HubSpotの基本操作には慣れたが、もっと活用したいという方へ。管理者としてデータ構造を整備したいが、何から手をつければいいかわからないという上級ユーザーや管理者に向けた内容をまとめました。
この記事では、HubSpotの応用機能10選として、カスタムオブジェクト、データモデル設計、レコード画面のカスタマイズ、計算プロパティ、データエンリッチメント、レポートの高度な活用、アプリ連携、AI(Breeze)、権限設定、セキュリティまで、実務で差がつく機能を網羅的に解説します。
HubSpotの標準オブジェクト(コンタクト・会社・取引・チケット)だけでは管理しきれないデータがある場合、カスタムオブジェクトを作成してデータテーブルとして管理できます。Enterpriseプランで利用可能な機能です。
活用例は多岐にわたります。不動産業界であれば物件や土地のデータ管理、SaaS企業であれば請求データや契約データの管理、製造業であれば商品マスターの管理などが挙げられます。
作成は「設定」→「カスタムオブジェクト」から行います。オブジェクト名(単数形・複数形)、プライマリー表示プロパティ、必須項目を設定するだけで完了します。プライマリー表示プロパティは、コンタクトの「名前」や会社の「会社名」に相当する基本識別情報です。
作成後は、標準オブジェクトと同じようにデータの作成・インポート・プロパティの追加・関連付けが可能になります。
カスタムオブジェクトにもパイプラインを設定できます。たとえば請求データであれば、「請求予定」→「請求実施」→「入金済み」→「未入金」というステージを作成し、ボードビュー(カンバン形式)でドラッグ&ドロップによる管理が可能です。
取引パイプラインと同じ操作感で、請求処理の進捗を可視化できます。ボード設定から表示するプロパティ(請求日、金額など)もカスタマイズできます。
カスタムオブジェクトを増やしていくと、オブジェクト間の関係性が複雑になります。データモデル作成ツールを使えば、CRMオブジェクト(会社・コンタクト・チケット)、セールスオブジェクト(取引・リード・見積もり)、カスタムオブジェクトの全体構成を俯瞰できます。
各オブジェクト間の関連付け(アソシエーション)の制限も設定できます。たとえば「1つの請求に対して商品マスターは1つ」「1つの商品から請求は複数紐づけ可能」という1対多の関係を明確に定義できます。
適切なデータモデルを設計することで、社内のデータがクリーンに保たれます。
Operations Hub(Data Hub)のプランでは、データ品質管理機能も利用できます。重複データの検出、類似プロパティのアラート、異常値の検出(急激なデータ変更の通知)、フィルレート(各プロパティの使用率)の確認など、データのクレンジングとモニタリングに必要な機能が揃っています。
フィルレートが1%以下のプロパティがあれば、それは実質的に使われていない項目です。不要なプロパティを整理し、データモデルを最適化する判断材料になります。
取引やコンタクトの詳細画面は、デフォルトのままでは使いにくいことが多いです。レコード画面の歯車アイコンから、画面構成そのものを変更できます。
左カラムの案件情報や契約情報、中央カラムのスコアやレポート埋め込み、右カラムの関連付け表示——これらすべてをドラッグ&ドロップで自由に配置変更できます。使わないセクション(プレイブックなど)は下部に移動し、よく使うセクション(商品項目など)を上部に配置するだけで、営業担当者の操作効率は大きく変わります。
パイプラインや事業部によって表示する項目を切り替える「条件付きロジック」も設定できます。たとえば、セールスパイプラインでは契約情報セクションを表示し、不動産パイプラインでは非表示にするといった制御が可能です。
SFAでよくある「使っていない項目が大量に表示されている」問題を防ぎ、各担当者が必要最小限の項目だけを見て運用できる環境を作れます。
レコードの「複製」機能は、既存の案件を丸ごとコピーしたい場合に便利です。受注後にクロスセル案件を作成する場合など、金額・会社・コンタクトの関連付けを維持したまま新規案件をコピーできます。
「マージ」機能は、重複レコードを1つに統合する機能です。2つのレコードのどちらの情報を優先するか、プロパティ単位で選択できます。マージ後は、両レコードに紐づいていた関連付けが新しいレコードに統合されます。マージ履歴も記録されるため、後から確認可能です。
同期プロパティは、関連付けられたレコードから特定の値を自動コピーする機能です。たとえば、コンタクトの「同期会社名」プロパティを作成すれば、関連付けられた会社の会社名が自動的にコピーされます。
手動入力による表記揺れを防ぎ、マスターデータ(会社オブジェクト)の値を正として各オブジェクトに展開できます。Salesforceの数式フィールドに近い概念です。1つのコンタクトに複数の会社が関連付いている場合は、直近に関連付けられた会社や最終作成の会社など、優先ルールを設定できます。
計算プロパティは、関数(IF文、CONTAINS、IS_KNOWNなど)を使ってプロパティ値を自動計算する機能です。
たとえば「姓(ラストネーム)に値があればtrue、なければfalse」というロジックをワークフローで実装している企業は多いですが、これは計算プロパティ1つで置き換えられます。計算プロパティはリアルタイムで更新されるため、ワークフローのメンテナンスが不要になり、ワークフローの数も大幅に削減できます。
レポート用のグルーピング(条件AならカテゴリX、条件BならカテゴリY)にも活用でき、データ管理の柔軟性が格段に上がります。
スマートプロパティは、ウェブ上の情報を自動収集してHubSpotのプロパティに格納する機能です。プロンプトを設定することで、会社のウェブサイトやプレスリリースから関連URL、年間売上高、従業員数、ウェブサイトの概要などの情報を取得・整理できます。
データエージェントは、AIを活用して自動的にデータを収集・更新する機能です。手動でのデータ入力やリサーチの手間を大幅に削減できます。データエンリッチメントの設定にはHubSpotクレジットが必要で、利用にはデータエンリッチメントのユーザー権限が必要となります。
HubSpotのダッシュボードには、グラフだけでなくテキストや画像を埋め込めます。「ダッシュボードテキスト」機能を使えば、レポートの説明文や運用ルールをダッシュボード上に直接記載できます。
ダッシュボードには外部コンテンツの埋め込みも可能です。GoogleスプレッドシートやGoogleスライドをダッシュボードに直接埋め込めるため、HubSpotのレポート機能だけでは表現しきれないデータ分析やプレゼン資料を、ダッシュボード上で一元管理できます。
これにより、経営層や他部門向けのダッシュボードに、HubSpotデータとGoogle Workspace上の分析資料を統合して表示するといった運用が可能になります。
HubSpotとSlackを連携させると、取引のステージ変更やフォーム送信などのイベントをSlackチャンネルに自動通知できます。ワークフローからSlackへの通知送信も設定可能で、特定の条件を満たした場合にのみ通知するといった柔軟な運用ができます。
ワークフローのアクションとして「Googleスプレッドシートに行を追加」が用意されています。たとえば、新規取引が作成されたら自動的にスプレッドシートにデータを書き出すといった連携が可能です。社内でスプレッドシートベースの報告フローがある場合に有効な機能となります。
HubSpotとZoomを連携すると、ウェビナーの参加者データがCRMに自動取り込みされます。Zoomウェビナーの登録者・参加者がコンタクトとして作成または更新され、ウェビナーの録画データもHubSpotから参照できます。マーケティングイベントの管理と後追い営業を一元化できます。
HubSpotのアプリマーケットプレイスにない外部サービスとの連携には、ZapierやYoom(日本国内向け)が活用できます。ノーコードで数百のアプリケーションとHubSpotを接続し、データの自動連携やワークフローのトリガーを設定できます。
ワークフローのアクションにAI機能が組み込まれています。たとえば「テキストを要約する」「テキストを翻訳する」「フリーテキストからデータを抽出する」といったAIアクションを、ワークフロー内で自動実行できます。
Breezeアシスタントは、CRMデータに基づいて質問に回答するAIです。Google DriveやGoogleドキュメントとも連携でき、社内ドキュメントの内容も参照しながら回答を生成できます。営業資料や社内ナレッジをBreezeに接続することで、CRMデータと社内情報を横断した回答が可能になります。
HubSpotのワークフローからOpenAI、Anthropic(Claude)、Google(Gemini)などの外部LLMを直接呼び出すことも可能です。APIキーを設定し、プロンプトとモデルを指定するだけで、ワークフロー内でカスタムAI処理を実行できます。
たとえば、フォーム送信された問い合わせ内容をAIで分析し、カテゴリ分類やスコアリングを自動で行うといった高度な自動化が実現できます。
Breezeエージェントは、特定の業務を自律的に実行するAIエージェントです。案件創出エージェント、コンテンツエージェント、顧客対応エージェント、SNSエージェントなど、業務領域別のエージェントが用意されています。Breezeマーケットプレイスからエージェントを追加してカスタマイズすることも可能です。
HubSpotでは、ユーザーをチーム単位で管理できます。営業チーム、マーケティングチーム、カスタマーサクセスチームなど、組織構造に合わせたチームを作成し、チーム単位でデータのアクセス権限を設定できます。
権限セットは、ユーザーに付与する権限のテンプレートです。「営業担当者用」「マネージャー用」「管理者用」といった権限セットを事前に作成しておけば、新規ユーザーの追加時にセットを選択するだけで適切な権限が設定されます。
権限は細かく制御できます。CRMオブジェクトごとの「作成」「編集」「削除」権限はもちろん、プロパティ単位でのアクセス制御(特定のプロパティを特定のチームにのみ表示する)、パイプラインのステージ単位でのアクセス制御(特定のステージへの移動を制限する)も可能です。
複数ユーザーをCSVインポートで一括追加することもできます。権限セットやチームをプリセットしておけば、大量のユーザーオンボーディングも効率的に処理できます。通知プロファイルの設定により、ユーザーごとに受け取る通知の種類もカスタマイズ可能です。
HubSpotにはスケジュールバックアップ機能があり、CRMデータの定期バックアップを自動化できます。14日間の保持期間内であれば、バックアップからデータを復元することが可能です。
Enterprise向けのセキュリティ機能として、SSO(シングルサインオン)、二要素認証(2FA)の強制、IPアドレス制限、機密データの管理設定が用意されています。特にIPアドレス制限は、社内ネットワークからのみHubSpotへのアクセスを許可するといった運用に有効です。
90日以上操作がないユーザーアカウントの自動無効化機能も追加されており、セキュリティリスクの軽減に貢献します。
HubSpotは頻繁に機能アップデートを行っています。「設定」→「プロダクトアップデート」から最新の機能追加やベータ機能を確認でき、ベータ機能については事前に有効化して先行利用することが可能です。定期的にプロダクトアップデートを確認し、自社の運用に活用できる新機能を積極的に取り入れていくことが重要です。
HubSpotの応用機能を活用することで、CRMの運用レベルは格段に向上します。
基本機能で日常業務をカバーし、応用機能でデータ構造と運用を最適化します。この2つのレイヤーを意識してHubSpotを活用すれば、CRMの投資対効果を最大化できます。