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HubSpotとChatGPTのディープリサーチ連携が、CRMデータ活用の新たなアプローチとして注目を集めています。
生成AIが急速に進化する中で、「データはあるが活かしきれていない」という課題を抱える企業は少なくありません。営業やマーケティング、カスタマーサクセスといった各部門において、日々の業務に埋もれがちな情報を的確に可視化し、意思決定を支援する仕組みが求められています。
そうしたニーズに応えるのが、HubSpotとChatGPTの連携によって実現した「ディープリサーチ」機能です。特別なスキルや手間をかけることなく、CRMに蓄積された情報を自然言語で問いかけるだけで、状況把握や施策立案に直結するインサイトが得られます。
本記事では、2025年6月に正式リリースされたHubSpotディープリサーチ機能の全体像を整理し、営業・マーケティング・カスタマーサクセスといった各部門での実践的な活用シナリオを検証・解説します。 あくまで新機能の検証確認、というような立ち位置で本記事は参考にしていただければと思います。
なぜ今、HubSpotとChatGPTのディープリサーチが注目されているのか?
2025年6月、HubSpotはOpenAIのChatGPTと公式連携し、CRMとして初めて「HubSpotディープリサーチコネクター」を公開しました。この機能により、コンタクト、会社、取引、チケットなどのHubSpot内データをChatGPTが直接参照し、自然言語での対話形式による高度な分析が可能になりました。
引用:HubSpotアカウントをChatGPTのディープリサーチに接続
HubSpotを連携したChatGPT「ディープリサーチ」の2つの活用スタイル
HubSpotディープリサーチの活用法は、大きく以下の2つに分類できます。
1. HubSpotの単一レコードの詳細分析
特定のHubSpotのコンタクト・会社・取引レコードに対し、活動履歴、行動ログ、プロパティ情報などをもとに、深掘りした洞察を生成できます。たとえば、営業担当が商談前に「この企業との接触履歴を時系列で整理し、次の打ち手を考えて」と依頼することで、過去の活動に基づく提案を得ることが可能です。
このアプローチは、以下のようなシーンで効果を発揮します:
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営業担当による商談前の事前調査
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CS担当者による契約更新時のリスク診断
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マーケ担当者によるABMターゲットの精査
実際の業務では、ChatGPTの出力結果をHubSpotの詳細レコード内にピン留めし、社内の共有情報として更新する運用も推奨できます。
2. HubSpotの複数レコードを横断した傾向分析
取引・コンタクト・チケットなどのデータを横断的に集計し、ChatGPTがトレンドや課題を言語化します。たとえば、「今四半期の取引ステータスの分布を分析して、停滞要因を洗い出して」といった依頼に対し、戦略的インサイトを提示することが可能です。HubSpotレポートだけを見ただけでは、 社内のメンバーがどのような改善をしたらよいかや、現状の課題は何かといった考察が難しい場合には、ChatGPTに上記の考察をさせることでプロジェクトの推進ができる可能性もあります。
ただし数値精度は現状どの程度かは検証次第であるのと、正しい「正の数字」はやはりHubSpotのレポートを確認した方が良いかと思いますので、あくまで数値の動向から確認する傾向やそこに対する考察といった部分で、Deep Researchを活用すると良いかと思っております。
以下では、実際にこの2つの活用スタイルを各部門でどう展開するかを見ていきます。
営業チームでの活用:AIでの取引傾向分析と改善アクション
営業現場では、ChatGPTのディープリサーチを活用することで、商談データや営業活動ログをChatGPTが多角的に分析し、より高精度なパイプラインマネジメントが可能になります。
たとえば「今月末にクローズ予定の案件を一覧化し、予測売上と併せて要約して」とプロンプトを投げかければ、ChatGPTがHubSpotの取引情報を整理し、各営業担当者ごとの商談状況を要約します。これにより、営業マネージャーはパイプライン全体の状況を迅速に把握でき、週次レビューや報告資料の作成が不要になります。
また、ホットリードの発見にも活用できます。「直近30日で顧客との接触頻度が高く、反応の良い商談を優先度順に並べて」と依頼すれば、活動ログ(メール開封率やミーティング数など)をもとに、注力すべき商談が可視化されます。営業担当者は、フォーカスすべき案件を見極めやすくなり、受注確度の高い商談に集中できます。
マーケティングでの活用:ABM戦略でのAIによる顧客分析
マーケティングでは、ディープリサーチによってリードのセグメント分析や、キャンペーンの効果測定が高度化します。
ABM(アカウントベースドマーケティング)戦略においては、「業界別に直近90日で最も反応の良かった企業をリスト化して」と依頼することで、企業規模・過去の反応率・訪問ページなどのデータをもとに、営業と連携すべきアカウント候補を抽出できます。 また特定のターゲットアカウントに対して過去の取引実績や現在の営業担当からのアクティビティなどを詳細出力したり、今までのカスタマージャーニーを可視化したりというところも可能です。
実際に「特定のXXX社との取引実績や過去の接点を時系列で整理し、今後の戦略を検討する」という調査では、かなり精度の高い形で調査結果を出すことが可能でしたので、人力で整理していた作業を代替し、なおかつ包括的な戦略を考えるというところは可能性が十分に考えられます。
管理部門での活用:HubSpotユーザーのログイン実績やアクション履歴
その他に今後検討されるものとしては、「HubSpotのユーザーがどのようなアクションをしているか」というような分析をするということも検討できる可能性があります。現状、監査ログという機能でユーザーの行動ログがHubSpotの中で確認可能なのですが、レポート化や集計という観点では少し使いづらい機能になっております。そこをDeep ResearchのAPI経由でデータを取得し、集計することで一定の傾向を確認することもできる可能性があります。
他にも、何かHubSpot内で問題が起きたときに、そこに関する情報を調査するなどのガバナンス観点で活用できる可能性もあります。 一方で注意点もありますので、下記にて記載いたします。
HubSpotと連携したディープリサーチ機能の制約・運用上の注意点
HubSpot連携を軸としたディープリサーチは非常に柔軟な調査・分析支援ツールですが、現時点では以下の点に留意が必要だと思っております。
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数値の正確性は100%保証されないため、レポート用途ではHubSpot本体のレポート機能との併用が推奨されます。
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HubSpot上のレコードのアクセス範囲がどこまでかを把握し、アクセスできる情報に制限がかかるケースを想定しておく必要があります。(こちらを要因として数値が正確に集計できない調査結果が出る可能性もあるため、関連した注意点)
まとめ:業務に根ざしたHubSpot連携のディープリサーチお活用へ
HubSpotディープリサーチは、単なる実験的なAI連携機能にとどまらず、営業・マーケ・管理といった実務において即効性のある分析補助機能として 活用できる可能性があります。
「まずは取引パイプライン分析から」「XXXという会社との過去の取引ログや接点を時系列に整理する」など、スモールスタートで導入し、成果が出たタイミングで部門横断展開していくことが理想的です。
ディープリサーチの活用を、自社の次なる成長施策の一手として検討されてはいかがでしょうか。
以上です。
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著者情報

今枝 拓海 / Takumi Imaeda
株式会社StartLink(スタートリンク)の代表取締役。
学生時代に地域活性化事業のスタートアップを共同創業し事業立ち上げを経験。
広告戦略支援会社にてSEO設計/Web広告戦略・運用等の総合マーケティング支援に従事。
その後、DX/CRM戦略支援会社の株式会社H&Kにて、HubSpot(世界的CRMプラットフォーム)のCRM戦略/構築を軸として、
国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
現在はパーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM戦略/人材法人営業・AI戦略の業務に従事しつつ、
株式会社StartLinkでCRMを軸にした経営基盤DXのコンサルティング/AIを活用した戦略設計を支援。