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AirTable CRM運用からHubSpotへの移行ガイド|スプレッドシート型管理からの脱却方法

作成者: 今枝 拓海|2026/03/11 10:31:46

AirTableはスプレッドシートとデータベースの中間的な使い勝手を持つノーコードプラットフォームで、CRM代わりに活用している企業も少なくありません。しかし、営業プロセスの本格的な管理やマーケティングオートメーション、レポーティングの高度化を求めて、専用CRMであるHubSpotへの移行を検討する企業が増えています。本記事では、AirTableのBase/TableをHubSpotオブジェクトに変換し、ViewやAutomationを移行する具体的な手順を解説します。

AirTableはその柔軟性から、顧客管理、案件管理、プロジェクト管理など多目的に使える便利なツールです。しかし、CRMとして本格運用するにつれて「パイプライン分析ができない」「メール配信との統合ができない」「営業活動の自動化が限定的」といった課題に直面する企業が多くなります。

本記事では、AirTableでCRM運用を行っている企業がHubSpotに移行する際の、データ変換・移行・運用再設計の全体像を解説します。

この記事でわかること

  • AirTableのBase/TableをHubSpotオブジェクト(コンタクト、会社、取引)に変換する方法
  • AirTableのViewをHubSpotのビューとフィルターで再現する手順
  • AirTableのAutomationをHubSpotワークフローに移行する方法
  • CSVエクスポートからHubSpotインポートまでの具体的な手順
  • AirTableとHubSpotの連携運用という選択肢

AirTable CRM運用の典型的な構造

よくあるAirTable CRM構成

AirTableをCRMとして使用している企業では、一般的に以下のようなBase/Table構成が見られます。

Base:CRM管理

  • Table:顧客リスト(会社名、業種、住所、担当者、電話番号、URL)
  • Table:担当者リスト(氏名、メール、電話、会社名へのリンク)
  • Table:案件管理(案件名、金額、ステージ、担当者、顧客リンク、確度、予定日)
  • Table:活動履歴(日付、種別、内容、案件リンク、担当者リンク)
  • Table:商品マスタ(商品名、カテゴリ、価格)

各Tableがリンクフィールドで相互に関連付けられ、リレーショナルデータベースとして機能しています。

AirTable CRM運用の限界

AirTableのCRM運用が限界を迎える典型的なサインは以下のとおりです。

  • パイプライン分析の不足:AirTableのカンバンビューは表示用としては使えますが、ステージ別の金額集計や受注確度の加重分析といった本格的なパイプライン分析ができない
  • メール連携の不在:顧客へのメール送信履歴がCRMに自動記録されない。手動でメール内容を活動履歴テーブルに転記する運用になりがち
  • 営業活動のトラッキング不足:Webサイト訪問、メール開封、リンククリックなどのデジタル行動を追跡できない
  • レポーティングの限界:AirTableのチャート機能やExtensionでは、営業KPIの多角的な分析が困難
  • Automationの制約:AirTableのAutomation機能は基本的な自動化に対応しているが、複雑な条件分岐やマルチステップの自動化には限界がある

AirTable構造からHubSpotオブジェクトへのマッピング

基本的なマッピングルール

AirTableのTable構造をHubSpotのオブジェクト構造に変換する際の基本的な考え方は以下のとおりです。

  • 顧客リスト(Table)会社(Company)オブジェクト
  • 担当者リスト(Table)コンタクト(Contact)オブジェクト
  • 案件管理(Table)取引(Deal)オブジェクト
  • 活動履歴(Table)アクティビティ(Engagement):メモ、コール、ミーティングなど
  • 商品マスタ(Table)商品(Product)オブジェクト

フィールドからプロパティへの変換

AirTableの各フィールドタイプをHubSpotのプロパティタイプに変換します。

  • Single Line Text → テキスト(1行テキスト)
  • Long Text → テキスト(複数行テキスト)
  • Number / Currency → 数値
  • Single Select → ドロップダウン選択
  • Multiple Select → 複数チェックボックス
  • Date → 日付
  • Checkbox → 単一チェックボックス(はい/いいえ)
  • Email → テキスト(メールバリデーション付き)
  • Phone → テキスト(電話番号)
  • URL → テキスト(URL)
  • Link to another record → 関連付け(Association)
  • Lookup / Rollup → HubSpotの計算プロパティまたはレポートで代替
  • Formula → HubSpotの計算プロパティで一部再現可能

リンクフィールドの関連付け変換

AirTableでは「Link to another record」フィールドでテーブル間のリレーションを構築しますが、HubSpotでは「関連付け(Association)」機能で同等のリレーションを実現します。

HubSpotの標準的な関連付けは以下のとおりです。

  • コンタクト ↔ 会社:自動的に関連付け可能(インポート時に会社名で紐づけ)
  • コンタクト ↔ 取引:インポート時または手動で関連付け
  • 会社 ↔ 取引:インポート時または手動で関連付け
  • コンタクト ↔ アクティビティ:アクティビティ記録時に自動関連付け

AirTableで独自のリレーション(例:「プロジェクト」と「タスク」のリンク)を使用している場合は、HubSpotのカスタムオブジェクト(Enterpriseプラン)を使うか、プロパティの値でリレーションを表現する方法を検討してください。

CSVエクスポートからHubSpotインポートへの移行手順

ステップ1:AirTableからのCSVエクスポート

AirTableの各テーブルから、CSVファイルをエクスポートします。

  1. AirTableのBaseを開く
  2. エクスポートしたいテーブルのビューを選択(全レコードが含まれるビューを使用)
  3. ビュー右上の「...」メニューから「Download CSV」を選択
  4. ダウンロードしたCSVファイルを保存

エクスポート時の注意点

  • AirTableのCSVエクスポートは、選択中のビューに表示されているレコードのみが対象。フィルターがかかったビューだと一部のレコードが欠落するため、「All records」ビューからエクスポートする
  • 「Link to another record」フィールドは、リンク先のレコード名がカンマ区切りで出力される。HubSpotインポートでは関連付けに使えないため、別途マッピング処理が必要
  • 添付ファイル(Attachment)フィールドはURLとして出力される。HubSpotへのファイル移行が必要な場合は別途対応が必要

ステップ2:データクレンジングと変換

エクスポートしたCSVファイルを開き、HubSpotインポートに適した形式に変換します。

必須のクレンジング作業

  • ヘッダー行のカラム名をHubSpotのプロパティ名に合わせて変更(または、インポート時にカラムマッピングで対応)
  • メールアドレスの形式チェック。不正なアドレスを除外
  • 重複レコードの確認と処理。メールアドレス(コンタクト)または会社名(会社)をキーにして重複を排除
  • 日付フォーマットの統一。HubSpotのインポートではYYYY-MM-DD、MM/DD/YYYY、DD/MM/YYYY等のフォーマットに対応
  • Single Select / Multiple Selectの値がHubSpotのドロップダウン選択肢と一致しているか確認
  • 金額フィールドからカンマ・通貨記号を除去し、数値のみに変換

ステップ3:HubSpotプロパティの事前作成

AirTableのカスタムフィールドに対応するHubSpotカスタムプロパティを、インポート前に作成しておきます。

  • HubSpotの「設定 > プロパティ」から、対象オブジェクト(コンタクト/会社/取引)のカスタムプロパティを作成
  • プロパティのタイプ(テキスト、数値、日付、ドロップダウンなど)をAirTableのフィールドタイプに合わせて設定
  • ドロップダウンプロパティの場合は、選択肢をAirTableのSingle Selectの選択肢と一致させる

ステップ4:HubSpotへのインポート

インポートの推奨順序は以下のとおりです。

  1. 会社(Company)のインポート:まず会社データをインポートし、会社レコードを作成
  2. コンタクト+会社の複合インポート:コンタクトデータに会社名カラムを含め、「コンタクトと会社」の複合インポートで関連付けを同時に実行
  3. 取引+コンタクトの複合インポート:取引データにコンタクトのメールアドレスカラムを含め、「取引とコンタクト」の複合インポートで関連付けを実行
  4. アクティビティのインポート:活動履歴はHubSpotのインポート機能では直接インポートできないため、Engagements APIを使用するか、重要な活動のみ手動でメモとして記録

ステップ5:インポート後の検証

インポート完了後、以下の点を検証します。

  • 全レコードが正しくインポートされたか(件数の確認)
  • コンタクトと会社の関連付けが正しいか
  • 取引のパイプラインステージが正しく反映されているか
  • カスタムプロパティの値が意図どおりに入っているか
  • 重複レコードが作成されていないか

AirTable ViewのHubSpotビュー・フィルターでの再現

AirTableのView種類とHubSpotでの対応

AirTableには複数のビュータイプがあり、それぞれHubSpotの異なる機能で再現します。

Grid View → HubSpotの保存済みビュー

AirTableのGrid Viewは、HubSpotのコンタクト/会社/取引一覧画面の「保存済みビュー」で再現します。フィルター条件、表示カラム、ソート順を設定して保存すれば、AirTableのGrid Viewと同等の一覧表示が可能です。

Kanban View → HubSpotのボードビュー

AirTableのKanban Viewは、HubSpotの取引パイプラインの「ボードビュー」で再現されます。HubSpotの取引ボードはカンバン形式で取引カードを表示し、ドラッグ&ドロップでステージを変更できます。

Gallery View → HubSpotでは直接対応なし

AirTableのGallery Viewに直接対応するHubSpotのビューはありません。HubSpotのレコード一覧をカード形式で表示する機能はないため、必要に応じてダッシュボードのレポートで代替します。

Calendar View → HubSpotのタスクカレンダー

AirTableのCalendar Viewは、HubSpotのタスクやミーティングのカレンダー表示で部分的に再現できます。取引の予定日をカレンダー表示する場合は、HubSpotのレポート機能でカレンダー形式のレポートを作成します。

AirTable AutomationのHubSpotワークフローへの移行

AirTable Automationの典型的なユースケース

AirTableでCRM運用をしている企業がよく使用するAutomationパターンと、HubSpotでの対応方法を解説します。

パターン1:新規レコード作成時にSlack通知

  • AirTable:「When a record is created」→「Send a Slack message」
  • HubSpot:ワークフロー「コンタクト作成日 = 今日」をトリガーに、Slack連携で通知を送信。またはHubSpotのSlack連携で「新規コンタクト作成時に通知」を設定

パターン2:ステージ変更時にメール送信

  • AirTable:「When a record matches conditions(ステージ変更)」→「Send an email」
  • HubSpot:ワークフロー「取引ステージが○○に変更された時」をトリガーに、自動メール送信アクションを実行

パターン3:期限が近づいたらリマインド

  • AirTable:「When a record matches conditions(期限が3日後)」→「Send a Slack message」
  • HubSpot:ワークフロー「取引の予定クローズ日が3日以内」をトリガーに、タスク作成またはSlack通知を実行

パターン4:フォーム送信時にレコード作成

  • AirTable:外部フォーム(Typeform等)→ Zapier → AirTableレコード作成
  • HubSpot:HubSpotフォーム送信 → コンタクト自動作成(標準機能)。追加でワークフローによるプロパティ更新やメール送信も可能

Automationの移行チェックリスト

AirTableのAutomation一覧を確認し、以下の項目をチェックします。

  • 各Automationのトリガー条件はHubSpotのワークフロートリガーで再現できるか
  • アクション(メール送信、Slack通知、レコード更新)はHubSpotのワークフローアクションで対応可能か
  • 外部サービスとの連携(Zapier/Make経由)が必要な場合、HubSpotでも同様の連携が可能か
  • AirTable Automationの実行条件(フィルター)をHubSpotのワークフロー分岐条件で再現できるか

AirTableとHubSpotの連携運用という選択肢

完全移行ではなく連携を選ぶケース

AirTableのデータをすべてHubSpotに移行するのではなく、AirTableとHubSpotを連携させて併用する選択肢もあります。以下のケースではこの方法が有効です。

  • AirTableでプロジェクト管理や在庫管理など、CRM以外の業務も運用しており、それらはAirTableに残したい
  • AirTableの柔軟なデータ構造(フォーミュラ、Rollupなど)が業務に不可欠
  • 段階的にHubSpotに移行したいが、一括移行のリスクを避けたい

連携方法

AirTableとHubSpotの連携は以下の方法で実現できます。

  • HubSpotのAirTable連携アプリ(HubSpot Marketplace):基本的なデータ同期に対応
  • Zapier / Make:AirTableのレコード作成・更新をトリガーにHubSpotのコンタクト/取引を自動作成。逆方向(HubSpot→AirTable)の同期も可能
  • API連携:AirTable APIとHubSpot APIを使った双方向のカスタム連携

連携運用の注意点は「どちらのデータが正(マスター)か」を明確に定義することです。両方のツールでデータを編集すると、同期の際にどちらのデータを優先するかの問題が生じます。

まとめ

AirTableのCRM運用からHubSpotへの移行は、スプレッドシート型の柔軟なデータ管理から、営業・マーケティング特化型プラットフォームへの進化です。AirTableのBase/TableはHubSpotのオブジェクト(コンタクト、会社、取引)にマッピングし、ViewはHubSpotの保存済みビューとボードビューで再現、AutomationはHubSpotワークフローに移行することで、本格的なCRM運用を実現できます。

移行成功のポイントは、AirTableのリンクフィールド(テーブル間リレーション)をHubSpotの関連付けに正しく変換することと、インポート順序(会社→コンタクト→取引)を守ることです。AirTableの柔軟性を活かしつつHubSpotのCRM/SFA機能を活用したい場合は、連携運用という選択肢も検討してください。HubSpotへの移行・連携により、パイプライン分析、マーケティングメールの統合、BreezeによるAI活用など、AirTable単体では実現できなかった営業・マーケティング基盤を構築できます。

CRM移行の全体的なデータ設計については「CRM移行のデータ設計完全ガイド」も参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

AirTableのFormula(数式)フィールドはHubSpotに移行できますか?

AirTableのFormulaフィールドの計算結果(値)はCSVエクスポートで出力されるため、静的な値としてHubSpotにインポートできます。ただし、計算ロジック自体はHubSpotの計算プロパティで再構築する必要があります。HubSpotの計算プロパティは基本的な四則演算やmin/max関数に対応していますが、AirTableほど柔軟ではないため、複雑な数式はカスタムレポートやワークフローで代替を検討してください。

AirTableとHubSpotの連携を使う場合、どちらにデータを入力すべきですか?

連携運用では「マスターデータの所在」を明確に定義することが最も重要です。一般的には、顧客情報・営業活動はHubSpotを正とし、プロジェクト管理や在庫管理などCRM以外の業務はAirTableを正とする運用が推奨されます。両方で同じデータを編集すると同期時に競合が発生するため、データの入力先を1つに統一してください。

AirTableの添付ファイル(Attachmentフィールド)はHubSpotに移行できますか?

AirTableの添付ファイルはCSVエクスポート時にURLとして出力されます。ファイル自体をHubSpotのレコードに添付するには、手動でのアップロードまたはAPI経由でのプログラム的な移行が必要です。ファイル数が多い場合は優先度をつけて段階的に対応することをおすすめします。

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