「CRM導入を検討しているが、HubSpotとkintoneのどちらが自社に合うのかわからない」
「kintoneで顧客管理をしているが、マーケティングや営業の自動化もしたい」
——こうした悩みを抱えている企業の方は多いのではないでしょうか。
HubSpotはCRM(顧客関係管理)を基盤としたオールインワンのビジネスプラットフォームであり、kintoneはサイボウズ社が提供する業務アプリ構築型のクラウドサービスです。 両者はそれぞれ異なる設計思想で作られており、単純な機能比較だけでは最適な選択はできません。
この記事では、HubSpotとkintoneの違いをCRM機能・案件管理・カスタマイズ性・料金・MA機能の5つの軸で実務視点から比較します。
この記事でわかること:
出典: サイボウズ (kintone.cybozu.co.jp)
まず、全体像を表で整理します。
| 比較項目 | HubSpot | kintone |
|---|---|---|
| コンセプト | CRM基盤のオールインワンプラットフォーム | ノーコード業務アプリ構築プラットフォーム |
| 提供企業 | HubSpot, Inc.(米国) | サイボウズ株式会社(日本) |
| CRM機能 | 標準搭載(コンタクト・会社・取引・チケット) | アプリで自作(テンプレートあり) |
| MA機能 | 標準搭載(メール配信・スコアリング・ワークフロー) | 非搭載(外部連携が必要) |
| SFA機能 | 標準搭載(パイプライン・シーケンス・AI売上予測) | アプリで自作 |
| カスタマイズ性 | CRMの枠内で高い柔軟性 | 業務アプリ全般を自由に構築可 |
| 無料プラン | あり(CRM基本機能) | なし(30日間無料トライアル) |
| 月額料金 | 無料〜(Starter: 月1,800円/シート) | 月1,000円〜/ユーザー |
| 日本語対応 | ○(ドキュメント・サポートも日本語対応) | ○(国産サービス) |
| API・連携 | 1,700以上のアプリ連携 | プラグイン・REST API対応 |
HubSpotとkintoneを比較する際に、最も重要になってくるのが設計思想の違いです。
HubSpotは顧客を中心としたリレーションデータベースとして設計されています。コンタクト(担当者)・会社・取引・チケットの4つの標準オブジェクトが最初から関連付けされており、マーケティング→営業→カスタマーサポートの一気通貫のフローを1つのプラットフォームで実現できます。
今枝が動画で繰り返し強調しているように、「HubSpotの本質的価値は一元管理×自動化×可視化」であり、部門横断でのデータ活用がその真価です。
kintoneは「業務に必要なアプリを自分で作る」という思想で設計されています。顧客管理・案件管理・在庫管理・日報管理など、あらゆる業務アプリをドラッグ&ドロップで構築できます。
この柔軟性は強みですが、CRM専用に設計されたものではないため、マーケティングオートメーションやセールスオートメーションの機能は自分で構築するか、外部ツールと連携する必要があります。
| 機能 | HubSpot | kintone |
|---|---|---|
| コンタクト(担当者)管理 | 標準搭載 | アプリで自作 |
| 会社(取引先)管理 | 標準搭載 | アプリで自作 |
| コンタクトと会社のリレーション | 自動関連付け | ルックアップで実装 |
| アクティビティ追跡(メール・電話・ミーティング) | 自動記録 | 手動入力 or プラグイン |
| Webサイト閲覧履歴のトラッキング | 標準搭載(トラッキングコード) | 非対応 |
| 名刺スキャン(モバイル) | 標準搭載 | 外部連携が必要 |
HubSpotの強みは、メール送受信やWebサイト訪問、フォーム送信などの顧客行動が自動的にCRMに蓄積される点です。スプレッドシートで管理している場合と比較して、「誰が・いつ・何をしたか」が自動的にデータ資産として貯まっていきます。
kintoneの強みは、自社の業種・業務フローに合わせて完全にカスタムされた顧客管理アプリを構築できる点です。不動産業の物件管理、人材業の候補者管理など、独自の業務に特化した設計が可能です。
| 機能 | HubSpot | kintone |
|---|---|---|
| パイプライン(かんばんボード) | 標準搭載 | プラグインで実装可 |
| 取引ステージと受注確度 | 標準搭載(加重金額自動計算) | 自作が必要 |
| 必須プロパティの設定 | ステージ移行時に強制可 | 入力制御で一部対応 |
| 売上予測(フォーキャスト) | AI予測機能あり | 集計プラグインで対応 |
| 複数パイプライン | ○(プランにより上限あり) | アプリごとに管理 |
パイプライン設計について、今枝は「取引ステージ・角度(受注確度)・ステージ定義・必須入力プロパティ」の4要素フレームワークを推奨しています。HubSpotではこの4要素がすべて標準機能として実装されているのが大きなメリットです。
ここがHubSpotとkintoneの最も大きな差になります。
| 機能 | HubSpot | kintone |
|---|---|---|
| メール配信(メルマガ) | 標準搭載(テンプレート・ABテスト) | 非搭載 |
| マーケティングオートメーション | ワークフローで自動化 | 非搭載 |
| リードスコアリング | 標準搭載(エンゲージメント+適合) | 非搭載 |
| フォーム作成 | 標準搭載(埋め込み・ポップアップ) | フォームブリッジ(有料プラグイン) |
| ランディングページ作成 | 標準搭載 | 非搭載 |
| SNS管理 | 標準搭載 | 非搭載 |
| 広告連携(Google/Meta) | 標準搭載 | 非搭載 |
| SEOツール | 標準搭載 | 非搭載 |
HubSpotのMarketing Hubは、リードの獲得から育成、商談化までの一気通貫のマーケティングプロセスをカバーしています。「Google Adとかの場合ですと5コンバージョンしたっていうのは分かるんですけどじゃあ実際誰だったのか?」という課題を、HubSpotではMAとCRMの統合で解決できます。
kintoneはマーケティング機能を持たないため、メール配信にはMailChimpやSendGrid、MAにはMarketo等の外部ツールとの連携が必要になります。
| カスタマイズ範囲 | 内容 | プラン |
|---|---|---|
| カスタムプロパティ | 独自の項目を追加 | 全プラン |
| カスタムオブジェクト | 独自のデータオブジェクトを作成 | Enterprise |
| カスタムレポート | 自由なレポート設計 | Professional以上 |
| ワークフロー | 自動化ロジックの構築 | Professional以上 |
| カスタムコード | Node.js/Pythonでの処理 | Operations Hub |
HubSpotはCRMの枠組みの中でカスタマイズを行います。Enterpriseプランのカスタムオブジェクトを使えば、不動産の物件データや請求管理など業種固有のデータモデルも構築できますが、あくまでCRMの拡張という位置づけです。
| カスタマイズ範囲 | 内容 |
|---|---|
| アプリ作成 | ドラッグ&ドロップで業務アプリを自由に構築 |
| フィールド設定 | 文字列・数値・日付・計算・ルックアップ等を自由配置 |
| プロセス管理 | ステータスと承認フローの設定 |
| JavaScript/CSSカスタマイズ | 画面表示やロジックの高度なカスタマイズ |
| プラグイン | 1,000以上のプラグインで機能拡張 |
kintoneの最大の強みは業務アプリ全般を自由に構築できる柔軟性です。CRMに限らず、経費申請・在庫管理・プロジェクト管理など、あらゆる業務をkintone上でデジタル化できます。
ただし、今枝が指摘するように「ビジネスロジックやワークフローの条件が複雑になると、コーディングが必要になる」という点は注意が必要です。
出典: HubSpot (hubspot.jp/pricing)
| プラン | 月額料金 | 主な機能 |
|---|---|---|
| Free | 無料 | CRM基本機能・フォーム・Eメール(制限あり) |
| Starter | 月1,800円/シート | CRM+基本的な営業・マーケ機能 |
| Professional | 月96,000円〜(3シート含む) | ワークフロー・カスタムレポート・MA本格運用 |
| Enterprise | 月432,000円〜(5シート含む) | カスタムオブジェクト・権限セット・SSO |
※ 上記はMarketing Hub等の各Hub単体の参考価格です。バンドルプランもあります。
| プラン | 月額料金 | 主な機能 |
|---|---|---|
| ライトコース | 月1,000円/ユーザー | アプリ作成・基本機能(API・プラグイン非対応) |
| スタンダードコース | 月1,800円/ユーザー | アプリ作成・API・プラグイン・外部連携 |
| ワイドコース | 月3,000円/ユーザー | 大規模向け(1,000ユーザー〜) |
※ 最低5ユーザーからの契約が必要です。
小規模チーム(5名程度)で比較すると:
| シナリオ | HubSpot | kintone |
|---|---|---|
| 基本CRM利用 | 無料 | 月5,000円〜(ライト5名) |
| 営業ツール込み | 月9,000円(Starter 5シート) | 月9,000円〜(スタンダード5名+プラグイン) |
| MA込みの本格運用 | 月96,000円〜(Professional) | kintone月9,000円+MA別途(数万〜数十万円) |
HubSpotは無料プランから始められるのが大きな強みです。今枝も「法人のCRMでここまで安くて高機能っていうのはなかなかないかなと個人的に思っています」と評価しています。
以下に当てはまる企業様にはHubSpotが適しているかなと思います:
以下に当てはまる企業様にはkintoneが適しています:
実は、HubSpotとkintoneを併用するという選択肢もあります。多くの中小企業がこのパターンを採用しています。
| ツール | 担当領域 |
|---|---|
| HubSpot | マーケティング・営業CRM・カスタマーサポート |
| kintone | 社内業務管理(経費・稟議・在庫・プロジェクト管理等) |
今枝が動画で紹介しているiPaaS(Yoom/Zapier)を使えば、HubSpotとkintoneのデータ連携も可能です。「HubSpotと直でつなげられない場合でも、Yoomを使うことで連携が結構円滑にできたりする」というアプローチです。
例えば、HubSpotで取引が「受注」ステージに移行したら、kintoneの請求管理アプリにレコードを自動作成する、といった連携が実現できます。
HubSpotとkintoneは設計思想が根本的に異なるため、「どちらが優れているか」ではなく「自社の課題に合うのはどちらか」で判断することが重要です。
| 判断基準 | HubSpot | kintone |
|---|---|---|
| マーケ〜営業〜CSの一気通貫 | ◎ | △(外部連携要) |
| 業務アプリ全般のデジタル化 | △ | ◎ |
| CRM専用としての完成度 | ◎ | ○(自作が必要) |
| 初期コスト | ◎(無料プランあり) | ○(月5,000円〜) |
| MA機能 | ◎(標準搭載) | ×(非搭載) |
まずは自社の最優先課題を明確にしていただいて、「マーケティング・営業の自動化が課題」ならHubSpot、「社内業務全般のデジタル化が課題」ならkintone、「両方必要」なら併用をご検討いただければなと思います。
どちらのツールもトライアルから始められますので、まずは実際に触ってみて自社のフィット感を確かめていただくのがおすすめです。
使いやすさの観点では、CRMとして使う場合はHubSpotの方が最初からCRM向けに設計されているため直感的に使い始められます。一方、kintoneは業務アプリの構築には優れたUIを持っていますが、CRMとして使うにはアプリの設計・構築が必要です。「使う」だけならHubSpot、「作る」も含めて楽しめるならkintoneという傾向があります。
顧客管理だけであれば無理に移行する必要はありません。ただし、メール配信やリードスコアリング、Webサイト行動の追跡などマーケティング機能を強化したい場合は、HubSpotへの移行または併用を検討する価値があります。HubSpotのインポート機能でkintoneのデータをCSV経由で移行することも可能です。
5名以下の小規模企業であれば、まずHubSpotの無料プランから始めるのが最もコストパフォーマンスが高い選択肢かなと思います。CRM基本機能が無料で使え、成長に合わせてStarterプラン(月1,800円/シート)にアップグレードできます。kintoneは最低5ユーザーからの契約なので、3名程度のチームだと割高になる場合があります。
直接のネイティブ連携はありませんが、iPaaS(Yoom/Zapier/Make)を使うことでノーコードでデータ連携が可能です。特にYoomは日本のSaaS同士の連携に強く、HubSpotとkintone間のデータ同期やトリガーベースのレコード作成が実現できます。API連携も可能ですが、開発リソースが必要になります。
Salesforceは大企業向けの本格的なCRM/SFAプラットフォームです。HubSpotと比較すると機能の深さでは勝る部分もありますが、導入・運用コストが高く、専任の管理者が必要になる傾向があります。中小〜中堅企業であれば、まずHubSpotで始めて、事業拡大に合わせてSalesforceへの移行を検討するという段階的なアプローチも有効です。詳しくは別記事「HubSpot vs Salesforce徹底比較」をご参照ください。