「営業チームに売上目標を設定しているけれど、進捗管理がExcelベースで形骸化している」「マーケティングやカスタマーサクセスのKPIを一元管理したいが、部門ごとにツールがバラバラで全体像が見えない」——こうした目標管理の課題は、成長企業ほど深刻になりがちです。
HubSpotの目標(Goals)機能とは、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの各部門のKPIを統一プラットフォーム上で設定・追跡し、リアルタイムで進捗を可視化する機能です。CRMに蓄積されたデータと自動連携するため、手動集計の手間なく、チーム全体の目標達成状況をダッシュボードで確認できます。
この記事では、HubSpotの目標機能について以下の内容を詳しく解説します。目標の種類や設定手順から、ダッシュボードでの進捗管理、フォーキャスト機能との連携まで、実務で使えるノウハウを網羅的にお伝えします。
HubSpotの目標(Goals)機能は、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの各チームが追うべきKPIを一元管理するための機能です。従来のスプレッドシートによる目標管理では、数値の手動更新、集計ミス、リアルタイム性の欠如といった問題が避けられませんでしたが、HubSpotの目標機能はCRMデータと直接連携するため、これらの課題を根本的に解決します。
目標機能はHubSpotのほぼすべてのプランで利用可能ですが、プランによって使える機能の範囲が異なります。
| プラン | 利用可能な目標タイプ |
|---|---|
| Sales Hub Starter | 収益目標(Revenue Goals) |
| Sales Hub Professional | 収益目標、活動目標、カスタム目標 |
| Sales Hub Enterprise | 全目標タイプ + 高度なレポート連携 |
| Service Hub Professional以上 | チケット目標、CSAT目標 |
| Marketing Hub Professional以上 | マーケティング目標(カスタム目標として設定) |
ポイントとしては、Starter以上であれば基本的な収益目標は使えますが、活動目標やカスタム目標を含めた本格的な運用をするならProfessional以上が必要になります。
目標管理をスプレッドシートからHubSpotに移行するメリットを整理すると、以下のようになります。
| 項目 | スプレッドシート管理 | HubSpot目標機能 |
|---|---|---|
| データ更新 | 手動入力が必要 | CRMデータから自動反映 |
| リアルタイム性 | 更新頻度に依存(週次・月次) | 常にリアルタイム |
| 集計精度 | 入力ミス・計算ミスのリスク | 自動計算で正確 |
| 可視化 | グラフ作成が手間 | ダッシュボードで即時表示 |
| 権限管理 | ファイル単位の共有のみ | ユーザー/チーム単位で制御 |
| 履歴管理 | バージョン管理が煩雑 | 期間ごとに自動アーカイブ |
特に「データ更新の自動化」が最大のメリットです。営業担当が商談を受注クローズすれば、その金額が自動的に目標の達成数値に加算されます。わざわざ別のシートに転記する必要がありません。
HubSpotの目標機能では、大きく分けて3つのタイプの目標を設定できます。それぞれの特徴と適切な使い分けを見ていきましょう。
最もベーシックな目標タイプで、売上金額に基づく目標です。取引(Deals)のクローズ金額を自動でトラッキングします。
設定例:
収益目標は「クローズ日(Close Date)」と「金額(Amount)」をベースに自動計算されます。取引のステータスが「受注(Closed Won)」に変わると、その金額が自動的に目標達成の実績としてカウントされる仕組みです。
設定のポイント:
収益目標を設定する際は、パイプラインの指定が重要です。複数のパイプラインを運用している場合、どのパイプラインの取引を目標の対象とするかを明確にしておく必要があります。たとえば「新規営業パイプライン」と「既存顧客アップセルパイプライン」を分けて運用している場合、それぞれに別の収益目標を設定するのが一般的です。
営業担当者の行動量に基づく目標です。売上のようなアウトプットではなく、インプット(行動量)を管理したい場合に使います。
トラッキング可能な活動:
設定例:
活動目標は特にインサイドセールスチームやSDR(Sales Development Representative)の管理に有効です。アウトバウンド営業では「量が質を生む」側面がありますので、まずは行動量の基準を設定し、その達成を通じて成果につなげるアプローチが取れます。
活用のコツ:
活動目標を設定する際は、単なるノルマにならないよう注意が必要です。「月50件のコール」という数字だけを追うと、質の低いコールが増える可能性があります。活動目標と収益目標を組み合わせて設定し、「行動量を確保しつつ、成果にもつなげる」という両輪の管理を行うのが効果的です。
Professional以上のプランで利用できる、自由度の高い目標設定機能です。CRMのあらゆるプロパティをベースにした独自の目標を作成できます。
設定例:
カスタム目標では、「対象オブジェクト」「トラッキングするプロパティ」「集計方法」「フィルター条件」を自由に組み合わせて目標を定義できます。
カスタム目標の設定フロー:
この柔軟性が、カスタム目標の最大の強みです。自社の業務プロセスに合わせた独自のKPIを、HubSpot上で一元管理できます。
ここからは、HubSpotで実際に目標を設定する手順を順を追って解説します。
目標作成画面では、まず目標のタイプを選択します。HubSpotには以下のテンプレートが用意されています。
Sales Hub テンプレート:
Service Hub テンプレート:
カスタム目標の場合:
テンプレートを選択したら、以下の項目を設定します。
目標名:
わかりやすい名前を付けます。「2026年Q1 営業チーム売上目標」のように、期間とチームが一目でわかる命名が望ましいです。
期間の設定:
パイプラインの指定(収益目標の場合):
どのパイプラインの取引を対象にするかを選択します。「すべてのパイプライン」も選択可能ですが、パイプラインごとに分けて設定するほうが管理しやすくなります。
目標の割り当て方法は2つあります。
個人に割り当てる場合:
チームに割り当てる場合:
目標の割り当てで意識したいのは、「トップダウン型」と「ボトムアップ型」のバランスです。経営層が設定した全社目標を部門・チーム・個人に分解する(トップダウン)一方で、現場の実態に基づいた目標値を積み上げて検証する(ボトムアップ)というアプローチを併用すると、納得感のある目標設定ができます。
目標のマイルストーンに到達した際や、期限が近づいた際に通知を送る設定も可能です。
通知設定は営業マネージャーにとって便利な機能です。各担当者の進捗を個別にチェックしなくても、未達リスクのある担当者にだけ注意を向けられるようになります。
目標機能を効果的に運用するには、チーム目標と個人目標の関係性を正しく設計することが重要です。ここでは、営業組織でよく使われる3つの設計パターンを紹介します。
チーム目標を人数で均等に割って個人目標にする方法です。
例:
最もシンプルな方法ですが、経験値やテリトリーの違いを考慮していないため、実態に合わないケースが出やすくなります。新人とベテランが同じ目標値では、新人にとって非現実的な目標になりかねません。
担当者のスキルレベル、担当テリトリー、顧客の規模などに応じて異なる目標値を設定する方法です。
例:
この方法は個人の実力に見合った目標を設定できるため、モチベーション維持に効果的です。ただし、目標設定の根拠を明確にしておかないと「なぜ自分の目標が低いのか」という不満が生じることもあります。
営業プロセスの役割分担に応じて、異なる指標で目標を設定する方法です。
例:
THE MODEL型の営業組織では、各レイヤーが異なる指標で評価されます。HubSpotの目標機能では、収益目標と活動目標を組み合わせることで、こうしたレイヤー別の管理を1つのダッシュボード上で実現できます。
どの設計パターンを採用するにしても、以下のポイントは共通して押さえておきたいところです。
目標を設定したら、その進捗を日常的に確認する仕組みが必要です。HubSpotでは、目標の進捗をダッシュボードで可視化する方法がいくつかあります。
HubSpotの目標機能には、デフォルトで以下の表示オプションが用意されています。
リストビュー:
各担当者の目標値、達成値、達成率を一覧で表示します。期間ごとにフィルタリングでき、未達の担当者を素早く特定できます。
進捗バー:
各目標の達成率をバーチャートで表示します。色分け(緑: 順調、黄: 注意、赤: 未達リスク)により、直感的にステータスを把握できます。
デフォルトビューだけでなく、レポート機能を使ったカスタムダッシュボードも作成できます。
推奨するダッシュボード構成:
ダッシュボードを作成するだけでは意味がありません。日常業務の中で活用する仕組みを整えることが重要です。
日次チェック:
営業マネージャーが毎朝ダッシュボードを確認し、前日の活動量と成果をレビューする習慣を作ります。異常値(極端に活動量が少ない担当者など)を早期に発見できます。
週次の1on1ミーティング:
個人別の進捗データをもとに、上司と部下の1on1ミーティングを実施します。HubSpotのダッシュボードをそのまま画面共有しながら話すと、事実ベースのフィードバックができます。
月次のパイプラインレビュー:
月初にチーム全体の目標達成見通しを確認し、不足があればアクションプランを策定します。パイプラインの金額と受注確度を掛け合わせた「加重パイプライン」の数値が、目標金額の3倍以上あることが1つの目安です。
HubSpotの目標機能は、フォーキャスト(売上予測)機能と密接に連携しています。この連携を活用することで、目標管理の精度を大幅に向上させることができます。
フォーキャスト機能は、Sales Hub Professional以上で利用できる売上予測ツールです。パイプライン上の取引データと、過去の受注実績から、将来の売上着地を予測します。
フォーキャストの予測カテゴリ:
| カテゴリ | 説明 |
|---|---|
| パイプライン | まだ確度が低い初期段階の取引 |
| ベストケース | 条件が揃えば受注の可能性が高い取引 |
| コミット | ほぼ確実に受注する見込みの取引 |
| クローズ済み | 受注確定した取引 |
営業担当者が各取引をこの4カテゴリに分類することで、マネージャーは「確実に見込める金額」「上振れの可能性がある金額」「リスクのある金額」を区別して把握できます。
フォーキャスト機能と目標を連携させることで、以下のような分析が可能になります。
1. 目標vs予測ギャップ分析:
目標金額とフォーキャスト金額の差分をリアルタイムで表示します。たとえば、月間目標1,000万円に対して、コミット金額が600万円、ベストケースが300万円であれば、「残り100万円分の新規商談が必要」という具体的なアクションが明確になります。
2. 達成確率の可視化:
過去の受注率データに基づいて、目標達成の確率を算出します。「このままのペースでは月間目標の達成確率が60%」というアラートが出れば、早めに対策を打てます。
3. チーム全体のフォーキャストロールアップ:
個人のフォーキャストをチーム全体に積み上げて表示します。チーム目標に対する到達見通しを俯瞰的に確認できます。
フォーキャストの精度は、データの質に大きく左右されます。以下のポイントを押さえて運用することで、予測精度を継続的に改善できます。
HubSpotの強みの1つは、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの目標を1つのプラットフォーム上で統合的に管理できることです。部門間の目標を連動させることで、レベニュー組織としての一体的な運営が可能になります。
マーケティング部門の目標は、営業部門の売上目標から逆算して設定するのが基本です。
逆算の例:
このようにファネルの各段階の転換率から逆算し、マーケティング部門の目標(リード獲得数、MQL数など)をカスタム目標として設定します。
カスタマーサクセス部門の目標は、既存顧客の維持・拡大を軸に設定します。
よく使われるCS目標:
Service Hubのチケットデータやカスタムプロパティをベースにしたカスタム目標を設定することで、CS部門のパフォーマンスもHubSpot上で一元管理できます。
Service Hub Professional以上では、SLA機能と目標機能を組み合わせることで、サービス品質の基準を定量的に管理できます。
SLA違反が発生した場合にワークフローで自動エスカレーションを行い、マネージャーに通知する仕組みも構築できます。
営業・マーケ・CSの目標を1つのダッシュボードにまとめることで、経営層はレベニュー組織全体の状況をひと目で把握できます。
推奨する部門横断ダッシュボード構成:
| セクション | 表示する指標 |
|---|---|
| マーケティング | リード獲得数、MQL数、コンバージョン率 |
| インサイドセールス | コール数、商談設定数、SQL転換率 |
| フィールドセールス | 商談数、提案数、受注金額、成約率 |
| カスタマーサクセス | チャーン率、NPS、アップセル金額 |
| 全体 | MRR/ARR、LTV、CAC、LTV/CAC比率 |
こうしたダッシュボードを経営会議で定期的にレビューすることで、どの部門にボトルネックがあるかを素早く特定し、リソース配分の意思決定を加速できます。
目標機能は設定して終わりではなく、継続的な運用が成果を左右します。ここでは、運用を成功に導くためのポイントをまとめます。
目標は設定する期間の開始前に確定させるのが原則です。たとえば四半期目標であれば、前四半期の最終月に次期の目標を設定・共有します。
一度設定した目標を途中で変更するかどうかは、組織によって方針が異なります。一般的には、以下のようなルールを設けておくと混乱を防げます。
HubSpotでは目標の履歴が自動で保存されるため、「いつ、誰が、何を変更したか」のトラッキングが可能です。
目標機能の精度は、CRMへのデータ入力の質に直結します。営業担当が取引のステージ更新や金額入力を怠ると、目標の進捗数値が正しく反映されません。
データ入力を徹底するための施策としては、以下のようなものが有効です。
目標の進捗が遅れている場合のアクションプランをあらかじめ決めておくと、マネージャーの判断が迅速になります。
達成率別のアクション例:
| 経過期間の進捗率 | 達成見通し | アクション |
|---|---|---|
| 75%以上 | 順調 | 現行の活動を継続 |
| 50〜74% | 注意 | 活動量の増加、提案の質の見直し |
| 25〜49% | 危険 | パイプラインの緊急追加、マネージャーの商談同行 |
| 25%未満 | 要対策 | リソース再配分、短期施策の投入 |
こうした基準をチーム内で共有しておくことで、「なんとなく危ない」という感覚ではなく、データに基づいた対策を講じられるようになります。
HubSpotの目標(Goals)機能は、営業・マーケティング・カスタマーサクセスのKPIを1つのプラットフォーム上で統合管理するための機能です。本記事の要点を整理します。
スプレッドシートでの目標管理に限界を感じている方は、まずはSales Hubの収益目標から導入を始め、段階的に活動目標やカスタム目標を追加していくアプローチがおすすめです。
目標機能はSales Hub Starter以上のプランで利用可能です。無料のCRMプランでは利用できません。Starterプランでは収益目標(Revenue Goals)が使え、Professional以上で活動目標やカスタム目標も利用できるようになります。
一度作成した目標の期間(月次・四半期・年次)を後から変更することはできません。期間を変更したい場合は、新しい目標を作成し、既存の目標をアーカイブする必要があります。なお、目標値(金額や件数)の変更は期中でも可能です。
目標機能は「あるべき姿(目標値)」を設定する機能で、フォーキャスト機能は「現状の見通し(予測値)」を算出する機能です。両者を組み合わせることで、「目標に対して現在の見通しがどの程度か」というギャップ分析が可能になります。目標は確定値ですが、フォーキャストは日々変動する予測値という違いがあります。
はい、可能です。収益目標の設定時に「すべてのパイプライン」を選択すれば、複数のパイプラインの取引を合算した目標を作成できます。また、パイプラインごとに個別の目標を設定し、ダッシュボード上で合算表示することも可能です。管理の粒度に応じて使い分けてください。
はい、カスタム目標機能を使うことで、コンタクトのライフサイクルステージに基づいたMQL数やSQL数などの目標を設定できます。Marketing Hub Professional以上、またはSales Hub Professional以上のプランが必要です。コンタクトオブジェクトを対象に、ライフサイクルステージのプロパティでフィルタリングした目標を作成することで、マーケティングKPIの管理が可能です。