「kintoneで顧客管理をしているけど、マーケティングや営業を一体化したい」「kintoneのアプリが増えすぎて管理が大変になった」——こうした課題をきっかけに、kintoneからHubSpotへの移行を検討する企業が増えています。
kintoneとHubSpotの機能比較・選定判断については「kintone CRM移行 HubSpot|CRMとして限界を感じたときの判断と手順」を参照してください。本記事では、kintoneからHubSpotへの全面移行を決めた後の具体的な実行手順に特化して解説します。
kintoneはサイボウズが提供する業務アプリ構築プラットフォームです。ノーコードで顧客管理・案件管理・日報管理などのアプリを自由に作れる柔軟性が強みですが、マーケティングオートメーション(MA)やSFA(営業支援)の機能は標準では備えていません。一方、HubSpotはCRM・MA・SFA・カスタマーサポートを一つのプラットフォームで提供しています。
本記事では、kintoneからHubSpotへの移行に必要なデータ設計の考え方、具体的な移行手順、kintone固有機能のHubSpotでの再現方法を解説します。
本記事はStartLinkの「HubSpot完全ガイド」関連記事です。
kintoneとHubSpotでは、データの構造化の思想が大きく異なります。
kintoneは「アプリ」という単位でデータベースを自由に構築できます。顧客管理アプリ、案件管理アプリ、問い合わせ管理アプリなど、業務に合わせてアプリを自由に作成し、それぞれのアプリにフィールドを自由に設計します。
HubSpotは「オブジェクト」という固定のデータ構造を持っています。コンタクト(人)、企業、取引(商談)、チケット(問い合わせ)という4つの標準オブジェクトが用意されており、これらのオブジェクト間は「関連付け」で紐づけられています。
| kintone | HubSpot | 備考 |
|---|---|---|
| 顧客管理アプリ(個人) | コンタクト | 標準オブジェクト |
| 顧客管理アプリ(法人) | 企業 | 標準オブジェクト |
| 案件管理アプリ | 取引(Deal) | 標準オブジェクト |
| 問い合わせアプリ | チケット | 標準オブジェクト |
| 商品マスタアプリ | 商品(Product) | 標準オブジェクト |
| その他のアプリ | カスタムオブジェクト | Enterprise プラン以上 |
kintoneは自由にアプリを作れるため、企業ごとにデータ構造が大きく異なります。同じ「顧客管理」でも、ある企業では個人と法人が1つのアプリにまとまっていたり、別の企業では分離されていたりします。
HubSpotへの移行を計画する際は、まず自社のkintoneアプリ一覧を整理し、各アプリがHubSpotのどのオブジェクトに対応するかを設計するステップが不可欠です。
kintoneの顧客管理アプリのレコードは、HubSpotでは「コンタクト」と「企業」の2つのオブジェクトに分割して登録するのが基本です。
kintoneでは1つのレコードに会社名・担当者名・住所・電話番号をまとめて管理していることが多いですが、HubSpotでは以下のように分離します。
企業オブジェクトに入れる情報
コンタクトオブジェクトに入れる情報
この分離により、1社に複数の担当者がいる場合も、企業レコード1件に対して複数のコンタクトを関連付けて管理できるようになります。kintoneでは同じ会社名のレコードが複数存在しがちですが、HubSpotでは企業を1レコードに集約できるのが大きなメリットです。
kintoneのフィールドタイプとHubSpotのプロパティタイプは、多くの場合1対1で対応しますが、一部注意が必要なものがあります。
| kintoneフィールド | HubSpotプロパティ | 変換時の注意 |
|---|---|---|
| 文字列(1行) | 単行テキスト | そのまま移行可 |
| 文字列(複数行) | 複数行テキスト | そのまま移行可 |
| 数値 | 数値 | 小数点以下の桁数を確認 |
| 日付 | 日付選択 | 日付フォーマットの統一が必要 |
| 日時 | 日時 | タイムゾーンに注意 |
| ドロップダウン | ドロップダウン選択 | 選択肢をHubSpot側に事前作成 |
| ラジオボタン | ラジオ選択 | 選択肢をHubSpot側に事前作成 |
| チェックボックス | 複数チェックボックス | セミコロン区切りでインポート |
| ルックアップ | 関連付け | 後述のリレーション変換を参照 |
| 計算 | 計算プロパティ | HubSpotの計算プロパティで再現 |
| テーブル | カスタムオブジェクト or 関連付け | 最も変換が難しい箇所 |
kintoneの「テーブル」フィールド(サブテーブル)は、1レコード内に複数行のデータを持てる機能です。たとえば、案件管理アプリの中に「見積明細テーブル」を持つケースが一般的です。
HubSpotにはサブテーブルの概念がないため、以下のいずれかの方法で再現します。
kintoneでは、アプリ間のデータ参照に「ルックアップ」と「関連レコード一覧」を使います。ルックアップは他アプリの値をコピーする機能、関連レコード一覧は条件に合う他アプリのレコードを表示する機能です。
HubSpotでは、これらの機能を「関連付け(Association)」で再現します。
HubSpotの関連付けは、オブジェクト間の紐づけを定義するものです。標準的な関連付けは以下のとおりです。
kintoneのルックアップが担っていた「会社マスタから会社情報をコピー」という機能は、HubSpotでは関連付けによって代替されます。HubSpotでは値のコピーではなく、レコード間の参照リンクとして管理されるため、元データが更新されると関連先にも最新情報が反映されます。
kintoneの「プロセス管理」機能は、レコードのステータスを段階的に進める機能です。たとえば「申請中 → 承認待ち → 承認済み → 完了」というフローを定義し、各ステータスで作業者を指定できます。
HubSpotでは、ワークフロー機能で同様の自動化が可能です。
| kintoneプラグイン | HubSpot代替機能 |
|---|---|
| カレンダー表示 | HubSpotのタスク・ミーティング機能 |
| 帳票出力 | HubSpotの見積もりテンプレート、外部連携(PandaDoc等) |
| メール送信 | HubSpotのメールテンプレート・シーケンス |
| グラフ表示 | HubSpotレポート・ダッシュボード |
| 条件付き書式 | HubSpotのビュー・フィルター機能 |
| 一括更新 | HubSpotの一括編集・ワークフロー |
kintoneではJavaScriptカスタマイズでフィールドの表示制御や計算ロジックを実装することが一般的です。HubSpotでの代替方法は以下のとおりです。
kintoneのデータはCSV形式でエクスポートできます。手順は以下のとおりです。
エクスポートしたCSVは、HubSpotにインポートする前に以下の加工が必要です。
列名の変更
kintoneの日本語フィールド名を、HubSpotのプロパティ内部名に合わせて変更します。
| kintone列名 | HubSpotプロパティ名 | HubSpot内部名 |
|---|---|---|
| 会社名 | 会社名 | name(企業)/ company(コンタクト) |
| 担当者名 | 姓 / 名 | lastname / firstname |
| メールアドレス | Eメール | |
| 電話番号 | 電話番号 | phone |
| 住所 | 番地 | address |
データの分割
1つのCSVに含まれている企業情報とコンタクト情報を、2つのCSVに分割します。
companies.csv: 会社名、住所、電話番号、業種、従業員数contacts.csv: 姓、名、メールアドレス、電話番号、会社名(関連付け用)選択肢フィールドの値変換
kintoneのドロップダウンやチェックボックスの選択肢が日本語の場合は、HubSpot側のプロパティの選択肢と一致させる必要があります。事前にHubSpot側でプロパティと選択肢を作成し、CSV内の値を一致させてください。
整形したCSVをHubSpotにインポートする手順は以下のとおりです。
インポートの順序は重要です。 関連付けを正しく設定するため、以下の順序でインポートしてください。
インポート完了後は、以下の項目を確認します。
kintoneのレコードに添付されたファイル(PDFや画像)は、CSVエクスポートには含まれません。添付ファイルはkintone APIを使って個別にダウンロードし、HubSpotの該当レコードの「添付ファイル」として手動またはAPI経由でアップロードする必要があります。
ファイル数が多い場合は、移行ツールの利用やスクリプトによる自動化を検討しましょう。
kintoneのレコードに付けたコメントや変更履歴は、HubSpotには直接移行できません。必要な場合は、HubSpotの「メモ」として手動で転記するか、HubSpot APIを使ってノートとして登録するなどの対応が必要です。
kintoneのアプリごとのアクセス権限設定は、HubSpotではチーム・ユーザーロールで再現します。kintoneで設定していた閲覧・編集権限をHubSpotのチーム構成に反映させましょう。
HubSpotにはサブテーブルの概念がないため、用途に応じて代替方法を選択します。見積明細であればHubSpotの商品ライン(Line Items)機能で代替できます。それ以外のテーブルデータはカスタムオブジェクト(Enterpriseプラン以上)として管理するか、シンプルなデータであれば複数行テキストに集約する方法もあります。
kintoneのJavaScriptコードをそのままHubSpotで使うことはできません。HubSpotではワークフローの「カスタムコード」アクション(Node.js / Python対応)や、Data Hubのカスタムコード連携で同等のロジックを再構築します。多くの場合、kintoneでJSカスタマイズしていた処理はHubSpotのノーコードワークフローで代替可能です。
CSVエクスポートには添付ファイルは含まれません。kintone APIを使って個別にダウンロードし、HubSpotの該当レコードにアップロードする必要があります。ファイル数が多い場合はスクリプトによる自動化を検討してください。
可能です。HubSpotの標準オブジェクトでカバーできない業務特化型のアプリ(在庫管理、工程管理など)はkintoneで引き続き運用し、HubSpotとはAPI連携やZapierなどの連携ツールでデータを同期する方法が現実的です。
kintoneからHubSpotへの移行は、アプリ構造の設計変換がプロジェクトの成否を左右します。アプリ間リレーションの関連付け移行、テーブルフィールドの再設計、ワークフローの構築まで、移行プロジェクトの全工程をサポートしています。
移行計画の策定やお見積もりについて、まずはお気軽にご相談ください。
kintoneからHubSpotへの移行は、アプリ構造の違いを理解したうえでデータ設計を行うことが成功の鍵です。とくに「アプリ間リレーションの関連付け変換」と「テーブルフィールドの移行方法」は、事前設計が不十分だとデータの整合性を損なうリスクがあります。
移行の進め方としては、まずkintoneの全アプリを一覧化し、各アプリがHubSpotのどのオブジェクトに対応するかを設計するところから始めてください。その上で、フィールドマッピング表を作成し、テストインポートで問題がないことを確認してから本番移行に進みましょう。
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