「HubSpotを導入したのに、営業チームがExcelに戻ってしまった」
「高機能なツールを入れたのに、基本的な入力すらされていない」
——CRMの導入後に最も多く聞かれる悩みが「社内定着」の課題です。
HubSpotの社内定着とは、導入したHubSpotが単なる「入れただけのツール」ではなく、日常業務に組み込まれ、チーム全員がデータを入力・活用し、意思決定に活かしている状態を指します。ツールを導入しただけでは成果は出ません。現場に「使い続けてもらう」ための仕組みづくりがポイントになってくるかなと思います。
本記事では、HubSpot導入支援の実務経験をもとに、社内定着を実現するためのトレーニング方法・仕組み化のノウハウ・学習リソースを体系的に解説します。
この記事でわかること:
最もよくある原因は、導入の目的やメリットが現場に十分に伝わっていないことです。経営層やIT部門が選定したツールを「明日から使って」と言われても、現場の営業担当者には「今までのやり方で問題ないのに、なぜ変えるのか」という抵抗感が生まれます。
「この画面でコンタクトを登録します」「ここからレポートが見られます」という機能説明だけのトレーニングでは、現場は「で、私の業務にどう関係するの?」となってしまいます。操作方法ではなく、自分の業務がどう楽になるかを伝えることが結構ミソになってくるポイントです。
HubSpotに入力してもしなくても業務が回る状態では、忙しい営業担当者がわざわざデータを入力する動機がありません。入力しないとステージ移行できない、入力したら自動でレポートに反映されるという「仕組み」がなければ、定着は進みません。
HubSpotのトレーニングは、全員に同じ内容を教えるのではなく、部門・役割ごとに必要な知識と操作を切り分けて設計することが重要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | ダッシュボード・レポートの見方を理解し、データに基づく意思決定ができるようになる |
| 必要な操作 | ダッシュボード閲覧、レポートのフィルタリング、定期配信メールの設定 |
| シート種別 | 表示のみシート(無料)で十分 |
| ポイント | 代表や副社長もレポートだけ見ていればいいという場合は無料で利用可能 |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 日常の営業活動をHubSpot上で完結できるようになる |
| 必要な操作 | コンタクト・会社・取引の登録・更新、パイプライン管理、メール送信・記録、タスク管理、シーケンス |
| シート種別 | Sales Hub有償シート |
| ポイント | 「入力すると何が楽になるか」を具体的にデモ。1000万の案件がアポ取得段階なら受注見込みは10%=100万、という加重金額の仕組みを見せると腹落ちしやすい |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | リード獲得からナーチャリングまでのMA運用ができるようになる |
| 必要な操作 | フォーム作成、メール配信、ワークフロー設定、リードスコアリング、キャンペーン管理 |
| シート種別 | コアシート(Marketing Hub) |
| ポイント | MAを入れるとGoogle広告のコンバージョンが「誰だったのか」まで追跡できる点が価値。スプレッドシートでの手動集計から脱却できる |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | チケット管理とナレッジベースの運用ができるようになる |
| 必要な操作 | チケット登録・対応、ナレッジベース記事の作成、ヘルプデスクの操作 |
| シート種別 | Service Hub有償シート |
| ポイント | 顧客が20社程度ならスプレッドシートでも管理できるが、100社〜200社超になると追い切れなくなる。その規模感に合わせて導入時期を判断 |
トレーニングだけでは定着しません。人に頼らず、システムで「使わざるを得ない」環境を作ることが結構ミソになってくるかなと思います。
パイプラインのステージ移行時に、必ず入力すべき項目を強制します。
| ステージ | 必須プロパティ例 |
|---|---|
| アポ取得 → 初回提案 | 提案予定日、主要ニーズ |
| 見積もり提示 → 受注内示 | 金額、クローズ予定日 |
| 受注 | 受注理由(選択式) |
| 失注 | 失注理由(選択式) |
この設計には副次的なメリットもあります。新人営業が「このステージで何を確認・入力すべきか」を知るツールにもなるため、人材育成にもつながります。
手動作業を減らすことで「HubSpotを使う方が楽」という体験を作ります。
毎回チェックボックスを作ってワークフローで処理していると、ワークフローの数が増えすぎてうまく動作しなくなることがあるので、計算プロパティで代替できるものはワークフローを使わないことも大切です。
ダッシュボードを会議シーン別に分けて運用することで、「HubSpotを見る理由」を作ります。
| ダッシュボード | 用途 | 更新頻度 |
|---|---|---|
| 営業会議用 | パイプライン状況、今月の受注見込み、活動量 | 毎週 |
| 経営会議用 | 売上推移、KPI達成率、マーケROI | 毎月 |
| タスク管理用 | 各担当者の未対応タスク、期限切れ案件 | 毎日 |
| マーケ分析用 | リード獲得数、チャネル別成果、メール効果 | 毎週 |
ダッシュボードを定期配信(例: 毎週水曜朝8時にPowerPoint形式で送信)すると、HubSpotにログインしなくてもデータが届くため、経営層のレポート活用が進みます。
プロパティ設定を管理者のみ変更できるようにしたり、受注後に金額・日付を変更できないようにパイプラインルールを設定することで、データの信頼性を担保します。
全社向けに30分程度のキックオフを実施し、「なぜHubSpotを導入するのか」「導入後にどんな成果を目指すのか」を共有します。ここでは機能説明は最小限にし、ビジネス上のメリットにフォーカスします。
各部門の業務に合わせた実践型トレーニングを実施します。画面を見せるだけでなく、実際にデータを入力してもらう「ハンズオン形式」が効果的です。
トレーニングのコツ:
トレーニング後すぐに「完璧に使いこなす」ことは難しいため、2〜4週間のOJT期間を設けます。この期間中は以下を実施します。
1ヶ月後にデータ入力率・ログイン率を確認し、定着が進んでいない部門には追加のフォローアップトレーニングを実施します。
出典: HubSpot Academy (academy.hubspot.com)
HubSpotが公式に提供する無料の学習プラットフォームです。動画レッスン・クイズ・認定資格試験が用意されています。
| おすすめコース | 対象者 | 所要時間目安 |
|---|---|---|
| HubSpot CRM認定コース | 全ユーザー | 2〜3時間 |
| インバウンドマーケティング認定 | マーケ担当 | 4〜5時間 |
| HubSpot Sales Software認定 | 営業担当 | 3〜4時間 |
| HubSpot Marketing Software認定 | マーケ担当 | 5〜6時間 |
動画レッスンは短時間で区切られているため、仕事の合間や移動時間に学習しやすく、同僚とのディスカッションを通じて業務に落とし込むことで定着度が高まります。
日本語コミュニティで他のユーザーに質問したり、ベストプラクティスを共有したりできます。「同じ悩みを持った企業がどう解決したか」の事例が参考になります。
機能ごとの詳細な操作手順が日本語で公開されています。社内マニュアルを自作する前に、まずナレッジベースの該当ページを共有するのが効率的です。
Salesforceを使っていたチームがHubSpotに移行する場合、以下の違いを理解しておくとトレーニングがスムーズになります。
| Salesforce | HubSpot | 移行時の注意点 |
|---|---|---|
| オブジェクト | オブジェクト | 基本構造は類似。カスタムオブジェクトはEnterprise以上 |
| ページレイアウト | レコードカスタマイズ | カスタマイズの粒度はSalesforceの方が細かい |
| Apex / Visualforce | カスタムコード(Node.js/Python) | 開発言語が異なる。ワークフロー内で実行可能 |
| レポートビルダー | カスタムレポートビルダー | 式フィールドのグルーピングはSalesforceとかなり近いUXに |
| プロファイル / 権限セット | チーム / 権限セット | 概念は類似しているが設定方法が異なる |
HubSpotは「よりシンプルなUI」「MA一体型」という強みがあります。Salesforceで複雑化していた設定をHubSpot移行時にシンプル化することで、現場の定着が進むケースもあります。
| KPI | 目標値(目安) | 測定方法 |
|---|---|---|
| ログイン率 | 週5日以上: 対象ユーザーの80%以上 | HubSpot管理画面のアクティビティログ |
| データ入力率 | 取引の必須プロパティ入力率: 90%以上 | プロパティのフィルレートレポート |
| パイプライン更新頻度 | 全取引の50%以上が週1回以上更新 | 取引の最終更新日レポート |
| レポート閲覧率 | ダッシュボードのアクティブ閲覧者: 対象の70%以上 | ダッシュボードの閲覧ログ |
HubSpotの社内定着は、トレーニングだけでなく「仕組み化」と「継続的な改善」の3つが揃って初めて実現します。
定着成功のポイント:
まずはHubSpotの基本操作ガイドで基本を押さえ、パイプライン設計で自社に最適な業務フローを構築した上で、ワークフロー設定で自動化を進めていきましょう。CRMにデータが蓄積されるほど、レポート・ダッシュボードの精度が上がり、データドリブンな意思決定が可能になります。
A. 基本操作のトレーニングは1〜2日、OJT期間を含めると1ヶ月程度で基本的な定着が見込めます。MAやワークフローなどの高度な機能は、3〜6ヶ月かけて段階的に習得していくのが現実的です。
A. まず全社向けのキックオフ(30分程度)で「なぜ導入するのか」を共有し、その後に部門別のハンズオントレーニングを実施する2段階がおすすめです。
A. はい、特にCRM認定コースとインバウンドマーケティング認定は実務に直結する内容です。チーム内で認定取得を推奨することで、学習のモチベーション向上にもつながります。
A. まず具体的に「何が使いにくいのか」をヒアリングします。多くの場合、(1)操作方法がわからない、(2)自社の業務フローに合っていない、(3)入力項目が多すぎる、のいずれかです。操作方法は追加トレーニングで、業務フローの不一致はパイプラインやプロパティの再設計で、入力項目の多さは不要項目の削除で対応できます。
A. CRM導入が初めてで社内にHubSpotの知見がない場合は、HubSpot認定パートナーのトレーニングサービスを利用することで、立ち上げ工数と学習コストを大幅に削減できます。通常、業者に頼むと高かったりしますが、長期的に見れば「内製化」できる状態を早く作れるため、投資対効果は高いかなと思います。