションがあった顧客

  • 目的:定型的なアプローチの自動化と、リサーチに基づいたパーソナライズの補完。


HubSpotにはもともと「シーケンス」というステップメールを自動送信する機能があります。しかし、案件創出エージェントは、これをさらに一歩進めることができます。

具体的なワークフロー例:

  1. 「休眠顧客からのWebコンバージョン」などをトリガーに、対象コンタクトを特定のリストに自動で追加します。

  2. そのリストへの追加をトリガーとして、案件創出エージェントを「半自動モード」で起動させます。

  3. エージェントが対象企業を再リサーチし、その情報に基づいたメール文面をドラフトとして作成します。

  4. 営業担当者は、AIが作成したドラフトを確認・修正し、送信を承認します。

シーケンス機能との違いは、AIがリサーチを行い、ある程度パーソナライズされた文面を「下書き」してくれる点です。ゼロから定型文を考える必要がなく、リサーチの手間も省けるため、休眠顧客へのアプローチのハードルが劇的に下がります。

 

この2つのユースケースに共通するのは、「重要な顧客は人間が担当する」という原則です。現時点での案件創出エージェントは、あくまで営業担当者のアシスタント。優先度の低いアウトバウンドセールスや、休眠顧客の掘り起こしといった領域で活用することで、その真価を発揮するでしょう。

 

まとめ:自社に合った営業AI活用の第一歩を踏み出すために

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今回の検証を通じて、HubSpotの案件創出エージェントは、いくつかの制約はあるものの、それを補って余りあるほどの大きな可能性を秘めていることがわかりました。最後に、どのような企業がこのツールとどう向き合うべきか、StartLinkの見解をまとめます。

 

「今すぐ試すべき企業」と「慎重に進めるべき企業」

このツールは、特にAIを活用して営業業務を本気で改革したい」と考えている企業や、すでにHubSpotを日常的に活用しており、もう一歩先の生産性向上を目指したいという企業にとって、テスト的に導入してみる価値が非常に高いと言えます。本記事で紹介したような「営業アシスタント」としての活用法は、すぐにでも試せるでしょう!

一方で、AIの活用によって予期せぬミスが起きることを事業上の大きなリスクと考える企業や、まずは社内でじっくりと効果を検証してから本格導入を判断したいという慎重な姿勢の企業も多いはずです。その懸念はもっともであり、拙速な導入は避けるべきです。(こちらは事業規模によっても影響度合いが変わるかと思いますので、慎重にご判断いただければと思っております!)

導入を成功させるための推奨アプローチ

後者のような企業様( 特にエンタープライズの企業様で営業人員が多い企業様が当てはまるかと思いますが)には、いきなり全社的な実運用に投入するのではなく、段階的なアプローチをお勧めします。

例えば、HubSpotが提供するサンドボックス環境(テスト環境)でまずは機能を試し、自社の業務にどのような影響があるかをシミュレーションしてみる。あるいは、特定の部署やチームに限定してPOC(概念実証)を実施し、小さな成功事例を作ってから横展開を検討する、といった進め方が有効です。


ただ、まとめとしましてHubSpot案件創出エージェントは、「未来の営業」を一部でも垣間見せてくれるツールになりそうです。 もしこちらの記事で何かご不明点やご質問がありましたらお気軽にご連絡いただければと思いますのでよろしくお願いいたします。

この度は、ご覧いただきましてありがとうございました!


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink(スタートリンク)の代表取締役。
学生時代に地域活性化事業のスタートアップを共同創業し事業立ち上げを経験。 広告戦略支援会社にてSEO設計/Web広告戦略・運用等の総合マーケティング支援に従事。 その後、DX/CRM戦略支援会社の株式会社H&Kにて、HubSpot(世界的CRMプラットフォーム)のCRM戦略/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
現在はパーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM戦略/人材法人営業・AI戦略の業務に従事しつつ、 株式会社StartLinkでCRMを軸にした経営基盤DXのコンサルティング/AIを活用した戦略設計を支援。