「大口顧客を狙ったアカウントベースドマーケティング(ABM)を始めたいが、何から手をつければよいか分からない」
「ターゲット企業にアプローチしているが、組織的にどの担当者にリーチできているか把握できていない」
——こうした課題を持つBtoBマーケティング・営業チームは少なくありません。
HubSpotのターゲットアカウント機能は、ABM(Account-Based Marketing)を実行するための専用ツールセットです。ICP(理想顧客プロファイル)の定義、ターゲットアカウントの指定、アカウントレベルのエンゲージメント追跡、購買委員会(Buying Committee)の管理を一元的に行えます。
この記事では、HubSpotのターゲットアカウント機能を活用してABMを推進するための設定手順・運用方法・効果測定までを体系的に解説します。
この記事でわかること
本記事はStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。
ABM(Account-Based Marketing)とインバウンドマーケティングは対立する概念ではなく、補完関係にあります。HubSpotでは両方のアプローチを統合的に運用できる点が大きな強みです。
| 項目 | インバウンドマーケティング | ABM |
|---|---|---|
| アプローチ | 広く集客 → 絞り込み | 最初から絞り込み → 深掘り |
| ターゲット | 個人(コンタクト) | 企業(アカウント) |
| KPI | リード数、MQL数 | ターゲットアカウントのエンゲージメント |
| コンテンツ | 汎用的な教育コンテンツ | 企業固有のパーソナライズコンテンツ |
| 適する商材 | 月額〜数十万円の中単価商材 | 年額数百万円以上の高単価商材 |
| HubSpotの機能 | ブログ、フォーム、ワークフロー | ターゲットアカウント、ABMダッシュボード |
Terminus社の調査によれば、ABMを導入した企業の87%がインバウンドマーケティングと併用しており、「どちらか一方」ではなく「両方を使い分ける」のが現代のBtoBマーケティングの主流です。
ICPの定義は、既存の優良顧客のデータを分析することから始めます。以下の要素を整理します。
| カテゴリ | 項目 | 例 |
|---|---|---|
| 企業属性 | 業種 | SaaS、製造、コンサルティング |
| 企業属性 | 従業員数 | 50〜500名 |
| 企業属性 | 年商 | 5億〜50億円 |
| 企業属性 | 地域 | 東京、大阪、名古屋 |
| 組織特性 | 部門 | マーケティング部門が存在する |
| 組織特性 | 決裁プロセス | CxOレベルの承認が必要 |
| 課題 | ビジネス課題 | リード獲得の効率化、CRMの統合 |
| テクノロジー | 使用ツール | Salesforce、Excel管理からの移行 |
HubSpotのBreeze AIを活用すると、過去の受注データを分析し、ICPに適合する企業の特徴を自動的に抽出してくれます。たとえば「従業員数100〜300名のIT企業が最も受注率が高い」といったインサイトが得られます。
HubSpotでターゲットアカウントを指定するには、会社レコードの「ターゲットアカウント」プロパティを「はい」に設定します。登録方法は3つあります。
ABMの効果を最大化するには、ターゲットアカウントの数を適切にコントロールする必要があります。
| チーム規模 | 推奨ターゲットアカウント数 | 理由 |
|---|---|---|
| 営業1〜3名 | 20〜50社 | 一人あたり10〜20社に注力 |
| 営業4〜10名 | 50〜200社 | チーム全体でカバー |
| 営業11名以上 | 200〜500社 | Tier分けで優先度管理 |
ターゲットアカウント数が多すぎると、各アカウントへのアプローチが薄くなり、ABMの強み(深い関係構築)が失われます。Demandbase社の調査では、ABMの成果が高い企業は1営業あたり平均15社のターゲットアカウントに集中しているとされています。
ターゲットアカウントをさらに3段階のTierに分類し、リソース配分を最適化します。
| Tier | 基準 | アプローチ方法 | リソース配分 |
|---|---|---|---|
| Tier 1 | ICPに完全合致 + 購買シグナルあり | 1:1パーソナライズ | 60% |
| Tier 2 | ICPに合致 | セグメント別カスタマイズ | 30% |
| Tier 3 | ICPの一部合致 | プログラマティック(自動化) | 10% |
HubSpotのターゲットアカウント機能では、アカウント(会社)レベルのエンゲージメントを自動的にスコアリングします。個人レベルのスコアだけでなく、「この企業全体として、どれくらい自社に関心を持っているか」を可視化できます。
エンゲージメントスコアは以下の要素で構成されます。
ターゲットアカウントのエンゲージメント推移を時系列で追跡することで、以下の判断が可能になります。
BtoBの高単価商材では、意思決定が一人で行われることはほとんどありません。複数の関係者(購買委員会)が関与し、それぞれ異なる視点で導入を検討します。HubSpotでは、各コンタクトに「購買役割(Buying Role)」を割り当てることで、購買委員会の構成を管理できます。
| 役割 | 定義 | アプローチのポイント |
|---|---|---|
| 意思決定者(Decision Maker) | 最終承認権限を持つ | ROI・経営インパクトの訴求 |
| 予算管理者(Budget Holder) | 予算配分の権限を持つ | コスト対効果・投資回収期間 |
| チャンピオン(Champion) | 社内推進者・味方 | 社内説得用の資料提供 |
| インフルエンサー(Influencer) | 間接的に影響力を持つ | 専門的なデモ・事例共有 |
| エンドユーザー | 実際に使用する人 | 操作性・導入のしやすさ |
| ブロッカー(Blocker) | 導入に反対する人 | 懸念の解消・代替案の提示 |
ABMの成功には、ターゲットアカウントの購買委員会メンバー全員にリーチすることが重要です。
6sense社のデータによれば、購買委員会の4名以上にリーチしている商談は、1名のみの商談と比較して受注率が3.2倍高いとされています。
| レポート名 | 表示形式 | 目的 |
|---|---|---|
| ターゲットアカウント概要 | 数値カード | 全体のアカウント数・エンゲージメント平均 |
| Tier別エンゲージメント | 棒グラフ | Tier間のエンゲージメント差を可視化 |
| 購買委員会カバー率 | ゲージ | 各アカウントの意思決定者へのリーチ状況 |
| アカウント別パイプライン | テーブル | ターゲットアカウントの取引進捗一覧 |
| エンゲージメントトレンド | 折れ線グラフ | 月次のエンゲージメント推移 |
HubSpotには、ABM専用のダッシュボードテンプレートが用意されています。「レポート」→「ダッシュボード」→「新規作成」→「ABM」 を選択すると、ABMに最適化されたレポートが自動配置されたダッシュボードが生成されます。
ターゲットアカウント機能は、Marketing Hub Professional以上、またはSales Hub Professional以上で利用できます。ABMダッシュボードテンプレートやAIによるICP推奨機能もProfessional以上で利用可能です。無料プランやStarterプランでは、手動でのターゲットアカウント管理(プロパティの設定)のみ可能です。
HubSpotではターゲットアカウントの数に技術的な上限はありません。ただし、ABMの効果を最大化するにはチーム規模に応じた適切な数に絞ることが重要です。全ての会社をターゲットアカウントに設定してしまうと、ABMの「集中投資」という本来の目的が失われます。
はい、ABMとリードスコアリングの併用を強く推奨します。ABMはアカウントレベル(企業単位)の優先度を決定し、リードスコアリングはコンタクトレベル(個人単位)の優先度を決定します。「ターゲットアカウントに属する高スコアのコンタクト」が、最も優先的にフォローすべきリードです。
ABMの効果測定では、従来のリード数ベースのKPIではなく、アカウントベースの指標を使用します。具体的には、ターゲットアカウントからの商談創出数、ターゲットアカウントの受注率、ターゲットアカウントの平均取引額、購買委員会のカバー率などが主要な指標です。HubSpotのABMダッシュボードでこれらを一元的に監視できます。
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