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HubSpotサンドボックスの使い方を徹底解説!作成手順から本番デプロイまで実践ガイド

作成者: 今枝 拓海|2026/02/22 11:17:29

 

CRMの運用が本格化してくると、「ワークフローを追加したいけど、本番環境で試して大丈夫だろうか」「プロパティを変更したら既存のレポートに影響が出ないか心配」といった悩みが出てきます。本番環境のデータは日々の営業活動やマーケティング施策に直結しているため、設定変更のミスが重大な業務影響を引き起こすリスクがあるのです。

こうした課題を解決するのが、HubSpotのサンドボックス機能です。サンドボックスとは、本番環境に影響を与えることなく、新しいワークフローやプロパティ、フォーム、メールなどを安全にテストできる検証環境のことです。さらに、検証が完了したアセットはデプロイ機能で本番環境にそのまま反映できるため、同じ設定を二度作る必要がありません。本記事では、HubSpotのサンドボックス環境の作成方法から、具体的な検証作業、本番環境へのデプロイまでを、実際の画面操作を交えて解説します。


サンドボックス環境とは何か

サンドボックスの基本概念と利用条件

システム開発の世界では「本番環境」と「検証・開発環境」を分けて運用するのが一般的ですが、HubSpotでも同様の仕組みがサンドボックス環境として提供されています。サンドボックスを使えば、本番データに一切影響を与えずに、プロパティの追加やワークフローの構築、フォームやメールの作成といった設定変更を安全にテストすることができます。

サンドボックスを利用するには、HubSpotのEnterpriseプランが必要です。標準サンドボックスはアカウントに1つ作成でき、最大10万件のレコード登録が可能なため、通常の規模のCRM運用であればほぼ問題なくテストを行えます。Professionalプランを利用中の企業で、検証環境の必要性を感じている場合は、Enterpriseプランへのアップグレードを検討する一つのきっかけになるかもしれません。

どんな場面でサンドボックスを使うべきか

サンドボックスが特に威力を発揮するのは、既存の設定やデータに影響を及ぼす可能性がある変更を行う場合です。例えば、既存のワークフローを修正する場合、誤った設定によってレコードのデータが意図せず変更されたり、毎月処理している収益レポートの数値がずれてしまったりするリスクがあります。最悪の場合、データが消失してしまうこともあり得ます。

一方で、まったく新しいプロパティを追加する場合や、既存のレポートやワークフローに関連しない設定変更であれば、本番環境で直接行っても大きなリスクはありません。判断基準としては、「この変更が既存の運用に影響する可能性があるか」を軸に、サンドボックスでの事前検証が必要かどうかを見極めるのが実用的です。


サンドボックス環境の作成方法

設定画面からサンドボックスを作成する

サンドボックスの作成は、HubSpotの設定画面から簡単に行えます。画面右上の歯車アイコン(設定)をクリックし、左側のメニューから「アカウント管理」→「サンドボックス」を選択します。

既にサンドボックスが作成されている場合は、ここからアクセスできます。新しくサンドボックスを作成したい場合は、サンドボックス名を入力して作成ボタンをクリックするだけです。

本番環境のデータをコピーして開始する

サンドボックスを作成する際、ゼロの状態からスタートするのではなく、本番環境のデータの一部をコピーすることができます。オブジェクトの設定(プロパティ定義やパイプライン設定など)はそのままコピーされますが、実際のレコードデータはすべてコピーされるわけではありません。

例えば、最新の数百件のコンタクトと関連付けられた会社・取引・チケットをコピーすることができるため、本番環境のデータ構造をそのまま再現した状態でテストを開始できます。これにより、「本番と同じデータ構造で動作を確認したい」というニーズにも対応できます。

サンドボックス環境の見分け方

サンドボックス環境にアクセスすると、画面左上に「標準サンドボックス」というラベルが表示されます。これにより、現在操作しているのが本番環境なのかサンドボックス環境なのかを一目で区別できるようになっています。

サンドボックス内では通常のHubSpotと全く同じ操作が可能です。コンタクトや会社、取引などのダミーデータを自由に作成・編集して動作検証を行うことができます。


サンドボックスでの検証作業の具体例

プロパティの追加をテストする

サンドボックスでの検証例として、まずプロパティの追加を見てみましょう。例えば、取引オブジェクトに「取引メモ」というテキストプロパティと、「クローズ予定日3日前」という日付プロパティを追加するケースです。

「クローズ予定日3日前」のような計算ベースの日付プロパティは、ワークフローで受注予定日の3日前に社内通知を飛ばすための基準日として使うことを想定しています。こうしたプロパティの追加自体は本番環境で行っても問題ないケースが多いですが、関連するワークフローの動作を含めて一連の流れをテストしたい場合は、サンドボックスでまとめて検証するのが合理的です。

ワークフローの動作を検証する

次に、先ほど作成したプロパティを利用したワークフローをサンドボックスで構築してみます。例えば、取引のクローズ日が3日以内に迫っている場合に、プロパティの日付を更新し、さらに取引担当者に社内通知を送るワークフローを作成します。

ワークフローのトリガー条件に「クローズ日が3日以内」を設定し、アクションとして「クローズ予定日3日前」プロパティの日付更新と、コミュニケーション機能での社内通知送信を組み込みます。サンドボックス環境であれば、このワークフローを実際に動かしてテストデータで挙動を確認しても、本番の取引データには一切影響しません。

フォーム・メール・セグメントをまとめて作成する

さらに、マーケティング施策の検証として、フォームマーケティングメールセグメント(リスト)をサンドボックスで作成することもできます。

例えば、テスト用のフォームを作成して公開し、そのフォーム送信者に自動配信するマーケティングメールを作成、さらにメール配信対象のセグメントリストも合わせて準備するといった一連の流れを、サンドボックス内で完結させることができます。

このように、プロパティ・ワークフロー・フォーム・メール・セグメントといった複数のアセットを組み合わせた施策全体を、本番環境に影響させずに事前検証できるのがサンドボックスの大きな価値です。


本番環境へのデプロイ方法

デプロイ機能で差分を本番に反映する

以前はサンドボックスで作成した設定を本番環境に反映するには、同じ内容を本番でもう一度手作業で再現する必要がありました。しかし現在は、デプロイ機能が搭載されており、サンドボックスで作成・変更したアセットをそのまま本番環境に同期できるようになっています。

デプロイを行うには、設定画面から「デプロイ」を選択し、デプロイ元のサンドボックスを指定します。すると、サンドボックスと本番環境の間で差分があるアセットの一覧が表示されます。オブジェクト(プロパティ)、セグメント、フォーム、マーケティングメール、ワークフローなど、カテゴリごとに更新内容が確認できるようになっています。

デプロイ対象を選択して差分を確認する

デプロイ画面では、どのアセットを本番に反映するかを個別に選択できます。すべてのアセットを一括でデプロイすることもできますし、例えば「マーケティングメールのうちワインメールだけデプロイして、テスト用メールはデプロイしない」といった細かい選択も可能です。

デプロイの差分チェックでは、本番環境側でも変更が行われていた場合に競合(コンフリクト)の検出も自動的に行われます。サンドボックスと本番の両方で同じアセットを変更していた場合、どちらの変更を優先するかを確認する画面が表示されるため、意図しない上書きを防ぐことができます。

デプロイの実行と結果確認

デプロイ対象の選択が完了したら、デプロイの名前と説明を入力して実行します。例えば「ワインキャンペーンとクローズ前通知について、検証環境で検証完了」のような説明を残しておくと、後から履歴を確認する際に便利です。

デプロイを実行すると、選択したアセットが順次本番環境に反映されていきます。処理状況はアクティビティログで確認でき、「6件中3件完了」のようにリアルタイムで進捗を追跡できます。

デプロイ結果を本番環境で検証する

デプロイが完了したら、本番環境で実際にアセットが正しく反映されているか確認しましょう。

プロパティ画面を開くと、サンドボックスで作成した「取引メモ」や「クローズ予定日3日前」といったプロパティが本番環境にも表示されているのが確認できます。

ワークフローについても、「クローズの3日前通知」がサンドボックスからそのまま移行されていることが確認できます。フォーム、マーケティングメール、セグメントについても同様にデプロイ結果を確認し、すべてが意図通りに反映されていることを確かめます。


デプロイ時の注意点

カスタムコード内のID参照に注意

ワークフロー内でカスタムコード(データハブ)を利用している場合は、デプロイ後に追加の対応が必要な場合があります。サンドボックス環境と本番環境ではオブジェクトのID、プロパティのID、アカウントのAPIキーなどが異なるため、カスタムコード内でこれらの値をハードコーディングしている場合は、本番環境に合わせて修正する必要があります。

標準的なワークフローアクション(プロパティの更新、通知の送信、メールの配信など)はデプロイ時に自動的に本番環境のIDに変換されますが、カスタムコード内のID参照は手動での対応が必要なケースがあるので注意してください。

新規作成とコピーの違いを理解する

デプロイの対象として同期できるのは、サンドボックスで新しく作成されたアセットが基本です。本番環境からサンドボックスにコピーされた既存のマーケティングメールに対する更新は、デプロイ対象にならないという制約があります。したがって、本番への反映を前提とした変更は、サンドボックス内で新規にアセットを作成する形で進めることをおすすめします。


まとめ:サンドボックスでCRM運用の安全性を高めよう

HubSpotのサンドボックス機能は、CRMの運用規模が大きくなるほど重要性が増す機能です。既存のワークフローやデータに影響する可能性のある変更を行う前に、サンドボックスで事前検証を行うことで、本番環境でのトラブルを未然に防ぐことができます。

デプロイ機能の搭載により、検証が完了したアセットを本番環境にワンクリックで反映できるようになったため、「サンドボックスで作ったものを本番でもう一度作り直す」という二重作業も不要になりました。差分チェックや競合検出の仕組みにより、安全にデプロイを実行できる点も大きな安心材料です。

Enterpriseプランをご利用の企業は、ぜひサンドボックスを活用した検証プロセスを運用フローに組み込んでみてください。ガバナンス強化やチーム運用のルール作りの一環として、サンドボックスでの事前検証を習慣化することで、CRM運用の品質と安全性を大きく向上させることができます。