部門別損益計算は、直接費→部門管理費→共通費配賦の3層構造で設計し、最も重要な指標は「部門貢献利益」です。配賦基準は因果関係・簡便性・一貫性の3原則に基づいて設計し、完璧な精度よりも運用可能なシンプルさを優先します。全社利益率20%でも部門別に見ると赤字部門が隠れているケースは珍しくありません。
「全社のP/Lは見ているが、どの部門がどれだけ稼いでいるかわからない」——複数の事業を展開する企業にとって、部門別損益の把握は経営の基本です。にもかかわらず、全社のP/Lしか作成していない中小企業は少なくありません。
部門別損益計算とは、企業の利益を事業部門やサービスライン別に分解して把握する管理会計の手法です。部門別のP/Lが見えることで、「どの事業に投資すべきか」「どの事業を縮小・撤退すべきか」という戦略的な判断が可能になります。
本記事では、部門別損益計算の具体的な方法を、配賦基準の設計から月次レポートの運用まで解説します。
本記事は「中小企業の予算管理|基本の進め方とExcel脱却のタイミング」シリーズの一部です。
本記事はStartLinkの「経営管理DX完全ガイド」関連記事です。
本記事を通じて、経営管理における重要な判断基準と、組織として取り組むべきアクションが明確になります。自社の経営基盤を強化したい方は、ぜひ参考にしてください。
全社P/Lで営業利益率10%の企業でも、部門別に見ると以下のような実態が隠れていることがあります。
| 部門 | 売上 | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| A事業(コンサル) | 5,000万 | 1,500万 | 30% |
| B事業(SaaS) | 3,000万 | -200万 | -7% |
| C事業(受託開発) | 2,000万 | 700万 | 35% |
| 全社合計 | 1億 | 2,000万 | 20% |
この場合、B事業の赤字がA事業とC事業の利益を食っている状態です。全社P/Lだけ見ていると、B事業の問題に気づきにくく、対策が遅れます。
部門別P/Lは、以下の3層構造で設計します。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 売上高 | 各部門の売上 |
| 売上原価(直接) | 外注費、仕入原価、部門専属人件費 |
| 部門粗利 | 売上 - 直接原価 |
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 部門人件費 | 部門メンバーの給与・社保 |
| 部門経費 | 旅費交通費、交際費、部門固有のSaaS費用 |
| 部門貢献利益 | 粗利 - 部門管理費 |
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 本社経費配賦 | 家賃、管理部門人件費、全社共通システム費 |
| 部門営業利益 | 貢献利益 - 共通費配賦 |
実務では、第2層の「部門貢献利益」が最も重要な指標です。部門貢献利益がプラスであれば、その部門は共通費の一部をカバーしており、全社の利益に貢献しています。
間接費(共通費)をどのように各部門に配分するかが、部門別損益計算の最大の論点です。
| 間接費 | 推奨配賦基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| オフィス家賃 | 占有面積比 | 使用する物理スペースに応じて |
| 管理部門人件費 | 売上比 or 人数比 | 管理対象の規模に応じて |
| 全社IT費用 | アカウント数比 | 利用人数に応じて |
| 役員報酬 | 売上比 | 経営全体への貢献度合い |
| 広告宣伝費 | 部門別の直接配分 or 売上比 | 広告の受益者に応じて |
| 減価償却費 | 資産の利用実態 | 設備を使用する部門に |
会計ソフトの売上データを部門別に集計します。CRMで営業データを管理している場合は、CRMの受注データと会計データを突合させます。
各部門に直接紐づく費用(外注費、部門メンバーの人件費等)を集計します。
事前に設計した配賦基準に基づいて、共通費を各部門に配分します。
| 項目 | A事業 | B事業 | C事業 | 共通 | 全社 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 500 | 300 | 200 | - | 1,000 |
| 直接原価 | 150 | 180 | 80 | - | 410 |
| 粗利 | 350 | 120 | 120 | - | 590 |
| 部門管理費 | 100 | 80 | 50 | - | 230 |
| 貢献利益 | 250 | 40 | 70 | - | 360 |
| 共通費配賦 | 80 | 48 | 32 | -160 | 0 |
| 営業利益 | 170 | -8 | 38 | -160 | 200 |
前月・前年同期・予算との比較を行い、変動が大きい項目について原因を分析します。
主要な間接費について、実際の活動量(工数、処理件数等)に基づいて配賦することで精度が上がります。完全なABCは負荷が高いですが、金額の大きい費目だけでも活動量ベースに切り替えると効果的です。ABC活動基準原価計算も参考にしてください。
管理部門のメンバーが各部門の業務にどれだけ時間を使っているかを記録することで、人件費の配賦精度が向上します。
事業構造が変化したら、配賦基準も見直します。半期に1回程度のレビューが推奨です。
部門別損益をさらに深掘りする方法として、顧客別の収益分析があります。CRMに蓄積された顧客データと管理会計データを紐づけることで、「どの顧客が最も利益貢献しているか」「赤字顧客はいないか」を可視化できます。
HubSpotのカスタムプロパティに顧客別の売上・原価を記録し、レポートで可視化すれば、営業チームが収益性を意識した提案を行えるようになります。管理会計の導入ステップで述べたPhase 4の顧客別分析に直結する取り組みです。
部門別損益計算の方法を実務に落とし込むには、CRMツールの活用が不可欠です。詳しくは「経営ダッシュボードの作り方|KPIを一覧で可視化する設計手順」で解説しています。
部門別損益計算に取り組むなら、CRMツールの活用が効果的です。以下の記事でHubSpotを使った具体的な実践方法を解説しています。
「部門貢献利益」が最も重要です。部門貢献利益=粗利−部門管理費で算出され、これがプラスであればその部門は共通費の一部をカバーしており、全社の利益に貢献しています。共通費配賦後の営業利益よりも、部門貢献利益で事業の健全性を判断してください。
会計ソフトの仕訳に部門コードを付与する作業が主な手間です。freeeやマネーフォワードでは部門タグを使って仕訳を分類でき、最初は3〜5部門の大括りで始めれば十分です。配賦基準は因果関係・簡便性・一貫性の3原則に基づいてシンプルに設計しましょう。
はい。全社利益率20%の企業でも、部門別に見るとある事業が赤字で他の事業の利益を食っているケースは珍しくありません。赤字部門の早期発見と対策のために、部門別損益の把握は企業規模を問わず重要です。
予算管理や管理会計の仕組みづくりでお悩みの方は、HubSpotとfreeeを活用した経営数値の可視化をStartLinkがサポートします。Excelからの脱却と、リアルタイムな経営判断を支える基盤づくりをご提案します。
まずはお気軽にご相談ください。現状の課題をヒアリングし、最適なアプローチをご提案します。