ABM戦略の立て方7ステップ|営業×マーケ連携で受注率を上げる方法

  • 2026年3月3日

ブログ目次


ABM(アカウントベースドマーケティング)の概念は理解していても、「具体的にどう戦略を立てればいいのか」「営業チームとどう連携すればいいのか」で悩む企業は少なくありません。ABMは従来のリードベースマーケティングとは根本的にアプローチが異なるため、戦略設計の段階で正しいフレームワークを持つことが成功の鍵を握ります。

ABMで成果を出している企業に共通するのは、「営業とマーケティングが同じ目標に向かって協働している」ことです。両部門が別々のKPIを追いかけている状態では、ABMの本来の力を引き出すことはできません。組織横断のアライメント(整合性)こそが、ABMの最大の成功要因です。

本記事では、ABM戦略を7つのステップで体系的に解説します。各ステップで「何を決め、誰が動き、どう測定するか」を具体的にお伝えしますので、そのまま自社の戦略策定に活用していただけます。

この記事でわかること

  • ABM戦略を構築する7つのステップの全体像
  • ICP(理想顧客プロファイル)の設計方法
  • ターゲットアカウントリストの作り方と優先順位付け
  • アカウント別パーソナライゼーションの実践手法
  • マルチチャネルでのアカウント攻略アプローチ
  • 営業×マーケティング連携を成功させる仕組み
  • ABMの効果測定と改善サイクルの回し方

ABM戦略の7ステップ全体像

ABM戦略の立て方7ステップ

ABM戦略は以下の7ステップで構築します。ステップ1〜3が「計画フェーズ」、ステップ4〜5が「実行フェーズ」、ステップ6〜7が「測定・改善フェーズ」です。

ステップ 内容 主担当 所要期間目安
1 ICP(理想顧客プロファイル)の定義 マーケ×営業 1〜2週間
2 ターゲットアカウントリストの作成 マーケ×営業 1〜2週間
3 アカウント別パーソナライゼーション設計 マーケ 2〜3週間
4 マルチチャネル施策の実行 マーケ×営業 継続
5 営業連携とハンドオフ設計 営業×マーケ 継続
6 効果測定とKPIモニタリング マーケ 月次
7 改善と拡大 マーケ×営業 四半期

ステップ1: ICP(理想顧客プロファイル)を定義する

ICPは「自社にとって最も価値のある企業の共通特徴」を言語化したものです。過去の受注データを分析し、以下の観点から定義します。

ICP設計のフレームワーク

フィルモグラフィック(企業属性):

  • 業界・業種(SIC/NAICSコード)
  • 企業規模(売上高・従業員数)
  • 所在地(本社・拠点)
  • 成長率・資金調達状況

テクノグラフィック(技術環境):

  • 利用中のツール・システム
  • IT投資の傾向
  • デジタル成熟度

ビヘイビオラル(行動特性):

  • 過去の購買パターン
  • 情報収集チャネル
  • 意思決定プロセス

ICP策定の実践手順

  1. 受注データを抽出: 過去2〜3年の受注企業リストをCRMから出力
  2. 高LTV企業を特定: 受注金額×継続率×アップセル実績で上位20%を抽出
  3. 共通特徴を分析: 上位企業の業界・規模・課題・導入背景の共通点を整理
  4. ネガティブプロファイルも定義: 「解約率が高い企業」「商談が長期停滞した企業」の共通特徴も把握
  5. 営業チームの定性情報を加味: データだけでなく、営業現場の肌感覚も反映

ステップ2: ターゲットアカウントリストを作成する

ICPに基づいて、具体的な企業リストを作成し、優先度を付けます。

Tier分けの基準

Tier 対象数 基準 アプローチ
Tier 1 10〜30社 ICPに完全合致+大型案件の可能性 1to1の完全カスタマイズ
Tier 2 30〜100社 ICPにほぼ合致+中型案件の可能性 セグメント別カスタマイズ
Tier 3 100〜500社 ICPの一部合致+育成対象 テクノロジー活用の自動化

リスト作成に使える情報源

  • CRMの既存データ(過去の商談・失注・休眠顧客)
  • インテントデータ(関連トピックを検索している企業)
  • 業界データベース(帝国データバンク、SPEEDA等)
  • 営業チームのウィッシュリスト
  • 展示会・セミナーの来場者データ
  • 競合の導入事例ページ

リスト策定会議の進め方

営業とマーケティングの合同会議で、以下のアジェンダで議論します。

  1. ICPの確認と合意
  2. Tier 1候補企業のノミネーション(営業各人が3〜5社提案)
  3. 各候補のスコアリングと優先順位付け
  4. Tier 2・3の基準確認とリスト確定
  5. 各アカウントの担当営業のアサイン

ステップ3: アカウント別パーソナライゼーション設計

ターゲットアカウントごとに、どんなメッセージを、どのチャネルで、誰に届けるかを設計します。

パーソナライゼーションの4レベル

レベル 内容 工数 適用Tier
L1: 業界カスタマイズ 業界別の課題・事例を反映 Tier 3
L2: 企業規模カスタマイズ 規模に応じたソリューション提案 低〜中 Tier 2-3
L3: 企業固有カスタマイズ 企業の経営課題・ニュースに基づく提案 中〜高 Tier 1-2
L4: 個人カスタマイズ キーパーソンの関心・経歴に基づく提案 Tier 1

コンテンツマッピング

各アカウントの検討フェーズに応じて、提供するコンテンツを設計します。

フェーズ コンテンツ例 目的
認知 業界レポート、市場トレンド記事 課題の気づき
興味 導入事例(同業種)、比較ガイド 解決策の理解
検討 ROI計算ツール、デモ動画 導入効果の具体化
評価 提案書、カスタムデモ 意思決定の支援

ステップ4: マルチチャネル施策を実行する

ターゲットアカウントには複数チャネルから一貫したメッセージを届けます。

ABMで活用する主要チャネル

チャネル 施策 効果
LinkedIn広告 企業名指定広告、役職ターゲティング 認知・興味喚起
パーソナライズドメール 企業課題に特化したメール 興味・検討促進
コンテンツマーケティング 業界特化ブログ、ホワイトペーパー 信頼構築
ウェビナー・イベント 業界限定セミナー、ラウンドテーブル 関係深化
ダイレクトメール パーソナライズされた郵送物 注目獲得
営業アウトリーチ 電話・メール・SNS経由のコンタクト 商談化

ポイントは「同じアカウントに、異なるチャネルから、一貫したストーリーで接触する」ことです。チャネル間のメッセージがバラバラにならないよう、コンテンツカレンダーで管理しましょう。

ステップ5: 営業連携とハンドオフを設計する

ABMの最大の差別化ポイントは、営業とマーケティングの緊密な連携です。

連携のための仕組み

共有すべき情報:

  • アカウントのエンゲージメントスコア(HubSpotで自動計算)
  • キーパーソンのアクティビティ(メール開封、コンテンツ閲覧、サイト訪問)
  • アカウントのバイイングシグナル(価格ページの閲覧、デモ動画の視聴など)

定例ミーティングの設計:

頻度 内容 参加者
週次 Tier 1アカウントの進捗レビュー 営業担当+マーケ担当
月次 全ターゲットアカウントの状況レビュー 営業マネージャー+マーケマネージャー
四半期 ABM戦略全体のレビューと次期計画 営業部長+マーケ部長+経営層

ハンドオフの基準

マーケからの営業ハンドオフは、以下のようなシグナルに基づいて判断します。

  • エンゲージメントスコアが一定閾値を超えた
  • 価格ページやデモページを複数回閲覧した
  • ホワイトペーパーを3回以上ダウンロードした
  • ウェビナーに参加した
  • 問い合わせフォームから連絡があった

ステップ6: 効果測定とKPIモニタリング

ABMの効果測定は、従来のMQL数ではなく、アカウント単位の指標で行います。

ABMダッシュボードの構成

カテゴリ KPI 計測頻度
リーチ ターゲットアカウントへの広告インプレッション数 週次
エンゲージメント アカウントエンゲージメントスコア、サイト訪問回数 週次
カバレッジ アカウント内の接触済みキーパーソン数 月次
パイプライン ABM経由の商談数・パイプライン金額 月次
受注 ABM経由の受注数・受注金額・受注率 四半期
ROI ABMプログラム全体のROI 四半期

ステップ7: 改善と拡大

四半期ごとに以下の観点で振り返り、戦略を改善します。

振り返りチェックリスト:

  • ICPの定義は正しかったか(受注企業がICP通りか)
  • ターゲットリストの精度は十分だったか
  • パーソナライゼーションのレベルは適切だったか
  • チャネルミックスの配分は最適だったか
  • 営業×マーケの連携は機能していたか
  • KPIの目標値は現実的だったか

改善が確認できたら、ターゲットアカウント数を段階的に拡大していきます。

HubSpotでABM戦略を実装する

HubSpotはABM戦略の実行に必要な機能を一つのプラットフォームで提供しています。

  • ターゲットアカウントプロパティ: アカウントのTier・ステージ・優先度を管理
  • ABMダッシュボード: ターゲットアカウントのエンゲージメント状況を一覧表示
  • LinkedIn広告連携: ターゲットリストを直接LinkedIn広告に同期
  • ワークフロー: エンゲージメントスコアに基づく営業通知の自動化
  • レポート: ABM経由のパイプライン・受注の貢献度を可視化

まとめ

ABM戦略の7ステップを振り返ります。

  1. ICP定義: 受注データから理想の顧客像を明確化する
  2. リスト作成: Tier分けでターゲットを優先順位付けする
  3. パーソナライゼーション: アカウントの課題に応じたコンテンツを設計する
  4. マルチチャネル実行: 複数チャネルから一貫したメッセージを届ける
  5. 営業連携: エンゲージメントデータに基づくハンドオフを設計する
  6. 効果測定: アカウント単位のKPIで成果を可視化する
  7. 改善・拡大: 四半期ごとに振り返り、段階的にスケールさせる

最も重要なのは、営業とマーケティングが「同じターゲットリストを見て、同じ目標を追いかける」体制を作ることです。HubSpotのABM機能を活用すれば、この連携をデータドリブンに実現できます。

ABM戦略の設計や営業×マーケ連携の仕組みづくりにお悩みの方は、StartLinkにご相談ください。貴社のビジネスモデルに最適なABM戦略の策定から、HubSpotを活用した実装・運用までトータルでサポートいたします。

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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLinkの代表取締役。
HubSpotのトップパートナーである株式会社H&Kにて、HubSpotのCRM戦略/設計/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。 パーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM/SFA戦略の策定・PERSOLグループ横断のグループAI戦略/企画/開発ディレクションの業務を遂行経験あり。
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