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HubSpot導入事例:人材業界|求職者・企業の双方向CRM管理で成約率向上

作成者: 今枝 拓海|2026/03/03 15:21:35

「求職者のデータベースと企業のデータベースが別々で、マッチングに時間がかかる」

「営業担当が退職するたびに、企業との関係がリセットされてしまう」

——人材業界における、こうしたCRM課題はかなり根深いものがあります。

人材ビジネスは、求職者と企業の双方を管理する「両面型ビジネス」であるがゆえに、CRMの設計が他業界よりも複雑になります。この記事では、ある人材紹介会社がHubSpotを導入し、双方向のCRM管理を実現して成約率を向上させた事例を紹介します。

この記事でわかること

  • 人材業界特有のCRM課題と構造的な難しさ
  • 求職者×企業の双方向CRM設計のアプローチ
  • HubSpotでの実装方法と導入プロセス
  • 導入後の定量的な成果
  • 人材ビジネスでのCRM活用の成功ポイント

企業概要

項目 内容
業種 人材紹介業(IT・Web業界特化)
従業員数 約40名
コンサルタント数 25名(求職者担当15名 + 法人営業10名)
年間紹介件数 約500件
主な課題 求職者・企業データの分断、マッチング効率の低さ、属人的な候補者推薦

導入前の課題

課題1: 求職者と企業のデータが別システム

求職者の情報は求人管理システム(ATS)で管理し、企業の情報はExcelと名刺管理ツールで管理していました。2つのシステムが連携していないため、「この求職者に合う企業はどこか」を探すのにコンサルタントの記憶と経験に頼るしかない状態でした。

課題2: 企業へのフォローが属人化

法人営業担当10名がそれぞれ担当企業を持っていましたが、求人ニーズの更新頻度・フォローのタイミングが個人の裁量に委ねられていました。結果として、「半年前に求人を出していた企業に今更連絡する」「採用意欲が高い企業を見逃す」といったロスが発生。

課題3: 成約率の分析ができない

「紹介した候補者のうち何%が面接に進み、何%が内定を獲得し、何%が入社に至るか」というファネル分析ができていませんでした。感覚的に「この企業は決まりやすい」「この経歴は人気がある」と判断していましたが、データの裏付けがない状態でした。

HubSpot選定の理由

リレーションデータベースの設計柔軟性

人材ビジネスのCRMは、「求職者(コンタクト)× 企業(会社)× 求人案件(取引)× 面接プロセス」という複雑なリレーションを管理する必要があります。

HubSpotは標準のオブジェクト(コンタクト・会社・取引)に加えて、カスタムオブジェクトで「求人案件」「面接プロセス」などの独自テーブルを作成できます。これがリレーションデータベースとして機能し、求職者と企業の双方向の関係を一元管理できるのが決め手でした。

導入プロセス

Phase 1(1〜2ヶ月目): データ構造の設計

人材ビジネス向けにカスタマイズしたデータ構造を設計しました。

コンタクト(求職者)
    ↕ 関連付け
カスタムオブジェクト: 求人案件
    ↕ 関連付け
会社(企業クライアント)
    ↕ 関連付け
取引(成約管理)
    ↕ 関連付け
カスタムオブジェクト: 面接プロセス

求職者のカスタムプロパティとして、職種・経験年数・希望年収・転職時期・スキルセットなどを設定。企業側には業界・従業員数・採用予算・求める人材像などを設定しました。

Phase 2(3〜4ヶ月目): パイプラインと自動化

2つのパイプラインを設計しました。

求人案件パイプライン:

求人ヒアリング → 求人票作成 → 候補者推薦 → 面接調整 → 内定 → 入社

法人営業パイプライン:

リード → 初回訪問 → ニーズ確認 → 契約締結 → 求人発生待ち → アクティブ取引

ワークフローで以下を自動化しました:

  • 求職者がフォームで登録 → コンサルタントに自動アサイン
  • 面接日程が決まったら求職者に自動リマインド
  • 内定が出たら法人営業にSlack通知
  • 入社後90日でフォローアップタスクを自動生成

Phase 3(5〜6ヶ月目): マーケティング連携

  • 求職者向けのナーチャリングメール(業界動向・転職コラム)の自動配信
  • 企業向けの採用トレンドレポートの定期配信
  • ライフサイクルステージの設計(潜在求職者 → 相談中 → 活動中 → 内定 → 入社 → 定着フォロー)

導入後の成果(12ヶ月時点)

指標 導入前 導入後 変化
候補者推薦〜面接設定率 35% 52% +17pt
面接〜内定率 22% 30% +8pt
成約単価 平均85万円 平均98万円 +15%
候補者1人あたりのマッチング工数 4時間 2.5時間 -37%
休眠企業の掘り起こし件数 月3件 月12件 +300%
コンサルタント1人あたり月間成約数 1.5件 2.1件 +40%

定性的な変化

  • コンサルタントの経験則が「データ」として蓄積・共有されるように
  • 新人コンサルタントが「どの企業にどの候補者を推薦すべきか」をデータで判断できるように
  • 企業の採用ニーズの変化を全チームでリアルタイムに把握できるように
  • 休眠企業へのアプローチが仕組み化され、売上機会の取りこぼしが減少

成功のポイント

1. カスタムオブジェクトで業界特化の設計

標準のCRMオブジェクトだけでは人材ビジネスの複雑なリレーションを表現しきれません。カスタムオブジェクトで「求人案件」「面接プロセス」を作成し、求職者・企業・案件の三角関係を正確にモデリングしたことが成功の土台になりました。

2. スモールスタートで段階的に拡張

最初からすべてを作り込むのではなく、まずは法人営業パイプラインと求人案件パイプラインだけでスタート。コンサルタントのCRM利用が定着してから、ナーチャリングメールやスコアリングを追加しました。

3. マッチング精度の継続的な改善

CRMに蓄積された「推薦→面接→内定→辞退/入社」のデータを分析し、「どんな条件の組み合わせが成約しやすいか」のパターンを発見。このフィードバックループがマッチング精度の向上につながりました。

まとめ

人材業界におけるHubSpot導入は、求職者と企業の双方向データを一元管理し、マッチング精度と営業効率を同時に向上させるプロセスです。

まずはカスタムオブジェクトを活用したデータ構造の設計から始め、パイプラインとワークフローで業務プロセスを仕組み化しましょう。CRMにデータが蓄積されるほど、マッチングの精度が上がり、成約率の向上につながります。

HubSpotの導入・活用についてお気軽にご相談ください

StartLinkでは、HubSpotの導入設計から運用定着まで、企業様の状況に合わせた支援を行っています。

「人材ビジネスに合ったCRM設計を相談したい」「求職者と企業の一元管理を実現したい」——そんなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 既存のATSからHubSpotに完全移行すべきですか?

必ずしも完全移行する必要はありません。ATSの求人管理機能が強い場合は、ATSとHubSpotをAPI連携して使い分ける方法もあります。HubSpotを「顧客管理・営業管理・マーケティング」の基盤として、ATSを「選考プロセスの詳細管理」として併用する形が多いです。

Q2. カスタムオブジェクトを使うにはどのプランが必要ですか?

カスタムオブジェクトはEnterprise以上のプランで利用可能です。求職者をコンタクト、企業を会社、案件を取引として管理する基本構成であれば、Professionalプランでも十分に機能します。まずはProfessionalで始めて、複雑なリレーション管理が必要になった段階でEnterpriseを検討するのがおすすめです。

Q3. 求職者の個人情報保護はどう対応していますか?

HubSpotにはGDPR対応の機能(同意管理・データ削除リクエスト対応)が実装されています。求職者の同意を取得するフォーム設計、一定期間後のデータ自動削除ワークフロー、アクセス権限の制御(チーム別の閲覧制限)を組み合わせて個人情報保護に対応できます。

Q4. 人材業界に特化したCRMと比べてHubSpotの優位性は?

Porters、HRMOS、JobSuiteなどの業界特化CRMは選考管理に強みがありますが、マーケティング機能やカスタムレポートの柔軟性ではHubSpotが優れています。特に法人営業のパイプライン管理、企業向けナーチャリング、ダッシュボードによる経営レポートの自動化はHubSpotの強みです。

この記事は2025年3月時点の情報に基づいています。HubSpotの機能は定期的にアップデートされるため、最新情報はHubSpot公式サイトでご確認ください。

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