「HubSpotを導入したいけれど、上司を説得できる自信がない」
「費用対効果をどう示せば稟議が通るのだろう」
——CRMやMAの必要性を感じていても、社内説得がハードルとなって導入が進まないケースは少なくありません。
HubSpot導入の稟議・社内説得とは、CRM/MAプラットフォームの導入費用とその投資対効果(ROI)を経営層に提示し、予算承認を得るプロセスを指します。単に「便利なツールです」と伝えるだけでは稟議は通りません。数値に基づいたROI算出と経営課題に紐づいた提案が結構ミソになってくるポイントです。
本記事では、HubSpot導入支援を手がけるStartLinkの経験をもとに、経営層を説得するためのROI算出方法・提案書の構成・社内説得のコツを実践的に解説します。
この記事でわかること:
出典: HubSpot (hubspot.jp/pricing)
「営業効率が上がります」「マーケティングが自動化されます」だけでは、経営層は「それで売上がいくら増えるの?」と聞いてきます。効果を金額や時間に換算して示す必要があります。
多くの企業ではExcelやスプレッドシートでの顧客管理が「当たり前」になっており、現状の非効率に気づいていないことがあります。「スプレッドシートで管理していると手動での変更が多くなってしまう」「差分が起きてしまう」といった具体的な課題を可視化する必要があります。
月額費用だけを見ると「高い」と感じられますが、それによって削減できる工数・増加する売上と比較すれば「投資」として合理的であることを示す必要があります。
ROI(%) = (導入による年間利益増加額 − 年間コスト) ÷ 年間コスト × 100
| コスト項目 | 金額例(年間) |
|---|---|
| HubSpotライセンス費用 | Starter: 約22万円(月1,800円×3シート×12ヶ月)〜 Professional: 約120万円〜 |
| 初期設定・導入支援費用 | 50万〜200万円(パートナー活用の場合) |
| トレーニング費用 | 社内実施の場合は実質0円(HubSpot Academy無料) |
| 運用工数(社内人件費) | 管理者月10時間×時給3,000円×12ヶ月 = 36万円 |
年間コスト例(Starterプラン・3名利用):
ライセンス22万円 + 初期設定50万円(初年度のみ)= 初年度72万円、2年目以降22万円
年間コスト例(Professionalプラン・10名利用):
ライセンス約120万円 + 初期設定150万円(初年度のみ)+ 運用工数36万円 = 初年度306万円、2年目以降156万円
利益増加は主に3つの経路で発生します。
| 効果項目 | 計算式 | 金額例 |
|---|---|---|
| パイプライン可視化による受注率向上 | 現在の受注率20% → 25%に改善(+5pt) | |
| 年間商談数100件×平均単価200万円×受注率改善+5% | +1,000万円 | |
| シーケンスによるアプローチ数増加 | 手動30件/月 → 自動100件/月 | |
| 追加70件×商談化率10%×受注率20%×平均単価200万円 | +336万円/年 |
| 効果項目 | 現状工数 | 削減後 | 年間削減額 |
|---|---|---|---|
| 営業日報・報告書作成 | 5人×1時間/日 | 0.25時間/日 | 337万円 |
| 月次レポート作成 | 2人×8時間/月 | 0.5時間/月 | 54万円 |
| リード振り分け・通知 | 1人×2時間/日 | 自動化で0時間 | 144万円 |
| 展示会後のフォローアップ | 3人×16時間/回×4回 | 2時間/回 | 52万円 |
※時給3,000円で計算
| 効果項目 | 計算式 | 金額例 |
|---|---|---|
| リードスコアリングによる優先順位付け | 営業工数の30%を高確度リードに集中 | 受注率+10%改善 |
| ナーチャリングによる失注掘り起こし | 失注案件の5%を再商談化 | +200万円/年 |
| 広告費最適化(チャネル別ROI可視化) | 無駄な広告費を20%削減 | +100万円/年 |
Starterプラン(3名・初年度)の例:
Professionalプラン(10名・初年度)の例:
※上記は試算例です。企業様によって効果は異なりますので、自社の数値を当てはめて計算していただくのがいいかなと思います。
| ページ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 表紙 | 「CRM/MA導入による営業DX推進のご提案」等、経営課題に紐づけたタイトル |
| 2 | 現状の課題 | Excel管理の限界、データの分散、手動作業の工数を具体的数値で提示 |
| 3 | 解決策の概要 | HubSpotの「一元管理×自動化×可視化」を3つの柱として説明 |
| 4 | ツール比較 | HubSpot vs Salesforce vs その他CRMの比較表(なぜHubSpotか) |
| 5 | 導入スケジュール | フェーズ分け(スモールスタート→段階拡張)のタイムライン |
| 6 | 費用とROI | 上記のROI算出結果を表・グラフで提示 |
| 7 | リスクと対策 | 導入失敗リスクと回避策(定着施策、パートナー活用等) |
| 8 | 次のアクション | 「まずは無料プランで2週間のトライアルを実施」等 |
コツ1: 課題を「経営の言葉」で語る
| 現場の言葉 | 経営の言葉に変換 |
|---|---|
| 「Excelが使いにくい」 | 「顧客データの分散により営業判断の質が低下している」 |
| 「営業が入力してくれない」 | 「営業活動データが資産化されず、経営の可視化ができていない」 |
| 「メルマガを効率化したい」 | 「リード育成の自動化により、商談創出数を月X件増加させる」 |
コツ2: 「投資」として提示する
「月額○万円かかります」ではなく、「月額○万円の投資で、年間○万円の工数削減と売上○万円の増加が見込めます。ROIは○%です」と伝えます。
コツ3: スモールスタートを提案する
いきなり全社導入を提案すると、コストとリスクの大きさで却下されやすくなります。「まずはStarter月1,800円×3名=月6,000円で営業チームのパイプライン管理から始め、3ヶ月後に効果を検証した上で拡大を判断する」という段階的なアプローチが経営層には受け入れやすいです。
稟議を上げる前に、以下のキーパーソンに事前に相談しておきます。
| キーパーソン | アプローチ方法 |
|---|---|
| 直属の上司 | 1on1で課題感を共有し、提案書のドラフトをレビューしてもらう |
| IT部門 | セキュリティ要件、既存システムとの連携可否を事前に確認 |
| 経理・財務 | 費用計画とROI試算を事前に共有し、コスト面の懸念を解消 |
| 営業現場のエース | 「このツールがあれば○○が楽になる」というユーザー目線の声を集める |
HubSpotの無料プランを使って、実際のデータで小規模なPoC(概念実証)を実施します。
PoCの進め方:
「トライアルでまず試していただいて、本格的に使おうとなったら営業の方が広げていただくという形がいいのかなと思います。」
| 項目 | 記載のポイント |
|---|---|
| 導入目的 | 「営業データの一元管理とパイプライン可視化による受注率向上」等、経営目標に紐づける |
| 必要性 | 現状の課題を定量化(「月○時間の手動作業」「データの○%が重複」等) |
| 費用 | 初年度・2年目以降のコストを明記。月額だけでなく年額も |
| 効果 | ROI試算結果。「保守的見積もり」と「期待値」の2パターン提示が有効 |
| リスク | 定着しないリスクへの対策(トレーニング計画、パートナー活用)を明記 |
| 代替案 | HubSpotを導入しない場合のリスク(Excel管理の限界、競合との差) |
| スケジュール | フェーズ分けの計画(いきなり全社ではなくスモールスタート) |
「現在のスプレッドシート管理では、手動での変更が多く、情報の分散による差分が発生しています。コンタクト数が増えるほどこの課題は深刻化します。HubSpotでは一元管理・自動化・可視化が実現でき、月1,800円から始められます。」
「Salesforceも優れたCRMですが、初期費用と学習コストが高く、特に50名以下の組織ではオーバースペックになる場合があります。HubSpotはMA機能が標準搭載で、UIの学習コストが低いため、現場への定着が早い傾向があります。なお、将来的にHubSpotからSalesforceに移行することも可能です。」
「ROI試算では、保守的に見積もっても初年度○%の投資回収が見込めます。まずは月6,000円(3名×Starter)の小規模トライアルから始め、3ヶ月後に効果を数値で検証した上で拡大を判断できます。」
「CRM導入の約6割が定着しないと言われていますが、その原因の多くは『目的の曖昧さ』と『現場の巻き込み不足』です。当社では事前に業務プロセスを整理し、必須入力の仕組み化とトレーニング計画を策定することで定着リスクを最小化します。」
稟議書に添付する比較表として活用できます。
| 比較項目 | HubSpot | Salesforce | Zoho CRM |
|---|---|---|---|
| 無料プラン | あり(基本機能充実) | なし | あり(3ユーザーまで) |
| 最小有料プラン | Starter 月1,800円/シート | Essentials 月3,000円/ユーザー | Standard 月1,680円/ユーザー |
| MA機能 | Marketing Hub(同一プラットフォーム) | Pardot/Marketing Cloud(別製品) | Zoho MarketingHub |
| 初期設定の難易度 | 低〜中 | 中〜高 | 低〜中 |
| 日本語サポート | あり(一部英語) | あり | あり |
| 学習リソース | HubSpot Academy(無料) | Trailhead(無料) | Zoho Academy |
法人のCRMでここまで安くて高機能というのはなかなかないかなと個人的に思っています。HubSpotは最近も進化がすごく、Salesforceと遜色ないぐらいの機能が使えるようになっています。
HubSpot導入の稟議を通すためには、「根拠」を数値で示し、「根気」よく関係者を巻き込み、「根回し」で事前の合意を形成することが大切です。
稟議を通すための要点:
まずはHubSpotの無料プランで小規模なPoCを実施し、実データに基づく効果検証を行った上で稟議書を作成することをおすすめします。HubSpot全プラン比較を参考に自社に最適なプランを選定し、基本操作ガイドでチーム全員が使いこなせる体制を構築していきましょう。
A. マーケティング部門または営業企画部門が起案するケースが多いです。ただし、IT部門(セキュリティ・システム連携の観点)と経理(予算・費用の観点)を事前に巻き込んでおくことで、稟議審査がスムーズに進みます。
A. はい、経営層には「保守的見積もり」と「期待値」の2パターンを提示するのが効果的です。保守的見積もりでも投資回収が見込めることを示せれば、信頼度の高い提案になります。
A. 2〜4週間が目安です。コンタクト登録→パイプライン管理→レポート確認の一連の流れを体験し、「Excel管理との比較データ」を取得するのに十分な期間です。
A. Starterプラン(月1,800円〜)であれば、部門予算内で処理できるケースもあります。ただし、Professionalプラン以上になると年間100万円を超えるため、多くの企業で稟議が必要になります。金額の大小に関わらず、導入目的とROIを整理しておくことは、その後の定着にもつながるのでおすすめです。
A. 「Salesforceを使っているがHubSpotのMA導入はできない」ということはありません。データ連携がしっかりできるため、MAとSFAを切り分けて運用することが可能です。Marketing HubとSalesforce SFAの併用は、実際に多くの企業で採用されているパターンです。