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Zoho CRMからHubSpotへの移行ガイド|プロパティ変換・ワークフロー移行の実践手順

作成者: |2026/03/13 1:00:00

はじめに:なぜZoho CRMからHubSpotへの移行が増えているのか

出典: Zoho CRM公式サイト

Zoho CRMは低コストで多機能なCRMとして多くの企業に採用されてきました。しかし、事業のスケールや組織の成長に伴い、HubSpotへの移行を検討する企業が増えています。

その背景には、HubSpotが持つ直感的なUI、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスを一気通貫でカバーするプラットフォーム設計、そしてBreezeをはじめとするAI機能の急速な進化があります。特にBtoB企業においては、リード獲得からナーチャリング、商談管理、カスタマーサクセスまでをシームレスにつなげるHubSpotの統合環境が、営業生産性の向上に直結するケースが多く見られます。

本記事では、Zoho CRMからHubSpotへの移行を検討している企業に向けて、プロパティ変換・データ移行・ワークフロー再構築の実践的な手順を、つまずきやすいポイントとともに詳しく解説します。

Zoho CRMとHubSpotの主な違い

移行を成功させるためには、まず両プラットフォームの構造的な違いを理解することが重要です。

UIとユーザー体験

Zoho CRMはカスタマイズ性が高い反面、設定画面が多層構造になっており、管理者以外のユーザーにとっては操作が複雑になりがちです。一方、HubSpotはデザイン思想として「使いやすさ」を最優先に設計されており、営業担当者がトレーニングなしでも基本操作を習得しやすい点が特長です。

HubSpotのレコード画面は、左カラムにプロパティ情報、中央にタイムライン(メール・通話・ミーティング・メモ等の活動履歴)、右カラムに関連レコード(会社・取引・チケット等)が配置されており、1画面で顧客のすべてを把握できる設計になっています。

料金体系とスケーラビリティ

Zoho CRMはユーザー単位の課金モデルで、少人数チームではコストメリットがあります。HubSpotはFreeプランから始められ、Marketing Hub・Sales Hub・Service Hub・Content Hub・Data Hubの各Hubを必要に応じて組み合わせる構成です。

特に注目すべきは、HubSpotの無料CRM機能の充実度です。コンタクト管理・取引パイプライン・タスク管理・レポートダッシュボードといった基本機能が無料で利用でき、組織の成長に合わせて段階的にアップグレードできる設計になっています。

エコシステムと連携

Zoho CRMはZohoスイート内での連携(Zoho Desk、Zoho Campaigns等)に強みがあります。HubSpotはApp Marketplace上に1,700以上のインテグレーションが公開されており、Slack、Google Workspace、Microsoft 365、Salesforce、Shopifyなど、主要なビジネスツールとの連携が容易です。

さらに、HubSpotのData Hubを活用すれば、外部システムとのデータ同期を双方向でリアルタイムに実行でき、データサイロの解消に大きく貢献します。

移行前の準備チェックリスト

移行作業に入る前に、以下の準備を徹底してください。準備の質が移行全体の成否を左右します。

1. 現状のデータ棚卸し

Zoho CRM内のデータを網羅的に棚卸しします。

  • モジュール一覧の整理:リード、連絡先、取引先、商談、タスク、メモ、キャンペーンなど、使用中のモジュールをすべてリストアップ
  • レコード件数の把握:各モジュールのレコード数を確認し、移行対象と除外対象を明確にする
  • カスタムフィールドの洗い出し:標準フィールドとカスタムフィールドを区別し、フィールドタイプ(テキスト、数値、日付、ピックリスト等)を記録
  • 重複データの特定と統合:移行前に重複レコードをクリーニングしておくことで、HubSpot側でのデータ品質が格段に向上する

2. ワークフロー・自動化の棚卸し

Zoho CRMで設定しているワークフロールール、ブループリント、マクロ、スケジュール処理をすべてドキュメント化します。

  • トリガー条件(どのタイミングで発火するか)
  • アクション内容(メール送信、フィールド更新、タスク作成等)
  • 対象レコードの範囲
  • 例外処理や分岐条件

3. 連携ツールの確認

Zoho CRMと連携しているサードパーティツールを確認し、HubSpot側での代替連携方法を事前に調査します。例えばZoho Campaignsを使用している場合、HubSpotのMarketing Hubで同等以上の機能が利用できるため、移行と同時にツール統合を進められます。

4. ステークホルダーへの事前説明

移行はIT部門だけのプロジェクトではありません。営業チーム、マーケティングチーム、カスタマーサクセスチームなど、CRMを日常的に使用するすべてのチームに対して、移行のスケジュール・目的・期待される改善点を事前に共有します。

移行の実践手順:ステップバイステップ

Step 1:HubSpotアカウントのセットアップ

まずHubSpotのアカウントを作成し、基本設定を完了させます。

  • 会社情報、タイムゾーン、通貨の設定
  • ユーザーの招待と権限設定(Sales Hub、Marketing Hubなど利用Hubに応じたシート割り当て)
  • パイプラインの構築(Zoho CRMの商談ステージをHubSpotの取引ステージにマッピング)

Step 2:プロパティマッピング

移行の最も重要なステップがプロパティ(フィールド)のマッピングです。

Zoho CRMの主要フィールドとHubSpotの対応関係:

Zoho CRM フィールド HubSpot プロパティ 注意点
Lead(リード) コンタクト(ライフサイクルステージ:リード) HubSpotではリードと連絡先を「コンタクト」として統一管理
Contact(連絡先) コンタクト 同上
Account(取引先) 会社(Company) 会社名での名寄せに注意
Deal / Potential(商談) 取引(Deal) ステージ名のマッピングが必要
Task(タスク) タスク 期限・担当者の紐付けを確認
Note(メモ) メモ(Note) タイムラインに自動表示
Campaign(キャンペーン) キャンペーン Marketing Hub Professional以上が必要

カスタムフィールドの移行手順:

  1. Zoho CRMのカスタムフィールド一覧をエクスポート
  2. HubSpotのプロパティ体系(コンタクト・会社・取引・チケット)に分類
  3. フィールドタイプの変換ルールを決定(例:Zohoのピックリスト → HubSpotのドロップダウン選択)
  4. HubSpot側でカスタムプロパティを事前に作成
  5. プロパティのグループ分けを設計(HubSpotではプロパティグループで整理可能)

Step 3:データエクスポートとクレンジング

Zoho CRMからデータをエクスポートします。

  1. モジュール別エクスポート:Zoho CRMの各モジュール(リード、連絡先、取引先、商談等)からCSVファイルをエクスポート
  2. 文字コードの確認:UTF-8エンコーディングであることを確認(日本語データの文字化け防止)
  3. データクレンジング
    • 空白レコードの削除
    • 電話番号・メールアドレスのフォーマット統一
    • 日付フォーマットの変換(HubSpotは「YYYY-MM-DD」形式を推奨)
    • ピックリスト値の表記統一

Step 4:HubSpotへのデータインポート

クレンジング済みのCSVファイルをHubSpotにインポートします。

  1. インポート順序を守る:会社 → コンタクト → 取引 の順にインポート(関連付けの親レコードから先に作成)
  2. 関連付けの設定:インポート時にコンタクトと会社の関連付けカラム(会社名やドメイン名)を指定
  3. テストインポート:まず少量(50〜100件)のデータでテストインポートを実行し、マッピングの正確性を検証
  4. 本番インポート:テスト結果を確認した上で、全データをインポート

HubSpotのインポートツールでは、CSVファイルのカラムヘッダーをHubSpotのプロパティに対応付けるマッピング画面が用意されています。一度マッピングを設定すれば、同じ構造のCSVファイルを繰り返しインポートする際に再利用できます。

Step 5:ワークフローの再構築

Zoho CRMのワークフローをHubSpotのワークフロー機能で再構築します。

ワークフロー移行の考え方:

単純にZohoのワークフローを「コピー」するのではなく、HubSpotの機能を最大限に活かした再設計を推奨します。HubSpotのワークフローはビジュアルエディタで構築でき、If/Then分岐、遅延、内部通知、プロパティ値の更新、メール送信など豊富なアクションが利用可能です。

再構築のポイント:

  • リードスコアリング:Zohoのスコアリングルールは、HubSpotのスコアプロパティ(カスタムスコア)で再現可能。BreezeのAI機能を活用したリードスコアリングも検討に値する
  • メール自動化:Zoho CRMのメールテンプレートとワークフロー連携は、HubSpotのシーケンスまたはマーケティングメールワークフローで実現
  • タスク自動作成:トリガーベースのタスク作成はHubSpotワークフローの得意分野。担当者への自動割り当てやローテーション設定も可能
  • ステージ移行時の処理:取引ステージが変更された際の通知・タスク作成・プロパティ更新は、取引ベースワークフローで設定

Step 6:インテグレーションの再接続

Zoho CRM経由で連携していた外部ツールを、HubSpotのApp Marketplaceまたはカスタム連携で再接続します。

主要な連携先と対応方法:

  • メール配信:Zoho Campaigns → HubSpot Marketing Hub(ネイティブ機能で統合)
  • チャット:Zoho SalesIQ → HubSpotライブチャット/チャットボット
  • カスタマーサポート:Zoho Desk → HubSpot Service Hub
  • 会計ソフト:freee、マネーフォワード等 → HubSpot App Marketplace経由
  • Slack連携:HubSpot公式Slack統合で通知・CRM操作が可能

よくある落とし穴と回避策

落とし穴1:リードと連絡先の統合問題

Zoho CRMでは「リード」と「連絡先」が別モジュールとして管理されますが、HubSpotでは「コンタクト」として統一管理されます。この違いを理解せずに移行すると、同一人物が重複コンタクトとして作成されるリスクがあります。

回避策:移行前にZoho CRM側でリードと連絡先のメールアドレスを照合し、重複を統合してからインポートする。HubSpotではライフサイクルステージ(リード・MQL・SQL・顧客等)でコンタクトの状態を管理します。

落とし穴2:カスタムフィールドタイプの不一致

Zoho CRMの「複数選択ピックリスト」はHubSpotの「複数チェックボックス」プロパティに対応しますが、データフォーマットが異なります。Zohoではセミコロン区切り、HubSpotではセミコロン区切りの内部値を使用するため、値の変換が必要です。

回避策:フィールドタイプの対応表を事前に作成し、テストインポートでデータの変換結果を必ず検証する。

落とし穴3:活動履歴の移行漏れ

コンタクトや取引のレコードだけを移行して、過去のメール送受信履歴・通話記録・ミーティング記録が抜け落ちるケースは非常に多く見られます。

回避策:Zoho CRMからアクティビティ(メール、通話、イベント)を個別にエクスポートし、HubSpotのEngagements APIを使用してプログラマティックにインポートする。大量の活動履歴がある場合は、移行ツール(HubSpotの公式移行サービスやサードパーティツール)の利用も検討してください。

落とし穴4:ワークフロー移行の見落とし

Zoho CRMのブループリント(プロセス管理)は独自の機能であり、HubSpotには直接的な対応機能がありません。

回避策:ブループリントで管理していたプロセスは、HubSpotの取引パイプラインのステージ必須プロパティ設定とワークフローの組み合わせで再現できます。ステージ移行時に必須項目の入力を強制する設定が特に有効です。

落とし穴5:移行期間中のデータ断絶

移行作業中も営業活動は止まりません。Zoho CRMで更新されたデータがHubSpotに反映されない「データ断絶期間」が生じると、営業機会の損失につながります。

回避策:カットオーバー日を明確に設定し、その日以降はHubSpotのみを使用するルールを徹底する。移行期間中に追加・更新されたレコードは、差分エクスポート・インポートで対応する。

移行後の検証とチームオンボーディング

データ検証

移行完了後、以下の観点でデータの正確性を検証します。

  • レコード件数の照合:Zoho CRMの各モジュールのレコード数とHubSpotのオブジェクト別レコード数を比較
  • サンプルチェック:各オブジェクトから10〜20件のレコードをランダムに抽出し、全プロパティの値が正しく移行されているか確認
  • 関連付けの検証:コンタクトと会社、コンタクトと取引の関連付けが正しく設定されているか確認
  • ワークフローのテスト実行:再構築したワークフローをテストコンタクトで実行し、期待通りに動作するか検証

チームオンボーディング

CRMの移行が成功するかどうかは、最終的にはチームの活用度にかかっています。

効果的なオンボーディングのステップ:

  1. 役割別トレーニングの実施:営業担当者にはコンタクト・取引の操作、マーケティング担当者にはリスト・フォーム・メールの操作、マネージャーにはレポート・ダッシュボードの操作をそれぞれ重点的にトレーニング
  2. HubSpot Academyの活用:HubSpotが無料で提供するオンライン学習プラットフォーム「HubSpot Academy」には、CRM基礎から各Hub別の専門コースまで豊富なコンテンツが揃っている
  3. 社内チャンピオンの任命:各チームからHubSpotに詳しい「チャンピオン」を1名ずつ選出し、日常的な質問対応や活用促進を担当してもらう
  4. KPIの設定と定期レビュー:CRM活用率(ログイン頻度、レコード更新数、ワークフロー実行数等)を可視化し、定期的にレビューする

HubSpotならではの機能を活かす

移行を「現状の再現」で終わらせるのではなく、HubSpotならではの機能を積極的に活用しましょう。

  • Breeze(HubSpot AI):AIによるメール下書き生成、レコードのサマリー自動作成、予測リードスコアリングなど、業務効率を大幅に向上させる機能群
  • レポートダッシュボード:ドラッグ&ドロップでカスタムレポートを作成し、経営層・マネージャー・担当者それぞれに最適化されたダッシュボードを構築
  • シーケンス:営業担当者がワンクリックで見込み客へのフォローアップメール・タスクを自動実行できるセールスオートメーション機能
  • Data Hub:外部システムとのデータ同期、データ品質管理、カスタムオブジェクトなど、データ統合基盤としての機能

まとめ

Zoho CRMからHubSpotへの移行は、単なるツールの入れ替えではなく、営業・マーケティングプロセス全体を見直し、より効率的な仕組みを構築するチャンスです。

移行を成功させるための要点を整理します。

  • 事前準備を徹底する:データの棚卸し、プロパティマッピング、ワークフローの文書化を移行作業開始前に完了させる
  • テストインポートを必ず実行する:少量データでの検証を省略しない
  • インポート順序を守る:会社 → コンタクト → 取引の順に、関連付けを意識してインポート
  • ワークフローは「再設計」する:Zohoの仕組みをそのまま再現するのではなく、HubSpotの強みを活かした再設計を行う
  • チームのオンボーディングに投資する:最終的なROIは現場の活用度で決まる

移行プロジェクトの規模が大きい場合や、カスタム連携が複雑な場合は、HubSpot認定パートナーへの相談も有効な選択肢です。専門家のサポートを受けることで、移行リスクを最小化し、HubSpot導入後の早期立ち上げを実現できます。