「案件ごとの進捗がバラバラのExcelで管理されていて全体像が見えない」「元請・協力会社との関係管理が属人的になっている」「安全書類や施工報告の管理に手間がかかりすぎる」——建設業の方からは、こうした声をよくいただきます。
建設業におけるHubSpot活用とは、工事案件の受注プロセス管理、元請・下請・協力会社のリレーション管理、安全書類・施工報告などの業務プロセスをCRMに集約し、属人的な管理から脱却するための設計手法です。
この記事では、建設業特有の商流や業務フローを踏まえ、HubSpotをどのように設計すれば現場と管理部門の両方で活用できるかを解説します。
建設業では、案件管理をExcelや紙ベースで行っている企業がまだまだ多いかなと思います。特に中堅〜中小の建設会社では、営業情報が個人のメールや手帳に残ったままで、会社としての情報資産になっていないケースが目立ちます。
| 建設業の課題 | HubSpotで実現できること |
|---|---|
| 案件情報がExcel・紙に分散 | 取引オブジェクトで案件を一元管理 |
| 元請・協力会社の関係が不透明 | 会社オブジェクトの関連付けで商流を可視化 |
| 安全書類の管理が煩雑 | カスタムオブジェクト + ワークフローで管理 |
| 営業担当の退職で情報が消える | CRMに全対応履歴が蓄積 |
| 受注予測が立てにくい | パイプラインの加重金額でフォーキャスト |
スプレッドシートで管理していると、こっちにも顧客リストがあり、一方で別の担当者にも情報が入っていたりして、差分が起きてしまうんですよね。CRMに集約することで、こうした情報の分散を根本的に解決できます。
建設業の商談プロセスは、一般的なB2Bとは異なり、見積もりから着工までのリードタイムが長く、複数の関係者が関わるのが特徴です。
引合い → 現場調査 → 積算・見積作成 → 見積提出 → 交渉 → 内示 → 契約 → 着工 → 竣工・引渡し
| ステージ | 受注確度 | 必須入力項目 |
|---|---|---|
| 引合い | 5% | 工事種別、概算規模、元請先 |
| 現場調査 | 15% | 現場住所、調査日、調査担当 |
| 積算・見積作成 | 25% | 積算担当、原価見込 |
| 見積提出 | 40% | 見積金額、提出日 |
| 交渉 | 55% | 競合有無、交渉メモ |
| 内示 | 80% | 内示金額、着工予定日 |
| 契約 | 95% | 契約金額、契約日 |
| 着工 | 100% | 着工日、現場責任者 |
自社に最適なパイプラインを設計するというところが結構ミソになってきます。建設業では特に「引合い」から「見積提出」までのプロセスが重要で、ここをしっかり管理できるかどうかが受注率の向上に直結します。
建設業では、元請・一次下請・二次下請・協力会社といった重層的な関係を管理する必要があります。HubSpotの会社オブジェクトの関連付け機能を使って、この商流構造をCRM上で可視化できます。
元請会社(ゼネコン等)
├── 関連付けラベル: 「元請」
├── コンタクト: 元請の現場監督、購買担当
└── 取引: 工事案件
├── 関連付け: 自社(請負者として)
└── 関連付け: 協力会社A、協力会社B
これをリレーションデータベースとして管理できるのがHubSpotの強みです。HubSpotだけではなく、他のリレーションデータベースを持つCRMでも同様のことができますが、HubSpotは設定の柔軟性が高いので建設業の複雑な商流にも対応しやすいです。
Enterpriseプランであれば、カスタムオブジェクトを活用して建設業特有のデータモデルを構築できます。
| フィールド | 種類 | 用途 |
|---|---|---|
| 工事名称 | テキスト | 案件の正式名称 |
| 現場住所 | テキスト | 施工場所 |
| 工事種別 | ドロップダウン | 新築/改修/解体/設備工事 等 |
| 工期(開始) | 日付 | 着工日 |
| 工期(完了) | 日付 | 竣工予定日 |
| 請負金額 | 数値 | 契約金額 |
| 原価見込 | 数値 | 見込み原価 |
| 粗利率 | 計算プロパティ | (請負金額-原価見込)/請負金額 |
| 現場責任者 | HubSpotユーザー | 担当者 |
| 安全書類ステータス | ドロップダウン | 未提出/提出済/承認済 |
計算プロパティを使えば、粗利率がリアルタイムで自動更新されるので、ワークフローを組まなくても済みます。毎回チェックボックスとかを作ってワークフローで処理していると、ワークフローの数がものすごく増えてしまうので、計算プロパティで代替できるものは積極的に活用するのがおすすめです。
工事案件が「着工」ステージに移行したタイミングで、安全書類の提出タスクを自動生成するワークフローを構築します。
これにより、安全書類の提出漏れを仕組みで防止できます。営業の方がなかなか書類を出してくれないという問題も、自動リマインドで解決できるので、管理部門の負担がかなり減ります。
HubSpotのスマホアプリを使えば、現場から直接CRMにアクティビティを記録できます。現場写真の添付やメモの入力、タスクの完了チェックなど、PCがない環境でもCRMを活用できるのは建設業にとって大きなメリットです。
| レポート | 指標 | 会議用途 |
|---|---|---|
| 受注パイプライン | ステージ別案件数・金額 | 営業会議 |
| 粗利率推移 | 工事別の粗利率分布 | 経営会議 |
| 元請別受注額 | 取引先別の受注ランキング | 経営会議 |
| 安全書類提出率 | 未提出タスクの残数 | 安全管理会議 |
| 工期遵守率 | 予定通り竣工した案件の割合 | 工程会議 |
ダッシュボードの定期配信でPDF形式のスナップショットを毎週月曜朝8時に送信しておけば、幹部がいちいちCRMにログインしなくても数値を把握できます。代表とか現場所長もレポートだけ見ていればいいという場合は、表示のみシート(無料)で十分です。
建設業のHubSpot活用は、案件管理の一元化と、元請・協力会社との関係の可視化から始めるのがおすすめです。
まずはパイプラインの設計と基本的な取引管理から始めて、段階的にカスタムオブジェクトでの工事案件管理や、安全書類のワークフロー自動化へと拡張していきましょう。
CRMにデータが蓄積されるほど、受注予測の精度が上がり、元請との関係性の全体像も見えてくるようになります。スモールスタートで始めて、現場が使いやすい形で少しずつ仕組みを広げていただければなと思います。
「建設業でのCRM導入を検討しているが、自社に合った設計がわからない」「現場でも使える仕組みにしたい」——そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。
スマホアプリが提供されているので、現場からでもアクティビティの記録やタスクの完了チェックが可能です。ただし、図面管理や詳細な工程管理には専用ツール(Photoruction等)との連携が現実的です。CRMは営業・顧客管理の基盤として活用し、施工管理は専用ツールと使い分けるのがおすすめです。
カスタムオブジェクトを使えば、工事案件ごとのデータ管理が可能です。ただし、本格的な工事台帳(出来高管理、原価管理の詳細)は会計システムとの連携が必要になります。HubSpotは受注前の営業管理と、案件の概要レベルの管理に強みがあります。
5名程度の会社でも、営業情報の属人化防止と受注予測の精度向上のためにCRM導入のメリットはあります。無料CRMから始めて、案件数が増えてきたらStarterプランに移行するアプローチがおすすめです。月1,800円/シートでスタートできるので、投資対効果は十分に見込めます。
直接のAPI連携は現状難しい場合が多いですが、CRMで営業・顧客管理を行い、安全書類関連はグリーンサイト等の専用システムを使うという使い分けが現実的です。将来的にはiPaaS経由での連携も視野に入れられます。