HubSpotを導入したいが、まずは無料で試してみたいというご要望や、他のCRMからのリプレイスを検討しているが、無料版でどこまでできるのか判断がつかないというお悩みをお持ちの企業は多いです。
結論から申し上げますと、HubSpotの無料プランは「試す」レベルをはるかに超えています。CRM(顧客管理)、SFA(営業案件管理)、メルマガ配信、フォーム作成、レポート、さらにはAIアシスタントまで、ビジネスに必要な基本機能がほぼすべて無料で利用できます。
この記事では、HubSpot無料プランで実際にできることを機能別に解説し、どこに制限があるのか、有料プランに切り替えるべきタイミングはいつかまで踏み込んで説明いたします。
HubSpotの無料アカウント作成は、メールアドレスがあれば数分で完了します。
アカウント作成時のポイントとして、Googleアカウントの接続オプションがあります。Gmailを接続すると、過去にメールでやり取りした企業や担当者の情報がCRMに自動的に取り込まれます。これにより、アカウント作成直後から既存の顧客データベースが出来上がった状態でスタートできます。
ただし、経営者が個人のGmailを接続すると、社内に見せたくないメール内容まで取り込まれてしまう可能性があります。その場合は手動でデータを作成する通常のフローを選べばよろしいです。
HubSpotの無料プランでは、CRMの基本オブジェクトがすべて利用できます。
利用可能なオブジェクトは以下の通りです。
これらのオブジェクトは互いにリレーション(関連付け)を持ちます。たとえば、コンタクト「斉藤さん」は会社「ライトウェイ」に所属しており、「ライトウェイ」に対して100万円の提案が進行中——というデータ構造をCRM上で管理できます。
既存の顧客リストをExcelやCSVからインポートできます。コンタクト、会社、取引の情報を一括で取り込めるため、ゼロからデータを手入力する必要がありません。
インポート時には、Excel上のカラム名とHubSpotのプロパティを自動マッピングしてくれます。データの整合性を保ちながら、大量のデータを効率的に取り込めます。
無料プランのコンタクト上限は1,000件です。画面上部に「1,000件中○件のコンタクトが使用済みです」と表示されるため、上限の管理は容易です。
1,000件を超える見込み顧客を管理する場合は、スターター以上の有料プランへのアップグレードが必要になります。ただし、創業初期や小規模ビジネスであれば、1,000件で十分な場合が多いです。
HubSpotのデフォルトプロパティ(項目)に加えて、自社独自のカスタムプロパティを作成できます。たとえば「提案商材」「流入経路」「契約形態」など、自社のビジネスに合わせた管理項目を追加可能です。
無料プランではカスタムプロパティの作成上限が各オブジェクト10個までとなっています。11個以上の独自項目が必要になった場合は、スターター以上のプランが必要です。
HubSpotの無料プランには、SFA(営業支援)の基本機能も含まれています。取引(ディール)をカンバン形式のパイプラインで管理でき、アポ取得→初回商談→見積もり提示→受注という営業プロセスを可視化できます。
各取引カードには金額と担当者が表示されるため、チーム全体の商談状況が一目で把握できます。カードをドラッグ&ドロップでステージ間を移動させるだけで、案件の進捗を更新できます。
無料プランではパイプラインを1つだけ作成できます。たとえば「新規営業」と「アップセル」で別々のパイプラインを使いたい場合は有料プランが必要です。ただし、1つのパイプラインで運用できるフェーズであれば、無料プランでも十分に案件管理が可能です。
無料プランでもマーケティングEメール(メルマガ)の作成・配信が可能です。テンプレートを選んで本文を編集し、インポートしたコンタクトリストに一斉配信できます。
1,000件以下のコンタクトに対して定期的にニュースレターやキャンペーン情報を送信する運用は、無料プランで十分に対応できます。
無料プランの最大の制約は、メールやフォーム、ウェブサイトにHubSpotのロゴが自動挿入されることです。メルマガの下部に「HubSpotで送信しました」というロゴとリンクが表示されます。
これが許容できるかどうかが、無料プランとスタータープランの分岐点になることが多いです。BtoB企業で「無料ツールを使っている」という印象を顧客に与えたくない場合は、スタータープラン(月額約1,800円〜)にアップグレードすればロゴは消えます。
一方で、HubSpotで送信していることが顧客に知られても問題ない場合は、無料プランのまま運用して全く問題ありません。
問い合わせフォームやお申し込みフォームを作成し、自社のウェブサイトに埋め込めます。フォームから送信されたデータはそのままCRMに格納されるため、手動でのデータ入力が不要です。
ただし、フォームにもHubSpotのロゴが表示されます。メルマガと同じく、ロゴの非表示にはスタータープラン以上が必要です。
無料プランでも日程調整リンクを作成できます。リンクを相手に送るだけで、空いている時間帯を選んでもらい、自動的にカレンダーに予定が登録されます。作成できるリンク数に制限はありますが、基本的な日程調整には十分対応できます。
ウェブサイトにチャットウィジェットを設置し、訪問者からの問い合わせをリアルタイムで受け付けることも無料プランで可能です。簡易的なチャットボットの設定もできます。
無料プランでは、HubSpotがあらかじめ用意したテンプレートレポートを表示できます。たとえば、マーケティングパフォーマンスの概要、ウェブサイトの閲覧数、フォーム送信数などの基本的なデータを可視化できます。
自社独自のKPI分析やクロス集計を行うカスタムレポートは、プロフェッショナルプラン以上で利用可能です。スタータープランでもカスタムレポートは作成できないため、無料プランと同じ制約があります。
HubSpotでウェブサイトを構築していない場合でも、トラッキングコードを自社サイトに埋め込むことで、訪問者の行動データを収集できます。CRMのコンタクト情報とウェブサイトの閲覧履歴がマッチングされ、「この顧客がどのページを何回見たか」を追跡できます。この機能も無料プランで利用可能です。
HubSpotのAIアシスタント「Breeze」は無料プランでも利用できます。CRMに登録されたデータをもとに、AIが質問に回答してくれます。
たとえば「斉藤さんの所属している会社は?」と聞けば、CRMを検索してコンタクト情報を返してくれます。「ライトウェイとの商談はどのステージ?」と聞けば、取引の進捗状況を教えてくれます。
日常業務でCRMのデータを素早く参照する際に、AIアシスタントは非常に便利な機能です。
無料プランの主な制限を整理します。
| 機能 | 無料プラン | 有料プラン(スターター以上) |
|---|---|---|
| コンタクト数 | 1,000件まで | プランに応じて増加 |
| カスタムプロパティ | 各オブジェクト10個まで | 大幅に拡張 |
| 取引パイプライン | 1つ | 複数作成可能 |
| メール・フォームのHubSpotロゴ | 表示あり | 非表示 |
| マーケティングオートメーション | 非対応 | プロフェッショナル以上で対応 |
| カスタムレポート | 非対応 | プロフェッショナル以上で対応 |
| アクティビティ履歴の参照期間 | 制限あり | 全期間参照可能 |
以下のいずれかに該当したら、有料プランへの移行を検討すべきです。
スタータープランは月額約1,800円(年払い時)から始められます。データの移行やリプレイスは不要で、そのまま有料版にアップグレードするだけなので、無料プランからの移行はシームレスです。
HubSpotの無料プランは、CRM導入の「お試し」としては過剰なほど機能が充実しています。
スプレッドシートでの顧客管理に限界を感じている企業、他のCRMからの乗り換えを検討している企業は、まず無料プランでHubSpotの操作性と機能を体感されてみることをおすすめします。無料プランで基本運用を確認した上で、必要に応じてスタータープランへ段階的にアップグレードするのが最も合理的なアプローチです。