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部門別損益計算の方法|配賦基準の設計から月次レポートまで

作成者: 今枝 拓海|2026/03/04 16:13:24

部門別損益計算は、直接費→部門管理費→共通費配賦の3層構造で設計し、最も重要な指標は「部門貢献利益」です。配賦基準は因果関係・簡便性・一貫性の3原則に基づいて設計し、完璧な精度よりも運用可能なシンプルさを優先します。全社利益率20%でも部門別に見ると赤字部門が隠れているケースは珍しくありません。

「全社のP/Lは見ているが、どの部門がどれだけ稼いでいるかわからない」——複数の事業を展開する企業にとって、部門別損益の把握は経営の基本です。にもかかわらず、全社のP/Lしか作成していない中小企業は少なくありません。

部門別損益計算とは、企業の利益を事業部門やサービスライン別に分解して把握する管理会計の手法です。部門別のP/Lが見えることで、「どの事業に投資すべきか」「どの事業を縮小・撤退すべきか」という戦略的な判断が可能になります。

本記事では、部門別損益計算の具体的な方法を、配賦基準の設計から月次レポートの運用まで解説します。

本記事は「中小企業の予算管理|基本の進め方とExcel脱却のタイミング」シリーズの一部です。

本記事はStartLinkの「経営管理DX完全ガイド」関連記事です。

この記事でわかること

  • 全社利益率20%の企業に赤字部門が隠れる構造と部門別損益の必要性
  • 直接費→部門管理費→共通費配賦の3層構造による部門別P/Lの設計
  • 間接費配賦の因果関係・簡便性・一貫性の3原則と具体的な配賦基準例
  • 月次レポートの作成手順(5ステップ)と差異分析の進め方

本記事を通じて、経営管理における重要な判断基準と、組織として取り組むべきアクションが明確になります。自社の経営基盤を強化したい方は、ぜひ参考にしてください。

部門別損益が必要な理由

全社P/Lで営業利益率10%の企業でも、部門別に見ると以下のような実態が隠れていることがあります。

部門 売上 営業利益 利益率
A事業(コンサル) 5,000万 1,500万 30%
B事業(SaaS) 3,000万 -200万 -7%
C事業(受託開発) 2,000万 700万 35%
全社合計 1億 2,000万 20%

この場合、B事業の赤字がA事業とC事業の利益を食っている状態です。全社P/Lだけ見ていると、B事業の問題に気づきにくく、対策が遅れます。

部門別P/Lの構造

部門別P/Lは、以下の3層構造で設計します。

第1層:直接費(その部門に直接紐づく費用)

項目
売上高 各部門の売上
売上原価(直接) 外注費、仕入原価、部門専属人件費
部門粗利 売上 - 直接原価

第2層:部門管理費(部門が管理できる経費)

項目
部門人件費 部門メンバーの給与・社保
部門経費 旅費交通費、交際費、部門固有のSaaS費用
部門貢献利益 粗利 - 部門管理費

第3層:共通費の配賦

項目
本社経費配賦 家賃、管理部門人件費、全社共通システム費
部門営業利益 貢献利益 - 共通費配賦

実務では、第2層の「部門貢献利益」が最も重要な指標です。部門貢献利益がプラスであれば、その部門は共通費の一部をカバーしており、全社の利益に貢献しています。

配賦基準の設計方法

間接費(共通費)をどのように各部門に配分するかが、部門別損益計算の最大の論点です。

主な配賦基準

間接費 推奨配賦基準 根拠
オフィス家賃 占有面積比 使用する物理スペースに応じて
管理部門人件費 売上比 or 人数比 管理対象の規模に応じて
全社IT費用 アカウント数比 利用人数に応じて
役員報酬 売上比 経営全体への貢献度合い
広告宣伝費 部門別の直接配分 or 売上比 広告の受益者に応じて
減価償却費 資産の利用実態 設備を使用する部門に

配賦基準設計の3原則

  1. 因果関係の原則:費用と部門の間に合理的な因果関係がある基準を選ぶ
  2. 簡便性の原則:完璧な配賦よりも、運用可能な簡便さを優先する
  3. 一貫性の原則:一度決めた基準は頻繁に変更しない(比較可能性を確保)

月次レポートの作成手順

手順1:売上データの部門別集計

会計ソフトの売上データを部門別に集計します。CRMで営業データを管理している場合は、CRMの受注データと会計データを突合させます。

手順2:直接費の部門別集計

各部門に直接紐づく費用(外注費、部門メンバーの人件費等)を集計します。

手順3:共通費の配賦計算

事前に設計した配賦基準に基づいて、共通費を各部門に配分します。

手順4:部門別P/Lの作成

項目 A事業 B事業 C事業 共通 全社
売上高 500 300 200 - 1,000
直接原価 150 180 80 - 410
粗利 350 120 120 - 590
部門管理費 100 80 50 - 230
貢献利益 250 40 70 - 360
共通費配賦 80 48 32 -160 0
営業利益 170 -8 38 -160 200

手順5:差異分析とレポート

前月・前年同期・予算との比較を行い、変動が大きい項目について原因を分析します。

配賦の精度を上げるポイント

ポイント1:ABC(活動基準原価計算)の簡易版を導入

主要な間接費について、実際の活動量(工数、処理件数等)に基づいて配賦することで精度が上がります。完全なABCは負荷が高いですが、金額の大きい費目だけでも活動量ベースに切り替えると効果的です。ABC活動基準原価計算も参考にしてください。

ポイント2:時間記録の導入

管理部門のメンバーが各部門の業務にどれだけ時間を使っているかを記録することで、人件費の配賦精度が向上します。

ポイント3:定期的な配賦基準の見直し

事業構造が変化したら、配賦基準も見直します。半期に1回程度のレビューが推奨です。

CRMデータを活用した顧客別収益分析

部門別損益をさらに深掘りする方法として、顧客別の収益分析があります。CRMに蓄積された顧客データと管理会計データを紐づけることで、「どの顧客が最も利益貢献しているか」「赤字顧客はいないか」を可視化できます。

HubSpotのカスタムプロパティに顧客別の売上・原価を記録し、レポートで可視化すれば、営業チームが収益性を意識した提案を行えるようになります。管理会計の導入ステップで述べたPhase 4の顧客別分析に直結する取り組みです。

CRMで実現する部門別損益計算の方法

部門別損益計算の方法を実務に落とし込むには、CRMツールの活用が不可欠です。詳しくは「経営ダッシュボードの作り方|KPIを一覧で可視化する設計手順」で解説しています。

次のステップ

部門別損益計算に取り組むなら、CRMツールの活用が効果的です。以下の記事でHubSpotを使った具体的な実践方法を解説しています。

関連記事

まとめ

  • 全社利益率20%でも部門別に見ると赤字部門が隠れているケースは珍しくない
  • 直接費→部門管理費→共通費配賦の3層構造で部門別P/Lを設計する
  • 「部門貢献利益」が最も重要な指標であり、プラスなら全社利益に貢献
  • 配賦基準は因果関係・簡便性・一貫性の3原則に基づき、80点の精度で運用を開始
  • CRMの顧客データと連携すれば、さらに顧客別収益性分析まで深掘りが可能

よくある質問(FAQ)

Q1. 部門別損益計算で最も重要な指標は何ですか?

「部門貢献利益」が最も重要です。部門貢献利益=粗利−部門管理費で算出され、これがプラスであればその部門は共通費の一部をカバーしており、全社の利益に貢献しています。共通費配賦後の営業利益よりも、部門貢献利益で事業の健全性を判断してください。

Q2. 部門別損益の導入にはどのくらいの手間がかかりますか?

会計ソフトの仕訳に部門コードを付与する作業が主な手間です。freeeやマネーフォワードでは部門タグを使って仕訳を分類でき、最初は3〜5部門の大括りで始めれば十分です。配賦基準は因果関係・簡便性・一貫性の3原則に基づいてシンプルに設計しましょう。

Q3. 全社利益率が高くても部門別損益を把握する必要がありますか?

はい。全社利益率20%の企業でも、部門別に見るとある事業が赤字で他の事業の利益を食っているケースは珍しくありません。赤字部門の早期発見と対策のために、部門別損益の把握は企業規模を問わず重要です。

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