インサイドセールスの業務において、架電リストの管理やコール結果の記録は日々の生産性に直結する重要な業務です。しかし、スプレッドシートやExcelで架電リストを管理していると、リアルタイムな情報共有が難しく、架電結果の記録も属人化しがちです。
HubSpotを活用すれば、コンタクトのビューカスタマイズによる架電リストの最適化、スコアリングによる優先順位付け、タスク機能を使った一括架電管理、さらにはカスタムオブジェクトによる営業報告の仕組み化まで、インサイドセールスに必要な機能をCRM上で一元管理できます。本記事では、HubSpotを使ったインサイドセールス業務の具体的な運用方法を、実際の画面操作を交えて解説します。
HubSpotでインサイドセールス業務を始めるとき、まず取り組むべきなのがコンタクトビューのカスタマイズです。HubSpotのコンタクト画面では、顧客の担当者情報が一覧化されていますが、デフォルトの表示列は必ずしもインサイドセールスの業務に最適化されているわけではありません。
Excelで架電リストを管理していた企業であれば、会社名・電話番号・過去の連絡履歴・部署・役職といった情報を横に並べて管理していたはずです。HubSpotでも同様に、「列を編集」機能から表示する列とその順序を自由にカスタマイズできます。例えば、架電業務では電話番号を前方に配置し、前回の連絡履歴や会社名をすぐ横に表示するといった配置にすると、視線移動が少なくなり効率的です。
この設定はノーコードで簡単に変更できるため、自社の業務フローに合わせて気軽にカスタマイズしてみてください。カスタマイズしたビューは保存ボタンを押すことで、自分専用のフィルタリング設定として保持されます。
ビューの見た目を整えたら、次に重要なのがフィルタリングによる架電対象の絞り込みです。インサイドセールスでは、既存顧客ではなく、これからお客さんになっていただく新規見込み客にアプローチすることが多いため、対象をフィルタで絞り込む必要があります。
HubSpotの「詳細フィルター」機能を使うと、さまざまな条件でコンタクトを絞り込めます。特によく使われるのがライフサイクルステージによるフィルタリングです。「見込み(Lead)」「MQL(Marketing Qualified Lead)」「SQL(Sales Qualified Lead)」といったステータスでフィルタリングすることで、温度感の高い見込み客だけを抽出できます。
SQLに分類されている方は商談化の確度が高いため、優先的にアプローチすべきですし、失注した方へのフォローアップリストを作成することも可能です。フィルタリングした結果は保存できるため、毎回同じ条件を設定する手間は一度きりで済みます。
単純にリストの上から順番に架電していくだけでは、限られた時間の中で最大の成果を出すことは難しいでしょう。HubSpotのスコアリング機能とページビュー(Webサイト閲覧履歴)を活用すれば、見込み客の関心度合いに基づいた優先順位付けが可能になります。
スコアリングとは、見込み客の行動(メール開封、リンククリック、フォーム送信、ページ閲覧など)に応じてポイントを自動的に付与し、関心度の高さを数値化する仕組みです。例えばスコアの高い順にコンタクトを並べ替えると、40点の方が1名、30点の方が6名といった形で、優先的にフォローすべき見込み客が上位に表示されます。
さらに、ページビュー(Webサイトの閲覧履歴)もフィルタリング条件に追加できます。最近自社のWebサイトを何度も閲覧している見込み客は、何らかの情報収集をしている可能性が高いため、タイミングよく架電することで商談化率の向上が期待できます。スコアリングの設計方法については別途検討が必要ですが、HubSpotのマーケティング機能を活用することで、データに基づいた効率的な架電が実現します。
架電が完了したら、その結果をコールログとして記録することがインサイドセールスの基本動作です。HubSpotでは、コンタクトの詳細画面にある「アクティビティ」エリアからコールのログを簡単に残せます。
コンタクトの詳細画面を開き、中央のアクティビティエリアで「コール」を選択すると、コールログの入力画面が表示されます。ここに架電結果の概要を記録することで、いつ・誰が・何を話したのかが時系列で蓄積されていきます。
インサイドセールスの架電では、単に「電話した」という事実だけでなく、BANT情報(Budget:予算、Authority:決裁者、Need:ニーズ、Timeline:導入時期)をヒアリングして記録することが重要です。
例えば「予算感あり」「導入時期が近い」「部長が来週ミーティング設定できるかも」「ニーズあり」といった情報をコールログに残しておけば、次回のフォローアップ時に他の担当者がこの情報を見て、適切なアプローチを取ることができます。架電しながらメモを取るのは大変ですが、HubSpotのコールログ画面はシンプルな入力フォームなので、電話中でも最低限の情報を記録することは十分に可能です。
HubSpot単体でもコールログの記録は可能ですが、CTI(Computer Telephony Integration)ツールと連携すればさらに効率的になります。MiiTelやAmptalkといったクラウド電話ツールをHubSpotと連携すると、外部の電話番号からの発信がCRM上で自動記録されるようになります。
また、HubSpotにはスマホアプリが用意されており、モバイル端末から架電してコールログを登録することも可能です。外出先やリモートワーク環境でもCRMにログを残せるため、PCの前にいなくてもインサイドセールス業務を遂行できます。有料のCTIツールをまだ導入していない場合は、まずはHubSpotの標準機能でコールログを残す運用から始め、架電量が増えてきた段階でCTI連携を検討するのがよいでしょう。
コンタクト一覧から個別の詳細画面に毎回遷移してコールログを残すのは、件数が多いと手間に感じることがあります。そこで活用したいのが、ビュー上でのインラインメモです。
コンタクトビューにメモやメッセージ用のプロパティ列を追加しておけば、一覧画面から直接メモを入力できます。例えば「ニーズあり、予算感あり、来週アプローチ」といった簡易メモをビュー上で記録していけば、画面遷移なく次々と架電結果を残すことが可能です。詳細な記録は個別画面で行い、簡易メモは一覧画面で行うという使い分けが、架電効率を最大化するポイントです。
HubSpotのタスク機能は、インサイドセールスの架電管理において非常に強力な武器になります。例えば展示会で獲得した名刺リストのフォローアップなど、特定のリストに対して一斉に架電したい場合に威力を発揮します。
コンタクトの一覧画面で対象者を全選択し、「タスクを作成」をクリックすると、選択した全員に対してコールタスクを一括で付与できます。例えば41件のコンタクトを選択して「展示会フォロー」というコールタスクを作成すれば、その41件分の架電タスクが自動的に生成されます。これにより「今日は展示会リードに全件架電する」といった目標が明確なToDoとして管理されるようになります。
管理者の視点でも、各メンバーにタスクを振ることで架電の実行状況をタスクベースで把握できるため、チーム全体の行動量管理にも活用できます。
タスクを作成したら、タスクキュー機能を使って連続的に架電をこなしていきましょう。タスク画面でフィルタリング(例えば「展示会フォロー」タグで絞り込み)した後、「タスクを開始」をクリックすると、タスクキューが起動します。
タスクキューが開始されると、「この方にコールしてください」という案内が表示されます。電話番号を確認して架電し、終わったら「完了」を押して「次へ」進むと、次のコンタクトが自動的に表示されます。画面を切り替えることなく、次から次へとコールをこなしていける仕組みです。
タスクキューには進捗状況も表示されるため、「39件中3件完了、あと36件」といった残タスク数がリアルタイムで確認できます。架電業務は単調になりがちですが、進捗が可視化されることでモチベーション維持にもつながります。コンタクト一覧から一件ずつ画面遷移して架電する方法と、タスクキューで連続的にこなす方法、どちらが自分のスタイルに合うか試してみてください。
HubSpotの標準的なコールログでは、自由記述のメモしか残せないため、「議題」「訪問者」「訪問場所」「提案書リンク」「Next Action」といった項目を構造化して集計したい場合には不十分です。こうしたニーズに応えるのが、カスタムオブジェクトによる営業報告の仕組み化です。
HubSpotのカスタムオブジェクト機能を使って「営業報告」というオブジェクトを新規作成し、以下のような項目をそれぞれ独立したプロパティとして設計します。報告の区分(訪問・コール・オンラインなど)はプルダウン形式、議題は「予算のヒアリング」「製品デモ」などの選択式、訪問者はHubSpotのユーザーから選択、訪問日時は日付+時間のフォーマット、訪問場所はテキスト入力、提案書リンクはURL形式、Next Actionは「次回ステージ提案」「見積もり送付」などのステータス管理、というように項目の型を分けて設計できます。
各項目がプルダウンやリンク、日時など適切なデータ型で分かれていることで、後からの集計やレポート作成が容易になるのが大きなメリットです。
カスタムオブジェクトで作成した営業報告は、レコードとして蓄積されていきます。
営業報告の一覧から「今月の訪問件数」「議題別の商談数」「Next Actionのステータス分布」といったレポートを作成できるようになります。これは標準のコールログ(自由記述メモ)だけでは実現できない、構造化されたデータだからこそ可能になる分析です。
カスタムオブジェクトの構築にはHubSpotのEnterpriseプランが必要ですが、インサイドセールスの記録を定量的に分析し、PDCAサイクルを回したい組織にとっては投資対効果の高い機能といえます。まずは標準のコールログ運用から始め、記録項目の構造化が必要になった段階でカスタムオブジェクトの導入を検討するのがおすすめです。
HubSpotを活用したインサイドセールスの運用は、段階的に構築していくことが成功のポイントです。まずはコンタクトビューのカスタマイズとフィルタリングで架電リストを最適化し、スコアリングで優先順位をつけるところから始めましょう。次にコールログの記録ルールをチームで統一し、タスク機能を使った一括架電管理で行動量を可視化します。さらに高度な運用として、カスタムオブジェクトによる営業報告の仕組み化に進めば、架電の質と量の両面をデータドリブンに管理できる体制が整います。
スプレッドシートでの架電管理から脱却し、CRMと連動したインサイドセールス運用を構築することで、チーム全体の生産性向上と商談化率の改善を実現してみてください。