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HubSpotでナーチャリングを実践する方法|ライフサイクルステージから失注分析まで一気通貫で解説

作成者: 今枝 拓海|2026/02/22 11:17:29

 

「リードは獲得できているのに、なかなか商談につながらない」「失注した案件をそのまま放置してしまっている」——こうした課題を抱えている企業は少なくありません。リードを獲得して終わりではなく、適切なタイミングで適切なアプローチを行い、検討度合いを引き上げていくナーチャリング(見込み客育成)の仕組みづくりが、営業成果を左右する重要なポイントです。

HubSpotには、リードの検討段階を管理するライフサイクルステージ、自動でメールシナリオを配信するワークフロー、ホットリードを営業に引き渡すリードオブジェクト、商談の進捗を可視化するパイプライン、そして失注理由を分析するレポート機能まで、ナーチャリングに必要な機能が一気通貫で揃っています。本記事では、HubSpotを使ったナーチャリングの全体像を、実際の画面操作を交えながら具体的に解説します。


ライフサイクルステージで顧客の検討段階を可視化する

ライフサイクルステージとは

ナーチャリングを実践するうえで最初に取り組むべきなのが、ライフサイクルステージの設計です。ライフサイクルステージとは、リードが最初に流入してから顧客になるまでの検討段階を分類する仕組みで、HubSpotのCRM上で各コンタクトがどのフェーズにいるのかを一目で把握できます。

HubSpotのコンタクト一覧画面では、リード・MQL(マーケティングクオリファイドリード)・商談中・失注掘り起こし・顧客といったステージごとにコンタクトを分類して表示できます。「今このリードはどの段階にいるのか」「誰がどのステータスの顧客を担当しているのか」が可視化されるため、マネージャーはチーム全体の状況を俯瞰的に把握でき、営業担当者は自分が優先すべきアクションを明確にできます。

ライフサイクルステージの設定方法

ライフサイクルステージは自社のビジネスモデルに合わせてカスタマイズできます。設定するには、HubSpotの右上にある歯車アイコンから設定画面に入り、「コンタクト」セクションの「ライフサイクルステージ」に進みます。

ここでは自社独自のステージを定義できます。一般的な設計例としては、最初に流入した段階を「リード」、マーケティング施策で一定の反応を示した段階を「MQL(マーケティングクオリファイドリード)」、実際に商談に進んだ段階を「商談」、受注した段階を「顧客」と設定します。さらに、商談化したものの失注した場合に再度ナーチャリング対象とする「失注掘り起こし」や、営業対象外となる「アプローチNG」「社内」といったステージを追加しておくと、リードの全体像をより正確に管理できます。

ステージ変更の自動化設定

ライフサイクルステージの運用で重要なのが、ステージ変更の自動化です。手動でステータスを変更する運用では、担当者の入力漏れが発生しやすく、データの精度が下がってしまいます。

HubSpotでは、コンタクトが作成されたときに自動で初期のライフサイクルステージを設定したり、取引が作成されたタイミングで「商談」に自動変更したり、取引が受注になったら「顧客」に自動移行させたりといった自動化が可能です。これにより、営業担当者がステータス変更を意識しなくても、CRM上のデータが常に最新の状態に保たれます。


ライフサイクルステージをレポートで分析する

ステージ別のリード分布を把握する

ライフサイクルステージを設定したら、次に確認すべきなのは各ステージにどれだけのリードが存在しているかという全体像です。HubSpotのレポート機能を使えば、ステージ別のリード数を一目で確認できます。

たとえば、リード段階が24名、MQLが10名、失注掘り起こしが4名、商談が6名、顧客が6名というように、全体で50名のリードがどのステージに分布しているかが可視化されます。この分布を定期的にモニタリングすることで、「リードからMQLへの転換が滞っている」「商談化率が低い」といったボトルネックを早期に発見し、適切な対策を講じることができます。

ファネルレポートでコンバージョン率を管理する

さらに効果的なのが、ファネルレポートを活用したコンバージョン率の管理です。100%のリードのうち何%が商談化し、その中の何%が顧客化するのかというステップごとの転換率を数値で追跡できます。

「今月獲得したリードからの顧客化率を何%にする」というKPIを設定し、ファネルレポートで進捗を管理していくことで、ナーチャリング施策の効果を定量的に評価できるようになります。感覚的に「うまくいっている」「いっていない」と判断するのではなく、データに基づいた意思決定ができる点がCRMでナーチャリングを管理する最大のメリットです。

会社単位でのライフサイクルステージ管理

ライフサイクルステージはコンタクト(個人)だけでなく、会社単位でも管理できます。コンタクト側のライフサイクルステージを会社側に反映させることで、企業ごとの検討段階を把握することが可能です。

たとえば、1つの企業に3名のコンタクトがいて、それぞれ「リード」「リード」「商談」というステージだった場合、最も進んだステータスである「商談」が会社のライフサイクルステージとして設定されます。リード数は多くても会社ベースで見ると意外と少ないということもあるため、コンタクトと会社の両方でライフサイクルステージを管理することで、より正確な営業戦略を立てられます。


ワークフローでナーチャリングシナリオを自動化する

ステップメールによるナーチャリングシナリオの設計

ライフサイクルステージの設計ができたら、次はリードを次のステージに引き上げるためのナーチャリングシナリオを構築します。HubSpotのワークフロー機能を使えば、特定の条件をトリガーとして自動的にメールを配信するステップメールのシナリオを組むことができます。

たとえば、失注掘り起こしのナーチャリングシナリオでは、ライフサイクルステージが「失注掘り起こし」になったタイミングをトリガーとして、1通目のナーチャリングメールを配信します。その5日後に2通目、さらに7日後に3通目、最後に3日後にウェビナーの案内メールを送るといったステップを設定できます。メール開封のタイミングで社内の営業担当に通知を飛ばす設定も可能なので、「このメールを開封した=温度感がある」と判断して架電するといった、マーケティングと営業の連携アクションも自動化できます。

AIを活用したワークフローの自動生成

「ワークフローを一から設計するのはハードルが高い」と感じる方には、HubSpotのAI機能を活用したワークフロー自動生成がおすすめです。ワークフロー作成画面で「AIを活用」を選択し、自然な言葉でやりたいことを伝えるだけで、AIがワークフローの叩き台を自動生成してくれます。

たとえば「フォームでコンバージョンがあったコンタクトに対して、3通のナーチャリングシナリオを送りたい」と入力すると、AIが追加の質問(対象フォームの範囲、送信間隔など)をしてくれます。それに回答していくと、トリガー設定からメールの配信ステップ、遅延期間まで含めたワークフローを自動的に構築してくれます。

AIが作成したワークフローはあくまで叩き台ですので、実運用に合わせて手動で調整を加えることが前提です。しかし、ゼロからワークフローを設計する手間を大幅に削減できるため、特にHubSpotのワークフロー機能を初めて使う方にとっては、取り掛かりのハードルを下げる強力なサポートになります。


リードオブジェクトでホットリードを管理する

リード管理機能の活用方法

ナーチャリングの過程でMQL化した(ホットリード化した)コンタクトは、HubSpotのリードオブジェクトで管理できます。リードオブジェクトは比較的新しくリリースされた機能で、同じコンタクトでも問い合わせのタイミングが異なる場合に、それぞれの履歴を独立して管理できるのが特徴です。

リードの管理画面では、「リード化」「アプローチ開始」「商談化」といったステージがボード形式で表示され、各リードがどの段階にあるかを直感的に把握できます。過去1年前のリードと今のリードが同じコンタクトであっても、問い合わせタイミングごとに別のリードとして管理できるため、営業活動の履歴が正確に残ります。リードに対して電話やメールでどのようなコミュニケーションを取ったかというアクティビティ情報も、リードごとに確認できます。

シーケンスによる自動フォローアップ

MQL化したリードに対して効率的にアプローチするために、シーケンス機能を活用できます。シーケンスとは、あらかじめ設定した複数のメールテンプレートを、指定した間隔で自動的に送信する機能です。

たとえば、展示会で名刺交換した見込み客に対して、「先日はありがとうございました」という1通目のメール、数日後に関連資料を案内する2通目、さらに数日後にアポイント打診の3通目、という3ステップのメールを自動で配信できます。営業担当者が個別にメールを作成・送信する手間を省きながら、タイムリーなフォローアップを実現できます。

案件創出エージェントによるパーソナライズドアプローチ

シーケンスが「固定されたテンプレートメールの自動配信」であるのに対し、HubSpotの案件創出エージェントはより高度なアプローチを提供します。この機能は、見込み客の企業情報やウェブサイトの内容をAIがリサーチし、その分析結果に基づいてパーソナライズされたメールを自動作成してくれるものです。

プロファイル(インサイドセールス用、フィールドセールス用、カスタマーサクセス用など)を選択し、アプローチタイプ(顧客行動ベース、スケジュールベースなど)を設定して登録を開始すると、エージェントが対象企業のウェブサイトやブログ、コール履歴などを調査・分析します。

調査結果に基づいて、「御社のサービスと当社サービスのマッチ度」「推定ニーズの時期」などを盛り込んだメール文面を自動生成してくれます。送信前にレビューして必要に応じて修正できるため、品質を担保しながらも下準備の工数を大幅に削減できます。テンプレートメールでは実現できない、相手企業に合わせた提案型のアプローチを効率的に行いたい場合に有効な機能です。


商談化からパイプライン管理までの流れ

リードから取引を作成する

ナーチャリングの成果として見込み客が商談に進んだら、HubSpot上で取引(Deal)を作成します。リードの詳細画面から「取引を作成」をクリックすると、取引の作成ポップアップが表示されます。

ここで金額の見込み(たとえば300万円)、ステージ(アポ取得)、取引担当者を設定します。インサイドセールスがナーチャリングを行い、商談化した案件をフィールドセールスに引き渡す場合は、取引担当者をフィールドセールスの担当者に設定します。取引を作成する際に「来期予算に組み込めそうだったのでアポ調整をした」といった商談化のきっかけをメモとして残しておくと、引き継ぎを受けた営業担当者がスムーズに商談を進められます。

パイプラインとステージの設計

作成された取引は、パイプラインと呼ばれるボード形式の画面で管理します。パイプラインは「アポ取得→初回提案→見積もり提示→受注→失注」といったステージで構成され、各取引がどの段階にあるかをカンバン方式で視覚的に確認できます。

パイプラインのステージは自社の営業プロセスに合わせてカスタマイズ可能です。設定画面では、各ステージに受注確度(角度)を設定できます。たとえば「アポ取得」段階は10%、「見積もり提示」段階は50%といった確度を設定しておくと、フォーキャスト(売上見込み)が自動計算されます。「750万円分の案件があり、加重平均で375万円が見込み金額」といった経営指標がリアルタイムで把握できるため、マネジメント層にとっても金額感の読みが立てやすくなります。

また、特定のステージに移行する際に必須入力項目をポップアップで表示させることもできます。たとえば「見積もり提示」のステージではBANT情報(予算・決裁者・ニーズ・時期)の入力を必須にしたり、「受注」のステージでは受注理由の記載を必須にしたりすることで、営業プロセスの中で重要な情報を漏れなく取得できます。


失注分析でナーチャリング戦略を改善する

失注理由のカテゴリー分類

ナーチャリングと営業活動を行う中で、すべての案件が受注につながるわけではありません。重要なのは、なぜ失注したのかを分析し、次の戦略に活かすことです。HubSpotでは、取引を失注ステージに移す際に失注理由をカテゴリーで分類して記録できます。

「価格」「競合他社」「製品機能」「時期」「社内決裁」といったカテゴリーをプルダウンで選択し、さらに詳細な理由をテキストで記入する運用にすると、失注データが蓄積されるにつれて傾向が見えてきます。たとえば「他社のクロージングが早くて提案スピードで負けた」「機能的に満たせない要件があった」「予算的にマッチしなかった」といった具体的な理由が記録されていれば、営業プロセスや提案内容の改善に直接つなげることができます。

ダッシュボードによる営業パフォーマンスの可視化

蓄積された失注データと営業データは、HubSpotのダッシュボードで多角的に分析できます。

パイプラインごとの件数と金額の集計、各営業担当者の受注率・失注率の比較、失注理由のカテゴリー別割合の円グラフなど、さまざまな切り口でデータを可視化できます。たとえば、失注理由の分析で「競合他社に負けた案件が25%、製品機能が25%、社内決裁が25%」という結果が出たら、上位の失注理由をいかに潰していくかを次のクォーターの目標として設定できます。

また、営業担当者ごとのパフォーマンス分析も可能で、「Aさんの失注率は33%で、受注率は67%」といった個人別の生産性も可視化できます。こうしたデータに基づいて1on1ミーティングやチーム会議でディスカッションを行うことで、組織全体の営業力を底上げできます。


まとめ:HubSpotでナーチャリングの全プロセスを一元管理しよう

HubSpotを使ったナーチャリングは、ライフサイクルステージの設計から始まり、ワークフローによるシナリオ自動化リードオブジェクトでのホットリード管理シーケンスや案件創出エージェントによるアプローチパイプラインでの商談管理、そして失注分析による改善まで、一気通貫で実践できます。

特に重要なのは、これらの機能を個別に使うのではなく、全体のフローとして連携させることです。ライフサイクルステージでリードの検討段階を分類し、各ステージに応じたナーチャリング施策をワークフローで自動実行し、ホットリード化したらリードオブジェクトで営業に引き渡し、商談化したらパイプラインで管理し、失注した場合は理由を分析して次に活かす。このサイクルをCRM上で回し続けることが、ナーチャリングの成果を最大化する鍵です。

まずはライフサイクルステージの設計から始めて、段階的にワークフローやリード管理の仕組みを構築していきましょう。CRMにデータが蓄積されるほど、ファネルレポートや失注分析の精度が上がり、より効果的なナーチャリング戦略を立てられるようになります。