HubSpotの基本的な使い方とは?HubSpot CRMの基本機能と活用を一挙に解説(基礎編)

HubSpotの基本的な使い方

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お世話になっております。株式会社StartLinkの今枝と申します。

本日はHubSpotの基礎設計から実務運用までをトータルでご説明できればと考えています。HubSpotは「難しそう」「何から手をつければいいか分からない」といったイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、実はたったこれだけの簡単な設定で、すぐに実務で使える状態にすることができます。

この記事を一度ご覧いただければ、HubSpotの基礎部分を理解し、今日から運用を始められるかと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただければと思います!

そもそもHubSpotってどういう仕組み?データ構成の基本を理解しよう

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HubSpotを使い始める前に、まずHubSpotがどのようなデータの仕組みで動いているのかを理解することが大切です。HubSpotは、ただの顧客リストではありません。データを有機的に結びつけ、業務を効率化するためのプラットフォームとして設計されています。

HubSpotの基本は「オブジェクト」と「プロパティ」


HubSpotのデータ構成は、「オブジェクト」と「プロパティ」という2つの基本的な概念で成り立っています。この2つを理解すれば、HubSpotの全体像を把握できます。

4つの「標準オブジェクト」

オブジェクトは、Excelでいうところの「テーブル」や「シート」のようなもので、データが集まる場所のことを指します。HubSpotには、初期設定で「コンタクト」「会社」「取引」「チケット」という4つの標準オブジェクトが備わっています。これらのオブジェクトは、それぞれ特定の役割を担っています。

コンタクト

顧客や見込み客など、「人」の情報が入るオブジェクトです。氏名、メールアドレス、電話番号、役職、検討段階(ライフサイクルステージ)などの個人情報を管理します。

会社

コンタクトが所属する「企業」の情報が入るオブジェクトです。会社名、ドメイン、会社の概要などを管理し、この会社に紐づくコンタクトの人数を一覧で確認できます。

取引

商談や案件など、「ビジネス」の情報が入るオブジェクトです。案件の金額や進捗状況(パイプライン)、受注予定日などを可視化することができます。

チケット:

顧客からの問い合わせやサポート依頼など、「サポート」の情報が入るオブジェクトです。

データを可視化する「プロパティ」

一方、プロパティはExcelの「カラム(列)」に相当する概念で、各オブジェクトのデータ項目そのものを指します。例えば、コンタクトオブジェクトには「氏名」や「電話番号」、会社オブジェクトには「ドメイン」や「会社名」といったプロパティが標準で用意されています。これらのプロパティを組み合わせることで、顧客や企業の詳細なデータを管理できるようになります。

多くの企業が今でもExcelで顧客データを管理されているかと思いますが、HubSpotのデータ構造は、まさにそのExcelシートを、より効率的で構造化された形に進化させたものだと捉えることができます。単にツールを乗り換えるというだけでなく、既存のデータ管理方法を改善し、より体系的にデータを蓄積していくための第一歩だと考えていただくと、HubSpotへの移行に対する心理的なハードルはぐっと下がるはずです。

 

データとデータを紐づける「関連付け」の考え方

HubSpotの最大の特徴は、これらのオブジェクトが単独で存在するのではなく、互いに「関連付け」られている点にあります。これは、リレーショナルデータベースという概念に基づいており、データとデータを有機的に結びつけ、多角的な分析を可能にしています。

例えば、ある営業担当者が「山本さん」というコンタクト情報を確認しているとします。その画面の右側には、

  • 山本さんが所属する「株式会社StartLink」という会社情報
  • そして彼が関わる「コンサルティング案件」という取引情報


が紐づいて表示されます。逆に、会社情報の画面を開けば、その会社に紐づくコンタクト(窓口担当者)が何人いるか、どのような案件が進行中か、といった情報がすべて一覧で確認できます。この関連付けの仕組みは、情報の見やすさを向上させるだけでなく、営業活動の属人化を防ぐ上で極めて重要な役割を果たします。

Excelで顧客管理をしている場合、各担当者が個別にファイルを管理していることが多く、担当者が不在だったり、異動したりすると、案件の背景や顧客とのやり取りを把握するのが非常に困難になります。しかし、HubSpotでは、コンタクト、会社、取引の情報が自動的に紐づくため、誰でもすぐに案件の状況を把握でき、スムーズな引き継ぎが可能になります。

これは、特に担当者の入れ替わりが起こりやすい中小企業にとって、業務の継続性を高め、チーム全体のナレッジ共有を促進する上で不可欠な機能と言えるでしょう。

 

たった5分!HubSpotを使い始めるための「初期設定」

HubSpotの仕組みを理解したら、次は実際に触ってみましょう。まずは、たった5分で終わる簡単な初期設定から始めることをお勧めします。この設定を済ませるだけで、日々の業務効率が格段に向上します。

個人の設定から始めるHubSpotの第一歩

HubSpotを使い始める最初のステップは、あなた自身の使いやすい環境を整えることです。画面右上の「歯車マーク」からアクセスできる「設定」画面は、HubSpotを使いこなす上で最も頻繁に利用する場所なので、ぜひ覚えておいてください。

ここでは、主に以下の3つの設定を行うことをお勧めします。

  1. メールの連携:お使いのGmailやOutlookとHubSpotを連携させることで、メールのやり取りが自動的にコンタクトの活動履歴に記録されます。これにより、毎回手動でメモを残す手間が省け、顧客とのやり取りを漏れなく一元管理できるようになります。

  2. 通知設定:HubSpotでは、重要なアクション(例:ウェブサイトのフォーム送信、メールの開封)があった際に、ベルマークやメールで通知を受け取ることができます。不要な通知をオフにすることで、本当に必要な情報だけを効率的に把握できるようになります。

  3. カレンダー連携:Googleカレンダーなどと連携すれば、HubSpot上で日程調整リンクを発行できます。このリンクを顧客に送るだけで、お互いの空き時間を自動で調整できるため、特に営業担当者の業務効率化に大きく貢献します。

 

会社全体に関わる「アカウントの既定値」設定

HubSpotの管理者が行うべき重要な設定項目として、「アカウントの既定値」があります。この設定は、組織全体に影響するため、導入時に必ず確認しておく必要があります。

  • 会計年度:会社の会計年度を設定することで、HubSpotのレポート機能で「今期」の売上や進捗を正確にフィルタリングできるようになります。

  • 通貨設定:取引金額のデフォルト通貨を「JPY(円)」などに設定します。これにより、レポート上で正確な金額が表示されます。

  • ユーザー言語:新しいユーザーを招待する際のデフォルト言語を指定できます。

 

サイトとHubSpotを繋ぐ「トラッキングコード」の設置

HubSpotを単なる顧客管理ツールとして使うのではなく、顧客の行動を追跡し、より質の高い営業・マーケティング活動につなげるためには、トラッキングコードの設置が不可欠です。

トラッキングコードとは、HubSpotを導入しただけでは分からない、ウェブサイト上での顧客の行動(どのページを見たか、どのくらいの時間滞在したかなど)をHubSpotに送信するための「おまじない」のようなものです。

設置方法はとても簡単です。

  1. HubSpotの「設定(歯車マーク)」から「トラッキングとアナリティクス」→「トラッキングコード」にアクセスします。

  2. 表示されたコードをコピーし、自社ウェブサイトのHTML内、</body>タグの直前に貼り付けるだけで完了です。

このコードを設置することで、「この人が2時間前にうちのサービスページを見てるな」「過去にこのブログ記事を何度も読んでいたのか」といった顧客のウェブ行動を把握できるようになります。これは、顧客との商談前に相手の関心事を深く理解し、よりパーソナライズされた提案を可能にする強力な武器となります。

トラッキングコードの設置は、HubSpotを単なる顧客情報管理(CRM)ツールから、営業活動の進捗を可視化・加速させるセールスフォースオートメーション(SFA)や、顧客の行動データを活用するマーケティングオートメーション(MA)へと進化させるための、重要なトリガーです。この設定を済ませるだけで、HubSpotの真価を最大限に引き出すことができるのです。

 

データの管理も運用も「ビュー」と「アクティビティ」がすべて

HubSpotの初期設定が完了したら、次は日々の運用です。日々の業務を効率的に進めるには、「ビュー」と「アクティビティ」という2つの機能を使いこなすことが鍵になります。

「ビュー」を使いこなして必要な情報を一瞬で呼び出す

ビューとは、HubSpotのコンタクトや会社、取引の一覧画面の表示形式を自由にカスタマイズできる機能です。この機能を活用すれば、何十件、何百件ものデータの中から、あなたが必要とする情報だけを瞬時に呼び出すことができます。

具体的な活用方法としては、以下のようなものがあります。

  • 列の編集:表示したいプロパティ(列データ)を自由に追加・削除できます。例えば、コンタクト一覧に「部署名」や「前回最終コンタクト日」といったプロパティを追加すれば、一目で必要な情報が把握できるようになります。

  • フィルター機能:「自分の担当者だけ」「ライフサイクルステージがリードの顧客だけ」といった条件でデータを絞り込み、特定のリストを作成できます。

  • ビューの保存:フィルター条件や列の並び順をカスタマイズしたビューは、タブとして保存できます。これにより、毎回同じ条件を設定する手間が省け、「自分専用ビュー」のように、見たいデータをワンクリックで呼び出せるようになります。

 

顧客とのやり取りをすべて記録する「アクティビティ」機能

コンタクトや会社の詳細画面中央にあるアクティビティ欄は、顧客との接点に関するすべての履歴が記録される場所です。

ここに記録される主な内容は以下の通りです。

  • メモ(商談時の議事録など)、Eメールのやり取り、電話のログ、ミーティング結果。

  • トラッキングコードが設置されていれば、ウェブサイトの訪問履歴やマーケティングメールの開封履歴も自動的に記録されます。


このアクティビティ欄は、単なる過去の記録ではありません。このデータがあるからこそ、次に取るべきアクションが見えてきます。HubSpotに蓄積されたアクティビティデータは、個人の記憶に頼ることなく、チーム全体で顧客の状況を共有するための基盤となります。

これにより、営業会議では「あの案件ってどうなったっけ?」といった情報の確認に時間を費やすのではなく、「このデータから見ると、次はこう動くべきだ」という建設的な議論に集中できるようになります。アクティビティ機能は、個人の日報ツールから、組織全体の「次の一手」を導き出す羅針盤へと進化するのです。

運用に役立つ小技として、ピン留め機能があります。重要なメモやログは、ピン留め機能を使ってアクティビティの一番上に固定表示することができます。社内共有したい情報や、自分自身の備忘録として非常に便利です。

 

大量のデータを一括管理!「インポート」と「プロパティ」の作り方

HubSpotを導入する際、これまでExcelなどで管理していた既存の顧客データを一括で移行したいと考える方がほとんどだと思います。HubSpotでは、「インポート」機能と「プロパティ」の作成をうまく組み合わせることで、この課題をスムーズに解決できます。

Excelデータを一瞬で取り込む「インポート」機能

インポート機能を使えば、既存のExcelやCSVデータをHubSpotに一括で取り込むことができます。少数のデータであれば手動で入力してもよいですが、大量のデータがある場合はインポート機能の活用が必須となります。

インポートを成功させるための鍵は、データの準備にあります。HubSpotは、コンタクトをメールアドレスで、会社をドメインで重複を識別します。したがって、インポートするExcel/CSVファイルには、これらの情報が正確に含まれていることが非常に重要です。

インポート時には、HubSpotが提供する3つの選択肢から、目的に合った方法を選択できます。

  • 作成と更新:インポートするファイル内のデータが既存のレコードと一致すれば更新し、一致しなければ新しく作成します。これは最も一般的な方法で、多くのケースでこの選択肢を選ぶことになります。

  • 新規の作成のみ:既存のレコードと一致するデータは無視し、新しいレコードのみを作成します。

  • 既存の更新のみ:既存のレコードと一致するデータのみを更新し、新しいレコードは作成しません。

 

必要な「プロパティ」を自分で作成しよう

HubSpotには多くの標準プロパティが用意されていますが、自社の管理項目(例:部署名、社内ID、契約形態など)をすべてカバーできるわけではありません。そんなときは、カスタムプロパティを自分で作成することができます。

  1. 設定(歯車マーク)から「プロパティ」へ移動します。

  2. 「プロパティを作成」をクリックし、新しいプロパティの名前と、データの形式に合わせて「単一行テキスト」「ドロップダウン」「日付」などのタイプを選択します。

  3. 作成したプロパティは、コンタクトや会社の詳細画面、そして一覧表示する「ビュー」に追加できます。

このカスタムプロパティの作成は、単にExcelデータをHubSpotに「コピー&ペースト」するだけの作業ではありません

HubSpotを最大限に活用するには、「自社の営業やマーケティング活動において、本当に必要な情報は何で、どう管理すべきか」という業務プロセスそのものを再考する必要があります。カスタムプロパティの作成は、この「業務プロセスの再設計」をHubSpot上で実現するための最初の、そして重要なステップなのです。

 

チームでHubSpotを使うなら必須の「権限設定」

HubSpotはチームで活用してこそ真価を発揮するツールです。複数人で利用する場合、誰がどの情報にアクセスできるかを決める「権限設定」は、データのセキュリティと管理ガバナンスを保つために不可欠な機能です。

ユーザーの役割に合わせてアクセスレベルを管理する

権限設定は、設定(歯車マーク)から「ユーザーとチーム」へ移動して行います。ここでは、個々のユーザーに対して、オブジェクトごとの詳細な閲覧・編集・削除権限を設定できます。

例えば、以下のような設定が可能です。

  • 「すべてのコンタクト情報は表示できるが、削除はできない」

  • 「自分の担当する会社情報しか見せない」


これらの設定は、データの機密性を守るだけでなく、ユーザーの役割に合わせて最適な画面構成を提供し、無駄な操作ミスやデータ構造の乱れを防ぐことにもつながります。権限設定は、単に「できること・できないこと」を分けるだけでなく、ユーザーが業務に集中できる環境を整える「業務効率化」のツールでもあるのです。

また、複数のユーザーに同じ権限を割り当てたい場合は、あらかじめ「権限セット」を作成しておくことで、一括管理が可能になります。

 

シートの種類とアクセス権の考え方

HubSpotのユーザーには、主に以下の3つの分類があります。

  • 表示のみのユーザー:レポートなどを閲覧するだけで、データの編集や追加は行わない、経営者や役員向けのユーザーです。

  • コアシートユーザー:レコードの追加・編集など基本的なCRM機能は使えますが、HubSpotの有料機能(Hub)へのアクセス権がない実務担当者向けのユーザーです。

  • 有償シートユーザー:Sales HubやService Hubなど、高度な機能を使いたいユーザーです。


自社の予算と各担当者の役割に合わせて、どのシートを割り当てるかを計画することが重要です。

 

まとめ: HubSpotは「まず触ってみる」ことが成功の鍵

ここまで、HubSpotの基本的な活用方法についてお話ししてきました。

  • データ構成の基本である「オブジェクト」「プロパティ」「関連付け」の考え方

  • すぐに始められる「初期設定」の具体的な手順

  • 日々の業務を効率化する「ビュー」と「アクティビティ」の活用方法

  • 既存データをスムーズに移行する「インポート」と「カスタムプロパティ」の作成

  • チームでの利用に不可欠な「権限設定」の考え方


HubSpotは、ただの顧客管理ツールではなく、顧客との関係をより豊かにし、組織的な営業活動を強化するための「業務基盤」です。一見すると複雑に見えるかもしれませんが、今回ご紹介した基礎の基礎から少しずつ触ってみることで、その利便性を実感していただけるはずです。

「知ってよかった!」で終わらせるのではなく、ぜひ今日から「すぐ実務で使える!」状態にして、HubSpotをあなたのビジネス成長に役立ててください。

 


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著者情報

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今枝 拓海 / Takumi Imaeda

株式会社StartLink(スタートリンク)の代表取締役。
学生時代に地域活性化事業のスタートアップを共同創業し事業立ち上げを経験。 広告戦略支援会社にてSEO設計/Web広告戦略・運用等の総合マーケティング支援に従事。 その後、DX/CRM戦略支援会社の株式会社H&Kにて、HubSpot(世界的CRMプラットフォーム)のCRM戦略/構築を軸として、 国内・外資系エンタープライズ企業へコンサルティング支援を実施。
現在はパーソルホールティングス株式会社にて、大規模CRM戦略/人材法人営業・AI戦略の業務に従事しつつ、 株式会社StartLinkでCRMを軸にした経営基盤DXのコンサルティング/AIを活用した戦略設計を支援。