日本のクラウド会計市場でシェアNo.1のfreeeは、30万社以上の企業に利用されています。MCP(Model Context Protocol)を活用してfreeeとAIエージェントを連携すれば、仕訳入力の自動化、月次レポートの即時生成、予実管理の効率化など、これまで手作業で行っていた経理業務を大幅に自動化できます。
本記事では、freee APIをMCPサーバー経由でAIエージェントから操作するための設計方法と、具体的なユースケースを解説します。
freeeは豊富なREST APIを公開しており、取引、勘定科目、仕訳帳、試算表などのデータにプログラムからアクセスできます。しかし、APIを直接操作するには開発の専門知識が必要です。MCPサーバーをfreee APIのフロントに配置することで、AIエージェントが自然言語の指示を会計操作に変換し、経理担当者がコーディングなしで高度なデータ活用を行えるようになります。
freee MCP連携の基本構成は、MCPクライアント(Claude、ChatGPTなど)→ MCPサーバー(freee APIラッパー)→ freee APIの3層です。MCPサーバーはfreeeのOAuth 2.0認証を管理し、ツール定義を通じてAIエージェントに利用可能な操作を公開します。
| レイヤー | 役割 | 技術要素 |
|---|---|---|
| MCPクライアント | 自然言語の指示を受け、ツールを呼び出す | Claude Desktop、ChatGPT、Cursor |
| MCPサーバー | freee APIをMCPツールとしてラップ | Node.js / Python + MCP SDK |
| freee API | 会計データのCRUD操作 | REST API + OAuth 2.0 |
MCPサーバーでラップすべきfreeeの主要APIエンドポイントは以下の通りです。
| エンドポイント | 用途 |
|---|---|
/api/1/deals |
取引(収入・支出)の取得・作成 |
/api/1/journals |
仕訳帳の取得 |
/api/1/trial_balance |
試算表の取得 |
/api/1/account_items |
勘定科目マスタの取得 |
/api/1/taxes |
税区分の取得 |
/api/1/partners |
取引先の取得・作成 |
/api/1/expense_applications |
経費精算の取得・作成 |
freee向けのMCPツールは、「参照系」と「更新系」を明確に分離します。ツールアノテーションでreadOnly: trueまたはdestructive: trueを設定し、AIエージェントがデータ変更の際にユーザー確認を挟むようにします。
参照系ツールの例として、get_trial_balance(試算表取得)、search_deals(取引検索)、get_journal_entries(仕訳帳取得)などを定義します。更新系ツールにはcreate_deal(取引作成)、create_expense_application(経費精算申請)などを定義します。
AIエージェントが「タクシー代をAmazon Payで支払った」という自然言語の指示を正しい仕訳に変換するには、勘定科目のマッピングが重要です。MCPサーバー起動時にfreeeの勘定科目マスタを取得してキャッシュし、AIが「旅費交通費」「未払金」などの勘定科目を適切に選択できるようコンテキストを提供します。
freee APIでは事業所ID(company_id)がすべての操作の基点となります。MCPサーバーの設定で事業所IDを環境変数として管理し、ツール呼び出し時にAIエージェントが意識せずとも正しい事業所にアクセスする設計にします。
経理担当者が「12月の出張旅費として新幹線代32,000円を法人カードで支払った」と入力すると、AIエージェントが以下の仕訳を自動生成します。
AIが勘定科目の候補を提示し、ユーザーが確認後にfreeeに登録する2段階フローにより、誤った仕訳の登録を防止します。
「先月の売上と経費の内訳を部門別にまとめて」という指示で、AIエージェントがfreeeの試算表APIから数値を取得し、表形式のレポートを即時生成します。従来はfreeeの画面で試算表を表示し、Excelにエクスポートして加工するという手順が必要でしたが、MCPを介したAIエージェントならワンステップで完了します。
freeeの実績データとboard(プロジェクト管理ツール)の予算データをそれぞれのMCPサーバーから取得し、AIエージェントが予実差異分析を自動実行するパターンです。「今月の売上は予算比で何%達成しているか」「原価率が予算を超過している費目はどれか」といった質問に、リアルタイムで回答できます。
HubSpotのCRMデータ(商談の受注情報)とfreeeの会計データ(請求・入金情報)をMCPで統合することで、「受注から入金までの一気通貫の可視化」が実現します。営業チームは商談クローズ後の請求状況を、経理チームは商談の背景情報を、それぞれAIエージェント経由で確認できます。
HubSpot MCP ServerとfreeeのカスタムMCPサーバーを並列で接続し、1つのAIエージェントから両方のデータにアクセスする構成を取ります。AIエージェントは「この取引先の未入金の請求書を一覧にして」という指示に対し、HubSpotの会社情報とfreeeの取引データを横断的に検索して回答します。
詳しいHubSpot MCP Serverの使い方はHubSpot MCP Serverの活用ガイドをご確認ください。
会計データは企業の最重要機密情報の一つです。MCPサーバーでfreeeのデータを扱う際は、以下のセキュリティ要件を必ず実装してください。
導入初期は、参照系ツールのみを公開する「読み取り専用モード」での運用を強く推奨します。月次レポートの生成や予実分析など、参照系だけでも十分な業務効率化が可能です。更新系ツールの追加は、運用実績と監査体制が整った段階で検討してください。
2023年のインボイス制度、2024年の改正電帳法により、会計データの記録と保存に法的要件が追加されています。AIエージェント経由でfreeeにデータを登録する際も、適格請求書発行事業者番号の記録、タイムスタンプ要件の遵守など、法令に準拠した処理が必要です。MCPサーバーのツール定義に必須フィールドのバリデーションを実装し、法的要件を満たさないデータの登録を防止してください。
MCPの基本的な仕組みについてはMCPとは何かも併せてご確認ください。
本記事では、MCPを使ってfreee会計のデータをAIエージェントから操作する方法について、設計パターンからセキュリティ対策まで解説しました。
ポイントを振り返ります。
CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、CRM特化型コンサルティングのStartLinkまでお気軽にお問い合わせください。
2026年3月現在、freee社はMCPサーバーを公式には提供していません。freeeのREST APIをMCP SDKでラップしたカスタムMCPサーバーを自社で構築する形になります。コミュニティ製のfreee MCPサーバーも登場しつつありますが、利用時はセキュリティ監査を実施してください。
freeeのAPI利用は法人向けプラン(ミニマム以上)で可能です。ただし、プランによってAPIで取得できるデータの範囲が異なります。試算表APIやカスタムレポートの取得には上位プランが必要な場合があります。
AIエージェントが仕訳を提案し、人間が確認・承認するフローであれば法的な問題はありません。ただし、完全自動化(人間の確認なしでの登録)は、経理責任者の承認プロセスを省略することになるため、内部統制の観点から推奨されません。AIは「提案」に留め、最終的な登録判断は人間が行う運用設計にしてください。
基本的な参照系ツール(試算表取得、取引検索、仕訳帳取得)の実装は、MCP SDKに慣れたエンジニアであれば1〜2週間程度で構築可能です。更新系ツールや勘定科目マッピング、監査ログの実装まで含めると、1〜2ヶ月程度を見込んでください。