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リードスコアリングの設計方法|MQL定義からスコアリングモデル構築まで実践ガイド

作成者: |2026/02/24 2:19:12

「マーケから渡されるリードの質が低いと営業から言われる」

「リードは増えているのに、どれを優先的にフォローすべか判断できない」

「MQLの定義が曖昧で、マーケと営業の間で認識がずれている」

リード獲得数が増えるほど、「どのリードを優先すべきか」の判断は難しくなります。すべてのリードに同じ工数をかけることは現実的ではなく、優先順位付けの仕組みがなければ、有望な見込み顧客を見逃す一方で、確度の低いリードに営業リソースを浪費してしまいます。

リードスコアリングとは、見込み顧客の属性情報と行動データに基づいてスコアを付与し、商談化の可能性が高いリードを定量的に特定する手法です。適切に設計されたスコアリングモデルは、マーケティングと営業の連携を強化し、リードの優先順位付けを客観的な基準で行うことを可能にします。

本記事では、リードスコアリングの設計方法を、MQL定義の策定からスコアリングモデルの構築、運用・改善サイクルまで、実践的なテンプレートを交えて解説します。

この記事でわかること

  • リードスコアリングの基本概念と、BtoB企業で導入すべき理由
  • 行動スコアと属性スコアのマトリクス設計法
  • MQL(Marketing Qualified Lead)の定義テンプレートとSQL引き渡し基準の設計
  • スコアの閾値設定と、誤判定を減らすためのチューニング方法
  • スコアリングモデルの運用サイクルと定期見直しのフレームワーク
  • マーケティング部門と営業部門のSLA(サービスレベルアグリーメント)設計

リードスコアリングとは:基本概念の整理

リードスコアリング設定画面の例(出典:HubSpot)

スコアリングの仕組み

リードスコアリングは、リードの「属性」と「行動」にそれぞれポイントを付与し、合計スコアに基づいて優先順位を判断する仕組みです。

スコア種別 評価対象 判断する内容
属性スコア(フィットスコア) 企業規模、業種、役職、地域 自社のターゲットにどれだけ合致しているか
行動スコア(エンゲージメントスコア) Web閲覧、メール開封、資料DL、セミナー参加 どれだけ関心を示しているか

属性スコアが高くても行動スコアが低い場合は「潜在的にターゲットだが、まだ関心が薄い」状態です。逆に行動スコアが高くても属性スコアが低い場合は「関心はあるが、ターゲットとしてフィットしない可能性がある」状態です。両方のスコアが高いリードこそが、営業がフォローすべき最優先リードです。

なぜスコアリングが必要なのか

スコアリング未導入の組織で起きる典型的な問題は以下の通りです。

  • マーケティング部門が「リードを渡した」と認識していても、営業は「質が低い」と感じている
  • 営業が手当たり次第にリードに電話するため、効率が悪く疲弊する
  • 有望なリードが適切なタイミングでフォローされず、競合に流れる
  • マーケティング施策の費用対効果が正確に測定できない

スコアリングモデルを導入することで、これらの問題を「主観」ではなく「客観的な基準」で解決できるようになります。

属性スコアの設計:自社ターゲットとの適合度を定量化する

属性スコアの評価項目と配点例

属性スコアは、リードが自社の理想的な顧客像(ICP:Ideal Customer Profile)にどれだけ合致しているかを測定します。

評価項目 配点基準 スコア
企業規模(従業員数)
1,000名以上 最もフィットする規模 +20
300〜999名 フィットする規模 +15
100〜299名 やや小さいがターゲット内 +10
50〜99名 ターゲットの下限 +5
50名未満 ターゲット外 0
業種
製造業、IT コア業種 +15
金融、小売 準コア業種 +10
その他サービス業 対応可能 +5
官公庁、教育 実績少 0
役職
部長以上(意思決定者) 決裁権あり +20
課長・マネージャー 推進者 +15
主任・リーダー 情報収集者 +10
一般社員 影響力が限定的 +5
地域
首都圏 主要商圏 +5
大阪・名古屋・福岡 営業拠点あり +5
その他 対応可能だが優先度低 0

属性スコア設計のポイント

ポイント1:ICPの明確化が前提

属性スコアを設計する前に、自社の理想的な顧客像を明文化する必要があります。過去の成約顧客の共通特徴を分析し、「どのような企業・担当者に売れているか」を客観的に把握します。

ポイント2:ネガティブスコアの設定

ターゲット外のリードには0点を付与するだけでなく、明確に除外すべき条件にはマイナススコアを設定することも有効です。例えば、競合企業からのアクセスには-50点を設定するケースがあります。

ポイント3:属性スコアの上限設定

属性スコアの合計上限を設定します(例:60点満点)。行動スコアとのバランスを取るために、属性だけで閾値を超えることがないように設計します。

行動スコアの設計:関心度と購買意欲を可視化する

行動スコアの評価項目と配点例

行動スコアは、リードがどの程度積極的に情報収集や検討を行っているかを測定します。

行動カテゴリ 具体的な行動 スコア 理由
Web閲覧
料金ページの閲覧 +15 購買意欲が高いシグナル
事例ページの閲覧 +10 比較検討段階の可能性
製品ページの閲覧 +5 興味・関心の表れ
ブログ記事の閲覧 +2 初期の情報収集段階
メール
メール内リンクのクリック +5 能動的なアクション
メールの開封 +1 受動的な関心
コンテンツDL
製品資料のダウンロード +15 具体的な検討のシグナル
ホワイトペーパーのDL +10 課題認識の深化
チェックリスト/テンプレートのDL +5 情報収集段階
イベント
個別相談会への申し込み +25 商談直前の強いシグナル
製品デモの視聴 +20 比較検討の具体化
ウェビナーへの参加 +10 関心の表明
ウェビナーへの申込(不参加) +3 関心はあるが優先度低
フォーム
問い合わせフォーム送信 +30 最も強い商談シグナル
ニュースレター登録 +3 初期接点

行動スコア設計のポイント

ポイント1:時間減衰(デケイ)の導入

リードスコアリングで見落とされがちなのが「時間経過によるスコアの減衰」です。半年前にホワイトペーパーをダウンロードしたリードと、昨日ダウンロードしたリードでは、購買意欲の鮮度が異なります。

経過期間 スコア残存率の目安
直近30日以内 100%(そのまま)
31〜60日 75%
61〜90日 50%
91〜180日 25%
181日以上 0%(リセット)

ポイント2:頻度と深度のバランス

メール開封を何度繰り返しても、それだけでスコアが閾値に達することがないよう、行動カテゴリごとに上限を設定します。例えば「メール開封」は月間上限5点、「ブログ閲覧」は月間上限10点などです。

ポイント3:ネガティブ行動のスコアリング

メール配信停止(-10)、長期間のWebアクセスなし(90日以上で-15)など、関心低下を示す行動にはマイナススコアを設定します。

スコアリングマトリクスの設計:属性×行動の二軸で判断する

リードスコアリング設定画面の例(出典:HubSpot)

マトリクス設計の考え方

属性スコアと行動スコアを合算するだけでなく、二軸のマトリクスとして設計することで、より精度の高いリード判定が可能になります。

行動スコア:低(0〜29) 行動スコア:中(30〜59) 行動スコア:高(60以上)
属性スコア:高(40〜60) ターゲットだが未活性 → ナーチャリング強化 有望リード → 注視 MQL → 営業引き渡し
属性スコア:中(20〜39) 育成対象 → 継続ナーチャリング 検討中 → コンテンツ提供加速 関心高い → 属性の再確認後に判断
属性スコア:低(0〜19) 優先度低 → 一般ナーチャリング 情報収集者 → コンテンツ提供 ターゲット外の可能性 → 個別確認

スコアの閾値設定

MQLの閾値(スコアがいくつ以上になったらMQLとするか)は、以下の手順で設定します。

ステップ1:過去の成約データから逆算する

過去に成約に至ったリードの行動データを遡り、「成約リードが商談化した時点のスコア」を算出します。

ステップ2:仮の閾値を設定する

成約リードの中央値を目安に、仮の閾値を設定します。例えば、成約リードの商談化時点のスコア中央値が75であれば、MQL閾値を70に設定します。

ステップ3:精度を検証する

設定した閾値で過去データに当てはめ、「MQLのうち何%が実際に商談化(SQL化)したか」を算出します。この比率(MQL→SQL転換率)が目標値(一般的には20〜30%)を下回る場合、閾値を引き上げます。

MQL定義とSQL引き渡し基準の設計

MQL定義テンプレート

MQL(Marketing Qualified Lead)は、マーケティング活動によって一定以上の関心と適合性が確認された見込み顧客です。以下のテンプレートを参考に、自社のMQL定義を策定してください。

定義項目 基準
スコア閾値 合計スコアが70以上
属性条件 属性スコアが20以上(最低限のターゲット適合)
行動条件 直近30日以内に何らかのアクションがある
除外条件 競合企業、学生、フリーメール(個人Gmail等)のみは除外

SQL引き渡しプロセスの設計

MQLからSQL(Sales Qualified Lead)への引き渡しは、マーケティング部門と営業部門の連携において最も重要なプロセスです。

プロセス 担当 内容 期限
MQL通知 MA/CRM スコアが閾値を超えたらアラート通知 自動・即時
初回コンタクト インサイドセールス 電話またはメールでBANT確認 MQL発生から24時間以内
SQL判定 インサイドセールス 商談化の可否を判定しSFAに記録 初回コンタクトから3営業日以内
商談アサイン 営業マネージャー SQLをフィールドセールスにアサイン SQL判定から1営業日以内
フィードバック 営業 商談結果をMQL品質にフィードバック 商談完了後5営業日以内

BANT確認のフレームワーク

インサイドセールスがMQLをSQLに昇格させる際の判断基準として、BANTフレームワークを活用します。

BANT項目 確認内容 SQL昇格の基準
Budget(予算) 予算の有無と規模感 予算が確保済み、または確保予定
Authority(決裁権) 意思決定者の関与度 決裁者と接触可能、または紹介の見込み
Need(ニーズ) 具体的な課題とニーズ 自社製品で解決可能な明確な課題がある
Timeline(時期) 導入検討の時期感 6ヶ月以内に導入を検討している

4項目中3項目以上を満たす場合にSQLとして営業に引き渡すのが一般的な基準です。

マーケ×営業のSLA(サービスレベルアグリーメント)設計

SLAに含めるべき項目

SLAは、マーケティング部門と営業部門の間で「何を・いつまでに・どの基準で」行うかを明文化した合意書です。

SLA項目 マーケティング側の責務 営業側の責務
リード品質 MQL定義に合致したリードのみ引き渡す 引き渡されたMQLを定義どおりにフォローする
リード量 月間◯件のMQLを創出する MQLの初回コンタクトを24時間以内に行う
フィードバック 営業からのフィードバックを反映しスコアリングを改善する 商談結果をCRM/SFAに記録し、MQL品質のフィードバックを提供する
定例会議 月次で合同レビューに参加する 月次で合同レビューに参加する

SLAの運用と見直し

SLAは策定して終わりではなく、月次で以下の指標をレビューし、必要に応じて更新します。

  • MQL創出数(目標対比)
  • MQL→SQL転換率
  • SQL→商談化率
  • 営業のフォロー率(MQLに対して24時間以内にコンタクトした割合)
  • 営業からのフィードバック率

スコアリングモデルの運用と改善サイクル

定期見直しのフレームワーク

スコアリングモデルは「一度作って終わり」ではなく、定期的な見直しが不可欠です。

見直し項目 頻度 担当
スコア配点の微調整 四半期ごと マーケティング + インサイドセールス
MQL閾値の見直し 半年ごと マーケティング + 営業マネージャー
ICP(理想顧客像)の更新 年1回 経営層 + マーケティング + 営業
スコアリングモデル全体の再構築 必要に応じて 全関係者

改善の判断基準

状況 考えられる原因 対策
MQLは多いがSQL転換率が低い 閾値が低すぎる、行動スコアに偏重 閾値の引き上げ、属性スコアの重み増加
MQLが少なすぎる 閾値が高すぎる、行動スコアの配点が厳しい 閾値の引き下げ、行動スコアの見直し
特定チャネルのリードだけスコアが高い チャネル特有の行動に配点が偏っている チャネル中立な配点への調整
成約リードのスコアが低かった 重要な行動や属性がスコアに反映されていない 成約分析に基づくスコア項目の追加

予測スコアリングへの発展

スコアリングの成熟度が高まったら、ルールベースのスコアリングに加えて、予測スコアリング(機械学習を活用した自動スコアリング)の導入も検討できます。

手法 特徴 適した組織
ルールベース 人が配点を設計。透明性が高く、調整が容易 データ量が限定的な中小企業
予測スコアリング AIが過去データから自動学習。精度が高い 大量のリードデータがある中堅〜大企業
ハイブリッド ルールベースで基本設計し、AIで微調整 データが蓄積されてきた成長企業

まとめ

リードスコアリングは、マーケティングと営業の連携を強化し、有望なリードを効率的に商談化するための重要な仕組みです。設計のポイントは以下の通りです。

  • 属性スコアと行動スコアの二軸でリードを評価し、マトリクスで判断する
  • MQL定義を明文化し、マーケと営業が同じ基準でリードを語れるようにする
  • 閾値設定は過去の成約データから逆算し、仮説→検証→修正のサイクルで精度を高める
  • SLAでマーケと営業の責務を明確にし、月次でレビューする
  • 定期見直しを怠らず、四半期〜半年ごとにスコアリングモデルをチューニングする

完璧なスコアリングモデルを最初から作ることは不可能です。まずは70%の精度でモデルを構築し、運用しながら改善していくアプローチが成功への近道です。

よくある質問(FAQ)

Q. リードスコアリングを始めるのに最低限必要なデータ量はどのくらいですか?

A. ルールベースのスコアリングであれば、過去の成約・失注データが50件以上あれば基本的な設計は可能です。ただし、統計的に有意なパターンを見出すには100件以上の成約データがあることが望ましいです。予測スコアリング(AI活用)の場合は、最低でも数千件のリードデータが必要になります。

Q. スコアリングモデルの精度はどのように測定すればよいですか?

A. 主な測定指標は「MQL→SQL転換率」と「MQLからの成約率」です。MQL→SQL転換率が20〜30%、MQLからの最終成約率が5〜10%であれば、モデルは適切に機能していると判断できます。転換率が極端に低い場合はスコアリングの精度に問題がある可能性があります。

Q. BtoB企業ではフリーメールアドレス(Gmail等)のリードをどう扱うべきですか?

A. 一律に除外するのではなく、属性スコアでマイナス評価(例:-10点)を設定する方法が推奨です。中小企業やスタートアップではGmailを業務利用しているケースも多く、完全除外すると有望なリードを見逃す可能性があります。ただし、マイナス評価により、フリーメールだけでMQL閾値に到達しにくくなるよう調整します。

Q. 営業部門がMQLを適切にフォローしてくれません。どうすればよいですか?

A. まずSLAを策定し、フォロー期限(例:24時間以内の初回コンタクト)を明文化しましょう。SFAでフォロー状況を可視化し、フォロー率を定例会議で共有することも効果的です。根本的には、「MQLの質が営業の期待値に合っているか」を確認し、スコアリングモデルの改善を通じて営業からの信頼を獲得することが重要です。

Q. スコアリングモデルの設計に外部コンサルタントは必要ですか?

A. 初めてスコアリングを導入する場合は、設計の初期段階で外部の知見を活用することで、よくある失敗を避けられます。ただし、スコアリングモデルの運用・改善は自社で行える体制を構築することが重要です。外部依存が続くと、市場環境の変化にスコアリングが追随できなくなるリスクがあります。

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