「リードの優先順位付けに時間がかかりすぎている」「売上予測がExcelの手作業で精度が低い」「過去の成功パターンに似た見込み客を効率的に見つけたい」——こうした課題を抱えている企業は少なくありません。
HubSpotのAI予測分析機能とは、CRMに蓄積されたデータを機械学習で分析し、リードのコンバージョン確率の予測、売上のフォーキャスト、類似した特徴を持つリードリストの自動生成を行う機能群です。手動でのスコアリングや経験則に頼った売上予測から脱却し、データドリブンな意思決定を実現します。
この記事では、HubSpotのAI予測分析の主要3機能を比較し、設定方法から運用のベストプラクティスまで解説します。
この記事でわかること:
出典: HubSpot (hubspot.jp/products/artificial-intelligence)
HubSpotのAI予測分析は、大きく3つの機能で構成されています。それぞれの役割を理解した上で、自社に最適な活用パターンを設計することが結構ミソになってきます。
| 機能 | 概要 | 対象プラン | 主な活用シーン |
|---|---|---|---|
| 予測リードスコアリング | AIがコンバージョン確率を自動算出 | Professional以上 | リードの優先順位付け |
| AI売上予測(フォーキャスト) | パイプラインデータから売上を予測 | Professional以上 | 経営会議・営業会議 |
| 類似リスト生成 | 既存顧客に似た特徴のリードを抽出 | Professional以上 | ターゲティング・ABM |
予測リードスコアリングとは、HubSpotのAIが過去の取引データ・コンタクトのデモグラフィック情報・行動データを機械学習で分析し、各リードがコンバージョンする確率を自動で算出する機能です。
従来のスコアリングでは、「ページ閲覧で+5点」「フォーム送信で+20点」のように人間がルールを設定する必要がありました。予測スコアリングでは、AIが数百〜数千の変数を自動で分析し、どの要素がコンバージョンに影響するかを自動的に特定します。
| 項目 | 手動スコアリング | 予測リードスコアリング |
|---|---|---|
| ルール設定 | 人間が条件と点数を定義 | AIが自動で学習・算出 |
| 考慮する変数 | 設定した項目のみ | 数百〜数千の変数 |
| 更新頻度 | 手動で見直しが必要 | 新データが入るたびに自動更新 |
| 初期セットアップ | 細かいルール設計が必要 | データがあれば自動で開始 |
| 透明性 | ルールが明確 | AIの判断根拠は一部のみ確認可能 |
ここで1個ポイントになるのが、手動スコアリングと予測スコアリングは「どちらか一方」ではなく、併用するのがベストプラクティスだということです。
今枝の推奨するスコアリング設計では、エンゲージメント(行動ベース)と適合(属性ベース)を組み合わせたMAX100点のスコアリングモデルを基本としつつ、予測スコアリングをその上に重ねて使います。例えば、定性的なものは20点まで、ウェブ行動を80点MAXにするという配分が目安になります。
ステップ1:前提条件の確認
ステップ2:設定画面へのアクセス
ステップ3:スコアの確認と活用
予測スコアを取得したら、そのスコアに基づいてアクションを自動化します。
| スコア帯 | アクション | 担当 |
|---|---|---|
| 高スコア(上位10%) | 即座に営業担当へ通知・アサイン | FS(フィールドセールス) |
| 中スコア(上位10-30%) | IS(インサイドセールス)による架電 | IS |
| 低スコア(上位30%以下) | ナーチャリングワークフローに登録 | マーケティング |
スコアリングの閾値は、分布を見ながら調整するのがおすすめです。高スコアのリードが大量にいる場合は閾値を上げ、少なすぎる場合は下げるといった具合です。
AI売上予測は、パイプラインに登録されている取引データを分析し、将来の売上見込みを自動で算出する機能です。従来はExcelやスプレッドシートで手動計算していたフォーキャストを、AIが自動で行います。
スプレッドシートで結構フォーキャスト管理されている企業様が多いかなと思いますが、手動で変更が多くなってしまうのと、データの鮮度が担保できないという課題があります。HubSpotのAI売上予測を使うことで、リアルタイムのパイプラインデータに基づいた予測が可能になります。
AI売上予測の精度を高めるには、パイプラインの設計が結構ミソになってきます。各ステージの受注確度(角度)が正しく設定されていることが前提です。
例えば、パイプラインの設計において以下の4要素を押さえておく必要があります。
「1000万の案件3件持ってます」と営業が言ったとしても、それがアポ取得の段階なら10%の受注見込みとして掛け合わせると300万ぐらいのフォーキャストになる——という加重金額の考え方がポイントです。
営業会議での活用:
経営会議での活用:
ダッシュボードを会議シーン別に作成し、営業会議用と経営会議用で分けていただくと使いやすくなります。また、定期配信機能を使って毎週の数値をスナップショットとして保存しておくと、時点間の比較ができて便利です。
類似リスト生成は、既存の優良顧客やコンバージョンしたリードに似た特徴を持つコンタクトを、AIが自動で抽出する機能です。
例えば、過去に受注した企業の特徴(業種、従業員数、流入チャネル、閲覧ページ等)をAIが分析し、同じような特徴を持つ未商談のリードを自動でリストアップしてくれます。
ABM(アカウントベースドマーケティング):
キャンペーンターゲティング:
掘り起こし施策:
AI予測分析の精度は、CRMに蓄積されているデータの量と質に直結します。ここが結構重要なポイントになってきます。
1. 入力必須化の仕組みを整える
ステージ移行時に必須入力を強制し、データの空白をなくします。営業の方ですとなかなかちゃんとSFA入れてねと言っても使いこなせなかったりするので、必須化する項目を決めてあげて「仕組み」で解決するアプローチが重要です。
2. スマートプロパティで自動データ取得
AIがWebリサーチで企業情報(従業員数・事業内容・資本金等)を自動取得します。ミニマムで3項目だけ入れるだけでもかなり業務効率化になります。
3. データクレンジングの定期実施
フィルレート(入力率)を確認し、使われていないプロパティは整理します。1%しか使われていないプロパティは、おそらく使っていないので削除を検討しましょう。
| 企業規模 | おすすめのスタートポイント |
|---|---|
| スタートアップ(1-10名) | まず手動スコアリングから開始。データが蓄積されてから予測に移行 |
| 中小企業(10-50名) | Professionalプランで予測スコアリングを有効化。フォーキャストも活用 |
| 中堅企業(50-300名) | 全機能を活用。類似リスト生成でABM施策を強化 |
HubSpotのAI予測分析は、予測リードスコアリング・売上予測・類似リスト生成の3機能で構成されており、営業・マーケティングのデータドリブンな意思決定を支援します。
まずは予測リードスコアリングの有効化から始めて、パイプラインデータが充実してきたら売上予測も活用する——という段階的なアプローチがおすすめです。
AIの予測精度はCRMデータの量と質に比例しますので、日々のデータ入力を「仕組み」として定着させることが、AI活用の大前提になります。CRMにデータが蓄積されるほど、予測の精度が上がり、より効果的な営業・マーケティング施策を立てられるようになります。
予測リードスコアリングが正確に機能するには、過去の成約・失注データがある程度蓄積されている必要があります。目安として、最低でも数十件の成約データと、数百件以上のコンタクトデータがあると良いでしょう。データが少ない段階では、まず手動スコアリングで運用し、データが蓄積されてから予測に切り替えるのがおすすめです。
はい、併用可能です。むしろ併用がベストプラクティスです。手動スコアリングで自社固有のルール(特定業種に加点、特定ページ閲覧で加点など)を設定しつつ、予測スコアリングでAIの分析結果も参考にする——という二層構造がおすすめです。
AI売上予測の精度は、パイプラインの設計品質とデータの入力率に大きく依存します。ステージごとの受注確度が正しく設定されていて、取引の金額・クローズ日・ステージが正確に入力されていれば、かなり精度の高い予測が可能です。ただし、予測はあくまで参考値であり、最終的な判断は人間が行うことが重要です。
類似リスト生成では、コンタクトのデモグラフィック情報(業種、企業規模、役職等)、行動データ(ページ閲覧、メール開封、フォーム送信等)、ファーモグラフィック情報(企業の売上規模、従業員数等)など、CRMに蓄積されたあらゆるデータを総合的に分析しています。
HubSpotのAI予測分析は、CRMと一体化しているためセットアップがシンプルという特徴があります。Salesforce Einstein Analyticsは高度なカスタマイズが可能ですが、設定に専門知識が必要なケースが多いです。技術スタッフが限られている企業では、HubSpotの方が導入のハードルが低いかなと思います。