「BtoBマーケティングに取り組んでいるが、施策がバラバラで成果に結びつかない」「リード獲得はできているのに、商談化率が上がらない」「マーケティングと営業の連携がうまくいかず、せっかくのリードが無駄になっている」
こうした課題を抱えるBtoB企業は少なくありません。個別の施策――SEO、広告、展示会、メールマーケティング――に投資しても、それらを束ねる戦略設計がなければ、成果は積み上がりません。BtoBマーケティングで成果を出している企業には共通点があります。それは、個別施策の前に「戦略の設計図」を描いているということです。
BtoBマーケティング戦略とは、単にどのチャネルで集客するかを決めることではありません。誰に、どのような価値を、どの順序で届け、どう商談につなげるかという事業成長のシナリオそのものです。
本記事では、HubSpot導入支援の実体験から体系化した、BtoB企業が成果を出すための戦略設計フレームワークを解説します。ツールの使い方ではなく「なぜその戦略設計にするのか」という思想レベルから、ターゲット設計、チャネル選定、KPI設計、CRM活用までを一貫して紹介します。
多くのBtoB企業が「マーケティングに取り組んでいるのに成果が出ない」と感じています。その原因の多くは、施策単体の質ではなく、施策間のつながりが設計されていないことにあります。
例えば、SEOでブログ記事を量産しても、そこから獲得したリードをどう育成し、いつ営業に引き渡すかが設計されていなければ、リードは放置されます。展示会で名刺を大量に集めても、その後のフォローアップシナリオがなければ、名刺はファイルに眠ったままです。
BtoBマーケティングの成果は、個別施策の「点」ではなく、施策間を結ぶ「線」の設計で決まります。この「線」を描くのが、戦略設計です。
BtoBマーケティング戦略の設計には、BtoCとは本質的に異なるアプローチが必要です。その違いを理解していないと、見当違いの施策に投資してしまいます。
| 特性 | BtoB | BtoC |
|---|---|---|
| 意思決定者 | 複数人(担当者・上長・経営層) | 個人(本人が決定) |
| 検討期間 | 数週間〜数ヶ月 | 数秒〜数日 |
| 購買動機 | 課題解決・業務改善・ROI | 感情・欲求・利便性 |
| 商談単価 | 数十万〜数千万円 | 数百〜数万円 |
| 情報収集行動 | 比較検討・事例・専門コンテンツ | 口コミ・SNS・広告 |
| マーケティングの役割 | リード育成・商談創出 | 認知・購入促進 |
BtoBでは、見込み顧客が「課題を認識し、情報を収集し、比較検討し、社内稟議を通し、導入を決定する」という長いプロセスを経ます。この購買プロセス全体をカバーする戦略設計が、BtoBマーケティングの本質です。
戦略設計の有無は、組織としてのマーケティングの再現性に直結します。
戦略設計がない企業では、成果が特定の担当者の「勘と経験」に依存します。その担当者が異動すれば成果も失われます。一方、戦略設計がある企業では、ターゲット定義、チャネル選定、コンテンツ計画、KPIが明文化されているため、チームメンバーが変わっても同じ品質のマーケティング活動を継続できます。
戦略設計とは、マーケティング活動を「個人技」から「組織の仕組み」に変えるための設計図です。
BtoBマーケティング戦略の設計は、以下の5つのレイヤーで構成されます。上位レイヤーの設計なしに下位レイヤーに着手すると、施策が迷走する原因になります。
| レイヤー | 設計内容 | 主な問い |
|---|---|---|
| Layer 1:事業戦略との接続 | 事業目標・売上目標とマーケティングの関係定義 | マーケティングは事業にどう貢献するか? |
| Layer 2:ターゲット設計 | ICP・ペルソナ・購買プロセスの定義 | 誰に、どのタイミングで価値を届けるか? |
| Layer 3:チャネル・コンテンツ戦略 | 集客チャネルの選定とコンテンツ設計 | どこで、何を伝えるか? |
| Layer 4:リード育成・商談化設計 | ナーチャリングシナリオとMQL/SQL基準 | どう育成し、いつ営業に渡すか? |
| Layer 5:KPI設計・実行基盤 | 計測指標・ツール・運用体制の構築 | 何を測り、どう改善し続けるか? |
この5レイヤーを順に設計していくことで、抜け漏れのない一貫した戦略が構築できます。以降のセクションでは、各レイヤーの具体的な設計方法を解説します。
BtoBマーケティング戦略の出発点は、事業の売上目標です。「マーケティングで何件のリードを獲得するか」ではなく、「事業の売上目標を達成するために、マーケティングはどれだけの商談を創出する必要があるか」から逆算します。
具体的な逆算のステップは以下のとおりです。
この逆算により、マーケティングが「年間5,333リードを獲得し、そのうち1,067件をMQLに育成する」という具体的な数値目標が設定できます。
BtoB企業において、マーケティング部門の役割は企業ごとに大きく異なります。戦略設計の段階で、マーケティング部門がカバーする範囲を明確に定義しておくことが重要です。
| 貢献範囲 | マーケティングの責務 | 営業の責務 |
|---|---|---|
| リード獲得 | Webサイト・広告・イベント等からのリード創出 | 紹介・直接アプローチによるリード創出 |
| リード育成 | コンテンツ・メール・セミナーによるナーチャリング | 個別フォロー・提案活動 |
| 商談創出 | MQL判定・営業への引き渡し | 商談化判定・提案・クロージング |
| 顧客維持 | 既存顧客向けコンテンツ・アップセル機会の発見 | リレーション維持・契約更新 |
この役割分担を経営層・営業部門と合意しておくことで、「マーケティングは何をやっているのかわからない」という社内の不信感を防ぐことができます。
BtoBマーケティング戦略の精度を決定づけるのが、ICP(Ideal Customer Profile:理想的な顧客プロファイル)の定義です。ICPとは「自社の製品・サービスから最も価値を得られ、かつ自社にとっても最も収益性の高い企業像」を指します。
ICPの定義には、以下の要素を含めます。
ICPを定義する際に最も重要なのは、「過去の成功案件」を分析することです。受注率が高く、LTV(顧客生涯価値)が大きく、解約率が低い顧客に共通する属性を洗い出しましょう。想像ではなく、実データに基づくICP定義が戦略の精度を高めます。
BtoBの購買プロセスには複数の関与者が存在します。戦略設計の段階で、誰にどのメッセージを届けるかを整理しておく必要があります。
| 役割 | 代表的な職位 | 関心事項 | 必要なコンテンツ |
|---|---|---|---|
| 情報収集者 | 現場担当者・マーケ担当 | 具体的な機能・使い方・事例 | ブログ記事・ホワイトペーパー・デモ動画 |
| 推進者 | 部門マネージャー・リーダー | 導入効果・競合比較・運用負荷 | 比較資料・導入事例・ROI試算 |
| 意思決定者 | 経営者・役員・事業部長 | 事業インパクト・投資対効果・リスク | 経営者向け概要資料・業界レポート |
| 技術評価者 | 情シス・IT部門 | 技術仕様・セキュリティ・連携性 | 技術ドキュメント・API仕様・セキュリティシート |
購買関与者マップを作成しておくことで、コンテンツ戦略の設計時に「誰のための、どのフェーズのコンテンツか」を明確にできます。
BtoBの購買プロセスは一般的に3つのステージで構成されます。各ステージにおける見込み顧客の心理状態と必要な情報を理解し、コンテンツ戦略に反映します。
認知ステージ(Awareness)
検討ステージ(Consideration)
決定ステージ(Decision)
BtoBマーケティングのチャネル選定で重要なのは、「流行っているから」ではなく、ターゲットの情報収集行動に合わせてチャネルを選ぶことです。ICPとして定義した企業の担当者が、日常的にどこで情報を収集しているかを基準に判断します。
BtoBマーケティングで活用される主要チャネルと、その特性を整理します。
| チャネル | 役割 | 効果が出るまでの期間 | 適するステージ |
|---|---|---|---|
| SEO・ブログ | 課題認知層の集客・教育 | 中長期(6ヶ月〜) | 認知・検討 |
| リスティング広告 | 検索意図の高いリード獲得 | 短期(1ヶ月〜) | 検討・決定 |
| ホワイトペーパー | リード情報の取得・専門性の訴求 | 中期(3ヶ月〜) | 認知・検討 |
| メールマーケティング | リード育成・関係構築 | 中期(3ヶ月〜) | 検討・決定 |
| ウェビナー・セミナー | 深い理解の促進・信頼構築 | 中期(2ヶ月〜) | 検討・決定 |
| 展示会・イベント | 対面での関係構築・大量リード獲得 | 短期(イベント単位) | 認知・検討 |
| SNS(LinkedIn等) | ブランディング・コミュニティ形成 | 中長期(6ヶ月〜) | 認知 |
BtoBマーケティングでは、単一チャネルに依存するのではなく、複数チャネルを組み合わせたチャネルミックスを設計します。設計の原則は以下の3つです。
原則1:短期施策と中長期施策のバランス
リスティング広告や展示会は短期的にリードを獲得できますが、コストが継続的に発生します。一方、SEOやコンテンツマーケティングは効果が出るまでに時間がかかりますが、資産として積み上がります。短期施策で即効性を確保しつつ、中長期施策で持続的な集客基盤を構築するバランスが重要です。
原則2:認知・検討・決定の各ステージをカバーする
認知ステージ向けのチャネルだけに偏ると、リードは獲得できても商談につながりません。逆に決定ステージ向けの施策だけでは、見込み顧客の母数が不足します。各ステージに少なくとも1つのチャネルを配置しましょう。
原則3:チャネル間の連携を設計する
各チャネルが独立して機能するのではなく、チャネル間で見込み顧客を次のステージに誘導するシナリオを設計します。例えば「SEOブログで認知を獲得し、ホワイトペーパーでリード情報を取得し、メールナーチャリングで検討を促進し、セミナーで商談化する」といった一連の流れです。
コンテンツ戦略は、ターゲット設計とチャネル選定を踏まえて設計します。BtoBコンテンツ設計の基本は、「購買プロセスの各ステージ × 購買関与者の各役割」のマトリクスでコンテンツマップを作成することです。
コンテンツマップの作成ステップは以下のとおりです。
BtoBマーケティング戦略の中核をなすのが、ライフサイクルステージの設計です。ライフサイクルステージとは、見込み顧客が「最初の接点」から「顧客」になるまでの各段階を定義したものです。
HubSpotのMarketing Hubでは、以下のライフサイクルステージが標準で用意されています。この設計を自社の営業プロセスに合わせてカスタマイズすることが、リード育成の第一歩です。
| ステージ | 定義 | ステージ移行の条件(例) |
|---|---|---|
| サブスクライバー | メルマガ登録のみ | フォーム送信(ニュースレター登録) |
| リード | 資料DL等でコンタクト情報を取得した状態 | ホワイトペーパーDL・セミナー申込み |
| MQL(Marketing Qualified Lead) | マーケティングが「営業対応に値する」と判定したリード | スコアリング閾値の突破・特定ページの閲覧 |
| SQL(Sales Qualified Lead) | 営業が「商談に進められる」と判定したリード | 営業によるヒアリング後の判定 |
| 商談(Opportunity) | 具体的な提案・見積もりが進行中 | 提案書の送付・見積もり依頼 |
| 顧客(Customer) | 受注・契約完了 | 契約締結 |
ライフサイクルステージの中で、最も設計が難しく、かつ最もインパクトが大きいのがMQL(Marketing Qualified Lead)の判定基準です。MQL基準が甘すぎれば営業にとって質の低いリードが大量に渡り、厳しすぎれば商談機会を逃します。
MQL判定は、「属性スコア」と「行動スコア」の2軸で設計するのが効果的です。
属性スコア(Fit Score)
行動スコア(Engagement Score)
属性スコアと行動スコアの合計が一定の閾値(例:60点)を超えたらMQLとして営業に引き渡す、というルールを設定します。この閾値は運用しながら継続的に調整します。
リードからMQL、MQLからSQL、SQLから商談へとステージを進める仕組みがナーチャリング(リード育成)です。ナーチャリングの設計は、単にメールを送ることではありません。見込み顧客の課題認識を深め、自社のソリューションへの関心を段階的に高めていくシナリオの設計です。
効果的なナーチャリングシナリオの設計ステップは以下のとおりです。
HubSpotのワークフロー機能を活用すれば、このナーチャリングシナリオを自動化できます。トリガー設定、条件分岐、アクション実行(メール送信・プロパティ変更・通知)を組み合わせることで、手動では実現できない精緻なリード育成が可能になります。
BtoBマーケティング戦略の成否を分ける重要な要素が、マーケティング部門と営業部門の連携です。多くのBtoB企業で「マーケが渡すリードの質が低い」「営業がリードをフォローしない」という相互不満が発生しています。
この問題を解決するのが、SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意)の策定です。マーケティングと営業の間で、以下の事項を明確に合意します。
SLAは一度策定して終わりではなく、月次や四半期ごとに見直し、MQL基準やフォロープロセスを継続的に最適化することが重要です。
BtoBマーケティングのKPI設計で犯しがちな間違いは、「PV数」や「リード獲得数」といった活動指標(Activity Metrics)だけを追いかけることです。重要なのは、事業目標から逆算した成果指標(Outcome Metrics)を設計し、それを支える活動指標を紐づけることです。
KPIツリーの構造は以下のように設計します。
| 階層 | KPI | 計測頻度 | 責任部門 |
|---|---|---|---|
| 事業KPI | マーケティング起点の売上・受注件数 | 月次 | 経営・マーケ・営業 |
| 成果KPI | 商談数・SQL数・MQL数 | 週次・月次 | マーケ・営業 |
| 転換率KPI | リード→MQL率・MQL→SQL率・SQL→受注率 | 月次 | マーケ・営業 |
| 活動KPI | リード獲得数・サイト訪問数・メール開封率 | 週次 | マーケ |
このKPIツリーの肝は、各階層間の転換率を可視化することです。「リード獲得数は増えているのに商談が増えない」という場合、リード→MQLの転換率にボトルネックがあるのか、MQL→SQLの転換率に問題があるのかを特定し、改善施策を打てます。
KPIは設計するだけでなく、日常的にモニタリングできる環境を整えることが不可欠です。HubSpotのダッシュボード機能を活用し、以下の3種類のダッシュボードを構築することを推奨します。
経営ダッシュボード(月次レビュー用)
マーケティング運用ダッシュボード(週次レビュー用)
営業連携ダッシュボード(日次確認用)
BtoBマーケティング戦略は、設計して終わりではありません。継続的な改善サイクルを回し続けることが、戦略を成果に結びつけるカギです。
具体的には、以下のサイクルで運用します。
ここまで設計してきた戦略を実行に移すうえで、CRM(顧客関係管理)ツールは不可欠な基盤です。CRMは「顧客データの管理ツール」ではなく、BtoBマーケティング戦略の実行基盤として位置づけるべきです。
CRMが戦略実行において果たす役割は以下のとおりです。
HubSpot Marketing Hubを活用したBtoBマーケティング戦略の実装において、特に重要な設定ポイントを解説します。
フォーム設計のベストプラクティス
フォームはリード情報を取得する最も重要な接点です。設計のポイントは以下のとおりです。
ワークフロー設計の実務知見
HubSpotのワークフロー機能を使ったナーチャリング自動化の設計手順は以下のとおりです。
レポーティングの設計
HubSpotのレポート機能を活用し、KPIツリーの各指標を自動で可視化します。特に重要なのは以下のレポートです。
「HubSpotを導入すればマーケティングがうまくいく」という思い込みは、最も多い失敗パターンです。ツールは戦略を実行するための手段であり、戦略そのものではありません。ツール導入の前に、本記事で解説した5つのレイヤーの設計を完了させましょう。
「すべての企業がターゲット」という戦略は、実質的に「誰もターゲットにしていない」のと同じです。ICPの定義を曖昧にしたまま施策を展開すると、コンテンツのメッセージがぼやけ、広告の費用対効果が悪化し、営業のフォロー負荷が増大します。まずは「最も成功確率の高い顧客像」を具体的に絞り込むことが重要です。
「なんとなくよさそうなリード」を営業に渡していると、営業部門のマーケティングへの信頼は急速に失われます。MQL基準は最初から完璧である必要はありませんが、明文化されていることが重要です。運用を通じて継続的に基準を調整し、マーケティングと営業の合意を更新し続ける体制を整えましょう。
SEOブログ記事を量産してPV数は増えたが、商談につながらない。このケースでは、検討ステージや決定ステージ向けのコンテンツ(事例、比較資料、ROI算出ツールなど)が不足していることが多いです。コンテンツマップを活用して、各ステージのコンテンツバランスを定期的に確認しましょう。
「月間PV 10万達成」「リード獲得月500件」といった活動指標は達成しやすく報告もしやすいですが、それだけでは事業成果に結びついているかわかりません。活動KPIと成果KPIを紐づけ、「PVが増えた結果、MQLはどう変化したか」「リード数が増えた結果、商談数はどう変化したか」を追える設計にしましょう。
戦略設計プロジェクトの第一歩は、現状の分析です。以下の情報を整理します。
現状分析の結果を踏まえ、本記事で解説した5つのレイヤーを順に設計します。この段階では、経営層、営業部門、マーケティングチームの三者で合意形成を行うことが重要です。特にICPの定義、MQL基準、マーケティングと営業のSLAについては、全関係者の合意がなければ戦略は機能しません。
設計した戦略をCRM・MAツール上に実装します。HubSpotを例にすると、以下の設定を行います。
戦略の実行を開始した後は、前述のPDCAサイクルに沿って継続的に改善を行います。特に最初の3ヶ月間は、以下の点に集中します。
BtoBマーケティング戦略の設計は、個別施策の寄せ集めではなく、事業目標から逆算した一貫性のある設計図を描くことです。本記事で解説した5つのレイヤーを順に設計することで、マーケティング活動を「個人技」から「組織の仕組み」に変えることができます。
戦略設計で押さえるべきポイントを改めて整理します。
BtoBマーケティングの成果は、戦略設計の質で決まります。まずは自社の現状を分析し、5つのレイヤーのどこに課題があるかを特定するところから始めてください。
現状分析から戦略フレームワークの設計まで、およそ2〜3ヶ月が目安です。ただし、CRM・MAツール上への実装まで含めると4〜6ヶ月程度を見込んでください。企業規模や組織の合意形成プロセスによっても期間は変動します。重要なのは「完璧な戦略を一度で作ること」ではなく、「仮説としての戦略を早期に策定し、運用を通じて改善すること」です。
可能です。ただし、兼務で戦略設計と実行の両方を担うのは現実的に困難です。戦略設計のフレームワーク構築は外部パートナーの支援を受け、日常の運用は社内で担うという役割分担が効果的です。また、最初からすべてのレイヤーを設計するのではなく、最も課題が大きいレイヤー(多くの場合はLayer 2のターゲット設計とLayer 4のリード育成)から着手する段階的アプローチを推奨します。
最初のMQL基準は「仮説」として設定し、運用しながら調整するのが現実的です。まず過去の受注案件を分析し、商談化に至ったリードに共通する属性(業種・規模・職位)と行動(閲覧ページ・DL資料・イベント参加)を洗い出します。それをもとに属性スコアと行動スコアの配点を設定し、営業部門と合意のうえで閾値を決めます。運用開始後は月次でMQLの商談化率を確認し、基準を調整してください。
本記事で解説した戦略設計フレームワーク(5つのレイヤー)は、特定のツールに依存しない普遍的な考え方です。Salesforce、Zoho CRM、Marketo、Pardotなど、ライフサイクルステージの管理とスコアリング、ワークフローの自動化に対応しているCRM・MAツールであれば、同様の戦略を実装できます。ただし、ツールごとに実装方法や設定の手順は異なるため、選定したツールの特性に合わせた実装設計が必要です。
チャネルや施策によって異なりますが、リスティング広告やウェビナーなどの短期施策であれば1〜3ヶ月で商談創出の効果が見え始めます。SEO・コンテンツマーケティングなどの中長期施策は、効果が本格的に表れるまで6ヶ月〜1年程度かかります。重要なのは、短期施策で早期に成功体験を作りつつ、中長期施策で持続的な成長基盤を構築するという二軸での取り組みです。また、KPIのモニタリングを通じて「成果が出ていない原因」を早期に特定し、改善を重ねることが成功への近道です。