Mazrica Sales(マツリカセールス、旧Senses)は、直感的なカード型案件ボードやAIによる受注予測機能で、国内の多くの営業チームに導入されてきたSFAツールです。営業現場のデータ入力負荷を軽減する設計思想は、多くの企業から支持を集めています。
一方で、事業成長にともなって「SFA単体では限界がある」と感じる企業が増えています。具体的には、以下のような課題が移行検討のきっかけになるケースが多く見られます。
HubSpot CRMは、Marketing Hub・Sales Hub・Service Hub・Content Hub・Data Hubの5つのHubを統合した「オールインワンCRMプラットフォーム」です。SFA機能はもちろん、マーケティングオートメーション、カスタマーサービス、コンテンツ管理までを一つのデータベース上で運用できるため、上記の課題を根本から解決できます。
本記事では、Mazrica SalesからHubSpotへの移行を成功させるための具体的な手順、機能マッピング、営業フローの再設計方法、そしてチームへの定着施策までを包括的に解説します。
移行を進める前に、両プラットフォームの機能差を正確に把握することが重要です。以下の比較表で主要機能を整理します。
| 機能領域 | Mazrica Sales | HubSpot Sales Hub |
|---|---|---|
| 案件管理 | カード型ボードで直感的に管理 | パイプラインボード+リストビュー切替 |
| 活動管理 | アクション管理でタスク・メモを記録 | タイムライン上にメール・通話・タスクを自動記録 |
| AI機能 | AIによる受注確度予測・リスク分析 | Breezeによる予測リードスコアリング・取引予測 |
| 名刺管理 | Sansanなど外部連携 | HubSpotモバイルアプリで名刺スキャン対応 |
| メール連携 | Gmail・Outlook連携 | Gmail・Outlook双方向同期+トラッキング |
| レポート | 営業ダッシュボード | カスタムレポートビルダー+営業アナリティクス |
| 領域 | Mazrica Sales | HubSpot |
|---|---|---|
| マーケティング | 外部MA連携が必要 | Marketing Hubでネイティブ統合 |
| カスタマーサービス | 非対応 | Service Hubでチケット・ナレッジベース管理 |
| コンテンツ管理 | 非対応 | Content HubでCMS・ブログ運用 |
| データ連携 | API・一部連携あり | Data Hubで双方向同期+1,700以上のアプリ連携 |
| AI機能 | 営業特化のAI | Breeze(全Hub横断のAIエージェント・コパイロット) |
| 無料プラン | なし(有料のみ) | 無料CRMで基本機能を永続利用可能 |
Mazrica Salesが営業現場の使いやすさに特化しているのに対し、HubSpotは営業を含むビジネスプロセス全体をカバーするプラットフォームです。移行によって「営業の枠を超えた顧客データの統合管理」が実現します。
移行の成否は、事前準備の質で決まります。以下の3つのステップを確実に実行してください。
Mazrica Salesに蓄積されているデータを種類別に棚卸しします。
この段階で「使われていない項目」「重複データ」「不正確なデータ」を特定し、クレンジング方針を決めておくことが重要です。古いデータをそのまま移行すると、新しいCRMの精度が下がります。
Mazrica Salesのフィールドを、HubSpotのプロパティにどう対応させるかを設計します。
| Mazrica Salesフィールド | HubSpotプロパティ | 備考 |
|---|---|---|
| 案件名 | 取引名(Deal name) | そのまま移行 |
| 案件金額 | 金額(Amount) | 通貨設定を確認 |
| フェーズ | 取引ステージ(Deal stage) | パイプライン設計が必要 |
| 受注確度 | 取引確度(Deal probability) | ステージごとの自動確率も設定可能 |
| 予定クロージング日 | クロージング予定日(Close date) | 日付フォーマットを統一 |
| 担当者 | 取引オーナー(Deal owner) | HubSpotユーザーとの紐付け |
| 企業名 | 会社名(Company name) | 会社オブジェクトに分離 |
| アクション | タスク・アクティビティ | タイプ分けが必要 |
HubSpotにデフォルトで存在しないフィールドは、カスタムプロパティとして事前に作成しておきます。
Mazrica Salesのパイプライン構成をそのままHubSpotに移すのではなく、移行を機に営業プロセスを見直すことを推奨します。
HubSpotでは以下の点でより柔軟なパイプライン設計が可能です。
Mazrica Salesの管理画面から、以下のデータをCSV形式でエクスポートします。
エクスポート時の注意点として、文字コードはUTF-8を指定し、日付フォーマットはYYYY-MM-DD形式に統一してください。
データをインポートする前に、HubSpot側の受け皿を整えます。
HubSpotのインポート機能を使用して、以下の順番でデータを投入します。
インポート時は、必ず少数のテストデータで動作確認してから本番データを投入してください。プロパティのマッピングミスや文字化けを事前に検出できます。
HubSpotの強みは、コンタクト・会社・取引が相互に関連付けられる点です。インポート後、以下を確認します。
重複が見つかった場合は、HubSpotの「重複管理ツール」を使って統合します。
Mazrica Salesのカード型案件ボードは、HubSpotの「取引ボードビュー」でほぼ同じ操作感を再現できます。
Mazrica Salesの「アクション管理」機能は、HubSpotでは以下の組み合わせで再現・強化できます。
Mazrica Salesが提供するAI受注確度予測は、HubSpotのAI「Breeze」で代替・発展させることができます。
Breezeは営業だけでなく、マーケティングやカスタマーサービスにも横断的に活用できるため、Mazrica SalesのAIよりも広範な業務改善が期待できます。
HubSpotのカスタムレポートビルダーでは、Mazrica Salesで利用していた営業指標をすべて再現できます。
Mazrica Salesに蓄積された活動メモや電話記録は、CSVエクスポートだけでは完全に移行できないケースがあります。
解決策: HubSpotのEngagements APIを使用して、活動履歴をプログラマティックにインポートします。タイムスタンプやオーナー情報を保持したまま、ノート・通話・メールのエンゲージメントとして取り込めます。重要な商談の経緯が失われないよう、直近の活動データを優先的に移行しましょう。
Mazrica Salesの操作に慣れたメンバーにとって、HubSpotのUI変化は短期的なストレスになります。
解決策: 移行前に「HubSpotハンズオンワークショップ」を実施します。特に日常的に使う「取引ボード」「タスクキュー」「メール連携」の3操作に絞って、実データを使ったトレーニングを行うと効果的です。HubSpot Academyの無料トレーニングコースも活用してください。
Mazrica SalesとHubSpotでは、プロパティの型定義が異なる場合があります。特に選択肢型(ドロップダウン)やタグ型のフィールドは注意が必要です。
解決策: マッピング表の段階で、フィールドの型(テキスト、数値、日付、ドロップダウン、複数選択)を明確にし、HubSpot側で事前にプロパティを作成しておきます。選択肢の値は完全一致させるか、インポート時のマッピングテーブルで変換を定義してください。
移行期間中に「Mazrica SalesとHubSpotの両方にデータを入力する」二重管理が発生すると、現場の負担が急増します。
解決策: 並行稼働は最大2週間に限定し、移行完了のカットオーバー日を事前に宣言します。並行期間中は「新規案件はHubSpotのみ」「既存案件はMazrica Salesで継続」というルールを明確にすると混乱を防げます。
移行完了後、以下の項目を検証します。
SFAの移行で最も重要なのは、ツール変更後に営業チームが実際に使い続けることです。
Mazrica Salesでは実現が難しかった以下の領域を、HubSpotへの移行後に段階的に拡張できます。
Mazrica Sales(マツリカセールス)からHubSpotへの移行は、単なるSFAツールの入れ替えではなく、営業プロセスを含むビジネス全体のデジタル基盤を再構築する機会です。
移行を成功させるポイントを改めて整理します。
Mazrica Salesで培った営業データと運用ノウハウは、HubSpotプラットフォーム上でさらに大きな価値を発揮します。適切な移行計画と実行により、営業生産性の向上と顧客体験の統合管理を同時に実現してください。