HubSpotは2026年1月にMCP Serverのパブリックベータを開始し、CRM業界で初めて主要3大LLM(ChatGPT、Claude、Gemini)すべてに対応した公式MCPコネクタを提供しています。INBOUND 2025の時点で、20,000以上の顧客が2,300万件のCRMレコードをAIエージェント経由で活用しており、MCPによるCRM操作は急速に実用段階へと進んでいます。
本記事では、HubSpot MCP Serverのセットアップからツールの活用方法、実践的なユースケースまでを解説します。
HubSpot MCP Serverは、ローンチ時点で9つのツールを提供し、マーケティング・営業・カスタマーサービスチームが日常的に操作するCRMオブジェクトをカバーしています。
| ツール名 | 対応オブジェクト | 操作内容 |
|---|---|---|
| search_contacts | コンタクト | 条件指定によるコンタクト検索 |
| get_contact | コンタクト | 個別コンタクトの詳細取得 |
| search_companies | 会社 | 会社情報の条件検索 |
| get_company | 会社 | 個別会社の詳細取得 |
| search_deals | 取引 | パイプラインの取引検索 |
| get_deal | 取引 | 個別取引の詳細取得 |
| search_tickets | チケット | サポートチケットの検索 |
| get_ticket | チケット | 個別チケットの詳細取得 |
| get_crm_schema | 全オブジェクト | カスタムプロパティ定義の取得 |
HubSpot MCP Serverは、2025年にChatGPT(6月)、Claude(7月)、Gemini(9月)と段階的にコネクタをリリースしました。2026年現在では、Cursor、Visual Studio Code、Microsoft Copilotなど、MCPプロトコルに対応するすべてのクライアントから接続可能です。
従来のREST APIでは、開発者がエンドポイントのURL、リクエストパラメータ、ページネーション、エラーハンドリングをすべてコードで記述する必要がありました。MCP Serverでは、AIエージェントが自然言語の指示を受けて適切なツールを自動選択し、パラメータを構成して実行します。レポートの作成やダッシュボードの構築なしに、対話型でCRMデータを分析できる点が大きな違いです。
HubSpot MCP Serverを利用するには、HubSpotのデベロッパーポータルでMCPアプリケーションを作成し、必要なスコープ(crm.objects.contacts.read、crm.objects.deals.read等)を設定します。OAuth 2.0による認証フローが採用されており、初回接続時にHubSpotの認可画面でアクセス許可を行います。
Claude Desktopの場合、設定ファイル(claude_desktop_config.json)にHubSpot MCP Serverのエンドポイントを追加します。HubSpotが提供するリモートMCPサーバーのURLを指定することで、ローカルにサーバーを立ち上げることなく接続できます。
Cursorではプロジェクト設定のMCPセクションからHubSpot MCP Serverを追加します。開発ワークフローの中でCRMデータを参照しながらコーディングできるため、HubSpotのカスタム統合を開発するエンジニアにとって特に有用です。
「今月クロージング予定の取引を金額順に表示して」「ステージが1ヶ月以上停滞している取引を抽出して」といった自然言語の指示で、パイプラインの状況を即座に把握できます。従来はレポート作成に数分かかっていた分析が、会話の中で数秒で完了します。
「先月ウェビナーに参加した東京の企業のコンタクトを一覧にして」のような複合条件の検索も、AIエージェントが適切なフィルタを構成して実行します。CRMのフィルタUIを操作する必要がなくなり、営業担当者がデータ活用に費やす時間を大幅に削減できます。
商談前に「この会社との過去のやり取りをまとめて」と指示すれば、会社情報、関連するコンタクト、過去の取引履歴、オープンチケットを横断的に取得し、商談に必要な情報を一画面で確認できます。
「スコアが80以上のリードのうち、直近30日でWebサイトに3回以上訪問したコンタクトを抽出して」といった分析を、マーケティング担当者がSQLやAPIの知識なしに実行できます。
特定のキャンペーンに紐づくコンタクトの取引転換率を、AIエージェントが複数のCRMオブジェクトを横断して集計します。HubSpotのデフォルトレポートでは表現しにくいクロスオブジェクト分析も、自然言語で指示するだけで実現可能です。
HubSpot MCP Serverでは、OAuthの認可時に付与するスコープによってAIエージェントのアクセス範囲を制御します。読み取り専用のスコープ(*.read)のみを付与すれば、AIエージェントがデータを変更するリスクを排除できます。
MCPサーバー経由のアクセスは、接続したHubSpotユーザーの権限に従います。チーム限定のデータやプライベートなカスタムオブジェクトは、そのユーザーがHubSpot上でアクセス権を持っている場合のみ取得可能です。
HubSpotのアクティビティログには、MCP経由のAPI呼び出しも記録されます。誰がどのデータにアクセスしたかを事後的に確認でき、コンプライアンス要件への対応が可能です。
HubSpot公式のMCP Serverは主要なCRMオブジェクトの読み取りに最適化されていますが、カスタムオブジェクト、ワークフローのトリガー、バルクデータ操作などには対応していません。これらの高度な操作が必要な場合は、HubSpot APIを活用したカスタムMCPサーバーの構築を検討してください。
GitHub上にはPeakMojo社が公開するHubSpot MCPサーバーをはじめ、コミュニティ製のMCPサーバーが複数存在します。ベクトルストレージやキャッシュ機構を内蔵し、HubSpot APIの制限を克服するものもあります。ただし、サードパーティサーバーの利用時はセキュリティ監査を実施し、トークンの取り扱いを確認してください。
Stack Overflow社は、自社のCRM環境にMCPを導入した事例を公開しています。公式MCP Serverの機能をベースにしつつ、自社独自のカスタムオブジェクトやビジネスロジックをカスタムツールとして追加し、営業チームの日常業務を自動化しました。
AIエージェントの開発手法についてはAIエージェント開発入門も参考にしてください。
本記事では、HubSpot MCP Serverを活用してAIエージェントからCRMデータを操作する方法について、セットアップから実践的なユースケースまで解説しました。
ポイントを振り返ります。
CRMを活用した業務効率化やAIとの連携に関するご相談は、CRM特化型コンサルティングのStartLinkまでお気軽にお問い合わせください。
はい、HubSpot MCP Serverはパブリックベータとして無料で提供されています。ただし、MCPサーバーへのアクセスにはHubSpotアカウントとOAuth認証が必要であり、HubSpotのAPI呼び出し上限(レート制限)はMCP経由のリクエストにも適用されます。
2026年3月現在のパブリックベータでは、主にCRMオブジェクトの検索と取得(読み取り)に対応しています。書き込み機能は段階的に追加される予定です。現時点でデータの作成・更新が必要な場合は、HubSpot REST APIを利用したカスタムMCPサーバーの構築をご検討ください。
MCP Serverの利用にはAPIアクセス権が必要です。Freeプランでも基本的なAPI操作は可能ですが、カスタムオブジェクトやマーケティングイベントの取得など、上位プランでのみ利用可能なデータはMCP経由でもアクセスできません。
HubSpotのAPI呼び出し上限に達すると、MCP Server経由のリクエストもエラーを返します。AIエージェントには「APIレート制限に達しました」というエラーメッセージが返され、エージェントはユーザーにその旨を通知します。頻繁にレート制限に達する場合は、キャッシュ機構の導入やリクエストの最適化を検討してください。
MCPの仕様上、1つのクライアントから複数のMCPサーバーに同時接続できるため、ポータルごとにMCPサーバーを設定すれば、1つのAIエージェントから複数ポータルのデータにアクセス可能です。ただし、ポータル間のデータ混在を防ぐため、プロンプトで対象ポータルを明示するルールの設定が推奨されます。