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HubSpotワークフローの設定方法|通知・メール配信・AI活用・分岐設定を実演で徹底解説

作成者: 今枝 拓海|2026/02/22 11:17:29

 

HubSpotのワークフローは、MA(マーケティングオートメーション)の中核を担う機能です。フォーム送信をトリガーに社内通知を飛ばす、ステップメールでリードをナーチャリングする、AIで問い合わせ内容を自動分類する——こうした自動化がすべてワークフロー一つで実現できます。

しかし、トリガーの種類もアクションの種類も多いため、何から手をつければいいかわからないという声は非常に多くあります。この記事では、実務で使える代表的なワークフローパターンを、設定画面の操作とともに網羅的に解説します。


ワークフローの基本構造を理解する

HubSpotのワークフローは「自動化 → ワークフロー」から作成・管理します。すでに作成済みのワークフローがある場合は一覧で表示され、新規作成は右上の「ワークフロー作成」から行います。

トリガーとアクションの仕組み

ワークフローは「トリガー」と「アクション」の2つで構成されます。トリガーはワークフローが発火する条件、アクションはトリガー後に実行する処理です。

「ゼロから作成」を選ぶとトリガー設定画面が表示されます。たとえば「ウェブサイトおよびメディア」からフォームの送信イベントを選べば、フォームが送信されたタイミングでワークフローが発火する設定になります。

再登録の設定も重要です。同一コンタクトが2回以上フォームを送信した場合に再度ワークフローを実行するかどうかを制御できます。問い合わせフォームなら再登録を有効にしておくのが一般的です。

トリガー設定後のアクションでは、メール配信、マーケティングコンタクトのステータス変更、AIへの依頼など、多岐にわたる処理を設定できます。


パターン1:社内通知ワークフロー

最も基本的かつ実用的なワークフローが、フォーム送信時の社内通知です。

内部Eメール通知の設定

フォーム送信をトリガーに、「コミュニケーション → 内部Eメール通知を送信」のアクションを設定します。内部マーケティングEメール(事前にメールテンプレートを作成して送付)と内部Eメール通知(テキストベースで簡易的に送付)の2種類がありますが、通知目的なら内部Eメール通知で十分です。

通知の送信先にはコンタクト担当者を指定できます。コンタクトごとに割り当てられた営業担当やインサイドセールス担当に自動で通知が届く仕組みです。チーム全体に送りたい場合は、特定のチームを指定すれば5人でも10人でも一括通知が可能になります。

通知内容にはパーソナライズトークンを使い、コンタクトの姓名・会社名・電話番号・メールアドレスなどを動的に差し込めます。

Slack・Teamsへの通知連携

アプリ連携を行えば、メール通知に加えてSlackやTeamsにも同時通知を飛ばせます。ワークフローのアクションにSlack通知を追加し、チャネルやメンション先を指定するだけです。

フォーム送信の内容がSlackチャネルにリアルタイムで投稿されるため、メールを開かなくても即座に対応できます。メンションやグループ通知にも対応しており、カスタマイズ性は高いです。


パターン2:メール配信とステップメール(シナリオ設計)

ワークフローの真価が発揮されるのが、メール配信の自動化です。

サンクスメールの自動送信

フォーム送信後に問い合わせ者へ自動返信メールを送るのは基本中の基本です。ワークフローのアクションから「コミュニケーション → Eメールを送信」を選び、事前に作成したサンクスメールを指定します。

メール内ではパーソナライズ機能を使い、「○○様、お問い合わせありがとうございます」のように宛名を動的に挿入できます。送信された内容(会社名・電話番号など)をメール本文に含めれば、問い合わせ者にとっても確認になります。

サンクスメール内にレコメンド商品やサービス紹介のリンクを入れるのも効果的です。

ステップメール(シナリオメール)の設定

サンクスメールの後に、段階的にメールを送信するステップメール(シナリオメール)を組むケースは非常に多いです。

設定のポイントは「遅延」アクションです。サンクスメール送信後に3日間の遅延を挟み、その後にシナリオメール1通目を自動送信します。遅延には曜日指定も可能で、土日を除外して月〜金のみに配信するといった設定ができます。時間帯の指定にも対応しており、午前8時半にコンタクトのタイムゾーンで送信するなど、きめ細かい制御が可能です。

メールは「自動送信用」として設定する必要がある点に注意してください。通常のメルマガ用メールとは別に、ワークフロー専用のメールを作成・公開しておきます。


パターン3:分岐による条件別アクション

ステップメールを送った後、開封したかどうかでネクストアクションを変える——これが分岐(ブランチ)機能です。

開封・未開封による分岐

分岐の種類には「単一のプロパティ値」「AND/ORロジック」「割合によるランダム分岐」があります。メール開封で分岐する場合はAND/ORロジックを使い、マーケティングEメールの開封ステータスを条件に設定します。

重要なのは、分岐の前に遅延を入れることです。メール送信直後に開封判定をしても、ほぼ全員が未開封になります。3日間の遅延を挟んでから開封・未開封を判定する設計が正しいです。

  • 開封した場合 → 興味ありと判断し、社内に通知を飛ばして営業からアプローチします
  • 未開封の場合 → シナリオメール2通目、3通目を送りナーチャリングを継続します

この分岐を繰り返すことで、温度感が高まったリードだけを営業にパスするフローが完成します。


パターン4:担当者ローテーションとシーケンス登録

メール開封などで温度感が確認できたリードを営業にパスする際、担当者の割り当てとアプローチ開始を自動化できます。

コンタクト担当者の変更とローテーション

「CRM → レコードを編集」アクションで、コンタクト担当者を特定のユーザーに変更できます。たとえばマーケ担当からインサイドセールス担当に引き渡す場合に使います。

複数の営業メンバーに均等にリードを振り分けたい場合は「レコードを担当者にローテーション」を使います。チーム内の担当者を指定すれば、田中→高橋→今枝→田中…と順番にリードが割り当てられます。これで営業間の不平等を防ぎ、公平にリードを配分できます。

シーケンスへの自動登録

担当者が決まったら、営業個人が使うステップメールツール「シーケンス」にコンタクトを自動登録できます。「コミュニケーション → シーケンスに登録」アクションを使えば、ローテーションで割り当てられた担当者から、テンプレートに沿った営業メールが自動的に送信開始されます。

案件創出エージェントの活用

シーケンスと似た機能として「案件創出エージェント」があります。こちらはAIがウェブリサーチの結果などを踏まえて、コンタクトごとにパーソナライズされたメール文面を自動生成します。

ただし、AIが作成した文面なので、自動化モードは「送信前に確認」を推奨します。自動送信にするとリスクがあるため、人間のレビューを挟む設計が安全です。

月に200件、300件とリードが入る場合、これらの機能を組み合わせることで、リード対応の初動を大幅に効率化できます。


パターン5:AIカスタムプロンプトによる自動分類

ワークフロー内でAIを活用し、問い合わせ内容の自動分類やネクストアクションの提案を行えます。

問い合わせの自動カテゴライズ

「データエージェントのカスタムプロンプト」アクションを使えば、問い合わせ内容をAIに判断させることが可能です。たとえば以下のようなプロンプトを設定します。

  • 1段階目:問い合わせ内容をもとに「見込み顧客からの問い合わせ」か「営業からの問い合わせ」かを判断し、ライフサイクルステージを分類します
  • 2段階目:判定結果をもとにネクストアクション(アプローチ文やミーティング提案など)を生成します

実際の出力を見ると、「問い合わせ」というカテゴライズに加えて、推奨アクションとして「スコープのご説明やミーティングのご提案」「事前ヒアリング項目」「日程調整リンクの送付」といった具体的な営業アクション案がAIから提示されます。

HubSpotのBreeze(標準AI)のほか、OpenAIやGeminiなどの外部AIモデルとの連携も可能です(外部AI連携はEnterpriseプラン以上が必要)。プロンプトのカスタマイズ次第で、問い合わせ対応の質と速度を大幅に向上させられます。


パターン6:マーケティングコンタクトの自動管理

Marketing Hubのプロフェッショナル以上を利用している場合、ワークフローでのメール配信にはマーケティングコンタクトの管理が不可欠になります。

マーケティングコンタクトとは

マーケティングコンタクトとは、メール配信などのマーケティング施策の対象となるコンタクトのことです。HubSpotのMarketing Hubでは、マーケティングコンタクトの数が課金対象になります。2,000名の契約なら、マーケティングコンタクトに設定できるのは2,000名までです。

対象設定と対象外設定のワークフロー

ワークフローでメールを自動送信するには、送信先のコンタクトがマーケティングコンタクトである必要があります。そのため、フォーム送信されたコンタクトを自動的にマーケティングコンタクトに設定するワークフローを組みます。

一方で、不要なコンタクトを対象外にするワークフローも必須です。以下の条件に該当するコンタクトは対象外に切り替えます。

  • メール配信をすべてオプトアウト(登録解除)したコンタクト
  • メールがバウンス(不達)したコンタクト
  • 転職などでメールアドレスが無効になったコンタクト

この対象設定と対象外設定の両方のワークフローを運用することで、マーケティングコンタクトの課金を最適に抑えつつ、必要なリードにだけメールを配信できます。


パターン7:関連付けの自動化(データ管理)

最後に紹介するのは、データ管理の観点で重要な関連付け(アソシエーション)の自動化です。

関連付けが必要な理由

HubSpotでは、コンタクト(担当者)と会社をドメインで自動関連付けする標準機能があります。しかしグループ会社の場合、メールドメインが同じでも所属する事業会社が異なるケースがあります。この場合、ドメインだけで関連付けるとデータの整合性が崩れます。

ワークフローでの関連付け設定

「CRM → 関連付けを作成」アクションを使えば、ドメインではなく会社名など任意のプロパティ値の一致で関連付けを実行できます。たとえばコンタクト側の会社名と、会社レコードの会社名が一致した場合にのみ関連付ける設計にすれば、グループ会社でも正確なデータ管理が可能になります。

外部からデータをインポートした際に、値は一致しているのに関連付けがされていないというケースにも有効です。月に500件、1,000件のリードが入ってくる環境で手動関連付けは現実的ではありません。ワークフローによる自動化で、HubSpotのリレーショナルデータベースとしての力を最大限に引き出せます。


ワークフローに必要なプランと注意点

ワークフローの機能はプランによって利用範囲が異なります。

機能 必要プラン
基本的なワークフロー(通知・プロパティ変更) Operations Hub Starter以上
メール自動配信(ステップメール) Marketing Hub Professional以上
シーケンス登録 Sales Hub Professional以上
AIカスタムプロンプト(外部AI連携) Enterprise以上

Marketing Hubのスターターではメルマガの一斉配信はできますが、ワークフロー内でのメール自動送信はプロフェッショナル以上が必要になる点は押さえておきたいです。


まとめ

HubSpotのワークフローで実務上よく使われるパターンを整理すると以下のとおりです。

  1. 社内通知 — フォーム送信をトリガーにメール・Slack・Teamsで即座に通知します
  2. メール自動配信 — サンクスメール+ステップメール(シナリオメール)でナーチャリングを行います
  3. 分岐 — メール開封・未開封など条件に応じてネクストアクションを切り替えます
  4. 担当者ローテーション — リードを営業チームに均等配分し、シーケンスで自動アプローチを行います
  5. AI活用 — 問い合わせ内容の自動分類とネクストアクション提案を実現します
  6. マーケティングコンタクト管理 — 課金対象の最適化(対象設定+対象外設定)を行います
  7. 関連付け自動化 — コンタクトと会社のデータ整合性を自動で維持します

これらを組み合わせることで、リード獲得から営業パスまでの一連の流れをほぼ自動化できます。まずは通知ワークフローから始めて、段階的にステップメールや分岐、AI活用へと拡張していくのが現実的なアプローチです。