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ABM(アカウントベースドマーケティング)の概念は理解していても、「具体的にどう戦略を立てればいいのか」「営業チームとどう連携すればいいのか」で悩む企業は少なくありません。ABMは従来のリードベースマーケティングとは根本的にアプローチが異なるため、戦略設計の段階で正しいフレームワークを持つことが成功の鍵を握ります。
ABMで成果を出している企業に共通するのは、「営業とマーケティングが同じ目標に向かって協働している」ことです。両部門が別々のKPIを追いかけている状態では、ABMの本来の力を引き出すことはできません。組織横断のアライメント(整合性)こそが、ABMの最大の成功要因です。
本記事では、ABM戦略を7つのステップで体系的に解説します。各ステップで「何を決め、誰が動き、どう測定するか」を具体的にお伝えしますので、そのまま自社の戦略策定に活用していただけます。
この記事でわかること
- ABM戦略を構築する7つのステップの全体像
- ICP(理想顧客プロファイル)の設計方法
- ターゲットアカウントリストの作り方と優先順位付け
- アカウント別パーソナライゼーションの実践手法
- マルチチャネルでのアカウント攻略アプローチ
- 営業×マーケティング連携を成功させる仕組み
- ABMの効果測定と改善サイクルの回し方
ABM戦略の7ステップ全体像
ABM戦略は以下の7ステップで構築します。ステップ1〜3が「計画フェーズ」、ステップ4〜5が「実行フェーズ」、ステップ6〜7が「測定・改善フェーズ」です。
| ステップ | 内容 | 主担当 | 所要期間目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | ICP(理想顧客プロファイル)の定義 | マーケ×営業 | 1〜2週間 |
| 2 | ターゲットアカウントリストの作成 | マーケ×営業 | 1〜2週間 |
| 3 | アカウント別パーソナライゼーション設計 | マーケ | 2〜3週間 |
| 4 | マルチチャネル施策の実行 | マーケ×営業 | 継続 |
| 5 | 営業連携とハンドオフ設計 | 営業×マーケ | 継続 |
| 6 | 効果測定とKPIモニタリング | マーケ | 月次 |
| 7 | 改善と拡大 | マーケ×営業 | 四半期 |
ステップ1: ICP(理想顧客プロファイル)を定義する
ICPは「自社にとって最も価値のある企業の共通特徴」を言語化したものです。過去の受注データを分析し、以下の観点から定義します。
ICP設計のフレームワーク
フィルモグラフィック(企業属性):
- 業界・業種(SIC/NAICSコード)
- 企業規模(売上高・従業員数)
- 所在地(本社・拠点)
- 成長率・資金調達状況
テクノグラフィック(技術環境):
- 利用中のツール・システム
- IT投資の傾向
- デジタル成熟度
ビヘイビオラル(行動特性):
- 過去の購買パターン
- 情報収集チャネル
- 意思決定プロセス
ICP策定の実践手順
- 受注データを抽出: 過去2〜3年の受注企業リストをCRMから出力
- 高LTV企業を特定: 受注金額×継続率×アップセル実績で上位20%を抽出
- 共通特徴を分析: 上位企業の業界・規模・課題・導入背景の共通点を整理
- ネガティブプロファイルも定義: 「解約率が高い企業」「商談が長期停滞した企業」の共通特徴も把握
- 営業チームの定性情報を加味: データだけでなく、営業現場の肌感覚も反映
ステップ2: ターゲットアカウントリストを作成する
ICPに基づいて、具体的な企業リストを作成し、優先度を付けます。
Tier分けの基準
| Tier | 対象数 | 基準 | アプローチ |
|---|---|---|---|
| Tier 1 | 10〜30社 | ICPに完全合致+大型案件の可能性 | 1to1の完全カスタマイズ |
| Tier 2 | 30〜100社 | ICPにほぼ合致+中型案件の可能性 | セグメント別カスタマイズ |
| Tier 3 | 100〜500社 | ICPの一部合致+育成対象 | テクノロジー活用の自動化 |
リスト作成に使える情報源
- CRMの既存データ(過去の商談・失注・休眠顧客)
- インテントデータ(関連トピックを検索している企業)
- 業界データベース(帝国データバンク、SPEEDA等)
- 営業チームのウィッシュリスト
- 展示会・セミナーの来場者データ
- 競合の導入事例ページ
リスト策定会議の進め方
営業とマーケティングの合同会議で、以下のアジェンダで議論します。
- ICPの確認と合意
- Tier 1候補企業のノミネーション(営業各人が3〜5社提案)
- 各候補のスコアリングと優先順位付け
- Tier 2・3の基準確認とリスト確定
- 各アカウントの担当営業のアサイン
ステップ3: アカウント別パーソナライゼーション設計
ターゲットアカウントごとに、どんなメッセージを、どのチャネルで、誰に届けるかを設計します。
パーソナライゼーションの4レベル
| レベル | 内容 | 工数 | 適用Tier |
|---|---|---|---|
| L1: 業界カスタマイズ | 業界別の課題・事例を反映 | 低 | Tier 3 |
| L2: 企業規模カスタマイズ | 規模に応じたソリューション提案 | 低〜中 | Tier 2-3 |
| L3: 企業固有カスタマイズ | 企業の経営課題・ニュースに基づく提案 | 中〜高 | Tier 1-2 |
| L4: 個人カスタマイズ | キーパーソンの関心・経歴に基づく提案 | 高 | Tier 1 |
コンテンツマッピング
各アカウントの検討フェーズに応じて、提供するコンテンツを設計します。
| フェーズ | コンテンツ例 | 目的 |
|---|---|---|
| 認知 | 業界レポート、市場トレンド記事 | 課題の気づき |
| 興味 | 導入事例(同業種)、比較ガイド | 解決策の理解 |
| 検討 | ROI計算ツール、デモ動画 | 導入効果の具体化 |
| 評価 | 提案書、カスタムデモ | 意思決定の支援 |
ステップ4: マルチチャネル施策を実行する
ターゲットアカウントには複数チャネルから一貫したメッセージを届けます。
ABMで活用する主要チャネル
| チャネル | 施策 | 効果 |
|---|---|---|
| LinkedIn広告 | 企業名指定広告、役職ターゲティング | 認知・興味喚起 |
| パーソナライズドメール | 企業課題に特化したメール | 興味・検討促進 |
| コンテンツマーケティング | 業界特化ブログ、ホワイトペーパー | 信頼構築 |
| ウェビナー・イベント | 業界限定セミナー、ラウンドテーブル | 関係深化 |
| ダイレクトメール | パーソナライズされた郵送物 | 注目獲得 |
| 営業アウトリーチ | 電話・メール・SNS経由のコンタクト | 商談化 |
ポイントは「同じアカウントに、異なるチャネルから、一貫したストーリーで接触する」ことです。チャネル間のメッセージがバラバラにならないよう、コンテンツカレンダーで管理しましょう。
ステップ5: 営業連携とハンドオフを設計する
ABMの最大の差別化ポイントは、営業とマーケティングの緊密な連携です。
連携のための仕組み
共有すべき情報:
- アカウントのエンゲージメントスコア(HubSpotで自動計算)
- キーパーソンのアクティビティ(メール開封、コンテンツ閲覧、サイト訪問)
- アカウントのバイイングシグナル(価格ページの閲覧、デモ動画の視聴など)
定例ミーティングの設計:
| 頻度 | 内容 | 参加者 |
|---|---|---|
| 週次 | Tier 1アカウントの進捗レビュー | 営業担当+マーケ担当 |
| 月次 | 全ターゲットアカウントの状況レビュー | 営業マネージャー+マーケマネージャー |
| 四半期 | ABM戦略全体のレビューと次期計画 | 営業部長+マーケ部長+経営層 |
ハンドオフの基準
マーケからの営業ハンドオフは、以下のようなシグナルに基づいて判断します。
- エンゲージメントスコアが一定閾値を超えた
- 価格ページやデモページを複数回閲覧した
- ホワイトペーパーを3回以上ダウンロードした
- ウェビナーに参加した
- 問い合わせフォームから連絡があった
ステップ6: 効果測定とKPIモニタリング
ABMの効果測定は、従来のMQL数ではなく、アカウント単位の指標で行います。
ABMダッシュボードの構成
| カテゴリ | KPI | 計測頻度 |
|---|---|---|
| リーチ | ターゲットアカウントへの広告インプレッション数 | 週次 |
| エンゲージメント | アカウントエンゲージメントスコア、サイト訪問回数 | 週次 |
| カバレッジ | アカウント内の接触済みキーパーソン数 | 月次 |
| パイプライン | ABM経由の商談数・パイプライン金額 | 月次 |
| 受注 | ABM経由の受注数・受注金額・受注率 | 四半期 |
| ROI | ABMプログラム全体のROI | 四半期 |
ステップ7: 改善と拡大
四半期ごとに以下の観点で振り返り、戦略を改善します。
振り返りチェックリスト:
- ICPの定義は正しかったか(受注企業がICP通りか)
- ターゲットリストの精度は十分だったか
- パーソナライゼーションのレベルは適切だったか
- チャネルミックスの配分は最適だったか
- 営業×マーケの連携は機能していたか
- KPIの目標値は現実的だったか
改善が確認できたら、ターゲットアカウント数を段階的に拡大していきます。
HubSpotでABM戦略を実装する
HubSpotはABM戦略の実行に必要な機能を一つのプラットフォームで提供しています。
- ターゲットアカウントプロパティ: アカウントのTier・ステージ・優先度を管理
- ABMダッシュボード: ターゲットアカウントのエンゲージメント状況を一覧表示
- LinkedIn広告連携: ターゲットリストを直接LinkedIn広告に同期
- ワークフロー: エンゲージメントスコアに基づく営業通知の自動化
- レポート: ABM経由のパイプライン・受注の貢献度を可視化
まとめ
ABM戦略の7ステップを振り返ります。
- ICP定義: 受注データから理想の顧客像を明確化する
- リスト作成: Tier分けでターゲットを優先順位付けする
- パーソナライゼーション: アカウントの課題に応じたコンテンツを設計する
- マルチチャネル実行: 複数チャネルから一貫したメッセージを届ける
- 営業連携: エンゲージメントデータに基づくハンドオフを設計する
- 効果測定: アカウント単位のKPIで成果を可視化する
- 改善・拡大: 四半期ごとに振り返り、段階的にスケールさせる
最も重要なのは、営業とマーケティングが「同じターゲットリストを見て、同じ目標を追いかける」体制を作ることです。HubSpotのABM機能を活用すれば、この連携をデータドリブンに実現できます。
ABM戦略の設計や営業×マーケ連携の仕組みづくりにお悩みの方は、StartLinkにご相談ください。貴社のビジネスモデルに最適なABM戦略の策定から、HubSpotを活用した実装・運用までトータルでサポートいたします。
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著者情報
今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
株式会社StartLinkでは、累計100社以上のHubSpotプロジェクト実績を元にHubSpot×AIを軸にした経営基盤DXのコンサルティング事業を展開。