「ECサイトの購入データとメール配信ツールが別々で、顧客の全体像が見えない」「新規獲得コストが上がり続けていて、リピート率を上げたい」「購入後のフォローが手動で追いつかない」——EC・D2C事業者ならではの課題を感じている方は多いのではないでしょうか。
EC・D2C事業者におけるHubSpot活用とは、ECサイトの購入データ・顧客データ・行動データをHubSpotのCRMに統合し、セグメント別のメール配信やリピート促進の自動化、LTV(顧客生涯価値)の最大化を実現することです。
この記事では、EC・D2C事業者がHubSpotを導入する際の設計思想と、具体的な活用パターンを解説します。
出典: HubSpot (hubspot.com/products/commerce)
HubSpotは元々B2Bマーケティング向けのツールとして発展してきましたが、EC・D2C事業者でも活用できるケースが増えています。特に以下のような企業に向いています。
| 向いているケース | 理由 |
|---|---|
| 高単価商材のEC | 顧客ごとの丁寧なフォローが収益に直結する |
| 定期購入(サブスク)型EC | 継続率管理、チャーン防止にCRM機能が活きる |
| B2B EC(法人向け通販) | 見積もり、請求、アカウント管理が必要 |
| D2Cブランド | ブランドストーリーのコンテンツマーケティングに強い |
一方で、低単価・大量トランザクションのECサイト(日用品EC等)では、HubSpotよりも専用のEC向けMAツール(Klaviyo等)の方がフィットするケースもあります。自社のビジネスモデルに合わせた判断が重要です。
| 連携方法 | 対応プラットフォーム | 特徴 |
|---|---|---|
| 公式連携 | Shopify, WooCommerce | アプリマーケットプレイスから簡単セットアップ |
| iPaaS連携 | 全プラットフォーム | Yoom, Zapier等で中間ツール経由の連携 |
| API連携 | 全プラットフォーム | 最も柔軟だが開発リソースが必要 |
| CSVインポート | 全プラットフォーム | 手動だが初期導入時に有効 |
HubSpotと直接つなげられないプラットフォームでも、Yoomを使うことで連携が結構円滑にできたりします。日本のECプラットフォーム(BASE、STORES等)との連携にはiPaaSが活用しやすいです。
| データ | 同期先(HubSpot) | 活用用途 |
|---|---|---|
| 顧客情報 | コンタクト | セグメント配信の基盤 |
| 注文データ | 取引 or カスタムオブジェクト | 購入履歴の可視化 |
| 商品データ | 製品 or カスタムオブジェクト | 購入商品ベースのセグメント |
| カート情報 | カスタムイベント | カゴ落ちフォロー |
| 行動データ | トラッキングコード | 閲覧ページベースの施策 |
EC・D2C事業者にとって、全顧客に同じメールを送る一斉配信から脱却し、セグメント別の配信に移行することがLTV向上の第一歩です。
| セグメント | 条件 | 施策例 |
|---|---|---|
| 新規購入者 | 初回購入から7日以内 | ウェルカムメール、ブランドストーリー |
| リピーター | 2回以上購入 | ロイヤルティプログラム案内 |
| 休眠顧客 | 最終購入から90日以上経過 | 再購入促進クーポン |
| VIP顧客 | 累計購入金額が上位10% | 限定オファー、新商品先行案内 |
| 定期購入者 | サブスクリプション契約中 | 継続お礼、関連商品提案 |
購入データがHubSpotに連携されていれば、以下のようなワークフローを構築できます。
初回購入者フォローワークフロー:
メールの送信間隔は、商材の消費サイクルに合わせて調整してください。日用品なら30日サイクル、高額商品なら60〜90日サイクルなど、企業様によって最適な間隔は異なります。
ECサイトのカゴ落ち率は一般的に70%前後と言われています。カゴ落ちフォローの自動化は、最も投資対効果の高い施策の一つです。
カゴ落ちフォローワークフロー:
| 施策 | HubSpot機能 | 効果 |
|---|---|---|
| 購入周期に合わせたリマインド | ワークフロー + 遅延 | 自然な再購入タイミングでのアプローチ |
| クロスセル提案 | セグメント配信 | 購入商品に関連する商品の提案 |
| レビュー依頼→クーポン付与 | ワークフロー | 口コミ獲得 + 次回購入促進 |
| 誕生日・記念日メール | ワークフロー + 日付プロパティ | パーソナライズされた特別感 |
| ランクアップ通知 | 計算プロパティ + ワークフロー | ロイヤルティの向上 |
HubSpotの計算プロパティを使って、顧客ごとのLTVを自動算出できます。
| プロパティ | 計算方法 |
|---|---|
| 累計購入金額 | 関連する取引金額の合計(ロールアッププロパティ) |
| 購入回数 | 関連する取引の件数 |
| 平均購入単価 | 累計購入金額 ÷ 購入回数 |
| 初回購入日 | 最も古い取引の作成日 |
| 最終購入日 | 最も新しい取引の作成日 |
| 顧客寿命 | 最終購入日 - 初回購入日 |
計算プロパティの条件分岐を使えば、購入金額に基づくランク分けもワークフロー不要でリアルタイムに更新できます。
| ランク | 条件 | 施策 |
|---|---|---|
| ブロンズ | 累計1万円未満 | 基本的なメール配信 |
| シルバー | 累計1万〜5万円 | 限定セール先行案内 |
| ゴールド | 累計5万〜20万円 | 送料無料特典、新商品先行販売 |
| プラチナ | 累計20万円以上 | VIP限定イベント、専用サポート |
計算プロパティを使うことで、ワークフローの数がものすごく増えるのを防げます。リアルタイムで自動更新されるので、運用の手間も最小限です。
D2C事業者にとって、ブランドストーリーの発信は顧客との関係構築に不可欠です。
Marketing HubのSNS管理機能を使って、Instagram・X(Twitter)・Facebookへの投稿管理と効果測定を一元化できます。ただし、B2CのSNS活用に関しては、専用ツール(Hootsuite等)の方が機能が充実しているケースもあるので、自社のSNS活用の深さに応じて判断してください。
EC・D2C事業者のHubSpot活用は、ECサイトの購入データをHubSpotに連携し、セグメント別の配信とリピート促進の自動化でLTVを最大化することがゴールです。
まずはECサイトとのデータ連携を構築し、初回購入者フォローのワークフローから始めてみてください。段階的にセグメント配信やカゴ落ちフォローの自動化に広げていくことで、手動ではカバーしきれなかった顧客フォローが仕組みとして回り始めます。
HubSpotはB2B寄りのツールではありますが、高単価商材やサブスク型EC、D2Cブランドには十分に活用できるポテンシャルがあります。自社のビジネスモデルに合わせて、必要な部分から導入いただければなと思います。
はい、HubSpot AppマーケットプレイスにShopify公式連携があり、比較的簡単にセットアップできます。顧客データ、注文データ、カート情報などが自動同期されます。ただし、同期する項目のカスタマイズや、細かい条件設定が必要な場合はAPI連携の検討も必要です。
大量のトランザクションデータをリアルタイムに処理する必要がある場合は、KlaviyoなどのEC専用MAツールの方がフィットします。一方、CRMとしての顧客管理、営業チームとの連携、コンテンツマーケティングを含めた包括的なマーケティング基盤が必要な場合はHubSpotが適しています。両方を併用するケースもあります。
Content Hubでブランドブログやキャンペーンページを内製できること、CRMに顧客データが蓄積されることで購入履歴ベースのパーソナライズ配信ができること、そしてファン顧客のコミュニティ形成にカスタマーポータル機能を活用できることが主なメリットです。
シンプルな購入管理であれば取引オブジェクトで十分です。ただし、1人の顧客が何十回も購入する場合は、取引が大量に作成されてパイプライン管理が煩雑になります。そのような場合は、Enterpriseプランのカスタムオブジェクトで「注文」オブジェクトを作成し、取引パイプラインとは分離する設計がおすすめです。