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少人数バックオフィスの運営|SaaS活用で一人経理・一人人事を実現する方法

作成者: |2026/03/11 7:37:43

少人数バックオフィスの運営とは、1〜2名の担当者で経理・人事・総務の管理業務を回す体制を、SaaS(クラウドサービス)の適切な組み合わせで構築する取り組みです。freee、SmartHR、ジョブカンなどのSaaSを戦略的に組み合わせることで、専任の経理部門や人事部門を持たなくても、月次決算の早期化、社会保険手続きの電子化、給与計算の自動化を実現できます。

従業員30名の会社で、経理も人事も総務も1人で担当している。月末になると経費精算の回収、勤怠の集計、給与計算、請求書の処理に追われ、月次決算がいつも翌月半ばまでかかる。新入社員が入ると社会保険の手続きに半日かかり、年末調整の時期は毎日残業が続く。

中小企業では、このような「一人バックオフィス」の状況が珍しくありません。中小企業庁の「中小企業実態基本調査」によると、従業員50名以下の企業の約60%が、経理・人事の専任担当者を1名以下で運用しています。

しかし、人を増やす余裕がないからといって、非効率な手作業を続けていては、担当者の疲弊と離職リスクが高まり、管理業務の品質も低下します。解決策は、SaaSを適切に組み合わせて「仕組みで回す」バックオフィスを構築することです。

本記事では、少人数(1〜2名)のバックオフィスをSaaS活用で効率的に運営するための戦略と、具体的なツールの組み合わせパターン、段階的な導入手順を解説します。

この記事でわかること

従業員50名以下の企業の約60%が、経理・人事の専任担当者を1名以下で運用しています。人を増やす余裕がない場合の解決策は、SaaSを適切に組み合わせて「仕組みで回す」バックオフィスを構築することです。

こんな方におすすめ: 経理・人事・総務を一人で兼務しており業務過多に悩んでいる方、少人数体制でもSaaSを活用して効率的にバックオフィスを運営したい中小企業の経営者の方

  • 少人数バックオフィスが陥りやすい5つの課題と、SaaS活用による解決策を整理します
  • 一人経理がfreeeで月次決算・請求書処理・経費精算をこなすための具体的な設計パターンを紹介します
  • 一人人事がSmartHR×ジョブカンで入退社・勤怠・給与を管理するワークフローを解説します
  • 従業員規模別(10名/30名/50名)のSaaS組み合わせモデルを提示します
  • SaaS導入の優先順位と、限られた予算で最大の効果を得るための投資判断基準を解説します

少人数バックオフィスの5つの課題

属人化による事業継続リスク

1人の担当者にすべての管理業務が集中している状態は、その担当者が休職・退職した場合に業務が完全に止まるリスクを意味します。「あの人がいないと月次が締められない」「給与計算のやり方を知っているのは1人だけ」という状況は、事業継続上の重大なリスクです。

SaaSに業務ルールとプロセスを実装すれば、判断基準がシステムに蓄積されます。業務フローの可視化を先に行うことで、どの業務をSaaSに移行すべきかが明確になります。仕訳のルール、残業計算のロジック、社会保険料の計算方法がすべてクラウド上に設定されていれば、担当者が交代しても業務を継続できます。

月末集中による過重負担

多くの管理業務は月末・月初に集中します。勤怠の締め、給与計算、請求書の処理、月次決算、経費精算の集計が同時に発生するため、月末の2〜3日間は深夜まで作業が続くことがあります。

SaaSの自動化機能を活用すれば、月末に集中していた作業を月中に分散させることができます。freeeの銀行口座連携は日次で取引を自動取り込みし、ジョブカンの勤怠管理は日次でデータを蓄積するため、月末にまとめて処理する必要がなくなります。

法令改正への対応漏れ

税率変更、社会保険料率の改定、電子帳簿保存法の義務化など、バックオフィスに影響する法令改正は頻繁に行われます。専門家を社内に抱えていない少人数バックオフィスでは、改正内容の把握と対応が遅れがちです。

クラウドサービスは、法令改正に合わせてシステムが自動更新されます。freeeは消費税率変更や社会保険料率の改定を自動で反映し、SmartHRは法改正に対応した書類テンプレートを自動更新します。担当者が個別に法令をフォローする必要がなくなります。

チェック体制の不在

経理業務には本来、入力者とチェック者を分離する内部統制の仕組みが必要です。しかし1人で経理を行っている場合、自分で入力したデータを自分でチェックするしかなく、ミスの発見が遅れます。

SaaSの自動照合機能やアラート機能を活用すれば、システムがチェック者の役割を部分的に代替できます。freeeの「自動で経理」機能は、仕訳の異常パターンを検出してアラートを出す仕組みを備えており、人手によるダブルチェックの一部を補完します。

戦略業務に時間を割けない

バックオフィスの担当者が日々のオペレーション業務に追われていると、「経営者に必要な数値をタイムリーに報告する」「採用計画を立てる」「労務トラブルを予防する」といった戦略的な業務に時間を割けません。

SaaSによる定型業務の自動化は、担当者の時間を創出するための手段です。ルーティン作業を自動化した分の時間を、経営に資する分析・企画業務に充てることが、少人数バックオフィスの本来の姿です。

一人経理のSaaS設計パターン

freeeを軸にした一人経理の業務フロー

一人で経理業務を回す場合、freee会計を中心に据えたSaaS設計が効果的です。

日次の業務フロー

  1. freeeの「自動で経理」画面を確認し、銀行口座連携で取り込まれた取引を承認する(5〜10分)
  2. 従業員から申請されたfreee経費精算の内容を確認・承認する(発生時のみ)
  3. 請求書の受領があれば、バクラクにアップロードしてfreeeに連携する

月次の業務フロー

  1. 月初3営業日以内に前月分の仕訳漏れがないか確認する
  2. freeeの試算表を出力し、異常値がないかチェックする
  3. 月次レポートを経営者に提出する(freeeのレポート機能で自動生成)

このフローで最も重要なのは「日次で少しずつ処理する」という運用です。月末にまとめて処理する運用では、月末に数日間の集中作業が発生し、1人では回しきれなくなります。

freee+バクラクの組み合わせ

一人経理の強い味方となるのが、freee×バクラクの組み合わせです。バクラクで請求書をスキャンすると、AI-OCRがデータを読み取り、freeeの仕訳データとして自動連携されます。手入力が不要になるため、請求書の処理にかかる時間が大幅に短縮されます。

freeeの公開事例では、スタートアップ企業の株式会社タイミーがfreeeを活用して少人数の経理体制でIPO準備を進めたと報告されています。SaaSの活用により、内部統制の整備と効率化を両立させた事例として参考になります。

一人人事のSaaS設計パターン

SmartHR×ジョブカンの組み合わせ

一人で人事労務業務を回す場合、SmartHR(入退社手続き・年末調整)×ジョブカン勤怠管理(勤怠・給与計算)の組み合わせが効果的です。

入退社が発生したとき

  1. SmartHRで入社手続きを開始。新入社員にメールでSmartHRへの情報入力を依頼する
  2. 新入社員が自分で氏名・住所・マイナンバー・口座情報を入力する
  3. SmartHRが社会保険・雇用保険の届出書類を自動生成し、電子申請する
  4. ジョブカン勤怠管理に新入社員のアカウントを作成する

毎月の給与計算フロー

  1. ジョブカン勤怠管理で勤怠データを確定する(月初1〜2営業日)
  2. 確定した勤怠データをジョブカン給与計算に連携する
  3. ジョブカン給与計算で給与計算を実行し、明細を確認する
  4. 給与振込データを銀行に送信する
  5. 給与仕訳データをfreeeに連携する

freee人事労務で一本化する方法

freee会計をすでに導入している場合は、freee人事労務ですべてを統一する方法もあります。勤怠管理・給与計算・入退社手続き・年末調整がfreee内で完結し、給与仕訳がfreee会計に自動連携されるため、一人で回す場合の管理工数が最小化されます。

ただし、freee人事労務の勤怠管理機能は、ジョブカンやKING OF TIMEと比較するとやや簡素です。フレックスタイムや変形労働時間制など複雑な勤務形態がある場合は、ジョブカン勤怠管理の方が対応力に優れています。

従業員規模別SaaS構成の比較

項目 10名以下(最小構成) 30名規模(標準構成) 50名規模(拡張構成)
会計 freee会計 freee会計 マネーフォワードクラウド会計
勤怠管理 freee人事労務 ジョブカン勤怠管理 ジョブカン勤怠管理
給与計算 freee人事労務 ジョブカン給与計算 ジョブカン給与計算 or MFクラウド給与
入退社手続き freee人事労務 SmartHR SmartHR
請求書処理 freee会計のファイルボックス バクラク バクラク
ワークフロー 不要(少人数で口頭承認可) ジョブカンワークフロー kintone
経費精算 freee経費精算 freee経費精算 マネーフォワード経費
月額コスト目安 約15,000〜30,000円 約50,000〜80,000円 約100,000〜150,000円
設計方針 freeeシリーズで統一(ワンプラットフォーム) ベスト・オブ・ブリード 内部統制を見据えた拡張構成

従業員規模別のSaaS組み合わせモデル

10名以下:最小構成

従業員10名以下の企業では、SaaSの数を最小限に抑え、シンプルな構成を目指します。

推奨構成:freee会計 + freee人事労務 + freee経費精算

月額コスト目安:約15,000〜30,000円(プランにより変動)

ポイント:freeeシリーズで統一することで、サービス間の連携設定が不要になり、管理画面も1つで済みます。10名以下であれば、freee人事労務の勤怠管理機能でも十分に対応可能です。

30名規模:標準構成

従業員30名規模になると、業務の複雑さが増し、領域ごとに最適なSaaSを組み合わせる「ベスト・オブ・ブリード」アプローチが効果的になります。

推奨構成:freee会計 + ジョブカン勤怠管理 + ジョブカン給与計算 + SmartHR + バクラク

月額コスト目安:約50,000〜80,000円(プランにより変動)

ポイント:勤怠管理はジョブカンで複雑な勤務形態に対応し、入退社手続きはSmartHRで電子化する。請求書処理はバクラクで自動化し、会計はfreeeに集約する構成です。

50名規模:拡張構成

従業員50名規模では、内部統制の整備やセキュリティ要件の強化が必要になり、SaaSの権限管理や承認ワークフローがより重要になります。

推奨構成:マネーフォワードクラウド会計 + マネーフォワード経費 + ジョブカン勤怠管理 + SmartHR + バクラク + kintone

月額コスト目安:約100,000〜150,000円(プランにより変動)

ポイント:50名規模では、承認フローの段階化、部門別の経費管理、人事評価の仕組みなど、より組織的な管理が必要になります。kintoneで各種申請ワークフローを構築し、SmartHRで人事データベースを一元管理する体制が効果的です。

少人数バックオフィスのSaaS導入優先順位

投資判断の3つの基準

限られた予算でSaaSを導入する場合、以下の3つの基準で優先順位を決定します。

削減できる工数の大きさ:月次で最も工数がかかっている業務から自動化します。多くの場合、勤怠集計→給与計算→請求書処理の順に工数が大きくなります。

ミスの影響度:給与計算のミスは従業員の信頼に直結し、社会保険手続きのミスは法令違反になりかねません。ミスの影響が大きい業務ほど、SaaS化の優先度を高くします。

法令対応の緊急度:電子帳簿保存法への対応や社会保険の電子申請義務化など、期限のある法令対応は優先的にSaaS化します。

推奨する導入順序

少人数バックオフィスのSaaS導入は、以下の順序が効果的です。

第1ステップ:クラウド会計(freee or マネーフォワード)— 銀行口座連携で仕訳の自動化を開始

第2ステップ:クラウド勤怠管理(ジョブカン or KING OF TIME)— 勤怠集計の自動化

第3ステップ:クラウド給与計算(freee人事労務 or ジョブカン給与計算)— 勤怠連携で給与計算を自動化

第4ステップ:入退社手続きの電子化(SmartHR)— 社会保険手続きの電子申請

第5ステップ:請求書処理の自動化(バクラク or Bill One)— AI-OCRで手入力を削減

少人数バックオフィスの成功事例

freee統一で一人経理を実現

freeeの公開事例では、株式会社カケハシがfreee会計とfreee人事労務を活用し、急成長するスタートアップでの管理業務を少人数体制で効率的に回したと報告されています。従業員数の増加に伴い業務量が増加する中でも、SaaSの自動化機能を最大限に活用することで、管理部門の人員増を最小限に抑えることに成功しました。

SmartHR×ジョブカンで一人人事を実現

SmartHRの公開事例では、急成長中のIT企業が一人人事体制でSmartHRを導入し、入退社手続きの工数を約70%削減したと報告されています。従業員が自分でSmartHRに情報を入力する「セルフサービス型」の運用により、人事担当者の入力作業が大幅に軽減されました。

よくある失敗と回避策

多機能なSaaSを導入して使いこなせない

少人数バックオフィスでは、SaaSの機能を全部使おうとせず、自社に必要な機能だけを使い始めることが重要です。「とりあえず全機能を設定しよう」とすると、設定だけで数週間かかり、結局は既存の運用を続けてしまいます。

SaaSの数を増やしすぎる

領域ごとに最適なSaaSを選定するベスト・オブ・ブリードは効果的ですが、少人数バックオフィスではSaaSの管理自体が負担になるリスクがあります。10名以下の企業であれば、freeeシリーズで統一する「ワンプラットフォーム」のアプローチが運用負荷の面で優れています。中小企業の業務効率化成功事例でも、少人数組織ならではの実践アプローチを紹介しています。

税理士・社労士との役割分担を見直さない

SaaSを導入しても、税理士や社労士との契約内容をそのまま維持していると、コストが二重にかかる場合があります。SaaSの導入に合わせて、税理士・社労士に依頼する業務範囲を見直し、「SaaSで自動化できる部分は自社で処理し、判断が必要な部分だけ専門家に相談する」という役割分担に再設計することが重要です。

まとめ

少人数バックオフィスの運営は、SaaSの適切な組み合わせで「仕組みで回す」体制を構築することが解決策です。一人経理にはfreeeを軸にしたクラウド会計の活用、一人人事にはSmartHR×ジョブカンの組み合わせが効果的です。従業員規模に応じて、10名以下はfreeeシリーズで統一、30名規模はベスト・オブ・ブリード、50名規模は内部統制を見据えた拡張構成を選択します。SaaS導入の優先順位は「工数削減の大きさ×ミス影響度×法令対応の緊急度」で判断し、クラウド会計→勤怠管理→給与計算→入退社手続き→請求書処理の順に段階的に進めることで、少人数でも高品質なバックオフィス運営を実現できます。業務プロセスの可視化から始めたい方は業務フロー可視化の目的と効果を、ワークフロー自動化をノーコードで進める方法はワークフロー自動化をノーコードで実現する方法もあわせてご覧ください。