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HubSpot vs Microsoft Dynamics 365比較|中堅〜大企業のCRM選定ポイント

作成者: 今枝 拓海|1970/01/01 0:00:00

「CRMの導入・リプレイスを検討しているが、HubSpotとDynamics 365のどちらが自社に合うか判断できない」——こうした声は、特にMicrosoft製品を社内で広く活用している中堅〜大企業でよく聞かれます。

HubSpot CRMはマーケティング・営業・サービスを統合したオールインワンプラットフォームで、直感的な操作性とスモールスタートのしやすさが特徴です。Microsoft Dynamics 365はMicrosoft社が提供するCRM/ERPプラットフォームで、Teams・Outlook・Power BIとのネイティブ連携とエンタープライズ向けの拡張性が強みです。

この記事では、中堅〜大企業のCRM選定という観点から、HubSpotとDynamics 365を主要な比較軸に沿って解説します。


この記事でわかること

  • HubSpotとDynamics 365の設計思想・強みの違い
  • CRM機能(営業管理・マーケティング・レポート等)の比較
  • 料金体系とコスト構造の違い
  • Microsoftエコシステムとの連携の影響
  • 中堅〜大企業がどちらを選ぶべきかの判断基準

HubSpot vs Dynamics 365 比較サマリー

出典: Microsoft (microsoft.com)

比較項目 HubSpot Microsoft Dynamics 365
提供元 HubSpot社(米国) Microsoft社(米国)
設計思想 マーケ・営業・CS統合型 CRM+ERP統合エンタープライズ基盤
操作性 直感的・学習コスト低い Microsoftに慣れていれば使いやすい
マーケティング Marketing Hub(強い) Customer Insights(中程度)
営業管理 Sales Hub Dynamics 365 Sales
カスタマイズ性 ノーコード中心・段階的拡張 Power Platformで高度にカスタマイズ可能
Microsoft連携 連携可能(プラグイン) ネイティブ連携(Teams/Outlook/Excel/Power BI)
ERP連携 外部連携が必要 Dynamics 365 Finance等とネイティブ連携
初期コスト 低い(無料CRMからスタート可能) 比較的高い

設計思想の違い

HubSpot:マーケティング起点のCRM

HubSpotはもともとインバウンドマーケティングのツールとして誕生し、そこからCRM・SFA・CS機能を追加して発展してきました。そのためマーケティング機能が特に充実しており、リード獲得→育成→商談化→カスタマーサクセスまでの一気通貫の顧客管理が強みです。

「HubSpotを1個の業務アプリケーションとして会計まで繋がる販売管理システムのような形で使っていただくこともできる」という使い方も可能ですが、基本的にはマーケ・営業・CSの統合基盤としての活用がメインです。

Dynamics 365:Microsoft基盤のエンタープライズCRM/ERP

Dynamics 365はMicrosoft社のエンタープライズ基盤で、CRM機能(Sales、Customer Service、Marketing)とERP機能(Finance、Supply Chain Management等)を包括する大規模プラットフォームです。

最大の特徴はMicrosoftエコシステムとのネイティブ連携です。Teams、Outlook、Excel、SharePoint、Power BIと直接統合されるため、日常的にMicrosoft製品を使っている組織では、追加のツール導入なく業務フローに組み込めます。


CRM機能の比較

営業管理(SFA)

機能 HubSpot Sales Hub Dynamics 365 Sales
パイプライン管理 かんばんビュー+リスト プロセスフロー+ビュー
フォーキャスト 加重金額+AI予測(Enterprise) 高度なAI予測(Sales Insights)
シーケンス メール+タスクの自動シーケンス Sales Acceleratorで対応
見積もり 標準機能あり Dynamics 365内で作成+Power Automate
AI機能 Breeze AI(アシスタント型) Copilot for Sales(ネイティブ)

HubSpotのパイプライン設計は、取引ステージ・受注確度・ステージ定義・必須プロパティの4要素で行うのが基本です。Dynamics 365ではビジネスプロセスフロー(BPF)で営業プロセスを定義し、より細かい制御が可能です。Salesforceの「Sales Cloud」に近い設計思想と言えます。

マーケティング

機能 HubSpot Marketing Hub Dynamics 365 Marketing
メール配信 高度(スマートコンテンツ対応) 標準的
スコアリング Professional以上で利用可 あり
ワークフロー ビジュアルエディタ(直感的) カスタマージャーニー機能
LP/フォーム ノーコードで作成可能 基本的な機能あり
SNS連携 投稿管理+レポート 限定的
コンテンツ制作 ブログ/ウェブサイト統合(Content Hub) なし(外部CMS連携)

マーケティング機能においては、HubSpotが明確に優位です。HubSpotはMA(マーケティングオートメーション)の分野で世界的なリーダーであり、コンテンツ制作からリード管理、ナーチャリングまで一貫して対応できます。

Dynamics 365のマーケティング機能はCRMの補助的な位置づけであり、本格的なMAを求める場合は、Dynamics 365+Marketoのような組み合わせが検討されることもあります。

レポート・ダッシュボード

HubSpotは会議シーン別(経営会議用・営業会議用・マーケ会議用)のダッシュボードを手軽に構築できます。まず既存のレポートテンプレートで土台を作り、足りないところだけカスタムレポートで補うアプローチが効率的です。

Dynamics 365はPower BIとのネイティブ連携が最大の強みです。Power BIの高度な可視化・分析機能を活用して、CRMデータだけでなくERP・HR・財務データまで統合した全社横断レポートが作成可能です。Salesforceでいう「CRM Analytics」に近い位置づけですが、Microsoft製品間のシームレスな連携が特徴です。

カスタマイズ・拡張性

項目 HubSpot Dynamics 365
ノーコードカスタマイズ プロパティ・ビュー・ワークフロー Power Apps(ローコード)
高度なカスタマイズ カスタムオブジェクト(Enterprise) Power Platform(高度)
API RESTful API RESTful API + Power Automate
マーケットプレイス HubSpot App Marketplace Microsoft AppSource
開発基盤 Node.js/Python .NET / Power Platform

Dynamics 365はPower Platform(Power Apps、Power Automate、Power BI、Power Virtual Agents)との連携により、ほぼ無限の拡張性を持ちます。ただし、高度なカスタマイズには開発リソースが必要です。

HubSpotはノーコードでできる範囲が広く、項目が少ない方が集中できるという設計哲学に基づいて、必要最小限の設定で運用を開始できます。


料金比較

出典: HubSpot (hubspot.jp/pricing)

HubSpot

プラン 月額料金 主な機能
無料 0円 基本CRM、コンタクト管理
Starter 1,800円/ユーザー メール配信、フォーム、基本レポート
Professional 各Hub 96,000円〜/月 ワークフロー、カスタムレポート、スコアリング
Enterprise 各Hub 432,000円〜/月 カスタムオブジェクト、権限管理、サンドボックス

HubSpotは表示のみシート(レポート閲覧のみ)が無料で利用できるため、経営層や管理部門のコストを抑えられます。

Dynamics 365

アプリ 月額料金/ユーザー 主な機能
Sales Professional 約9,745円 基本的な営業管理
Sales Enterprise 約14,243円 高度な営業管理+AI
Sales Premium 約20,239円 Sales Insights+Copilot
Customer Insights 約239,680円/テナント マーケティング自動化

Dynamics 365はユーザー数に比例してコストが増加します。50名規模で利用する場合、年間コストはかなりの額になります。

コスト構造の違い

コスト要素 HubSpot Dynamics 365
閲覧専用ユーザー 無料(表示のみシート) ライセンスが必要
マーケティング Hub料金に含む 別アプリのライセンス
CMS/ウェブサイト Content Hubに含む 外部CMS
BI/分析 レポート標準搭載 Power BI別途(無料版あり)
導入コンサルティング 比較的低い パートナー経由が一般的

Microsoftエコシステムとの親和性

Dynamics 365が有利なケース

  • 社内でTeams・Outlook・SharePointが標準ツールになっている
  • Power BIで全社横断のレポート基盤を構築したい
  • ERPもMicrosoftで統一したい(Finance、Supply Chain等)
  • IT部門に.NET開発者がいてPower Platformを活用できる
  • Azure ADでSSO・権限管理を統合したい

HubSpotでも連携可能な範囲

HubSpotもOutlook連携、Teams連携は可能です。ただしネイティブ連携ではなくプラグインやiPaaS経由の連携となるため、Dynamics 365ほどシームレスではありません。

Microsoft環境を深く活用している企業では、Dynamics 365の方が日常業務への統合度が高くなります。


こんな企業にはHubSpotがおすすめ

  • マーケティング機能を重視し、MA+CRM+CMSを統合したい
  • CRM未導入で、スモールスタートから始めたい
  • マーケティング専任者が少なく、直感的で使いやすいツールが欲しい
  • TCOを抑えたい(無料シート・標準搭載CRMの活用)
  • コンテンツマーケティング(ブログ・LP・SEO)を内製化したい

こんな企業にはDynamics 365がおすすめ

  • Microsoft製品(Teams/Outlook/Power BI)を全社的に活用している
  • CRMだけでなくERPも含めた統合基盤を構築したい
  • Power Platformで高度なカスタマイズを行う開発リソースがある
  • 営業プロセスが複雑で、細かいアクセス権限や承認フローが必要
  • 数百〜数千名規模の大規模デプロイメントを計画している

まとめ

HubSpotとDynamics 365は、それぞれ異なる強みを持つCRMプラットフォームです。

  • HubSpot:マーケティング起点のオールインワン。使いやすさとTCOの低さが魅力。MA機能が特に充実
  • Dynamics 365:Microsoftエコシステムの一部として。Power Platformによる拡張性とERP連携が魅力。大規模組織向け

まずは自社のIT環境(Microsoft製品の利用状況)、求める機能の優先順位(マーケティングか営業管理か)、そして運用体制(開発リソースの有無)を整理した上で、自社に最適なCRMを選定いただくのがいいかなと思います。


よくある質問(FAQ)

Q1. HubSpotとDynamics 365を両方使うことはできますか?

技術的には可能で、HubSpotのMA機能とDynamics 365のSFA機能を組み合わせるケースもあります。ただしデータの同期設計が複雑になるため、iPaaS(ZapierやPower Automate等)を活用した連携設計が必要です。

Q2. Dynamics 365からHubSpotへの移行は難しいですか?

コンタクト・会社・取引などの基本データはCSVエクスポート/インポートで移行可能です。ただし、Power Automateで構築した自動化やPower BIのレポートはHubSpotのワークフローとレポートで再構築する必要があります。

Q3. Microsoft 365を使っていてもHubSpotは使えますか?

はい、問題なく使えます。HubSpotはOutlook連携、Teams連携に対応しており、Microsoft 365環境でも十分に活用できます。ただしDynamics 365ほどネイティブな統合ではないため、一部はプラグインやiPaaS経由の連携になります。

Q4. Dynamics 365の方がカスタマイズ性は高いですか?

Power Platform(Power Apps, Power Automate等)を活用すれば、Dynamics 365の方がカスタマイズの自由度は高いです。ただし、高度なカスタマイズには開発リソースが必要であり、HubSpotのノーコードで実現できる範囲で十分な場合も多いです。企業様の要件次第かなと思います。

Q5. 中堅企業(従業員100-500名)にはどちらが向いていますか?

マーケティングを強化したい場合はHubSpot、Microsoft環境の統合とERP連携を重視する場合はDynamics 365が向いています。既にSalesforceを使っている場合は、HubSpotのMAだけ追加するかSalesforceエコシステム内で完結させるか、というのも選択肢になります。