「HubSpotのAI機能が増えてきたけど、自社の業務に合わせてカスタマイズする方法がわからない」「既存のBreezeエージェントだけでは対応しきれないユースケースがある」——こうした声が増えてきています。
Breezeスタジオ(Breeze Studio)とは、HubSpotが提供するAIエージェント・アシスタントの管理・カスタマイズプラットフォームです。 既存のBreezeエージェントのカスタマイズに加え、自社の業務に特化したカスタムアシスタントをノーコードで構築できます。2025年秋のINBOUND 2025で発表され、HubSpotのAI戦略における中核機能として位置づけられています。
この記事では、Breezeスタジオの機能概要から、具体的な活用シナリオまでを解説します。
この記事でわかること:
出典: HubSpot (hubspot.jp/products/artificial-intelligence)
HubSpotのAI「Breeze」は、以下の3つの層で構成されています。
| 層 | 機能 | 役割 |
|---|---|---|
| Breeze Copilot | CRM上の対話型AIアシスタント | データ要約、メール下書き、レコード操作の支援 |
| Breeze エージェント | タスクを自律的に実行するAI | コンテンツ生成、顧客対応、案件創出、SNS管理 |
| Breezeスタジオ | エージェント・アシスタントの管理・構築基盤 | カスタマイズ、新規構築、マーケットプレイス |
Breezeスタジオは、この3層の中で「管理・カスタマイズ・構築」を担う基盤です。プロパティの操作をするCopilot系のものと、社内のナレッジを持っているアシスタントを両輪で使って、それらを統合管理する場所がBreezeスタジオになります。
Salesforce経験者の方には、SalesforceのEinstein StudioやAgentforce Studioに近い位置づけとお考えいただくとわかりやすいかなと思います。ただし、HubSpotのBreezeスタジオはノーコードで操作できる点が大きな違いです。
Breezeスタジオでは、エージェントとアシスタントという2つのAIコンポーネントを管理します。この違いを理解することがポイントになってきます。
エージェントは、タスクを自律的に実行するAIです。特定のワークフローに沿って、データ収集→判断→アクション実行までを一連で行います。
HubSpotが提供する主なエージェント:
| エージェント | 機能 | 対象Hub |
|---|---|---|
| 顧客対応エージェント | チャットでの問い合わせ対応を自動化 | Service Hub |
| コンテンツエージェント | ブログ記事・LP・SNS投稿の生成 | Content Hub |
| 案件創出エージェント | 企業リサーチ→パーソナライズメール作成 | Sales Hub |
| SNSエージェント | ソーシャルメディア投稿の生成・管理 | Marketing Hub |
| ナレッジベースエージェント | FAQ記事の自動生成・更新 | Service Hub |
| 企業リサーチエージェント | 企業情報のウェブ調査・CRM自動入力 | Sales Hub |
HubSpotの事前構築エージェントは、デフォルトの入力・指示・ツールが設定されており、これらは編集・削除・並べ替えができません。ただし、Breezeスタジオ上で動作のカスタマイズ(対象範囲の設定やナレッジソースの追加など)は可能です。
アシスタントは、ナレッジに基づいて質問に回答する対話型AIです。社内のドキュメントやCRMデータを参照して、先輩のように返してくれるような存在です。
アシスタントの特徴:
ここが1個ポイントになるのですが、エージェントは「アクションを実行する」のに対し、アシスタントは「情報を提供する」という役割の違いがあります。
Breezeスタジオの最大の特徴は、自社専用のカスタムアシスタントをノーコードで構築できることです。
空白の状態からアシスタントを設計します。以下を設定していきます。
アシスタントの目的・役割・ゴール・期待するアウトプットを記述すると、AIが自動的にアシスタントの初期設定を生成してくれます。
初めてアシスタントを作るという方は、ちょっとAIに依頼して初期段階は作ってみて、あとで手動で改善するという形にすると結構取っ掛かりはやりやすいかなと思います。
カスタムアシスタントの品質は、接続するナレッジソースの品質に直結します。ここのナレッジがしっかりしていればアシスタントは正しく回答してくれるので、いかに情報を正しく入力させつつAIに理解しやすいようにインプットしてあげるかがポイントです。
接続可能なナレッジソース:
| ソース種別 | 内容 | 活用例 |
|---|---|---|
| HubSpotナレッジベース | Service Hubのナレッジベース記事 | カスタマーサポート用アシスタント |
| HubSpotブログ | Content Hubのブログ記事 | コンテンツ戦略の相談用 |
| CRMデータ | コンタクト、会社、取引情報 | 営業支援用アシスタント |
| アップロードファイル | PDF、ドキュメント | 社内マニュアル参照用 |
| 外部URL | Webページ | 競合情報の参照用 |
INBOUND 2025で同時に発表されたBreezeマーケットプレイスは、HubSpotやサードパーティが構築したエージェント・アシスタントを発見・導入できるマーケットプレイスです。
マーケットプレイスの特徴:
アプリ連携のマーケットプレイスと同様に、自社のニーズに合ったAIエージェントを選んで、自社仕様にカスタマイズするという使い方になります。
課題: 新入社員やメンバーからの「HubSpotの使い方」「社内ルール」に関する質問対応に時間を取られる
構築方法:
効果: 社内の壁打ち相手としてのAIアシスタントが24時間対応。管理者の質問対応工数を削減
課題: デフォルトの顧客対応エージェントが、自社製品の専門的な質問に正確に回答できない
カスタマイズ方法:
日本語でのビジネスマナーをプロンプトで明示する必要がある点は注意です。ちょっと日本っぽく丁寧語とかビジネス的なお作法を守るルールを入れてあげるとよりよいですね。
課題: 商談前の企業リサーチに毎回30分以上かかる
構築方法:
これは社内壁打ち相手としても使えます。ただし、大型案件(数百万〜数千万規模)については、AIの出力をそのまま使うのではなく、しっかりリサーチとか内容は見つつも自分で判断・追記することが重要です。
Breezeスタジオで管理するエージェントは、HubSpotワークフローのアクションとしても実行可能です。2026年1月のアップデートで「Run Agent」ワークフローアクションが追加されました。
例: フォーム送信→企業リサーチエージェントが自動で企業情報を取得→スマートプロパティに反映→営業担当に通知
ワークフロー内AIの活用は、問い合わせの自動分類やデータクレンジングなど、定型的なタスクに特に効果を発揮します。
Breezeスタジオの利用には、HubSpotの有償プラン(Professional以上が推奨)が必要です。一部のエージェントはHub別に利用可能なプランが異なります。
| 機能 | 必要プラン |
|---|---|
| Breezeスタジオへのアクセス | Professional以上(推奨) |
| カスタムアシスタント構築 | Professional以上 |
| 顧客対応エージェント | Service Hub Professional以上 |
| コンテンツエージェント | Content Hub Professional以上 |
| 案件創出エージェント | Sales Hub Professional以上 |
| Breezeマーケットプレイス | 全プランでアクセス可能 |
AI機能全般に言えることですが、基本的には自律モードは使わず、送信前に確認する運用がよいかなと思います。問題ないか確認してから送ると、AIがやっぱり送るのでちょっと自動的に送信になってもまだリスクがあります。
Breezeスタジオは、HubSpotのAI機能を「自社仕様にカスタマイズする」ための管理基盤です。既存のエージェントをそのまま使うだけでなく、自社のナレッジを接続したカスタムアシスタントを構築することで、より実務に即したAI活用が実現できます。
まずはBreezeスタジオにアクセスして、既存のエージェント一覧を確認するところから始めてみましょう。その上で、社内で最もAI化のインパクトが大きい業務(よくある質問対応、企業リサーチ、コンテンツ生成など)をカスタムアシスタントで仕組み化していくのがよいかなと思います。
AI活用の鍵は「ナレッジの品質」です。CRMにデータが蓄積され、ナレッジベースが整備されるほど、AIアシスタントの回答精度が向上し、チーム全体の生産性を引き上げることができます。
Breezeマーケットプレイスの閲覧は可能ですが、カスタムアシスタントの構築やエージェントのカスタマイズにはProfessional以上のプランが推奨されます。具体的な利用可否はHubの種類とプランによって異なりますので、HubSpot公式ページでご確認ください。
いいえ、不要です。Breezeスタジオはノーコードで操作でき、自然言語でアシスタントの動作指示を記述します。「こういう質問にはこう答えて」「このトーンで回答して」といった形で設定できます。
HubSpotの事前構築エージェントは、デフォルトの入力・指示・ツールの編集はできません。ただし、ナレッジソースの追加、対象範囲の設定、トーンの調整などのカスタマイズは可能です。より自由度の高いカスタマイズが必要な場合は、カスタムアシスタントを新規構築する方法をおすすめします。
「Breezeに依頼」はワークフロー内でAIに単発のタスク(要約、分類、データ抽出など)を実行させる機能です。一方、Breezeスタジオは、複数のエージェント・アシスタントを統合管理し、カスタムアシスタントを構築するプラットフォームです。ワークフローの「Run Agent」アクションを使えば、Breezeスタジオで管理するエージェントをワークフローから呼び出すこともできます。
基本的に利用可能ですが、英語ベースのプロダクトであるため、カスタムアシスタントの動作指示に「日本語のビジネス敬語で回答する」「お客様には丁寧語を使う」といったルールを明示的に記述することをおすすめします。英語ドリブンの企業であれば非常に使える可能性が高いですが、日本語対応はまだ改善の余地があり、今後のアップデートに期待かなと思います。