「患者の予約管理やフォローアップが手動で追いつかない」「健診や定期検査のリマインドを自動化したい」「自費診療の集客にWebマーケティングを活用したいが、何から始めればいいかわからない」——医療・ヘルスケア業界でも、CRM・MAの活用ニーズが高まっています。
医療・ヘルスケア業界におけるHubSpot活用とは、患者・利用者のデータ管理、予約・フォローアップの自動化、集客マーケティングといった医療機関・ヘルスケア事業者特有のプロセスをCRMで効率化し、患者体験の向上と業務負荷の削減を実現することです。
この記事では、医療・ヘルスケア業界でHubSpotを活用する際の設計思想と、具体的な活用パターンを解説します。
HubSpotは汎用CRM/MAツールですが、医療・ヘルスケア業界にも適用可能なケースがあります。特に以下のような事業形態に向いています。
| 事業形態 | HubSpotの活用領域 |
|---|---|
| 自費診療クリニック(美容/歯科/眼科等) | 集客マーケティング + 患者フォロー + リピート促進 |
| 健診・人間ドック事業者 | 予約管理 + リマインド + 結果通知の自動化 |
| ヘルスケアSaaS/アプリ | リード獲得 + オンボーディング + カスタマーサクセス |
| 医療機器メーカー | 代理店管理 + 展示会管理 + 技術営業の案件管理 |
| 製薬企業のマーケティング部門 | 医療従事者向けのコンテンツ配信 + イベント管理 |
| 介護・福祉事業者 | 利用者管理 + 問い合わせ対応 + 施設紹介フォロー |
注意点: 保険診療が中心の一般的な医療機関(病院・診療所)では、電子カルテや医事会計システムが業務の中心になるため、HubSpotの導入優先度は相対的に低くなります。HubSpotが最も効果を発揮するのは、マーケティング活動が収益に直結する「自費診療」や「ヘルスケアサービス」の領域です。
医療・ヘルスケア業界向けにカスタムプロパティを設計します。
自費診療クリニックの場合:
| プロパティ | 種類 | 用途 |
|---|---|---|
| 患者ID | テキスト(ユニーク) | 院内ID |
| 来院経路 | ドロップダウン | Web/紹介/看板/SNS/ポータルサイト |
| 初回来院日 | 日付 | 初来院の日付 |
| 最終来院日 | 日付 | 直近の来院日 |
| 関心のある施術 | 複数チェックボックス | 施術カテゴリ |
| 患者ステータス | ドロップダウン | 初回相談/通院中/施術完了/休眠 |
| 次回来院予定日 | 日付 | リマインド用 |
| 担当医/カウンセラー | ユーザー選択 | 担当者 |
重要: 診療情報(カルテ内容、診断名、処方内容等)はHubSpotに入れないでください。これらは電子カルテシステムで管理し、HubSpotには集客・マーケティング・コミュニケーションに必要な情報のみを管理するのが正しい使い方です。
| ステージ | 定義 |
|---|---|
| リード | Webから問い合わせ・資料請求した見込み患者 |
| 相談予約済み | 初回カウンセリングの予約が入った |
| 初回来院済み | 初回の相談/カウンセリングを完了した |
| 施術/治療中 | 施術や治療プランを実行中 |
| 施術完了 | 一連の施術が完了した |
| リピーター | 2回以上の施術を受けた |
| 休眠 | 最終来院から6か月以上経過 |
ワークフローを使って、予約前日のリマインドメールやSMS通知を自動送信します。
予約リマインドワークフロー:
施術や治療の後に、患者満足度の確認やケア方法の案内を自動送信します。
| タイミング | アクション | 目的 |
|---|---|---|
| 施術翌日 | 経過確認メール + ケア方法 | 安心感の提供 |
| 1週間後 | 経過確認 + 次回来院の案内 | フォローアップ |
| 1か月後 | 満足度アンケート | 改善データの収集 |
| 3か月後 | メンテナンス・定期検診の案内 | リピート促進 |
| 6か月後 | 新しいサービスの紹介 | アップセル |
自費診療クリニックにとって、Webマーケティングは新規患者獲得の重要なチャネルです。
Marketing Hubの広告連携機能を使って、Google広告やSNS広告の効果をCRMデータと統合して分析します。
| 指標 | 計測方法 |
|---|---|
| 広告→問い合わせ転換率 | フォーム送信を広告コンバージョンとして計測 |
| 広告→来院転換率 | CRMの来院データと広告ソースを紐付け |
| 広告チャネル別CPA | チャネルごとの患者獲得コスト |
| 広告経由のLTV | 広告経由患者の累計施術金額 |
Google広告から来たリードが実際に何人来院して、いくらの施術を受けたかまで追跡できるのが、MAを入れるメリットかなと思います。
| 行動 | スコア |
|---|---|
| 施術メニューページの閲覧 | +10 |
| 料金ページの閲覧 | +15 |
| 症例ページの閲覧 | +5 |
| 問い合わせフォーム送信 | +30 |
| 予約ページへのアクセス | +20 |
スコアが高い見込み患者を優先的にフォローコールすることで、カウンセラーの効率が向上します。
健診や人間ドックは毎年の受診が推奨されるため、年次リマインドの自動化が効果的です。
ワークフロー設計:
前回の受診結果や年齢に基づいて、追加で推奨するオプション検査を自動提案するメールを配信します。これはセグメント配信の典型的な活用例です。
医療・ヘルスケア業界でCRMを使う場合、個人情報の取り扱いには特に注意が必要です。
| 対応項目 | HubSpotの機能 |
|---|---|
| 同意管理 | GDPR機能で同意取得・管理が可能 |
| データアクセス制御 | チーム・権限設定でアクセス範囲を制限 |
| センシティブデータ | センシティブデータ管理設定でフィールドを保護 |
| データ削除リクエスト | GDPR削除リクエスト機能で対応 |
| 暗号化 | 通信のSSL暗号化、保存データの暗号化 |
| 二要素認証 | ログイン時の2FA設定 |
医療・ヘルスケア業界のHubSpot活用は、自費診療の集客マーケティング、予約・フォローアップの自動化、患者データの一元管理を柱として設計するのが効果的です。
まずは問い合わせフォームの設置と、予約リマインドのワークフロー構築から始めてみてください。段階的にセグメント配信やスコアリングを追加していくことで、手動では対応しきれなかった患者フォローが仕組みとして回り始めます。
HubSpotは医療専用システムではないため、電子カルテとの役割分担を明確にし、個人情報保護のルールを整備した上で活用してください。
保険診療中心の一般的な医療機関ではまだ多くありませんが、自費診療クリニック(美容、歯科矯正、レーシック等)やヘルスケアサービス事業者では活用事例が増えています。マーケティング活動が収益に直結する事業形態では、CRM/MAの導入効果が高いです。
一般的な電子カルテシステムとHubSpotの直接連携は、現時点では限定的です。API対応の電子カルテであればカスタム連携が可能ですが、開発リソースが必要です。実務的には、患者の連絡先情報のみをHubSpotで管理し、診療情報は電子カルテに残す「役割分担型」の運用が現実的です。
HubSpotはSOC 2 Type II認証を取得し、データの暗号化やアクセス制御が実装されています。ただし、医療情報は個人情報の中でも特にセンシティブなため、HubSpotには診療情報を入れず、連絡先・予約・マーケティング情報に限定してください。また、患者からのデータ利用同意の取得とプライバシーポリシーの整備は必須です。
はい、Starterプラン(月1,800円〜)で十分に活用できます。問い合わせフォーム、予約管理、基本的なメール配信、パイプラインでの患者管理が可能です。小規模だからこそ、手作業から仕組み化への移行による効果が大きいです。
HubSpot自体は医療広告ガイドラインへの自動チェック機能を持っていませんが、Content Hubで作成するWebページやメールの内容は、公開前に自社でガイドラインに沿っているか確認する運用ルールを設けてください。ビフォーアフター画像の使用制限や、体験談の記載ルールなど、医療広告ガイドラインの遵守は運用面での対応が必要です。